中途半端な私が異世界へ

波間柏

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45.知識は意外な場所で

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 打ち合わせの為、夕方に神官長さんが会いにきてくれる事になった。

「今日は」

 先に来ていた神官長さんに挨拶をした。今日は、会議室のような部屋を借りてのお話だ。

 言われる前に防御と音遮断はかけておく。神官長さんの隣には、初めてお会いするミリーさんという女性もいた。神官長さんの気の許せる友人らしい。

「今後、数回に分け進めていきたいと思います。また申し訳ないのですが、私が頻繁に伺えない為、間にミリーを通して行って行きたいと思います」

 美人でクールなお姉さんにまずはご挨拶かな。

「木ノ下 楓です。よろしくお願いします」
「ミリーと申します。カエデ様とお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「勿論です」

 様も付けないでと言いたいけど、なんとなく無理な気がして諦めた。

「彼女は孤児達への資金援助もそうですが、人手が足りない時に手伝いにきて頂いているので神殿への出入りも不自然ではありません」

 官長さんが話している間にミリーさんと目が合けば、彼女は、にっこり微笑んだ。30代後半くらいかな。レモンイエローの髪に大きなグリーンの瞳。

そしてある人物に似ている。

「家のバカ息子のシャルドがお世話になっております」

やっぱり。そっくりです!

 シャル君は完全に美人なお母さん似だ。

「付け足しになりますが、彼女から礼儀作法、ダンスなどを教わって下さい」
「礼儀作法、ダンス…」

どうしよう。1番苦手かも。

「という名目のもと、舞や他の打ち合わせをお願いします。もちろん余裕ができればある程度の礼儀作法を知るのもよいかと思います」

そ、そうだよね。皆凄く優雅にお話して、夜会だってダンスが上手だった。

「わ、分かりました。努力します…」
「大丈夫ですわ。少しずつこなしていきましょう」

 クスッと神官長さんの隣で笑うミリーさん。

お手柔らかにお願いします!

「それで衣装ですが」

 神官長さんに聞かれ私は書いておいた大雑把な絵を見せる。

「まあ。我々の服装とはずいぶん違いますわ」
「あの保管されていた服と似ていますね」

 二人は、私が書いた絵をみて感想を口にした。

「今はあまり普段着ませんが、暑い季節にあるお祭りや、生地や帯、作りも少し違いますが成人した時、結婚式など行事の時に着ます」
「私が作れるのは、学校の授業で作った浴衣だけです。夏のお祭りに着たりするものです」

 私が通う学校の一年生は、体育や英語の他に昔のたしなみの名残で被服の授業があり浴衣を作らされる。

 最初、裁縫なんて大の苦手な私は、食物科学にまったく関係ないじゃん!と物凄く嫌だった。

 でも、知識は意外な所で役にたつのかも。私は神官長さん達に説明していく。

「反物、一枚の薄く長い生地から作ります」

 マリーさん達に事前にお願いして長い生地を手に入れ、ある程度切っておいた物を見せる。

「お人形サイズの状態、見本で切っていきます」

 長い反物に似たてた生地を折り返して腺を引き、切っていく。

「折り返して切っていく事でセットのパーツができます。これを縫っていくのですが、今は無理なので全体像が判るように並べますね」

ざっとテーブルに並べていく。

「昔の人は、古くなると糸をほどき他の切れてしまった場所にその生地を使い繕いをし、更に古くなると最後は雑巾として使ったそうです」

 浴衣は大体縫う前は長方形の生地だ。

ほどけば再利用しやすい。

 昔の人って凄いと私は先生から話を聞いて思ったものだ。

「よいのではないかしら」

ミリーさんが賛成してくれた。

「そうですね。インパクトはありますね。ただ、これから縫製をカエデ様がするのは難しいかと。舞の練習もありますし」

確かに!

「それなら私のドレスを作っている者に頼みましょうか。口も固いわ。そうだわ。使者様の侍女達にも手伝ってもらいましょう。彼女達はかなり優秀と聞いているわ」

 ノリノリになってきたミリーさん。私もその提案は大賛成である。ど素人だし、裁縫は嫌いなんです!

「では、そうしましょうか」

神官長さんからOKが出た。

「舞については、1度見本をお見せし事前にミリーにも覚えてもらいましょう」
「分かりましたわ」

 なんだか忙しくなりそうな予感です。

あ、重要な事が。

「あの、その舞はいつまでに覚えれば」
「まだ確定ではないのですが、20日後くらいをメドに」

 20日間で?! 早くないですか?!

顔にでていたのだろう。

「近隣国も招待するのに異例の早さです。まあ、急なので代理を皆たててくるでしょう。なぜ期間が短いかは、今回はカエデ様の安全の為早いほうが良いという理由からです」

私の為と言われたら、文句言えないじゃない。

「…努力します」

それしか言えなかった。

 夕食後、別に逃避じゃないんだけど、習慣気味になってしまい、カップを左手ランプを右手に持ち庭に出た。

 ベンチ迄続く石畳をぶらぶら歩く。上を見ると半月よりも欠けている。ベンチへ近づくと。

 そこには先客、ルークさんがいた。


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