18 / 21
18.アルビオンはキレた
しおりを挟む何故このような状態なんだ。
第一騎士団長の座は辞したが、要となる領土の管理、また砦の者達を束ねる俺は今もなお騎士だ。
ギィン
「遅れましたね」
その為、祝の場に相応しい華美な剣を携えていた。
「普段より重そうな剣だから遅いのかなぁ」
この俺によくもそのような言葉を吐けるな。
首を傾げる婚約者、いやこれから正式に妻となる女は嫌味を放つ。いや、コイツは思った事を口に出しただけかもしれない。
『アルビオンは後悔しないのかな?』
繰り出される一撃は軽い。かといって油断できない速さを受け流しながら容易く兄とは呼べなくなった陛下との会話が思い出された。
『何を仰っしゃりたいのでしょうか?』
王位継承権を放棄した当初は随分と騒がれた。だいたい煩いのは兄弟争いをさせ甘い汁を吸いたがる蛆虫共だ。
『更に風通しがよくなる機会だね』
『根本を消さねば意味がないはず』
『何事も一度に済む事はないから仕方がないよ』
派閥を全て断つのは不可能。ならばある程度融通の利く者は生かし取り込む。弱すぎる者達については泳がせ不満のはけ口、ようは発散にでもなればいいというのは理解できる。
しかし、俺ならば捉えて脅し利用し棄てる。もう既にこの段階で自分は国を統治するには不適任であるのは自覚済みだ。
『騎士団の者達は、未だアルが王位を継ぐ事を期待しているんじゃかいかな。私の見目が弱々しいのも原因かな』
『それは昔でしょう。俺の首に容易に解けない縛りをかけておいてご冗談を』
確かに力では兄よりも俺のが上だ。だが、蓄積された知識、魔力量に加え外交力はずば抜けている。
『影で充分。それに手に入れたいモノがあるので』
異世界人の女は、どうしてか俺を本気で苛立たせた。しかも今も変わらない。だが同時に手に入れたいと強く思うのだ。
消えたハルコの所在が判明後、興味があるであろう元の世界で叶えられなかった菓子店に放り込み、まぁマーガレットからは小言はくらったが、最近では満更でもない様子だ。
勿論それだけではなく、半強制的に領地の統治をするうえでの業務を限界手前までやらせ慣れさせていった。
「制約、首の外してもらったから、そろそろ動いてよ!」
防ぐだけの俺に不服らしい。
いや、おかしいだろう?
婚約期間だというのに首にかけられた制約のせいで一切触れる事が出来ずどれだけ我慢してきたことか。
陛下からの婚姻許可がやっとおり盛大に祝をと思っていたのにドレスは信じられないくらい短く、また剣を交えている状態である。
殺気まで出しやがって。
諦めた俺は早々にこの茶番を終わらせる為に邪魔な上着を脱ぎ捨て剣に強化の術をかけた。
「来いよ」
どちらが上か理解らせてやろうじゃないか。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
93
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる