恋をする

波間柏

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15.不穏な気配

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「魔術って」
「長くなるかもしれないので何か飲みながら話しませんか?」
「えっ、そうだね」

 どういう事なのか、すぐに知りたかったけれど彼のいつもとは違う雰囲気に押されて提案に従った。

 彼は、キッチンに入ると何も言っていないのに私が飲みたいと思ったジャスミンティーの茶葉が入っている缶を手に取った。

彼が私の視線に気づく。

「香りが落ち着くかと思ったんですが。これでいいですか?」
「うん、有り難う」

 イケメン、性格よしで痒い所にも手が届く。

ランスに弱点はないのだろうか?

「少しだけ先に話しますね」
「お願いします」

 お湯を沸かし、カップの用意をしながらランスが話始めた。

「箱を開けたと言いましたが、中には一冊の束の用紙、杖とおそらくですが、シュリカ石が入ってました」

後の二つは何?

「実はまだ用紙の束の中身は見ていません。勝手に箱を開けてなんですが、ホノカの許可をえてからと思い。ただ、その表紙の文字が、俺の世界の文字でした」

ランスの国。

「熱いので気をつけて下さい」

 ソファーに座っていた私にマグカップを渡してくれた。

 ティーカップを選ばなかったのはマグカップのほうが、たっぷり量が入るからだろう。

それだけ話が長いのかな。

 少しの空間をあけて彼もソファーに座り、手をのばしてソファーの前にあるローテーブルにその箱を置き彼が開けますねといい蓋を開けた。

 杖と言ったけど、長さは30センチあるかないかぐらいで随分短い。色はシルバーで何やら文字が彫られており、杖の先端に石がついている。その先端と同じ石で5センチくらいの球体、その色が不思議で黄色、オレンジ、赤、金色が混ざったような色で中に水が入っているかのようにゆらゆら色が変化する。

そして一番気になったのは。

「どうして古いはずなのに紙の色が全く変色してないの?」

まるで新品のようで違和感を感じた。

「気がつきましたか。これは劣化防止が鍵と共に外から箱にかけられていた為に紙もその時のままの状態を保っています」

当時のまま?

「ホノカは、魔法使いや魔術士はお伽噺でしか存在しないと言いましたよね? 代わりに科学があると」

彼が箱に触れる。

「これは間違いなく魔術で中にある杖は、今は使われていませんが、昔は複雑で強力な術式を作りだす際に使用されていました」
「術…」
「はい。あと、その石ですが」

ランスは、不思議な色が揺らめく石を指差す。

「俺は書物で読み知っていましたが実物は初めて見ました。その石、シュリカは、時空を歪ませるほどの力を持つと言われる幻の石、本来なら国庫にあるべき物で、杖に使われている石もおそらく同じ石です」
「それってかなり高価なんじゃあ…」
「こちらと俺のいる世界とは価値観が違うと思いますが、俺の世界で例えるなら小国が買えるかと」

怖い。

なんでそんな物が家にあるの? 

 自分の顔がひきつっているのが分かる。そんな事を知りもしないランスの話は続いていく。

「この紙の束の表紙に書いてある言葉は」
『この文字を知る人よ。願わくばザーキッドの民であらんことを』
「出会った時最初にホノカに伝えましたが、ザーキッドは俺のいる国です」

 ランスは、私の目を見て言った。何かが、これから急激に変わる。


それは間違いないと私の感が告げていた。



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