中途半端な私が異世界へ

波間柏

文字の大きさ
上 下
32 / 72

32.女子会

しおりを挟む

 なんと目が覚めたらお昼だった。

 とりあえず、軽く食べソファーに座っている現在。

 だって流石に昨日の今日で外出できないよね。


 昨日の夜を思い出す。ラウさんの魔法も不思議だったなぁ。きっと顔色が悪いからと眠らされたんだろうけど、自分の意思に関係なくされると気分はよくない。

「うん、耳触りまくろう!まだモフってない!」
「カエデ様」

 マリーさん達が花や可愛いテーブルなどを運んでいる。

「模様替えですか?」
「いいえ。よろしければ昨日できなかったお茶会をこれから外で、こちらの庭になってしまいますが。いかがですか?」

えっ、まさかの。

「是非! 昨日できなくて残念に思ってたので嬉しいです!」

 忙しいだろうに。本当に優しいんだよなぁ。

 最近、私の部屋近くの通路で警備している騎士さん達も声をかけてくれたり、夜会での力で古傷が治ったとわざわざお礼を言いに来てくれる騎士さんもいる。

 まぁ、私じゃなくてヴィラの力だ。

 しかも使者だと主張する為に使ったのだ。後から考えると自分は結構勝手な人間なのかもしれないと思った。

「では申し訳ないですが、見学させて下さい」

 忙しそうなマリーさん達を見て手伝いたいと思ったけど邪魔になりそうなのでやめたのは正解な気がする。



✻~✻~✻




「どうぞ」

 ニコニコしてアリヴェルちゃんが呼びに来てくれた。

「可愛い~。そして美味しそう!」

 白いカントリー風の花の形を象った木の円形テーブルだ。同色の椅子の背の上部も花びらの形である。

 テーブルの中央には、パステルカラーの花が花瓶に生けられ、その周りにはクリームたっぷりのプチカップケーキ。

 可愛いケーキやクッキーが沢山お皿に並んで華やか~!

「喜んでもらえてよかったですわ」
「花は警備の騎士達からです」

騎士さん達まで!

 ありがとうございます。後程お礼を言わねば。

皆で席に着き好奇心いっぱいな視線が交差する。

「「では女子会を始めましょう」」

 私がまずした事は、防御も大事だか一番大事なのは防音だ。

結果はどうかって?
いや~、かなり盛り上がった。

「マリー様は、騎士団長様をお慕いしてるんですよね?」

 ベルさんがニヤニヤしながら話す。

「ベルはラウニー様でしょ?」

 言われたマリーさんは、ベルさんに反撃だ。

って、まさかのラウさん?!

「ちょ、ベルさんはチャラいのが好みですか?!」

つい聞いてしまう。

「ラウニー様は、真面目な方ですわ!」

 ベルさん顔赤いですよ。本気の恋なんですね。

 ラウさんが真面目な人かは怪しいけど、本気なら応援しますよ!

「アリヴェルちゃんは?」

 金髪美少女はかなりモテるだろう。

「興味ないです」

ニッコリ。

これ以上の話はありませんというオーラ全開だ。

 おかしいなぁ。確か一昨日は乗り気だったのに。

「アリヴェルは、昨日お父様から婚約の話が上がってきて少し苛立っているのですわ」

 クスッとマリーさんが困ったように笑う。

「えっ早くないですか? アリヴェルちゃんかなり若いよね?!」
「アリヴェルは16歳、もうすぐ17歳で成人ですので早いというほどではないですわ。特に貴族の中でも位が高いほど早く決まります」

マリーさんが説明してくれる。

 日本でいえば高校生だ。私は、その頃何をしてた?

うん。部活三昧だった。

婚約なんて考えられない。

「ちなみに、お相手は…」
「言いたくありません」

バッサリ。

そんなに嫌なひとなの? なんか、余計に気になってしまう。

「カエデ様はどうなんですか?やっぱりルーク様ですよね?」

アリヴェルちゃんの反撃だ。

「ルーク様、夜会の時には黒い留め具を着けてらしたものね」

 ベルさんがニヤニヤして言う。確か前にもそんな話が。

「その、黒い色をルークさんが着けるとどうなるんですか?」

あれ?

三人が凝視してくる。

「……相手の髪や瞳の色を身につけているのは既婚者か恋人がいるという印ですわ」

マリーさんが教えてくれる。

「はぁ?!恋人 ?!」
「カエデ様の国では違うのですか?」

 ベルさんが不思議そうに聞いてくる。

「私の国は大多数が暗い茶色の目に黒髪です。髪を染めたり瞳の色をオシャレの為に変えたりはありますけど。あ、恋人や結婚したりするとペアの指輪を着けたりはします」
「まぁ。てっきりお着替えの際何もおっしゃらなかったので」

えっ…。

「リボン!ルークさんの髪の色だった!」

 ぎゃ~! あんな大勢の前で最悪じゃない!頭を抱えだすわたしをスルーする皆。

「てっきりお互い一目惚れだったのかと」
「「ロマンですわ」」

うっとりな表情のマリーさんとベルさん。

「あやかりたいです」

遠い目のアリヴェルちゃん

皆、間違っているよ。

「で、どうなんですか?もう恋の告白などされてたり。首筋もルーク様ですよね?」

ベルさん、目がキラキラです。

「うーん。本気だみたいな事言われましたけど…」
「「キャー!」」

マリーさんとベルさんは、どこか別の世界にいるようだ。

「胸いっぱいです」

 アリヴェルちゃんは、なんでそんなにげんなりとした顔なの?

