中途半端な私が異世界へ

波間柏

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56.ガインでの夕食は

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 ガインのお城へ着くとすぐに夕食のお誘いがきた。

予想通りである。

 お相手は宰相さんと、何故かデュラス王子。

王子、正直いらん。



***

「いやぁ~極楽だぁ」

 ずっと着の身着のままだったので、今日借りたお部屋に付いているお風呂に入らさせていただき、服もお借りした。

勿論、お風呂は使い方をレクチャーしてもらい1人で入浴。

これ一択しかない。

「やっぱり着方は教えてください」

 申し訳ないが、着替えは複雑で分からない為お願いする。

「迎えに来たぞ」

デュラス王子が来た。彼は、私を上から下まで観察し一言。

「まっいいんじゃね」

 及第点はもらえたらしい。借りたドレスは赤。

 確か夜会の時も赤系だったような。日本にいた時に赤なんて着たことなかったのに。

 しかも、自分で言うのもなんだけど悪くないんだよね、これが。

 ガインのドレスは薄い生地を重ね合わせたもので、コルセットのような物もなく、ヴィラスより楽だった。

やっぱり暑い国だからかな。

 長袖だけど透けていて手首の方へむかうほど幅が広くなっていき、ヒラヒラしている。胸元は浴衣の様にあわせになっていて、そのあわせは金色で縁取りされ、同じく金色の幅が太めなリボンを前で蝶々結にする。

「デザイン可愛いいよね」
「服だけな」

こいつは。

『しばくぞおらぁ』

 言ってみたい台詞だが、この王子と同じになりたくないので心のなかでオラァと言う私は、大人だ。

「ぼーとしてんな。行くぞ」
「ハイハイ」

 靴は先がとがったヒールがないぺったんこ靴で色は深みのある赤に同じ銀糸で可愛い花の刺繍がされている。高さがなく、歩くのが楽ちんで嬉しい。

「静かじゃん」
「私を何だと思ってるんです?」

君が喋りすぎ。

 青い食材ばかりだったらどうしようと思いながら王子の後をついていく。

「お洒落」

 たどり着いたのは広大な庭に建つ建物。五角形の屋根がありそれを支えている太い柱。

それらの柱には色彩豊かな草木の絵が描かれていた。壁はなく代わりに薄い透ける生地がカーテンの様に下がっている。

 ようは、今夜は庭を眺めながらのお食事会か。

 その為なのか所々に照明、魔法石が庭に置かれているのか幻想的で。漂う華やかな香りは、ハイビスカスに似た大きな花からのようだ。

「靴は脱がずにお上がり下さい」

 これまた妖艶な美女が先導してくれ、足を踏み入れば20畳くらいの場所に絨毯のような厚みのあるマットが敷かれ、その上に靴のまま座るよう言われ、側には寄りかかれるような大きなクッションが所狭しと置かれている。

 席の前には既に沢山の料理が並べられていた。

「さて、お口に合いますかな?できるだけ青い食材を使用しないように命じておいたが。」

三角形の様な状態で席に着いている宰相さんに話しかけられたので即答した。

「大丈夫です」

この宰相さんは私が転移した時、王様の近くにいて血圧が心配になるくらいキイキイ怒っていた人だ。

 50歳は過ぎていそう。背はとても小柄で、周りは背が高い人が多いので圧が少なく感じなくもない。

「では、頂きます」

とりあえず温かいうちに食べようと、既にバクバク食べているデュラス王子の食べ方を見つつ、まず黄緑色のスープを木のさじですくい口に入れようとした時。

「使者どのは、改革でも行うつもりかね」

 最初から直球な質問が宰相さんから飛んできた。

とりあえず飲ませてよと話す前にスープを口に入れ、ゆっくり飲み込んだ。

これは当たりだ。

 見た目は青汁にしか見えないけれど、味はコーンスープにそっくり!

濃厚でとても美味しい。

 もう少し飲みたいけど、仕方なく匙を置き腕輪に触れ三人だけが入るイメージで防御と音遮断と小さく呟く。

 その前に自分に強力な防御膜をはってあるので、私だけ二重になっているけどね。

改めて宰相さんに視線を合わせる。

「ただの社会勉強です」
「ほう、役に立ちそうかね」
「元の世界では、全く」

もう一度言いたい。


 自分で言うのも何だが、よく働いた私は、人風呂浴びリフレッシュしたとはいえ疲れていた。

「腹の探りあいは疲れるのでやめませんか?」
「何?」

 器用に片方の眉だけ上げる宰相さん。

私も直球で聞こう。

「貴方は私の敵ですか?」

 さあ、本日最後の仕事の始まりだ。

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