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8.魔法使いは、警戒する

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「初めてお友達が来たと思えば男の子で整っている子とは。やるわねぇ」
「ちがっ、そんなんじゃないです!」

 夕食の時間、私の揚げたちょっと焦げてしまった唐揚げを食べながら五月さんは悪そうな顔をしている。

「見た目は惜しいけど、美味しいわ。浸けた時間がよかったわね」

 料理に関しては、偽りなく言うと宣言している叔母の口から美味しいと言われて嬉しい。

近々もう一回トライしてみよう。

「それで、言わなくて良かったの?」
「学校側に伝えるのは規則だけど、他は項目にないし」

 魔法使いが学校に通う際には手続きが別にもう一つある。力があるなしに関わらず、使い方によってはとても危険だから。

「学校で使うつもりはないし、そんな場面もないと思う」

 なにより、もう目立ちたくない。勿論、悪い意味でだ。

「ご馳走様でした」

 最後に口に入れた唐揚げの後味は、ひときわ強い苦みを感じた。




* * *


「空、この後に時間あるかな?」

 夏休みは完全に終わり、憂鬱な学生生活が始まった。場所は違えどこなす事は同じだが。

「特には」

 カフェのバイトは土日のランチがメインだ。あとは稀に貸し切り予約の時や忙しくなる時間帯に短時間入るだけ。

「よかった! じゃあ行こっか!」

 転校初日から何故だかよく話しかけてくる花は、私の腕に自分の腕を絡ませてきて。

「ちょっ」

かばんを肩から抜かれ、抗議の声をあげれば。

「人質ですよ」

 彼女の言動も行動も予測がつかない。

「嫌な場所じゃないから付き合ってよ~」

 なにより、いつも生き生きしている。兄の海そっくりだなと半ば引きづられながら空は思った。

「ねぇ、どこ行くの?」

寄り道とかじゃなかったの?

「はい、着きましたー!」
「こ、此処って」

 階段を何回か上がり隅も隅になる扉には。

『~ビーチコーミング部~』

「ちょっと、私は無理だって前からっ」
「今日はー!花です! あ、部長!」

 彼女に腕をいっそう強く掴まれた。しかも中からの返事はないのに扉を開け放った。

「やぁ。相変わらず花ちゃんは元気だねぇ」

 何かの図鑑を広げて立っている部長と呼ばれた人の目が、花から私に移動した。

「君が噂の…ようこそビーチコーミング部へ」

言葉は発せず唇だけ動いた言葉を読み取れば。

『君が噂の…魔法使い』

 ざわりと周囲の空気が私の気持ちに反応して動いた。

──この人、何者なの。

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