中途半端な私が異世界へ

波間柏

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53.戦とは

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 私の杯もどきという言い方が悪かった。

 説明しなおしたら王子様が聞いてきてくれてガインにもあるらしい。

 ミリーさんと舞の練習の際私は近隣国について少し教えてもらったけど、さわり程度だ。

「なんだっけ」

この世界、私がいる近辺の信仰は比較的自由である。

 まぁ、信仰は国により偏りがあるようで。ヴィラスール神、ヴィラが最初に降り立った場所がヴィラスとされているので、やはりヴィラスが一番ヴィラを信仰している人口が圧倒的に多いと言っていた。

 ガインは、ヴィラも信仰しているけれど、人型ではなく神獣ガイヴァル、国旗にある牛のような動物も信仰しており、この神獣は力を表している。

 確かに国旗を見るとそんな感じが伝わる。実際に存在するのかミリーさんに聞いたら、わからないとの事。

「今度、色々まとめてヴィラに聞いてみようかな」

 そもそも私にとってヴィラは、ちょっと残念な美少女という感じで、神様と崇める気持ちは全くない。

「とりあえず進めていくか」

 ヴィラスに戻る期限も決めてしまったので効率よく動きたい。

「私の行動制限がないなら街中見学で貧富の差や学校も見たいかな。次に農作物、特産品。あと杯もどき。遠い場所からよろしく」
「なんで俺が」
「案内人なんですよね?」

あとは。

「宰相さんか陛下と話をしたいけれど、向こうから夕食のお誘いきそうだから、いっかな」

 バスツアーのように行く場所を決めてみたが悪くないはず。

「すぐには無理だ。俺だけじゃ無理だから待て」

 頭をガシガシ、物凄く面倒そう。でもダート君に似ているデュラス王子は、なんだかんだ言って手配してくれそうな気がする。

「よろしくお願いします?」

 お世話になるので頭を下げたらまたガシガシ頭をかいている。

「カエデ相手だと調子狂うんだよな~」

ほら、名前で呼んでくれた。
意外に良い奴。

 私は、何故戦が起こるのかがわからない。

 土地が痩せてれば他の国を手に入れればいいの? それとも王様が単なる制圧をしたいから?

 あぁ、海の近くの国を落とせば漁業や海路も得られ更なる侵略、国が発展していく事ができるとか?

 授業で習ったのかもしれないけれど、忘れちゃったよ。

 今、私の頭の中は、体内の回路やら菌や人の部位、細胞の名前、調理方法、病気の際の食事療法そんなものばかりつまっている。

 テスト前にしか勉強してこなかったツケが今きてる気がしてならない。

「行けるぞ」

 暫くして戻ってきたデュラス王子の声で考え事を中断する。色々見て考えて出来る事をするしかないよね。

あれ?

 私この世界で結構頑張って活動してないかな。

 これらの事を履歴書に書けたらいいのに。そうしたら一社くらい採用してくれる所ありそう。くだらない事をふと思い笑ってしまった。

うん、まだ笑えてる私。

「カエデ! おいてくぞ!」
「ハイハイ」

 さて、もうひと頑張りしますか。私は足早のデュラス王子の後を追った。



✻~✻~✻


「怖いし日差しがキツい」

ヒュオ~

追記で風も強いです。

「ギャー」

 違うよ!私が叫んだわけではなく下にいる生き物が鳴いたんです。

 そしていま現在、何処にいるかって? 

空なんですよ。

 一番遠い場所からという私の要望で、転移で先程酔った私は、空から行くことになったけど。

「大丈夫ですか?」

背後から気遣う声。

 もちろん馬でさえ乗れない私は一人ではなく背後にはイケメンさんが手綱を持っている。人と近いと落ち着かない。

「なんとか」

 正直に答える。異世界イコールお伽噺なイメージをしていた私は、カッコイイ竜とかを想像していたわけですよ。

実際?

怖いの一言です。

 この乗らせて頂いている生き物は、スゥーリーと言うそうでガインにしか生息しておらず、見た目と違い温厚な性格らしいです。

「デュガーと言います」

紹介された子の外見はトカゲにコウモリの羽をつけたような感じである。

 大きさは、象さんくらいかなぁ。体はゴツゴツと硬い。浮遊感は、高度を保っているからか思っていたよりは大丈夫。

ただ、日差しと風が半端ない。

 それでも後ろのイケメンさんが、緩和させる魔法を施してくれているらしい。そして魔法使いさんと会うのはモウル先生と彼で二人目だ。

「もう少しで着きます」

 高度を下げていくので気をつけて下さいと言われる。その注意の直後一気に下がり胃が浮くような感覚がきた。

私は絶叫系は乗れないのに!

「だ~!」

 出しはいけないような声が思わずでた。

「プッ」

 私は聞き逃さなかったぞ。

 身動きは無理なので首をぐるりとできるだけ回した。

「……失礼致しました」

 馬の二人乗り状態の為、イケメンの顔のドアップを見てしまった。

 長めの金髪の前髪の間から見えるのは、薄いグリーンの瞳、肌は褐色だ。

 なんだろう、またラウさんとは違う色気が漂っている。

「どうかされましたか?ご気分でも?」

ついじっと見すぎました。

「いえ、イケメンさんのオーラが強すぎて」

ついポロリと口から出る。

「イケメン?」

通じないらしい。

「つまり、とても見目麗しいという事です。というか私、なんでこんな事を説明しなきゃいけないの? 」

 疲れていると、つい思った事が口にでちゃうんだよね。クスクスとイケメンさんは笑っている。

「麗しくはないと思いますが漆黒のお姫様に褒めて頂き光栄です」

 忘れていましたとそのイケメンさんが自己紹介を始めた。


「紹介が遅れてしまいました。私は、ザスール・カルバーと申します」

呼び名はイケメンさん、じゃ駄目かなぁ。

 ただでさえ人の名前を覚えられない私には、この世界の人達の名前を覚えるのがひと苦労だ。骨や臓器は覚えられるのに自分でも何故なのかわからない。

そして姫じゃないし。

「着地します」

 イケメン、ザスールさんの声とともに軽い衝撃がきて、つい目を閉じた。

「もう大丈夫ですよ」

 ザスールさんの声でそっと目を開ける。

「凄いですね」

 そこは見渡す限り白い砂漠だった。

 ザスールさんに降ろしてもらい改めて周りを見た。飛んでる間怖くてあまり下を見ていなかったんだよね。

 いつから、こんな真っ白だったんだろう?

 ちゃんと見ておけばよかったな。後から別のスゥーリーに乗っていたデュラス王子もやって来た。

「カエデ、これがここでとれる」

投げてきたのは。

「ギャッ」

 変な手触りに思わず放り投げた。投げて落ちた場所を恐る恐る見てみると。

 それらは、白いヌメッとした小さいナメクジもどきと水晶に似た透明な石だった。

「貴重なのに!投げるなよ!」

 デュラス王子が先に投げたんですよ?

「その白いリュガは、この場所にしか生息していない」

 デュラス王子はひょいとナメクジもどきをつまむ。

「これは、病に効果があり、乾燥させ粉にして使用され、貴重なものだ。そのラーナと呼ばれる石は魔法石で両方この場所でしかとれないな」

 落ちた石を掴み私に投げてきた。再度受け取りじっくり観察してみる。多面体で少し曇ってはいるけどきれい。

「伝説のような強力な魔法石とは違い、それはあそこにある白い岩から採れ、光を長い年月をかけ溜め込み暗い場所に置くと光る。それを利用し夜間室内で使用されているんだ。ああ、確かヴィラスにもかなりの量を輸出しているな」

 よく見ると砂漠のあちらこちらに白い岩がある。私は、この砂漠の広さを見て気になった。

「この砂漠って国のどれくらい?」
「六割強だな」

半分以上砂漠ってきつくない?

「もーいいか?後でまとめて質問あるならしろ。時間がないから次な」

考える暇もなく、空飛ぶスゥーリーへ誘導されていく。まるで王子じゃなくてバスガイドさんだよ。

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