8 / 23
8.魔法使いは、警戒する
しおりを挟む「初めてお友達が来たと思えば男の子で整っている子とは。やるわねぇ」
「ちがっ、そんなんじゃないです!」
夕食の時間、私の揚げたちょっと焦げてしまった唐揚げを食べながら五月さんは悪そうな顔をしている。
「見た目は惜しいけど、美味しいわ。浸けた時間がよかったわね」
料理に関しては、偽りなく言うと宣言している叔母の口から美味しいと言われて嬉しい。
近々もう一回トライしてみよう。
「それで、言わなくて良かったの?」
「学校側に伝えるのは規則だけど、他は項目にないし」
魔法使いが学校に通う際には手続きが別にもう一つある。力があるなしに関わらず、使い方によってはとても危険だから。
「学校で使うつもりはないし、そんな場面もないと思う」
なにより、もう目立ちたくない。勿論、悪い意味でだ。
「ご馳走様でした」
最後に口に入れた唐揚げの後味は、ひときわ強い苦みを感じた。
* * *
「空、この後に時間あるかな?」
夏休みは完全に終わり、憂鬱な学生生活が始まった。場所は違えどこなす事は同じだが。
「特には」
カフェのバイトは土日のランチがメインだ。あとは稀に貸し切り予約の時や忙しくなる時間帯に短時間入るだけ。
「よかった! じゃあ行こっか!」
転校初日から何故だかよく話しかけてくる花は、私の腕に自分の腕を絡ませてきて。
「ちょっ」
かばんを肩から抜かれ、抗議の声をあげれば。
「人質ですよ」
彼女の言動も行動も予測がつかない。
「嫌な場所じゃないから付き合ってよ~」
なにより、いつも生き生きしている。兄の海そっくりだなと半ば引きづられながら空は思った。
「ねぇ、どこ行くの?」
寄り道とかじゃなかったの?
「はい、着きましたー!」
「こ、此処って」
階段を何回か上がり隅も隅になる扉には。
『~ビーチコーミング部~』
「ちょっと、私は無理だって前からっ」
「今日はー!花です! あ、部長!」
彼女に腕をいっそう強く掴まれた。しかも中からの返事はないのに扉を開け放った。
「やぁ。相変わらず花ちゃんは元気だねぇ」
何かの図鑑を広げて立っている部長と呼ばれた人の目が、花から私に移動した。
「君が噂の…ようこそビーチコーミング部へ」
言葉は発せず唇だけ動いた言葉を読み取れば。
『君が噂の…魔法使い』
ざわりと周囲の空気が私の気持ちに反応して動いた。
──この人、何者なの。
10
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
六芒星の奇跡
あおい たまき
恋愛
世の中にはびこる社会病理。
いじめ、不登校……
暗闇の中で
もがいて必死に出口を探している―――
私、はるかは、まだ朝の早い時間。
海岸線の砂浜を、一人でもくもくと掃除をすることが日課だった。
誰かの、何かの役に立ちたかった。
その手首には、古い傷痕。
心にどれほどの闇を抱えているのか。
そんな時。
朝もやの立ちこめる砂浜に一人の男がやってきた。
「おはよう」
「ごみ拾い朝からご苦労様ですね」
突然、声をかけられて戸惑うはるかは……
二人の出逢いの奇跡を描きました。
(他アプリで公開していた作品になりますが
そちらは削除済みになります)
slow
本野汐梨 Honno Siori
恋愛
年が離れていても、壁があっても互いに思い合う2人の話です。
男子高校生×高校教師
2人はドキドキな関係性とは裏腹に穏やかな日々を過ごしていた。日常の一部にお互いの存在があり、時には笑って時には寂しくなるけれど何があっても離れない。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
【完結】後宮の秘姫は知らぬ間に、年上の義息子の手で花ひらく
愛早さくら
恋愛
小美(シャオメイ)は幼少期に後宮に入宮した。僅か2歳の時だった。
貴妃になれる四家の一つ、白家の嫡出子であった小美は、しかし幼さを理由に明妃の位に封じられている。皇帝と正后を両親代わりに、妃でありながらほとんど皇女のように育った小美は、後宮の秘姫と称されていた。
そんな小美が想いを寄せるのは皇太子であり、年上の義息子となる玉翔(ユーシァン)。
いつしか後宮に寄りつかなくなった玉翔に遠くから眺め、憧れを募らせる日々。そんな中、影武者だと名乗る玉翔そっくりの宮人(使用人)があらわれて。
涼という名の影武者は、躊躇う小美に近づいて、玉翔への恋心故に短期間で急成長した小美に愛を囁いてくる。
似ているけど違う、だけど似ているから逆らえない。こんなこと、玉翔以外からなんて、されたくないはずなのに……――。
年上の義息子への恋心と、彼にそっくりな影武者との間で揺れる主人公・小美と、小美自身の出自を取り巻く色々を描いた、中華王朝風の後宮を舞台とした物語。
・地味に実は他の異世界話と同じ世界観。
・魔法とかある異世界の中での中華っぽい国が舞台。
・あくまでも中華王朝風で、彼の国の後宮制を参考にしたオリジナルです。
・CPは固定です。他のキャラとくっつくことはありません。
・多分ハッピーエンド。
・R18シーンがあるので、未成年の方はお控えください。(該当の話には*を付けます。
強制無人島生活
デンヒロ
ファンタジー
主人公の名前は高松 真。
修学旅行中に乗っていたクルーズ船が事故に遭い、
救命いかだで脱出するも無人島に漂着してしまう。
更に一緒に流れ着いた者たちに追放された挙げ句に取り残されてしまった。
だが、助けた女の子たちと共に無人島でスローライフな日々を過ごすことに……
果たして彼は無事に日本へ帰ることができるのか?
注意
この作品は作者のモチベーション維持のために少しずつ投稿します。
1話あたり300~1000文字くらいです。
ご了承のほどよろしくお願いします。
夢の渚
高松忠史
恋愛
随時連載予定
台湾の世界的人気女優 蔡志玲(サイ チーリン)はあることがきっかけで芸能界から姿を消す。
逃避行の末辿りついたのは日本最西端の島 与那国島から程近い「美波間島」という孤島であった。 チーリンはそこで震災で妻子を亡くした真田諒太と出会う。
島で暮らす個性豊かな人々との触れ合いでチーリンは徐々に変わってゆく。
厳しい孤島の環境の中で人間が生きるということ、そして人生の終わりに行き着く先…
絆…友情…親子の愛…男と女の真実の愛…
そして島に迫る大きな黒い力。
チーリンと諒太に立ちはだかる試練…
二人の恋の行方はどうなってしまうのか?
美しい海を舞台に繰り広げられる長編恋愛小説
[完結]思い出せませんので
シマ
恋愛
「早急にサインして返却する事」
父親から届いた手紙には婚約解消の書類と共に、その一言だけが書かれていた。
同じ学園で学び一年後には卒業早々、入籍し式を挙げるはずだったのに。急になぜ?訳が分からない。
直接会って訳を聞かねば
注)女性が怪我してます。苦手な方は回避でお願いします。
男性視点
四話完結済み。毎日、一話更新
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる