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第三章 日常時々非日常

Feeling of Hikari

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「さて、どうするかな。」
そう言って唯志は残っていたコーヒーに口をつけていた。
焦りなどの様子は見えない。

それでも光は不安で涙目になっていた。
「ごめんね、唯志君。迷惑かけてばっかりで。」
今にも泣き出しそうに目が潤んでいる。

「ん?迷惑じゃないし、大した問題じゃないよ。大丈夫だから心配しなくて良い。」
唯志は平然とした顔で言っている。

「本当?」
「ほんと、ほんと。ただほら、万が一宮田のやつがストーカー化したらひかりんが危ないなって思ってただけだから。」
「うっ・・・それはそれで困るけど・・・私のせいだし・・・」
「まぁそれも含めて、何とかするから安心して良い。」
そう言って唯志は笑顔を見せた。

「そんなことより、紅茶のおかわりとかいらない?俺コーヒー追加頼むつもりだけど。」
「あ、じゃあこっちのアップルティー飲んでみたい!良いかな?」
唯志が普段通り余裕の態度をしているので、光も少し安心して笑顔を見せた。

当然ながら、唯志の言ってることははったりだ。
今のところノープラン。
色々と対策は考え始めているが、宮田の出方がわからない以上、現状では何の計画も立っていない。
光を安心させるために、取るに足らない問題であるように装っているだけだ。

「ちな、ひかりんはどうしたい?宮田と付き合いたい・・・とかは流石に無いよね?」
「え、無理無理無理。本当に勘弁してほしいです・・・」
光はげっそりとした表情で言った。
「ははは、だろうね。あんな勘違いチビ、俺が女でもごめんだわ。」
「そ、そこまでは言ってないよ!」
と否定しながらも光は苦笑していた。

「じゃあ宮田の方は今後ひかりんに関わらない様にすれば良い?」
「えっと・・・そうなるの、かな?落ち着いたらyarnの相手くらいだったらしても良いけど・・・」
「ひかりんは優しいな。そういう優しさみせるとまた勘違いされるぞ?」
「うっ・・・だよね・・・。」
光はしょんぼりしている。
「やるなら縁を切るくらいの方が良い。」
「うん、わかった。唯志君の言う通りにする!」

光がそう言うと、唯志はコーヒーに口をつけた。
頭の中では今後のことについて考えている。

--
さて、方針は決まった。
かと言って現状俺は宮田と関わりが無い。
直接連絡を取っても良いが・・・それは最後の手段だな。
まずはか。
それにしても吉田のボケが。
役に立たないどころか、余計なトラブル引き起こしやがって。
相談するにしても宮田は無いだろ。

さて、この場合どうするのが正解か。
俺がひかりんならガン無視で良いと判断するんだが、ひかりんは女の子だしそうもいかんだろう。
無視された結果強行に走るなんてこともあり得る。

かと言って相手をし続けるのは愚策だ。
余計増長させるだろう。

解決方法としたら黙らせるか諦めさせるのどっちかだろう。
手っ取り早く思いつく方法としては、黙らせるには脅す、潰す、殺すとかか。
諦めさせるにはひかりんに彼氏を作る、飽きさせるとかだろうか。

どれも現実的じゃないし、手っ取り早くも無い。

だったら--

「ひかりん、宮田の件はちょっと強行策に出ても良いか?」
「え、どういうこと?」
「ちょっとひかりんが怖い思いするかもしれない。けど手っ取り早い方法をとるってこと。」
「うーん・・・唯志君守ってくれる?」
「ああ、その点は安心して良い。最善を尽くす。」
「・・・うん、わかった。」
光は決心した顔で真剣に答えた。

「じゃあ、とりあえず宮田のyarnは以降無視して。」
「えっと、それで興味なくしてくれるかな?」
「まぁそうなればベスト。だけどエスカレートする可能性も高い。ちょっと怖い事になるかもしれない。だけどこっちで何とかする。yarnも危なそうなのが来たら逐一報告してほしい。」
「・・・うん、わかった。唯志君を信じるね。」
「任せとけ。莉緒にも話はしておくし、協力させるから。」

光は安心して胸をなでおろしていた。
そして改めて光がじーっと唯志の方は見つめていた。

「どした?ひかりん。」
「え、あ、いや・・・唯志君っていつもすぐに色々考え付くなって思って。」
「まぁそれくらいしか特徴無いからな、俺。」
「そんなことはないよ!それにいつも余裕そうだし!」

「そうでもないぞ?」
「そっかなぁ・・・いつも平然としてて余裕そう・・・」
「そんなことないって。人並みに動揺しているよ、多分。」
「そうなんだぁ。莉緒ちゃんじゃないとわからないのかな?」
「さぁどうだろうね。俺の事ばっかり見てればその内わかるんじゃない?」
「え・・・」
光は少し照れていた。
ああ、今の言い方じゃ俺のこと見とけって捉えられるか。
しくったな。
唯志は珍しく失敗したと反省していた。

「あ、それより!」
光が顔を上げて目を輝かせていた。
明らかに何か楽しい事を思いついたであろう事がわかった。

「ん?」
「今度花火大会行くって!莉緒ちゃんが言ってた!」
「ああ、聞いてるよ。ひかりんあまり経験ないんだって?もったいないな。」
「そうなんだ!やっぱり生で見ると凄いの!?」
「そうだな。近くで見ると迫力が全然違うね。」
「そうなんだ~。どっか行けそうなのあるかな?」
「八月に入ってすぐくらいに淀川で花火大会があるから、それ見に行こうか。俺らとひかりん、吉田で。」
俺らってのは莉緒のことなんだろう。
唯志に計画させるとは言っていたが、もう計画出来ていたようだ。

「本当!?良いの!?私たち邪魔じゃないかな?」
「花火大会なんていっぱいあるし、何回でも行けるから気にしなくて良いよ。吉田はそう言うの疎いだろうし。」
「良かったぁ。密かに楽しみにしてたんだよね。」
光は満面の笑みを浮かべている。
守りたいこの笑顔ってなるほどの笑顔だ。

「まぁまだ少し先の話だし、もう暫くは期待して待ってて。」
「うん、ありがとう!楽しみだな~。」

----
ひと通り話をした。
気づけば店に入って一時間半ほど経過していた。

「そろそろ行こうか。」
唯志が帰りを促した。
「あ、もう結構時間たったね。名残惜しいけど行こっか。」
名残惜しいというのはオシャレな喫茶店のことだろうか。
それとも唯志との会話のことだろうか。
拓哉がいたらもやもやしているところだろう。

会計は唯志が済ませ、店を後にした。
時刻は十五時頃にまでなっていた。
今から帰れば十六時近くになるだろう。

「送っていくよ。吉田の家まで。」
「え、悪いよ。方向も違うし。道は大丈夫だよ?」
「いや、宮田の件があるから。今日はまだ何の対策も出来てないし、念の為送っていく。」
「あ・・・」
光は会話に夢中になっていて宮田の件を頭から消していた。
唯志に言われて思い出し、スマホを見ると案の定宮田からyarnが来ていた。

「えっと・・・じゃあお願いします。」

そして光は唯志に連れられて拓哉の部屋へと帰って行った。

いつもと同じ帰り道。
拓哉とも何度か一緒に帰った。
だけど、今日は何か違って見えた。
その何かが光にはわからなかった。
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