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1.償えない罪を犯した日
しおりを挟む「何処、ここ?」
友達の美咲を待っている間に寝落ちた記憶はある。
「夢…じゃない?」
ウォー
ガキンッ
怒号と地響き?
「いつの間に外にいるの?しかも砂埃で周囲が見えない……あ」
いきなり茶色の景色が消えた。
「えっ?」
視界が開けた、そこに見えたのは甲冑の男。何か光るそれは、振り上げられた──剣?!
ガッ
「つ!」
とっさに横に転がれは、数秒前までいた地面に当った剣。
「なによ、なんなの此処は!」
いまや完全に周囲が見えた私は、震えた。
だだっ広い平野は、武装した人達が切り合っている。
いったい何人いるの?
「お前一人か?此処まで入り込めるとは褒めてやろう。しかし奇妙な服だな」
私を狙った二メートル近い男は、奇妙な生き物を見るような目つきで見下ろしてきた。
口調は、まるで世間話をするかの様に落ち着いているが、目は笑っていない。
落ち着け。周囲を今を把握しろ。
「あん、誰だコイツ?」
この人、ヤバい。
新たに進み出てきた男を見て背中がゾワゾワしだす。
「誰でもいいじゃん。一人殺る事に金が貰えるんだ。さっさと殺らないとっすよ」
また別の男が喋りだしたと同時に唸るような音が鳴った瞬間、私は、近くにいたひ弱そうな男を盾にした。
「グハッ」
私の代わりとなり、その男はまるでアニメのように血を吹き出し、ゆっくりと倒れていく。
私には、それを眺める間なんてない。
男が倒れる前に腰にある突き出ている柄を握り彼には悪いが蹴り飛ばしながら思いっきり引き抜きぬけば、予想していたより重く、一瞬よろめいた。
──コレ、本物の剣だ。
「このガキッ!グッ」
背後から襲ってきた甲冑男の丁度首の隙間に私の剣がズブリと挿し込まれた。
見開かれた目は、驚愕していた。
「なっ!貴様ぁ!」
「殺れ!」
二人目、これで三人。次、四人……五人。
不意に、今はいない祖父の言葉を思い出した。
『なぁ、爺が思うに人を殺めるってのは理性があるから普通はぶっ刺す時にブレるわけよ。逆にな、何回も刺すやつは、余程の恨みでもなきゃぁやらねぇ。または精神がまぁ、あれよな』
爺ちゃんの言うことは、だいたいが一理ある内容ばかりだった。
だけど、その項目に一つ追加したい。
死にたくなければ、殺るしかない。その一択だけなんだと。
──あぁ、何人葬った?
もう、手にかけた数を忘れた。
「救世主!敵は撤退した!」
きゅうせいしゅ?
習っていた空手の先生に似た、その腹に響く声のほうに目を動かせば、馬に乗った金髪が話しかけてきたようだ。
折り重なる死体の中で馬って走れるの?
「もう、大丈夫だ」
何がどう大丈夫なのよ。
「周囲を見ろ、我が軍しかいないだろう?」
切っ先は下げないまま、視線だ
けを再び動かせば、立っているのはどうやら、青い旗のほうだった。
「すまない。座標がずれ敵陣の場所に召喚されてしまったようだ」
しょうかん、てきじん。
「……召喚って事?」
「ああ」
「私は、貴方のせいで、こんな事になったの?」
「そうだ」
この場所が何処かもわからない。だけど、一つハッキリと言えるのは。
「これが現実なら、貴方のせいで私は人殺しになり、人生が狂ったんだけど」
どうしてくれるわけ?
──絶対に、許さない。
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