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10.魔法使い、初めての部活

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 今日は、放課後に学校からほど近い浜辺でビーチコーミングをする日らしい。皆の前で魔法は使えないので手作業でまずは人工物だけを拾う。

カラフルな人形の一部 
ペットボトルとフタ
大きな物から小さな物まであるプラスチックの欠片
何故か靴下が片方

還らない物ばかり。

「なんで摩耗されると綺麗なんだろうね。ただの割れた硝子なのにねぇ」

 まだ残る陽にかざしたシーグラスをつい、眺めていたら背後から部長、谷屋たにや先輩から声をかけられた。

「そうですね。ゴミなのに…惹かれます」

 海の生き物には不用であり害になる。

「最近、海に行ってないの?」
「今現在、来ていますよ。あっ」


 去る気配がない先輩は、私の今日のイチオシの欠片をひょいと取り上げた。

「海が騒いでるよ。普段も避けてるのかな?」
「部長にも部活にも関係ないと思いますが」

真面目に答えたはずなのに。

「なんで笑うんですか? それ返して下さい」


 シーグラスを上に投げてはキャッチしているので止めてほしい。

「だって、あの女のコに無関心の奴が面白くてね」

 フレンドリーな様子で可愛い子と海にいましたけど。

「空ー! いいの拾えたー?」

 花がごみ拾いの袋と貝殻や流木の入ったバケツを持ち、手を振っている。

「海は、知ってるのかな?」

 手を引かれ、広げられた手のひらにシーグラスを置かれ耳元で囁かれた。

『君が魔法使いだという事を』

本当に、なんなの。

「…そうだとしても、巻き込むつもりはないです」
「ふーん。でも奴は、そんなお利口さんじゃないよ? ほら」

 部長が指差した先には、自転車を走らせている海がいた。

「さて! ゴミもお宝も拾えたようだから今日は解散ねー。とりあえず洗浄だけして後程分別しよう!」

 各々活動していたメンバーに部長は声掛けをしだした。腕のバンドで時刻を聞けば終了時間は言われていた予定より随分と早い。

「それ貸して。部室に先に帰ってるから」
「あっ」

 持っていた袋を部長が取り上げて、学校へと足を向けた。

「あのっ」
「ちょっと天然だけど、アイツは信用できるよ」
「いえ、部活中だし」

 歩みを止め此方を向いた部長の顔は、意外にも真面目だった。

「逃げるとさ、後悔する時があるんだよ」
「空ー!」

 部長の声と海の私を呼ぶ声が重なった。

「まあ、頑張って?」

 なんで最後が疑問なの? というか部長と海は何か繋がりがあるのか。

「空! だから何で避けんだよ」

 怒っている様子の海が、今度は私の前に仁王立ちしていた。

どう、何を頑張れっていうのよ。

「あ、待てよ!」

私は、逃げる事にした。


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