飛ばされた私は

２.衝動的な私

玄関から飛び出し、左を見た。

　真っ直ぐ続く一本道の先には夕日でなのか不思議な色に染まった海がある。私は、履いていた靴を脱いで裸足になった。

あの、飛ばされた日のように。

海へ。

早く早く…もっと速く。

　私は、素足で地面を蹴って走り出した。まばらな、帰宅途中であろう人達を追い抜いていく。

　きっと今の裸足で走る私は、気ちがいにしかみえないだろう。


「ミオリ！」


　走り出していくらも経たないうちに大きな声で私の名前を叫ぶ人、護衛さんが追いかけてきていた。

　運動神経が普通の私が逃げ切れるわけがない。すぐに速度をを緩めた。

私は、また諦めたのだ。

そして自然に笑みが出る。

「何処に行きたいんですか？」

　荒い息をしている私とは対称に息を全く乱していない彼は、大きな怖そうな見た目と違い、落ち着いた穏やかな声で突然飛び出した私を叱りもせず聞いてきた。

「…海」

　次の瞬間、急に視界が高くなった。彼が私を抱えたのだ。

「何を」

抱えられて彼の表情が見えない。ただ低い声が、息が肩にかかった。

「行きましょう」
「あっ」

景色が急に動いた。すごい速さで。思わず彼の首に自分の両腕を強く巻きつけた。


奇妙に見えた一人の女は、男が加わり、一組の、不自然な男女が長い影を地面にうつし、走り去っていった。


海に向かって。