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13.腹黒王子との睨み合いは
しおりを挟む「片刃か。珍しいな」
私の作り出した刀を見て、彼の瞳は興味の色をみせた。
この国や近隣諸国の剣とは両刃でゴツいのが一般的だ。男女共に体格もいいからこそ力でぶっ倒す武器なのではと思う。
「相手をしてもいいが、俺から手を出すと首が飛ぶから別の機会がよいのだが」
「えっ?まさか温室の時の」
まだ首絞めが有効? 手袋を放り投げ腕を組む姿は全くやる気がない。
「いや、新たにだ」
「またお兄さん? 信用度が低いね」
仲は悪そうにみえなかったけど。
「ハルに関しては、箍たがが外れると言われた」
私だけ?
「自分でもこの流れで伝わらないのは理解はしている」
首を傾げる私に腹黒は笑った。普通に苦笑とかできるの?
「ハルが城から行方をくらましてから考えてみた。どうして会った時からこんなにも苛立つのか」
「…アンタ、ケンカ売ってんの?」
なんだよ。やっぱりムカつく奴じゃないか。私は戦闘態勢に入ろうと刀を握り直す。
「稚拙で王族に平気で嫌悪感を出す。だが何故か警戒心の強い弟は異世界人にすぐに懐いている。兄上さえも線は引いているが好意的だ」
未だ腕は組まれたまま、今度は腹黒が首を傾げている。その目が私を見た。まるで品定めのように。
「異世界人は男ではなく女で見目がよく振る舞いも良いと弟から報告を受けたが。実際目にして容姿は…まぁ、色は目を引くが…」
私の優しさも限界なんですけど。
「腹黒王子。あなた、私を馬鹿にしに来たわけ? あっ、来ないでよ!」
この腹黒の身長は低めとはいえ、それはこの世界基準でだ。180センチくらいはあるであろう、しかも無駄に長い足で一気に距離を詰められた。
「凍るわよ!」
「好きにすればよい。どうせ私から手を加える事はできん」
私の作り出した剣をこいつは、手で掴んできた。
「どうした? 今なら好きにできるぞ?」
ムカつく相手とはいえ、殺意も怒りも何もない人間にしかも素手な奴に武器を振り回すほど春子は染まっていなかった。
この世界で私は、いまだに温室育ちから抜け出せない。
「何故そんな顔をする?」
左頬に温かいものが触れてきた。なんか言わなきゃ。言い返さないと。
「私が動けないあの時に殺ればよかったのでは? ハル、お前は何故聖水を作り私に飲ませ続けた?」
そんなの決まっている。
「……私のせいで怪我したから」
それに。
「恐怖を感じた。頭ではわかっていたのに。その反面懐かしかった」
戻れたのは一瞬。
だけど、いつも気にしてなかった匂いに気配。
私のいた場所。
私のいた世界。
私は、正直そこまで元の世界に執着していたわけでもないはずなのに。
「死にたくないとあの時、確かに思った。でも帰らなければ、あの空気に触れることは出来なかった」
死ぬ確率のが高かったはずなのに腹黒王子は、私の腕を掴み引っ張り上げた。
「助けてくれてありがとう」
手の中にしていた自分の剣はいつの間にか消えていた。
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