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第三章 日常時々非日常

宮田

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梅田の雑居ビル。
某有名チェーン居酒屋。
個室などではなく、配慮も計画性も無かった事に拓哉は嫌でも唯志との差異を意識してしまった。
(ここじゃちょっと話しづらいだろ・・・てか俺酒飲まないし・・・)
時間的にも少し早いこともあって、店内は静まり返っていたし、ちらほらと見える客の会話は丸聞こえだった。

席に着くなり宮田は話し始めた。
「一応聞いておくけど、二人は付き合ってたりはしないんだよな?」
(最初に聞くのそれ?・・・てか注文が先じゃないの?)
「えっと・・・」
思ってもいなかった質問に光は困っている。
「先日言った通り。困っている光ちゃんを保護してるだけ。付き合ってるとかじゃないよ。」
と、この綻びだらけのストーリーを作った拓哉が率先して答えた。

「そっかそっか。あ、注文何にする?」
(タイミング!おかしいだろ!)
唯志の時もそうだが、脳内での突っ込みと愚痴の多い拓哉であった。
少しくらい口に出せば普通の人から少し面白い人くらいにはなれるかもしれないのに。

一先ず注文を済ませて、飲み物が届き、形ばかりの乾杯をしたと思ったらまた宮田がしゃべりだした。
「で、光ちゃんはどんなタイプの男が好みなの?」
ニヤニヤしながら宮田が聞いている。
「え?・・・え?好みの男性・・・ですか?」
「おい、今日は光ちゃんの相談を聞くための会じゃないのか?」
(てか合コンかよ!)
「いやいや、その前に光ちゃんがどんな子なのかとか知っておいた方が良いでしょ。親睦を深めると思ってさ!」
宮田が自分勝手な理論を語りだした。
「だからって・・・」
拓哉は反論しようと思ったが、元来気弱な方の性格の拓哉だ。
うまく反論の言葉が出てこない。
「いいよ、タク君。えっと好みの男性でしたよね。あんまりそういうの意識したことないから・・・頼りになる人とか、かな?」
「へー、頼りになるねー。もしかして今好きな人がそうとか?」
「え、いや・・・今はそれどころじゃなくて・・・」
と、更に追及してくる宮田に光は困惑していた。
「そ、そうだよ!今光ちゃんは大変な状況なの!だからこうして相談の場を作ったんだろ!?」
流石にこれには拓哉も助け船を出した。

「はいはい、わかってますよー」
宮田は白けたとでも言わんばかりの態度だ。

「で、光ちゃんが住所不定で戸籍も無いんだっけ?それと、意味わからんけど未来へ行く方法があれば知りたいとかだっけ?」
宮田が申し訳程度に相談内容を確認してきた。
(こいつ、本当にわかってるのか?)
と拓哉は内心イライラしてきていた。
「住所が無い・・・については、どっか部屋でも借りれば良いんじゃん?解決?」
「戸籍が無いから借りられないんだって・・・」
流石の拓哉も呆れながらに言った。

「戸籍が無いねぇ・・・。それについてはどうしようもないな。なんか役所とかに行って相談するしかないんじゃない?」
と、他人事の様に宮田は言い放った。
(こいつ、マジかよ・・・)
「それか結婚でもしたら戸籍が出来るんじゃん?」
名案とでも言わんばかりのドヤ顔で宮田が言った。
「いや、戸籍なかったら結婚できないだろ・・・」
流石にそれは拓哉も(当然光も)わかり、呆れながらに突っ込んだ。

「あー、そうだっけ?俺結婚したことないしわからんね」
まだ一杯目のビールなのにもう酔っているのか、ケタケタ笑いながら話す宮田。
「で、あとは未来に行く方法だっけ?」
「そう。」
と、淡泊に答える拓哉。
「えっと、わかりますか?宮田さん。」
と、一縷の望みをかけて光も改めて問いかけるが・・・

「さぁ・・・ドラえもんにでも頼むしかないんじゃない?てかさー、真面目に言ってるなら夢見過ぎだって。2021年だぞ?俺らもいい年だぜー?」
と、未来の件に関しては全く相手にされていなかった。
これには拓哉も怒り心頭だったが、当然と言えば当然だった。
拓哉が肝心な部分を話していないからだ。

いきなり未来に行きたいと言われて、まともに取り合う人間など滅多にいないだろう。
ましてや大人だ。
いた方がびっくりする。
当然宮田もまともに考えているわけがなかった。

「宮田君さ、まともに相談に乗る気・・・あるの?」
拓哉は怒りをこらえて宮田に質問した。
「そりゃーまともな相談ならちゃんとやるけどさー、未来に行きたいって。無理無理無理。現実見ようぜー。」
宮田は呆れた顔で言った。

「それよりもさー、最近仕事とかどうなの?俺は----」
と宮田の武勇伝?俺凄いアピール?の様なものが始まり、長々と話を聞かされる羽目になった。
仕舞いには「俺はお前より頑張ってる」だの、「俺は今の仕事で出世する」だの言いだした。
途中途中、光に対して「どう思う?」とか聞いていて、光も困惑しきりだった。

この長い宮田トークが終わるまで一時間ほどかかった。
(その間延々と聞かされるだけだった。)
ようやく落ち着いたのか、宮田は少し大人しくなった。
単に酒に酔って口数が減っただけかもしれないが。

流石に拓哉もこの会にも宮田の協力にも全く意味がないルビことだけは確信できたので、いい加減お開きにしようと思って口を開いた。
「とりあえず、ここまでにしようか。」
拓哉がそう言うと、宮田は思いついたかのように口を開いた。
「あ、そうだ!光ちゃんyarnはやってる?」
「え、あ、はい。やってますよ。」
拓哉は (答えなくていいのに!) と心の中で叫んだ。
「なら連絡先交換しよー。何かあったら何でも俺が相談に乗るから!」
「えっと・・・はい、じゃあよろしくお願いします。」
と、光は宮田の差し出したスマホ画面のQRコードを読み取り、連絡先の交換が完了してしまった。

拓哉も光も少し不安に思ったが、後にその不安は的中することとなる。

だが今は二人とも、このが終わったことに安堵していた。
二次会に行こうと (主に光を) しつこく誘ってくる宮田を何とか制止し、二人は疲れ果てた状態で帰路に着いた。
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