戦場と司令室

カズフジ

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戦場と司令室

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某月某日。
その時は唐突にやって来た。

――戦場

私は密兵。そっと静かに、誰にもばれずに任務を遂行しなければならない。

私に課せられた任務は、敵方のボスの射殺。かねてから準備を重ねてきた。いよいよだ。

忍び足でアジトへ近づく。茂みなんだ、音を立てるな。ボスはどこだ?あそこだ。もう少し進め。あと少し。よし、射程圏内だ。

相棒のキャサリンを取り出す。頼むぞ。失敗は許されない。

狙いを定める。大丈夫、今まで何度もやってきたじゃないか。いつも通りやればいい。私は引きがねを引こうとした、その時。

ワハハハ。敵方の笑い声?近づいてくる。やばい。ばれたら私はどうなる。死ぬのか。それは御免だ。息を呑むな。手に汗を握る。

なんとか免れた。何度もこんなことはあったが、今でも慣れることはない。

さぁ、そろそろ終わりにしようか。もう邪魔者はいないよ。キャサリン、準備はいいかい...?


――司令室

とある司令部には、暗殺成功の伝達が届いていた。

...我射殺ニ成功セリ...

あいつ、やったか。
直に無事帰還することだろう。

トントン。おっと誰か来たようだ。誰だ?

私です。無事任務を成功し、帰還致しました。

おまえか。今日もよくやった。パスワードを入力して入ってこい。

いえ、室長がパスワードを管理なさっているではありませんか。

そうだったな。ピッピッピッピッ。軽快な音が鳴る。帰還した彼は、任務をやり遂げた達成感からか凛々しくも見え、やはりどこか疲弊しているようにも見えた。

それにしても今日はご苦労だった。とりあえず座って茶でも呑め。

はい。彼は座った。本当に今日は疲れました。時々あるんです。周囲に敵がいないと思って油断してしまうことが。危うくばれるところでした。安堵の表現を浮かべた後、彼は茶をすすった。

ははは。お前らしくて実によい。これからも頼むぞ。今日は帰って休め、なんて言いたいことろだが、おまえというやつは。

そうなんですよ。超回復の体質なのか、それが私の取り柄でして。今ももう既に疲れは取れはじめていて、シャキッとしてきましたよ。

ははは。そうかそうか。まぁ半分冗談だ。今日は帰れ。

はい。お疲れ様でした。

とその時、司令室には警告音が鳴り響いた。敵の不審な動きを察知したようだ。

すまない、本日2度目の命令だ、ターゲットの抹殺、行くんだ。

了解しました。いくぞ、キャサリン。彼は司令室の扉へ向かう。

しかし扉は開かない。入室にも退室にもパスワードが必要なタイプの扉だった。

室長、もう私にパスワードの番号を教えてはくれませんか?

お前への任は厚いからな。よろしい。4桁の番号、これがおまえのパスワードだ。よく耳に刻め。
入室は0721!退室は4545だ!
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