中途半端な私が異世界へ

波間柏

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2.出会い

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「ただいま~ってまあ誰もいないけど」

スリッ

「誰もじゃないね。ただいま。ルーク」

 足に擦り寄りまんまるな目で見上げてきた相棒に挨拶をする。

「ミャ」

 この子は、親が拾った黒猫さん。家の近くの道路に転がっていたらしい。

「雑巾かと思ったのよね~。シーの散歩行くとき見て帰ってきたら位置が動いていて」

 我が家に来た時は歩けなかったけど、今は元気。

 ただ、後ろの左足の力が入らないのと左目はあまり見えていないみたい。子猫から一年が経過し今はスラッとしてカッコいい。私は黒豹さんと密かに呼んでる。

 そう家には犬もいた。多分犬種はシェルティーで飼い主さんが飼えなくなって、捨てられたりした子の里親募集から親が連れてきた。もうおばあちゃんで家に来て2年程で虹の橋を渡った。

 里親を募集している団体のお姉さんは確か、こう言っていた。

「一日でも穏やかに楽しく過ごせればこの子達、特に歳のいった子達は幸せだと思う」

そうなのかもしれない。

 でも、私は死ぬのをみるのが辛い。みんな生きてれば当たり前だけど。でも、何回経験しても慣れなくて。

私は飼う勇気がない。

「みゃ~」
「ごめん。ご飯ね」

 足元で強く頭を擦り付けながら、さかんに空腹を訴えてくる黒豹さん。

「やること山盛りだもんね」

 とりあえず猫にご飯。お風呂のお湯を溜めている間に休憩と何か食べないと。二つ課題もあった。明日は面接があるし、切り替えは大事だよね。

「頑張るぞー!」
「みゃー」



* * *



「もしもーし」

誰よ。

 この眠りの前のうとうと感が一番気持ちがよいのに。

「助けて」
「!」

この声。

「やっと会えた」

 金髪に金色の目の美少女が目の前で微笑んでいた。ただ、彼女の足元は浮いているし、周囲を見渡せば真っ白。

「何ここ?」

 お風呂が沸くまでとソファに転がってたはず。

私、やっぱり病んでる?

「病んでないから大丈夫よ~。それよりお願いがあって」

 キラキラオーラ全快の美少女さんがペラペラ話し始めた。

「あっ私はいわゆる神様ね。で、これから私の世界のヴィラスっていう国に行ってもらって綻を修理してもらいたいの」
「期間は一ヶ月から二ヶ月くらいかしら。難しい事はないし、私の世界イケメン多いわよぉ。あっ少~し危ない時もあるかも。でも加護もつけるから大丈夫!」

 軽い口調で一気に言いきりましたね。

「質問あるかしら?」

首を可愛くかしげる美少女さん。うっ可愛い~って、違うっ!

「…拒否権は」
「ない」

バッサリ。

「本当に帰れますか?」

 これ大事よね。例え夢だとしても。

「多分、大丈夫~」
「多分って!!」
「もしかしたら帰りたくなくなるかも」

ニヤリ。

 美少女いや神様。悪い笑みしてますよ。

「実は今、忙しくてまた話す機会はあるから、とりあえず送っちゃう。またね~」
「ちょっ!」

足元が急になくなる感じがくる。

「まって!」

 手を無意識にのばす。見えたのは手をフリフリする神様。

意識が。目が開かない。最後に言葉が聞こえた気がした。

「私の世界助けて」

 必死そうな声。真面目な口調で話せるじゃない。でも、ずるいよ最後にその台詞は。


そして私は意識を手放した。


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