37 / 74
37.ラジウスSide
しおりを挟む「とりあえず目的地付近で待ちましょう」
「ああ」
「ラジウス様」
「ああ」
パァン
「情けない。しっかりなさい」
「リ、リアンヌ様!」
「よせ。俺が悪い」
ラウルがリアンヌに向け剣の柄に手をかけたのを見て再び制した。
「悪い」
彼女は、上の空の俺の頬に軽いとはいえない衝撃をしかけ、更に二発目をくらいそうになり、それを術ではねかえした時点で俺はやっと我にかえったのだ。
こんな事で動揺を態度に出すなど、戦だったらどうなる事か。
明らかに私の失態だ。
あぁ、どうやら俺はユラに相当溺れているらしい。
「ククッ」
「ラ、ラジウス様?」
思わず漏れ出た笑いにナウルは気味悪がっているようだ。私も自分で驚きだ。
さて、どうするか。
「キュウ…」
ダーウを海面に一時停止させ、海の魔獣を倒しながらも、小さなヒュラウは、己の主を海に突き落としてしまった。
ノアと名付けられたヒュラウは、攻撃的な態度を一変させ、リアンヌの腕の中で小さく身を縮めている。
「なるべく早めに彼女を見つけ合流しなければならない」
リアンヌの言うように、地の国に入る前にある街は、情報ではかなり規模が大きく歓楽街もある為、治安は場所によっては悪いだろうが、出入りが多いという事は目立ちにくいだろう。
「地に入る前、確か街は、バージュと言ったか。そこで待機する。リアンヌ、街に入る前に髪の色を変える。それと俺の魔力は高すぎ目立つからカバーをかけてくれ」
「カバーって、ラジウス様の魔力を封じるのですか?そんな事が可能なんて」
ナウルが知らないのは当たり前だ。
「我が国でソレを使えるのはリアンヌだけだ。しかも最大で2日が限界だろう。それに全部ではなく5割ほどだ。多少の時間稼ぎにはなるだろう」
一度かけると解くことが出来ない為、リアンヌが念をおしてきた。
「よろしいのですか?」
「街にいる間だけだ。それに剣がある」
そう易々と殺られるつもりはない。
「ユラは、無事か?」
「耳飾りに施した術をたどった限りは、体調に変化はないようです」
「えっ、リアンヌ様は、そんな事も事前に?」
「俺が最初に彼女の護衛と監視を命じたからだ」
ナウルは、監視と聞き驚いているようだが、今でこそ彼女自身は危険人物ではないと周知されている。
だが初期段階での監視は当たり前である。今回は、そのおかげで彼女の無事がわかるのだから無駄ではなかっただろう。
「ひとまずバージュへ向かう」
「はい」
「ハッ」
俺たちは目的地へ移動し始めた。
*~*~*
「ラジウス様!あれは」
一夜明けて俺達はバージュの入り口に近い飯屋で少し遅い昼食をとっていた。
室内は混みあっており、外に出された壊れかけた木の椅子に座り、入り口がよく見える場所にいたのだが、いち早く気がついたのは、ノアとナウルだった。
ちょうど街へ入る小柄な女。
髪の色が茶色に変化し、布を頭からかぶり表情はまだよく見えないが、ユラに間違いない。
俺達は食事もそこそこに立ち上がり、彼女の元へ近づく。
その時、ユラが顔を上げたために、彼女の楽しそうな顔が見えた。
──誰だあれは?
彼女は、一人ではなく二人の男と一緒だった。
いや、片方は見覚えがある。
片方は……風の国、ヴァーリアの王子だ。
ジリッ
どこかが酷く痛む。
──これが、嫉妬というやつなのだろうか?
1
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
くたばれ番
あいうえお
恋愛
17歳の少女「あかり」は突然異世界に召喚された上に、竜帝陛下の番認定されてしまう。
「元の世界に返して……!」あかりの悲痛な叫びは周りには届かない。
これはあかりが元の世界に帰ろうと精一杯頑張るお話。
────────────────────────
主人公は精神的に少し幼いところがございますが成長を楽しんでいただきたいです
不定期更新
皆で異世界転移したら、私だけがハブかれてイケメンに囲まれた
愛丸 リナ
恋愛
少女は綺麗過ぎた。
整った顔、透き通るような金髪ロングと薄茶と灰色のオッドアイ……彼女はハーフだった。
最初は「可愛い」「綺麗」って言われてたよ?
でも、それは大きくなるにつれ、言われなくなってきて……いじめの対象になっちゃった。
クラス一斉に異世界へ転移した時、彼女だけは「醜女(しこめ)だから」と国外追放を言い渡されて……
たった一人で途方に暮れていた時、“彼ら”は現れた
それが後々あんな事になるなんて、その時の彼女は何も知らない
______________________________
ATTENTION
自己満小説満載
一話ずつ、出来上がり次第投稿
急亀更新急チーター更新だったり、不定期更新だったりする
文章が変な時があります
恋愛に発展するのはいつになるのかは、まだ未定
以上の事が大丈夫な方のみ、ゆっくりしていってください
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる