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52.やはりトップは違うな
しおりを挟む「弱く戦闘能力のない娘と聞いていたが」
まだ余裕たっぷりの王様。
あのですね。私、かなり怒っているんですけど?
ルークさん達は、前より色々話をしてくれるようになったけれど、刺客の人達のせいでラウさん達だけでなく他の人も怪我を負ったりしてるのを隠していた。
私は、気づかれたくない空気を察知し、でも無関心ではイられず。その結果、こっそり夜中にばれない程度にゆっくり、けれど確実に治癒するように力を飛ばしていた。
「私、余興は苦手なんですよね」
ゆるく話しながらも手のひらに更に力を込め、片手づつ作った渦を手のひらを合わせ1つにする。
この一つに合体させるのが意外と難易度が高く、磁石の反発のようなんたよね。
「こんなもんかな」
自分で作り出してなんだけど、すごい風。
王様の頭上に下がっている国旗がははためき耳障りだ。どこかで花瓶だろうか、割れた音がする。風が私の髪を更に巻き上げ簪がシャラシャラ奏でる中彼を見た。
最初が肝心だ。
政治的に利用されないように先に釘を指しておかないと、本当に戦になってしまう。
私が理由でなんて事になったらなんて胃薬飲んだくらいじゃ効かないくらいのダメージを負いそうだ。
「私は、誰にも支配されない。利用されるにしても自分で決めます」
今度は、私が首を傾げ両手の渦を陛下に向けた。
「まだ、ヴィラスに人を派遣します?」
まだ刺客送るなら今、あなたごと消すという意味をこめて問う。
「おぃ!」
王子様が私の肩を掴もうとするけど。
バチバチッ
「イッ」
陛下から目を離さず王子様に言う。
「邪魔」
「クックッ気が強い女性は嫌いじゃないよ。」
彼は、やっと肘から顔を離した。
「使者殿のお好きなように」
降参のような手振りをするも何処か芝居臭い。
「派遣の件も考慮しよう」
私が作った渦は恐らく本当に国を滅ぼせる。
その証拠に周りの兵士、後から力に気づいたか魔術士であろう人達が来たが顔が皆真っ青だ。
…最後迄王様の口元の笑みを崩すことができなかった。
どんな人物にしろ頂点に立つ人は凄いわ。
まぁ、とりあえずはこの後に書面に残してもらえればよしとするか。
「言った言わないは後に困るのでお手数になりますが至急書面にして下さい」
「わかった、わかった」
私は、彼の面倒そうに頷くのを確認してから渦を消した。
「理解して頂けてなによりです」
後ろを振り向き他の人に言う。
「部屋、散らかしてすみません」
片付ける手間をかけさせてしまうので頭を下げちゃんと謝った。
「面白いな。戦場で恐れられた氷の騎士ルークがご執心なだけある」
ルークさん、おめでとうございます! あなたもサムいあだ名がついてましたよ。
「丁重にもてなせ」
皆にビクビクされながら休憩させてもらう部屋に案内してもらい、お茶を入れてもらった。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
一口飲んでみるとジャスミンティーのような味と香り。
温かいお茶はホッとするな。
念のため疑うのは悲しいけれど、自分に毒は効かないように呟く。
祝福の力は自分に使用できない。
ただし自分を守ったり、攻撃はできるのだ。横にだらしなく立つ人に声をかける。
「どうしてデュラス王子がいるんですか?」
「親父に案内しろって言われたんだよ!好きで居るわけないだろっ!」
そう怒鳴らなくても。
「気が短いんですね」
「アンタに言われたくない!」
「親父にあれだけやらかしたのアンタが初だぜ。よく首つながったな」
少し見直したみたいな表情の王子。
「まぁ、あのドデカイのぶっぱなされたら流石の親父もまずいしな」
「アンタじゃなくてカエデです」
私はこくりとお茶を飲みながら先程の事を思い出す。
「気づいていたよ」
「あ?」
「私がやるはずないって」
最初から本気じゃないと気づいていただろうけど、私がどれくらい力があるのか、どんな人間なのか確認したかったのだろう。
彼にしてみればお遊びだ。
でも、周りには力を見せる事で牽制になったし、よしとする。
さて、ここからだ。
あっ先に聞いておく事が。王子様にお願いしておく。
「魔術でヴィラスに伝言できるかな?」
「可能だが何て伝えるんだ?」
「う~ん、明日か明後日の朝には帰ります」
「帰れると思ってるのか?」
帰るに決まっている。最後は家に帰るんだから。
お茶を飲み終わり、よいしょっと立ち上がり王子に聞く。
「さて。まず、杯もどきってガインにある?」
「はぁ?」
口に飴いれたあげようかな?っていうくらい王子の口が開いた。
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