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最終章 未来へ
東京旅行①
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二月四日。
昨年が暖冬だった影響か、今年は非常に寒い日が続いているような気がする。
この日も朝から冷え込んでいた。
そんな寒い日の朝早くから、三人はせっせと支度を済ませていた。
現在朝の六時。
いつもだったら早起きの光以外は寝てる時間だ。
拓哉は何やらそわそわと、何度も荷物の中身を確認していた。
思えば旅行なんて何年ぶりだろうか。
多分小学生くらいの頃、家族と行って以来か。
修学旅行を含めたとしても高校以来、八年ぶりくらいだ。
しかもそれらは親や学校が決めた通りについていくだけ。
今回の様に自分たちで全てをやらなきゃいけない旅行は初めてだ。
御子はいつもの調子でのんびりしている。
家業が家業だけに、この手の旅行は慣れているのかもしれない。
光はというと、楽しそうにニコニコしていた。
相当旅行が楽しみなようだ。
それとも、もうすぐ来るであろう彼氏に会えるってことの方だろうか。
そんな頃、インターホンが鳴り、主役が遅れて到着した。
四人での東京旅行が始まった。
――
JR大阪駅。
乗車券、特急券を買うためにみどりの窓口に立ち寄っていた一行だが、拓哉はすでに息が上がっていた。
というのも、さりげなく光の荷物を持ってあげる唯志。
それを見た御子が自分の荷物を拓哉に押し付けていた。
「てか、何でお前らそんなに荷物多いんだよ?」
ぜぇぜぇ言っている拓哉と、涼しい表情の御子に唯志が問いかけた。
「しゃーないやん?女子は色々あんねん。」
御子の荷物は光と比べ倍以上に見えた。
光が持ち物が少ないのもあるが、それにしても二泊三日にしては多すぎる気がする。
さらに――
「いや、御子はわかるんだけど、吉田の荷物も同じくらいあるだろ。」
「・・・。」
拓哉は疲れているからか、何も返事をしなかった。
確かに、拓哉の荷物も御子と同じくらいの量があった。
故に、唯志の持っている荷物と拓哉の持っている荷物は二倍以上の物量差がある。
「何をそんなに?」
唯志は若干呆れ気味に拓哉に質問した。
「いやほら・・・、念のために。」
唯志の真似のつもりだろうか。
ただ、この荷物の多さはいつもの唯志の『念のために』と違って、ただただ拓哉が心配性すぎて増えただけだった。
「仕事柄出張とか慣れてるだろ?そんなに備えいるか?」
「ぐっ・・・。」
唯志の問いに、拓哉はぐうの音も出なかった。
荷物が多いこともそうだが、そもそも拓哉は出張経験があまり無い。
唯志と同じ業種なので、確かに業界としては出張は多い。
東京などその最たるもので、行く機会は多いはずだ。
ただ、すでにバリバリ戦力として働いている唯志と違い、拓哉はまだ勉強期間。
要するにそこまで仕事を任されていなかった。
故に、出張経験も唯志と比べると圧倒的に少なかった。
「た、タク君、私が半分持とうか?」
光が心配になって声をかけた。
「光、それじゃ本末転倒やろ。」
が、御子がそれを制した。
(お前が言うな!)