そして皆興奮し過ぎですよ。

「「「それでカエデ様は」」」
「正直わかりません」

 過保護で、たまにブラックだけど、でも優しいよ。

あの夜、色気ダダ漏れの彼にられない人がいたらお会いしたいわ。

でもね、私はこの世界の人間じゃない。

 お母さんやルーク、叔母達、少ないけど、大切な友達は。

この世界にはいない。

 この世界にいるかぎり会えない。

「ゆっくり焦らないで流れに任せるのも良いかと思いますわ」

 マリーさんが見透かしてるかのような言葉を言ってくれる。

「はい」

素直に返事が出た。

 あ、急に空気が動いたような感覚が。

 客間の方向からシャル君が顔を出しているのが見えたので張っていた膜を解除すると。

「楽しんでいる所にすみません」

 シャル君が申し訳なさそうに言うけど、なんだろう?


「神官長様と宰相様がお呼びです」

 あぁ、楽しい時間はあっという間なのは、異世界でも変わらないなぁ。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

面倒くさがりやの異世界人〜微妙な美醜逆転世界で〜

波間柏
恋愛
 仕事帰り電車で寝ていた雅は、目が覚めたら満天の夜空が広がる場所にいた。目の前には、やたら美形な青年が騒いでいる。どうしたもんか。面倒くさいが口癖の主人公の異世界生活。 短編ではありませんが短めです。 別視点あり

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ~皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます!~

南田 此仁
恋愛
 突然異世界へと転移し、状況もわからぬままに拐われ愛玩奴隷としてオークションにかけられたマヤ。  険しい顔つきをした大柄な男に落札され、訪れる未来を思って絶望しかけたものの……。  跪いて手足の枷を外してくれたかと思えば、膝に抱き上げられ、体調を気遣われ、美味しい食事をお腹いっぱい与えられて風呂に入れられる。  温かい腕に囲われ毎日ただひたすらに甘やかされて……あれ? 奴隷生活って、こういうものだっけ———?? 奴隷感なし。悲壮感なし。悲しい気持ちにはなりませんので安心してお読みいただけます☆ シリアス風な出だしですが、中身はノーシリアス?のほのぼの溺愛ものです。 ■R18シーンは ※ マーク付きです。 ■一話500文字程度でサラッと読めます。 ■第14回 アルファポリス恋愛小説大賞《17位》 ■第3回 ジュリアンパブリッシング恋愛小説大賞《最終選考》 ■小説家になろう(ムーンライトノベルズ)にて30000ポイント突破

気付いたら異世界の娼館に売られていたけど、なんだかんだ美男子に救われる話。

sorato
恋愛
20歳女、東京出身。親も彼氏もおらずブラック企業で働く日和は、ある日突然異世界へと転移していた。それも、気を失っている内に。 気付いたときには既に娼館に売られた後。娼館の店主にお薦め客候補の姿絵を見せられるが、どの客も生理的に受け付けない男ばかり。そんな中、日和が目をつけたのは絶世の美男子であるヨルクという男で――……。 ※男は太っていて脂ぎっている方がより素晴らしいとされ、女は細く印象の薄い方がより美しいとされる美醜逆転的な概念の異世界でのお話です。 !直接的な行為の描写はありませんが、そういうことを匂わす言葉はたくさん出てきますのでR15指定しています。苦手な方はバックしてください。 ※小説家になろうさんでも投稿しています。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

【完結】ペンギンの着ぐるみ姿で召喚されたら、可愛いもの好きな氷の王子様に溺愛されてます。

櫻野くるみ
恋愛
笠原由美は、総務部で働くごく普通の会社員だった。 ある日、会社のゆるキャラ、ペンギンのペンタンの着ぐるみが納品され、たまたま小柄な由美が試着したタイミングで棚が倒れ、下敷きになってしまう。 気付けば豪華な広間。 着飾る人々の中、ペンタンの着ぐるみ姿の由美。 どうやら、ペンギンの着ぐるみを着たまま、異世界に召喚されてしまったらしい。 え?この状況って、シュール過ぎない? 戸惑う由美だが、更に自分が王子の結婚相手として召喚されたことを知る。 現れた王子はイケメンだったが、冷たい雰囲気で、氷の王子様と呼ばれているらしい。 そんな怖そうな人の相手なんて無理!と思う由美だったが、王子はペンタンを着ている由美を見るなりメロメロになり!? 実は可愛いものに目がない王子様に溺愛されてしまうお話です。 完結しました。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23

処理中です...