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第二章 動き出した人生
唯志の部屋へ
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一方、拓哉と別れ電車に乗った光は、特に問題なく梅田に到着していた。
待ち合わせ場所も昨日拓哉に案内して貰っていたし予定通り着けた。
むしろ少し早く来すぎたほどだ。
莉緒との待ち合わせまでは30分ほどある。
光は少しだけ周辺を見てこようかと思い、その場から歩き出した。
光は元々好奇心旺盛でじっとしていられないタイプだ。
そういう意味では拓哉と真逆で、むしろ唯志や莉緒に近い性格をしていた。
それにしても人が多い。
朝の通勤時間のためスーツ姿の人だらけで、光は少し変な感じがした。
光の時代ではあまり見かけたことがない光景だからだ。
(テレワークとかないのかな?)
光は当然の疑問を抱いたが、現代人に言ってもあまり伝わらない感覚だろう。
未だに出社するという無駄な行為が、正しいどころか正義とまで思われている時代だからだ。
そういう古い考えの世代が引退するか、技術的な改革が起きない限りこの光景は続くのだろう。
そんな社会情勢はさておき、歩いて数分。
まだほとんどの店は開店前で、行き交う人は通勤、通学の人ばかりだ。
そんな目まぐるし人の波で、更に梅田の地下である。
当然だが・・・
「迷った。」
光はつぶやいた。
梅田の地下は非常に迷いやすい構造をしている。
人が多いせいもあって、方向感覚をすぐに失うのだ。
元々目的地もなく適当に歩いていたのだから当然と言えば当然だ。
壁にもたれて、少し地図アプリを確認する。
しかしここは地下なので、うまく地図が出てこない。
「困ったなぁ」とつぶやき、光はぼんやりと道行く人を眺めていた。
多くの人が行き交っている。
本当に人が多い。未来とは大違いだ。
未来では花火大会でもこんなに人はいないだろう。
(こんなに多くの人がいたのに、未来ではいっぱい人が死んでしまうんだなぁ)
今までの光にとっては過去のことだったけど、今の光にとっては起こってしまう未来のことだからか、とても悲しい気持ちになった。
(防げるなら防ぎたいけど・・・そういうのって駄目だよね。)
そうこうしている間に、莉緒との待ち合わせ時間が迫っていた。
光は慌てて来た道を戻ることにした。
(今は余計なこと考えずに、帰ることに集中しなきゃね!)
ほどなくして、なんとか元の待ち合わせ場所に帰ってこれた。
時刻は待ち合わせ時間通りになっていた。
待ち合わせ場所には既に莉緒が来ていた。
「あれ?ひかりんそっちから来るんだ?」
「ちょっと早く着きすぎちゃって、探検してたら迷子になってました!」
「ええ!?連絡してくれたら迎えに行ったのに~」
「いやー、一人でも歩けるように慣れた方が良いかなって思いまして」
光は懐かしのてへぺろをした。どうやら未来でも健在らしい。
そこからは莉緒の案内で唯志の家に向かった。
平日なので当然唯志は不在だが、莉緒は合鍵も持っているので入り浸っている。
唯志の家は大阪市内ではあるが、梅田のある北区からは少し離れているので電車で移動した。
拓哉の家とも距離にしたらたいして離れていないのだが、電車の乗り換えなどの都合もあり実際の距離以上に距離感を覚える。
しかしそれは拓哉と唯志が疎遠になっていた理由とはあまり関係なかったりする。
「ここが唯志の家だよー。どうぞー。」
莉緒が自分の部屋の様に光を招き入れた。
「多少散らかってるけど気にしないでー」
莉緒が言う通り、部屋は物が乱雑に散らばっていた。
ゴミ屋敷というわけではないのだが、整理整頓されている様子でもなかった。
拓哉の部屋とは大違いだ。
唯志にしても莉緒にしても、そのあたりに無頓着な様子だ。
まぁ汚いわけではないし、元々光も潔癖というわけでもないのであまり気にしてなかった。
「あれ?これって・・・」
光はパソコンデスクのモニターに映っている映像が目に入った。
