恋をする

波間柏

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6.少し前進

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「見ます?」

 私は、ランスに隣に座るよう促し彼にネックレスを渡した。彼は、しばらく石に手をかざした後、こちらに向き考えるように話始めた。

「この石はとても強い力を持っている。ですが…先程感じた奥の他の場所も見てもよいですか? このネックレスはきっと、とても大切な物ですよね」

 彼は指先でそっと丸みのある石の表面を撫でた。

「さぁ…どうなんだろう」

祖父母はもういないので分からない。

 ランスが私にネックレスを返してきたので、私は目線までそれを上げてじっくり見てみた。

 乳白色の中に青い光が入っている。アクセサリーは嫌いじゃないけれど石はあまり詳しくはない。私には、ただの綺麗なブルームーンストーンにしか見えない。ふと口から出た。

「私にも魔力ありますか?」

あぁ。

 質問する相手が違っていたら、まず病院へ予約の電話をいれさせられるだろう。

「ありますよ」
「えっ! 本当?!」

 つい大人げなく興奮してしまい、気づけばランスの方へ身を乗り出していた。

「は、はい」

いきなり距離を詰めたからか、仰反る彼。ごめんね。つい。

「ただ」

 私をじっと見ているようで見てない彼は、戸惑い気味に話す。

「この世界の方が皆そうなのか分かりませんが、ホノカから感じるのは例えると硬い殻の中に力が閉じ込められています」

 なんだ。はっきり言ってしまえば魔力とやらがあっても使えないってことね。

「でも、何らかのきっかけや方法で殻が割れれば力を使う事もできると思います」

 目に見えてガッカリしていたのが分かったのか、焦るようにフォローをいれてくる。

 私は、ネックレスを蓋を開けたままの兎の箱に入れ、よいしょっと立ち上がった。

「じゃあもう少し探してみましょうか」
「はい、お願いします」

私達はまた二階へ上がっていった。



***



「あの、今日はこれくらいでいいので」

 私は彼の遠慮がちな声に振り返った。ガラクタの山で彼が見えない。かなり集中していたみたい。腕時計を見ると9時頃だ。片付け始めて2時間ほど経過していた。


「そうですね。明日また集中してやりますか」

 私は声のした方に話しかけた。立ち上がり、んーと伸びをし周りを見渡す。2時間かけたわりに片付いてない。でも最初より歩ける場所が1人から1.5人くらいにはなった。

わかってはいたけど、物が多すぎる。

 せめて散らかっているのが本だけだったらまた違っただろうな。アンティークらしい小さい硝子瓶から大きな陶器の置物や鉄の何かなど、割れ物と本が混ざっているのも片付けるスピードが遅くなる原因かも。

 ランスさんが見た後に私は物を選り分け、ついでに処分するか決め袋にいれてった。

ん? 足元に違和感。何か踏んでいたらしい。

 本かな? 昔から本を大事にしなさいと言われて育った私は慌てて足をどけた。そこには本来は銀色だっだったのだろうか今は黒ずんでいる直径30センチ、厚みは2センチくらいの物が。

 円形の厚みのあるお盆に似ている。持ち上げてみるとズッシリ。足に落とさないようしっかり持ち表面の埃を払う。

 何これ? 変な文字やら数字がビッシリ彫られており何ヵ所かそれぞれ違う形の窪みがある。

「ランスさん、ランス」
「はい」

 ガラクタの積み上がった影から顔を出した彼にお盆もどきをみせる。長い足で足元の山を華麗に避け近づいてきた。

「これは」

 彼は目を見開きそれを凝視した。私から受け取ったお盆もどきの表面をよく見る為か更に手で擦り私を見た。

「友人が見ていた術式に似ている」
「じゃあ帰れるんですか?!」

凄い私!

 二ヶ月どころか今日で終わり? 服買わなくてもよかったじゃないか。

そんなケチな事が頭をよぎる。

「いえ」 

え? 駄目なの? 彼はそのお盆もどきをなぞり。

「足りないものがいくつかありそうです。先程見せて頂いたネックレス借りてもよいですか?」
「えっ? いいよ」

 話がみえないけど、真剣な表情の彼にとりあえず下に行き兎の箱を持ってきて、ネックレスを出し彼に渡した。

「はい、どうぞ」
「有り難うございます」

 彼は、お盆もどきを床に置き私が渡したブルームーンストーンを鎖から抜いて窪みの1つに。

カチッ

「はまった」

石は謎の窪みにピッタリ納まった。

「これ、あと3つ窪みがあるけど」

 私は、もう分かりきっているのに彼に聞いた。

「はい。多分他の三ヶ所もそれぞれ合う物があると思います」

 彼は私には解読不可能な文字をなぞり、此方に顔を向けた。帰るのに一歩近づいたはずなのに、その表情は暗い。

「この残りの窪みにはめる物も必要ですが、それだけでは発動しないかもしれない」

ため息をつきランスは呟く。

「ヒュラルと連絡が取れればいいのですが」

元の世界の人かな。

「方法はないんですか? 確か力が足りないんでしたっけ?」
「あるにはあるんですが」

水色の瞳が揺れている。じれったくなった私は少し強い口調で聞いた。

「その方法は?」
「…あれを頂ければ」


 申し訳ないなさそうに彼が指をさした方を見た。


 そこには、昔でいうお金持ち風の家の床の間、または会社の玄関に置いてあるような子供の身長くらいはゆうにあり動かすのは困難なアメジストらしい原石の塊だった。

これ、どう使うの?






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