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10.ルークSide
しおりを挟む騒ぎがあったのは、夜もかなり更けた頃。
その日、俺は書類の処理に関してまったく役にたたない隊長の尻拭いの為夜勤でもないのに城内の執務室にいた。
それは突然だった。
震えがきそうなほど膨大で圧倒的な力。
──どこだ?
近すぎる。すでに城内にいるのか。
どこの奴だ?
一番可能性があるのは、隣国のラウジル。
いや、まさか。
あそこの王は夜襲をかけるような性格ではないはず。剣をとりながら、力の発せられた場所を探す為意識を集中させる。
──見つけた。
意識の集中を解いたと同時に。
「副隊長!」
夜勤の騎士が息をきらし入室してきた。
「敵だろ?場所はわかっ」
「違います!使者様だそうです!」
…はぁ?
俺はここ最近の中で一番まぬけな顔をしていただろう。
***
「ヴィラスール神の使者?」
夜中の為、足早に移動しながら部下達から話をきく。
「聞いたことがない」
「約200年ぶりらしいです」
「今朝、神殿から人がきて神託があったと騒いでましたよ」
別の部下が話す。あぁ、こいつは、確か熱心な信仰者だったか。
「こんな時間に、しかも封鎖されている塔に」
休日出勤なんてするのではなかった。もう手遅れだが。そうこうしているうちに東の外れの搭に着く。
さて、どうするか。
実は、まだ騎士見習いの頃に俺は一度だけ興味本意で入った事がある。
大昔は祈りの場として使用されていたらしいが、何ヵ所か部屋のようになっているだけ。
幽閉場所のように狭い。また上までは足場が悪く、通路は細い螺旋階段しかない。放置された点灯の魔法石も古くて使えないだろう。
部下たちに指示を出す。
「中の点灯の魔法石は古く使えない。俺が光の球体を作り上まで飛ばす。大きな声じゃ言えないが、中にいるのが本当に我々の敵ではないかも分からない。しかも扉前の踊場には数人しか立てん」
使者を疑う俺に不満の顔を向ける部下がいたが、視線で黙らす。何の確証もない話など俺は信じない。信じるのは、自分がこの目で見てからだ。
まず疑え。
それが生き延びる為に必要だ。
「ザルグ、前に行き扉を壊せ。ヒューイ、援護しろ」
「「はっ」」
「俺は魔力の方に集中する。あれだけの力。
「敵ならかなり苦戦するだろう」
いや、まともに戦ったら確実に負ける。
「残りは俺の後ろに続け。一気に上まで上がるぞ。行くぞ!」
「「はっ!」」
俺達は扉を壊し飛ばした光が照らすなか階段をかけ上がって行った。
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