拓哉は心の中でツッコミを入れた。
当然読まれているだろうことも織り込み済みだ。
「まぁ、もう少しの辛抱だ。頑張れよ、タク君」
無事に東京行の新幹線チケットを買えた四人は、改札を通り新大阪駅へと向かった。
――
「新幹線って快適じゃのー。知らんかったわ。」
御子が新幹線の座席で寛ぎながら言った。
「御子って旅行慣れてるんじゃないの?」
唯志は素朴な疑問を投げかけた。
「うちの場合、基本車移動やし。まぁ機材とか色々いるからな。」
「あーね。」
そう言いながら唯志はすでにビールを飲んでいる。
「唯志君、これ食べる―?」
隣の光はお菓子を食べている。
「ああ、ちょうだい。」
「はい、あーん。」
唯志は無言で差し出されたお菓子を食べていた。
なんか少し前にも似たような光景を見たような気がする。
あの時と女性側が違うけど・・・。
傍から見たら仲睦まじいカップルの旅行に見えることだろう。
いや、事実そうなんだけど。
「そんなに飲んでて大丈夫なの?今日早速本題でしょ?」
拓哉は目の前でいちゃつくカップルに、拓哉がジト目で問いかけた。
「こんなの飲んだうちに入らねーって。」
そう言って飲み続けている唯志が飲んだ量は、すでに拓哉の致死量に近い。
(こいつほんとに無尽蔵だよな・・・。)
拓哉はその光景を呆れたように眺めていた。
「大丈夫だよ、タク君。私もいるし!」
と光が力強く言った。
だが、
(根拠ないよね・・・。それ。)
拓哉の心配は晴れなかった。
「あんた気にしすぎやねん。気楽に楽しもうや。」
そういう隣の御子も同じくビールを呷っている。
拓哉は本来ならこの移動中の時間を有効活用して、今日回る場所の打合せを行いたかったのだが・・・。
目の前を見ると、光と御子と唯志は楽しそうに談笑している。
静かにしているとはいえ、ほぼ宴会状態だ。
(はぁ・・・。)
拓哉は何も自分の計画通りに進まず、心の中でため息を吐いた。
――
名古屋を過ぎて幾分か経過したころ。
場所的には小田原くらいだろうか。
さっきまで富士山に盛り上がっていた女性陣だったが、今は静かに寝静まっていた。
朝が早かった上に、さっき駅弁を食べたから眠くなったんだろう。
光が唯志に寄りかかって寝ている。
隣では御子が壁にもたれかかっている。
(はぁ・・・。大丈夫かな、こんなんで。)
拓哉はより一層心配になった。
「あんま考えすぎるなよ。なるようにしかならねーから。」
正面から唯志が話しかけてきた。
「でも、今日は大事な作戦だよね?」
「そう思うなら尚更、今は楽にして休んどけ。考えすぎても疲れるぞ?」
「そうかな?」
「そう。それよりも、今はもっとやることあるんじゃね。」
そう言うと唯志は、上着を光に被せて席を立った。
タバコでも吸いに行ったんだろう。
その様子を眺めていた拓哉は、自分が使っていたブランケットを、そっと御子に被せた。
(こういう事・・・かな?)
昨年が暖冬だった影響か、今年は非常に寒い日が続いているような気がする。
この日も朝から冷え込んでいた。
そんな寒い日の朝早くから、三人はせっせと支度を済ませていた。
現在朝の六時。
いつもだったら早起きの光以外は寝てる時間だ。
拓哉は何やらそわそわと、何度も荷物の中身を確認していた。
思えば旅行なんて何年ぶりだろうか。
多分小学生くらいの頃、家族と行って以来か。
修学旅行を含めたとしても高校以来、八年ぶりくらいだ。
しかもそれらは親や学校が決めた通りについていくだけ。
今回の様に自分たちで全てをやらなきゃいけない旅行は初めてだ。
御子はいつもの調子でのんびりしている。
家業が家業だけに、この手の旅行は慣れているのかもしれない。
光はというと、楽しそうにニコニコしていた。
相当旅行が楽しみなようだ。
それとも、もうすぐ来るであろう彼氏に会えるってことの方だろうか。
そんな頃、インターホンが鳴り、主役が遅れて到着した。
四人での東京旅行が始まった。
――
JR大阪駅。
乗車券、特急券を買うためにみどりの窓口に立ち寄っていた一行だが、拓哉はすでに息が上がっていた。
というのも、さりげなく光の荷物を持ってあげる唯志。
それを見た御子が自分の荷物を拓哉に押し付けていた。
「てか、何でお前らそんなに荷物多いんだよ?」
ぜぇぜぇ言っている拓哉と、涼しい表情の御子に唯志が問いかけた。
「しゃーないやん?女子は色々あんねん。」
御子の荷物は光と比べ倍以上に見えた。
光が持ち物が少ないのもあるが、それにしても二泊三日にしては多すぎる気がする。
さらに――
「いや、御子はわかるんだけど、吉田の荷物も同じくらいあるだろ。」
「・・・。」
拓哉は疲れているからか、何も返事をしなかった。
確かに、拓哉の荷物も御子と同じくらいの量があった。
故に、唯志の持っている荷物と拓哉の持っている荷物は二倍以上の物量差がある。
「何をそんなに?」
唯志は若干呆れ気味に拓哉に質問した。
「いやほら・・・、念のために。」
唯志の真似のつもりだろうか。
ただ、この荷物の多さはいつもの唯志の『念のために』と違って、ただただ拓哉が心配性すぎて増えただけだった。
「仕事柄出張とか慣れてるだろ?そんなに備えいるか?」
「ぐっ・・・。」
唯志の問いに、拓哉はぐうの音も出なかった。
荷物が多いこともそうだが、そもそも拓哉は出張経験があまり無い。
唯志と同じ業種なので、確かに業界としては出張は多い。
東京などその最たるもので、行く機会は多いはずだ。
ただ、すでにバリバリ戦力として働いている唯志と違い、拓哉はまだ勉強期間。
要するにそこまで仕事を任されていなかった。
故に、出張経験も唯志と比べると圧倒的に少なかった。
「た、タク君、私が半分持とうか?」
光が心配になって声をかけた。
「光、それじゃ本末転倒やろ。」
が、御子がそれを制した。
(お前が言うな!)
