49 / 74
49.最下層へ
しおりを挟むメルベ様に会ってから二日後の現在。
一般人でも芸のある者は宴に呼び派手に行うパーティーという名の王様主催の酒飲み大会に参加した私達一行は、早々にその場から抜け出し目的地であるお城の最下層に急いでいた。
「お姉さんは怖くないんだね」
「そういうのはまだないかな。正直イメージと違って驚きはしたけど」
てっきり暗い洞穴や土壁みたいな道を想像していた私には、少し狭く快適とは言えないまでも真っ白なタイルが貼られたようなトンネルの道は予想外だった。
「そうかな。あっ、そこ高さがあるから気をつけて下さい」
一歩を踏み出す度にドレスの裾が足に絡まり次第に苛々しだした私に案内役のスフィー君が先程から気遣って声かけをしてくれていた。
「助かるわ」
お礼を言えば、彼の頬はあがった。
なんか、彼に対して一気に好感度が上がってきている私は単純かしら。
そんな事を思っていたら私の後ろから不機嫌そうな声が。
「何がお姉さんだ」
「君は、なんでさっきからスフィー君に文句ばかり呟いているの?」
「ち、違います! 文句なんて言ってませんよ!」
なんだか二日ほど前から不貞腐れているナウル君なのだ。
私には原因がいまいち分からず今に至る。そもそも男の子ッて何を考えているのかわからないのよね。
いや、まてよ。それとも私が歳をとったせいで理解ができないのかも。
「ふらついている」
「大丈夫ですか?」
「はい、なんとか。ありがとうございます」
ラジには、足元がおぼつかなくなってきたのをみられ、リアンヌさんには心配され始めた頃。
「ここから変わります」
スフィー君が足を止めたのは、もはや見飽きた真っ白い色の扉の前。
私は、数歩前にいる細い彼の背中に聞いてみた。
「スフィー君、この今まで歩いて来た道はやたら清潔過ぎて明るい道だったし、いくら特定の人しか入れないとはいえ誰にも遭遇しないのっておかしくない?」
そうかなというように首を傾けた彼は実に分かりやすい解説をしてくれた。
「僕達、この石が嫌いなんです。僕は成功したほうだけど失敗した奴らが来ないようになっています。まぁ、こんな場所に近寄りたい人なんていないんだけど」
なんか、淡々と話す様子に悲しくなるじゃないの。
「ヒトが来るのは仕方なくですね。この白くて明るさが保たれないと危ないから掃除する人はいますよ」
「…そっか」
本人から語らせるには良くない内容だったとちょっと後悔した。
「普通は、この扉から入るんですが、なるべく見つかるまでの時間があったほうがいいと思うし。あと、お姉さんがビックリしないようにこっちから入りますね」
そんな私の心なんて知るよしもない彼は、無駄なく進めているし異議も勿論ない。
*~*~*
「やっとイメージ通りかも」
「しっ。彼らは、目は悪いけれど耳はよいから気をつけて」
「あっ、ごめん」
つい口から出ちゃったよ。
だって、私のイメージって病院みたいな通路よりこんな感じだわ。
「更に狭くなります」
扉の横にある隠し扉に誘導された私達は、傾斜のある道を音をたてないよう進んでいるのだが、岩場を登るような道になり私は皆に目で文句を言われながらもドレスの裾を膝上で結びなんとも色気もへったくれもない格好だ。
「頭を低くして。下を見てください」
少し開けた場所に着いたら今度はほふく前進って…。聞こうにも声は出せないし、仕方なく彼の近くへついていく。
他の皆もスフィー君の近くへ私より遥かに素早い動きでたどり着いていた。
ああ、お姉さん疲れた。珈琲、勿論ブラックで一杯下さい。叶わぬ願いを抱きながらスフィー君の隣へ。
「あれは、人なの?」
見下ろした場所は、室内が暗くてもその異様な光景は充分過ぎるほどだった。
地面を這いずる生き物。
彼らは人なのだろうか。
強いなんとも言えない匂いと言葉ではない悲鳴や遠吠えのような声の中。
──あれは。
「リューさんっ…」
変わり果てた彼がいた。
1
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
くたばれ番
あいうえお
恋愛
17歳の少女「あかり」は突然異世界に召喚された上に、竜帝陛下の番認定されてしまう。
「元の世界に返して……!」あかりの悲痛な叫びは周りには届かない。
これはあかりが元の世界に帰ろうと精一杯頑張るお話。
────────────────────────
主人公は精神的に少し幼いところがございますが成長を楽しんでいただきたいです
不定期更新
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
皆で異世界転移したら、私だけがハブかれてイケメンに囲まれた
愛丸 リナ
恋愛
少女は綺麗過ぎた。
整った顔、透き通るような金髪ロングと薄茶と灰色のオッドアイ……彼女はハーフだった。
最初は「可愛い」「綺麗」って言われてたよ?
でも、それは大きくなるにつれ、言われなくなってきて……いじめの対象になっちゃった。
クラス一斉に異世界へ転移した時、彼女だけは「醜女(しこめ)だから」と国外追放を言い渡されて……
たった一人で途方に暮れていた時、“彼ら”は現れた
それが後々あんな事になるなんて、その時の彼女は何も知らない
______________________________
ATTENTION
自己満小説満載
一話ずつ、出来上がり次第投稿
急亀更新急チーター更新だったり、不定期更新だったりする
文章が変な時があります
恋愛に発展するのはいつになるのかは、まだ未定
以上の事が大丈夫な方のみ、ゆっくりしていってください
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる