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19.エディという人物は
しおりを挟む…丈夫?
「大丈夫? 気分は?」
「エディ!」
「お姉様!」
目を開けたら何人かの人に囲まれていた。何故か皆外国人、それも髪が水色や金、瞳にいたっては赤。
…何?
「…私?」
「魔力が暴走したんだ」
「気分は?」
「とても眠いの」
私が話したわけでもないのに口が勝手に動く。そして、その発せられた口調と声は高く幼い。
どうやらベッドの中にいて半身を起こしたらしい。
自分の手が見えた。とても小さくて白い。
どういうこと?
「僕が側にいたのに。ごめん」
12.3歳くらいの水色に赤い瞳の物凄く美形な男の子が、泣きそうな顔で話しかけてくる。
「違うの、お父様に止められていたのに約束を破ったエディが悪いの。アル兄様はお怪我しなかった?」
また口が勝手に動く。
「うん。大丈夫だよ」
「よかった~」
「姉様、眠そう」
今度は、アル兄様とやらの隣にいる金髪に緑の瞳の可愛い4.5歳くらいの女の子が話しかけてくる。
「そうね。もう少し休ませてあげましょう」
二人の子供の背後から、優しそうな女の人が顔をだし私に微笑んだ。
その人は金髪で瞳は赤。
「少し寝なさい」
そして私の頭を撫でる。
「はい。お母様」
私の意思とは関係なく目が閉じられた。それからは、まるで短編の映画を見ているようだった。
私は、エディ、曾祖母の中にいた。
*~*~*
あれから数年後。
「お母様、どうして私の髪や瞳は、お母様やお父様の色じゃないの? わた、私は、違う家の子なの?」
「まぁ。誰に言われたの?」
泣き出す私の頭を撫で髪をすく仕草はとても優しさが伝わってくる。
「エディの髪や瞳の色は私のおばあ様と同じなのよ」
「でも、ライがくすんだ汚い茶色って言うの」
「ライは、エディが好きなのよ。かまって欲しくて意地悪を言うだけよ。あなたの艶やかな髪と大きな好奇心いっぱいの瞳、お母様は大好きよ」
いつも見守って下さるお母様。
私、エディが16歳くらいの頃。深夜寝れず水をもらおうと部屋から出たら扉が少し開いていた。そこからお父様とお兄様の声がする。
「隣国との関係がまずくなってきた」
「父上、エディが危なくないですか?」
「あぁ。寄越せと遠回しには言われていたが最近あからさまになってきた」
「あの王は、エディの魔力が欲しいだけだ!」
怖いけど実は可愛い動物が大好きなお父様に正義感の強い兄様。
また場面が変わる。
私は17歳。あと数日で隣国に嫁ぐ。
話したこともない両親のような年齢の王に。
「お姉様! シノワが逃げてしまい探していたら、私の部屋の壁が一ヵ所だけ色が違いましたの。見て! 箱を開ける前は気づかなかったのに開けたとたん凄い力を感じますわ!」
「これは」
「お姉様なら古代語も読めますわよね。何かわくわくするわ!」
「危険だわ」
見覚えのある光が。
「マリン!」
眩しいオレンジの光が迫ってきた瞬間、妹を突き飛ばす私。
「嫌っ! お姉様!!」
こちらに伸ばされる白い手。驚きと悲しみの表情の妹。
*~*~*
飛ばされて数年後。
「エディ、絶対守るから」
「トウヤ」
優しそうな青年。
その顔は、祖父にそっくりだ。
それから1年後。
「頑張ったね」
私の腕の中には小さい赤ちゃんが眠っている。
「お母様!そんな顔しないで!いじめられたのは、僕が弱いからだよ! お母様のせいじゃない!」
必死な顔の息子。
「お母様が日本人じゃなくたって僕のお母様にはかわりないでしょ? 僕はお母様の子でとても嬉しいよ」
「ごめんね。ありがとう」
飛ばされて20年以上が経過した頃。
「あぁ、エディ」
「……あなた」
「貴方を帰したいのに方法が見つからない」
「トウヤ。私はここで、トウヤと過ごすことができてとても楽しかったわ」
「お母様」
「トウマ」
彼に、祖父に伸ばす私の腕はとても細く震えていた。
「ごめんなさい」
「お母様は辛かったですか?悲しかった? この世界は嫌でしたか?」
「いいえ」
今にも泣きそうな青年。
「お父様がいてトウマを産むことができて、とても幸せだったわ」
私は笑った。
心から。
「私にはもったいないくらいの人生でした」
トウマの手を握る。
「ごめんなさいね。後の事、お願い」
そんな顔しないで。
「あなた、ありがとう」
映像は突然消え、オレンジの、まるで夕日に閉じ込められたような感覚。
そう思っていたら突然、話しかけられた。
「私の中にいるあなたは、きっと私の血を受け継ぐ者ね」
もう声でわかる。エディ、曾祖母だ。
「はい」
今度は言葉が出た。手が体が自分のだという感覚。
「ここは、シュリカ石の作り出した空間。時までもが歪む。今、私は死ぬ直前にあなたに会い、話しかけているの」
「はぁ」
返事はしたけど正直、よく分からない。
「多分あなたがいるという事は、シュリカ石の封印が解かれた。そして、その影響であなたは飛ばされた」
だから、どうなるんだろう。
「あなたは、今度目覚めたら魔力が解放されているかもしれない。そうしたら…いえ、力が弱ければ問題ないのだけれど。おそらく封印を解けたということは、力が強いかもしれない」
途切れてしまい何も聞こえなくなったので聞いてみた。
「力が強いとどうなるんですか?」
長い間のあとに声が聞こえた。
「あなたは、今いる世界にいられない」
それは。
「強すぎると、すぐではないと思うけれど恐らくその世界が歪む」
なんで。
「私はいられない?」
自分の、あの居心地のいい祖父母の家にいられないの?
「どうすればっ」
「ここまで石が働いたという事は、もしかして他に強い魔力持ちが近くにいたのかしら?」
ランスのことかな。
「はい。ザーキッドの騎士が飛ばされてきて今一緒に住んでます」
「ザーキッドっ……あぁ!」
悲痛な悲鳴のような声の後に嗚咽がきこえて。
しばらくして落ち着いた声が聞こえた。
「取り乱しごめんなさい」
「…いえ」
「多分その騎士はシュリカ石で帰る事ができるわ。そして魔力がある世界、あなたも一緒に行くしかない」
「えっ、私が?」
「でないと、いずれあなたがいる、魔力が極僅かしか存在しない世界で桁外れの魔力が放たれれば、その世界はいずれ滅ぶ」
何、そんな馬鹿げた話。
「本当にごめんなさい」
謝られても、どうしようもないじゃない。
「もう時間がない。私の命が尽きる。息子に託して少ししかないけれど残りの力をあなたにあげる。幸せになれるように」
なにそれ。勝手に話して完結しちゃうの?
酷い!
「どうして」
文句を言おうと口を開きかけた時、また強い光に包まれた。
「…ランス?」
「ホノカっホノ!」
目が覚めたら私は、傷だらけのランスに抱きしめられていた。
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