「あー、それ?ひかりんが出た時のライブカメラの映像を昨日の朝コピーしたんだって。タク君の情報から探し出したって。昨日の夜から調べてたみたい。」
いつの間にかそんなことまで手を付けていたことに光は驚いた。
「すごいね。」
「でもまだ何もわからないらしいし、意味ないけどね」
そう言って莉緒は笑っていたが、光はただただ感心していた。
はっきり言ってこの2日間、拓哉も光も何もしていないに近い。
主に現代に慣れることに力を入れていた。
それも唯志のアイデアが大半だったのに、その唯志は独自に調査も進めていた。
「それでもすごいよ。私なんかよりよっぽど。でも良いのかな・・・こんなに頼っちゃって。」
「良いんじゃない?唯志は結構楽しんでるよ。私も楽しいし。」
莉緒はまったく気にしてない様子だった。
「あー、そうそう。その唯志から伝言あるよ。」
「え、なんですか?」
唯志から伝言と聞いて、光の表情が一気に明るくなった。
「一つは、働き方について。無戸籍のまま粘ってみるか、長期戦覚悟で戸籍取得する方向で動くか。どっちが良いか考えておいてって。唯志は後者の方が良いと思うって言ってたよ。」
「なるほど。うーん、どうしよう・・・」
「もう一つは、どっちのパターンで働くにしても電話番号は必要になるだろうから拓哉におねだりしとけって。無理そうなら唯志がなんか考えてくれるらしいよ。」
「電話番号・・・でも連絡先不明なんて雇ってもらえないですよね~。考えとかなきゃ。」
光は昨日購入したメモ帳に今の内容を書き留めた。
「そ・れ・よ・り~。今日は何から教えようかー。何か困ったこととかなかった?」
「あー、それならちょっと聞きたいことあって・・・」
主に拓哉には聞けない女性特有の話から相談し始めた。
特に莉緒は唯志の家に頻繁に泊まっていてどうしてるのか、とか。
こうしてしばらくの間、光と莉緒の御相談タイムが始まった。
待ち合わせ場所も昨日拓哉に案内して貰っていたし予定通り着けた。
むしろ少し早く来すぎたほどだ。
莉緒との待ち合わせまでは30分ほどある。
光は少しだけ周辺を見てこようかと思い、その場から歩き出した。
光は元々好奇心旺盛でじっとしていられないタイプだ。
そういう意味では拓哉と真逆で、むしろ唯志や莉緒に近い性格をしていた。
それにしても人が多い。
朝の通勤時間のためスーツ姿の人だらけで、光は少し変な感じがした。
光の時代ではあまり見かけたことがない光景だからだ。
(テレワークとかないのかな?)
光は当然の疑問を抱いたが、現代人に言ってもあまり伝わらない感覚だろう。
未だに出社するという無駄な行為が、正しいどころか正義とまで思われている時代だからだ。
そういう古い考えの世代が引退するか、技術的な改革が起きない限りこの光景は続くのだろう。
そんな社会情勢はさておき、歩いて数分。
まだほとんどの店は開店前で、行き交う人は通勤、通学の人ばかりだ。
そんな目まぐるし人の波で、更に梅田の地下である。
当然だが・・・
「迷った。」
光はつぶやいた。
梅田の地下は非常に迷いやすい構造をしている。
人が多いせいもあって、方向感覚をすぐに失うのだ。
元々目的地もなく適当に歩いていたのだから当然と言えば当然だ。
壁にもたれて、少し地図アプリを確認する。
しかしここは地下なので、うまく地図が出てこない。
「困ったなぁ」とつぶやき、光はぼんやりと道行く人を眺めていた。
多くの人が行き交っている。
本当に人が多い。未来とは大違いだ。
未来では花火大会でもこんなに人はいないだろう。
(こんなに多くの人がいたのに、未来ではいっぱい人が死んでしまうんだなぁ)
今までの光にとっては過去のことだったけど、今の光にとっては起こってしまう未来のことだからか、とても悲しい気持ちになった。
(防げるなら防ぎたいけど・・・そういうのって駄目だよね。)
そうこうしている間に、莉緒との待ち合わせ時間が迫っていた。
光は慌てて来た道を戻ることにした。
(今は余計なこと考えずに、帰ることに集中しなきゃね!)
ほどなくして、なんとか元の待ち合わせ場所に帰ってこれた。
時刻は待ち合わせ時間通りになっていた。
待ち合わせ場所には既に莉緒が来ていた。
「あれ?ひかりんそっちから来るんだ?」
「ちょっと早く着きすぎちゃって、探検してたら迷子になってました!」
「ええ!?連絡してくれたら迎えに行ったのに~」
「いやー、一人でも歩けるように慣れた方が良いかなって思いまして」
光は懐かしのてへぺろをした。どうやら未来でも健在らしい。
そこからは莉緒の案内で唯志の家に向かった。
平日なので当然唯志は不在だが、莉緒は合鍵も持っているので入り浸っている。
唯志の家は大阪市内ではあるが、梅田のある北区からは少し離れているので電車で移動した。
拓哉の家とも距離にしたらたいして離れていないのだが、電車の乗り換えなどの都合もあり実際の距離以上に距離感を覚える。
しかしそれは拓哉と唯志が疎遠になっていた理由とはあまり関係なかったりする。
「ここが唯志の家だよー。どうぞー。」
莉緒が自分の部屋の様に光を招き入れた。
「多少散らかってるけど気にしないでー」
莉緒が言う通り、部屋は物が乱雑に散らばっていた。
ゴミ屋敷というわけではないのだが、整理整頓されている様子でもなかった。
拓哉の部屋とは大違いだ。
唯志にしても莉緒にしても、そのあたりに無頓着な様子だ。
まぁ汚いわけではないし、元々光も潔癖というわけでもないのであまり気にしてなかった。
「あれ?これって・・・」
光はパソコンデスクのモニターに映っている映像が目に入った。
「あー、それ?ひかりんが出た時のライブカメラの映像を昨日の朝コピーしたんだって。タク君の情報から探し出したって。昨日の夜から調べてたみたい。」
いつの間にかそんなことまで手を付けていたことに光は驚いた。
「すごいね。」
「でもまだ何もわからないらしいし、意味ないけどね」
そう言って莉緒は笑っていたが、光はただただ感心していた。
はっきり言ってこの2日間、拓哉も光も何もしていないに近い。
主に現代に慣れることに力を入れていた。
それも唯志のアイデアが大半だったのに、その唯志は独自に調査も進めていた。
「それでもすごいよ。私なんかよりよっぽど。でも良いのかな・・・こんなに頼っちゃって。」
「良いんじゃない?唯志は結構楽しんでるよ。私も楽しいし。」
莉緒はまったく気にしてない様子だった。
「あー、そうそう。その唯志から伝言あるよ。」
「え、なんですか?」
唯志から伝言と聞いて、光の表情が一気に明るくなった。
「一つは、働き方について。無戸籍のまま粘ってみるか、長期戦覚悟で戸籍取得する方向で動くか。どっちが良いか考えておいてって。唯志は後者の方が良いと思うって言ってたよ。」
「なるほど。うーん、どうしよう・・・」
「もう一つは、どっちのパターンで働くにしても電話番号は必要になるだろうから拓哉におねだりしとけって。無理そうなら唯志がなんか考えてくれるらしいよ。」
「電話番号・・・でも連絡先不明なんて雇ってもらえないですよね~。考えとかなきゃ。」
光は昨日購入したメモ帳に今の内容を書き留めた。
「そ・れ・よ・り~。今日は何から教えようかー。何か困ったこととかなかった?」
「あー、それならちょっと聞きたいことあって・・・」
主に拓哉には聞けない女性特有の話から相談し始めた。
特に莉緒は唯志の家に頻繁に泊まっていてどうしてるのか、とか。
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