拓哉は心の中でツッコミを入れた。
当然読まれているだろうことも織り込み済みだ。
「まぁ、もう少しの辛抱だ。頑張れよ、タク君」
無事に東京行の新幹線チケットを買えた四人は、改札を通り新大阪駅へと向かった。
――
「新幹線って快適じゃのー。知らんかったわ。」
御子が新幹線の座席で寛ぎながら言った。
「御子って旅行慣れてるんじゃないの?」
唯志は素朴な疑問を投げかけた。
「うちの場合、基本車移動やし。まぁ機材とか色々いるからな。」
「あーね。」
そう言いながら唯志はすでにビールを飲んでいる。
「唯志君、これ食べる―?」
隣の光はお菓子を食べている。
「ああ、ちょうだい。」
「はい、あーん。」
唯志は無言で差し出されたお菓子を食べていた。
なんか少し前にも似たような光景を見たような気がする。
あの時と女性側が違うけど・・・。
傍から見たら仲睦まじいカップルの旅行に見えることだろう。
いや、事実そうなんだけど。
「そんなに飲んでて大丈夫なの?今日早速本題でしょ?」
拓哉は目の前でいちゃつくカップルに、拓哉がジト目で問いかけた。
「こんなの飲んだうちに入らねーって。」
そう言って飲み続けている唯志が飲んだ量は、すでに拓哉の致死量に近い。
(こいつほんとに無尽蔵だよな・・・。)
拓哉はその光景を呆れたように眺めていた。
「大丈夫だよ、タク君。私もいるし!」
と光が力強く言った。
だが、
(根拠ないよね・・・。それ。)
拓哉の心配は晴れなかった。
「あんた気にしすぎやねん。気楽に楽しもうや。」
そういう隣の御子も同じくビールを呷っている。
拓哉は本来ならこの移動中の時間を有効活用して、今日回る場所の打合せを行いたかったのだが・・・。
目の前を見ると、光と御子と唯志は楽しそうに談笑している。
静かにしているとはいえ、ほぼ宴会状態だ。
(はぁ・・・。)
拓哉は何も自分の計画通りに進まず、心の中でため息を吐いた。
――
名古屋を過ぎて幾分か経過したころ。
場所的には小田原くらいだろうか。
さっきまで富士山に盛り上がっていた女性陣だったが、今は静かに寝静まっていた。
朝が早かった上に、さっき駅弁を食べたから眠くなったんだろう。
光が唯志に寄りかかって寝ている。
隣では御子が壁にもたれかかっている。
(はぁ・・・。大丈夫かな、こんなんで。)
拓哉はより一層心配になった。
「あんま考えすぎるなよ。なるようにしかならねーから。」
正面から唯志が話しかけてきた。
「でも、今日は大事な作戦だよね?」
「そう思うなら尚更、今は楽にして休んどけ。考えすぎても疲れるぞ?」
「そうかな?」
「そう。それよりも、今はもっとやることあるんじゃね。」
そう言うと唯志は、上着を光に被せて席を立った。
タバコでも吸いに行ったんだろう。
その様子を眺めていた拓哉は、自分が使っていたブランケットを、そっと御子に被せた。
(こういう事・・・かな?)
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