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第五章 姫様と宰相

果実の収穫とヘイラスの街

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 俺が精子をかけたファプールの蔓が生えていた所へユナ達と来ると、一面ファプールだらけだった。
 しかしそれだけじゃなく、いろんな果実が実りまくっている。
 梨や葡萄、バナナにマンゴーまである。
 何だこりゃ!?

エマ「わぁぁぁ♪」

ユナ「珍しい果実が⋯たくさん♪」

ユーリ「美味しそう⋯♪」

 みんなビックリしているが、ヨダレが垂れそうな顔になっている。
 とりあえず近くのファプールを1つ椀いでみると、椀いだ所からファプールがまた実った。
 無限ファプール製造機じゃないか!

ユナ「え? えぇっ? どうなってるんですか?」

 俺にも解らないよ。
 だが俺の精子の効果なのは間違いない。

「よく解らないけど、ファプールは傷みやすいから収穫しよう。さっきの広場に俺が果実だけを『転移』させるから、みんなは収納箱へ入れてくれないか?」

みんな「「「は~い♪♪」」」

 難しい事や言い訳は後で考えよう。
 収納から大きな収納箱を出して渡すと、3人が広場へ戻ったので、とりあえずファプールから収穫していく。
「転移」と念じてファプールを指定すると、一旦消えたファプールがまた実ったので、また「転移」でファプールを収穫する。

 そうして10回収穫すると、やっとファプールが実らなくなったが、ポツポツと湧いてくるのでそれも「転移」させた。
 本当にどうなってるんだ!

 とりあえず広場へ戻ってみると、ユナ達が次々とファプールを収納箱に放り込んでいた。
 だが「転移」させた場所に収納箱を置いていたらしく、上手く入らなかったファプールを放り込んでいたようだ。
 あまり考えず次々と「転移」させてしまったけど、大丈夫だったみたいだな。
 
「椀いでも椀いでも次から次へと湧いてくるから⋯。でもファプールは、もう収まったよ」

 そう言ったが、ユナ達は目を輝かせながらファプールを収納箱へ収納していく。
 俺も手伝って収納し終え、収納箱を起動させてみると1200個以上あった。
 ファプールを指定して「転移」させる事に集中していたが、まさか1000個以上とは思わなかったな。

エマ「お姉ちゃん、ファプールパイ食べたい♪」

ユーリ「私も♪」

ユナ「うん♪ たくさん作ってあげる」

 3人ともファプールパイが食べたいみたいで、ファプールが次から次へと湧いてきた事を忘れている。
 なんて食いしん坊なんだ。

「他の果実も『転移』させるから、それも収納していって」

みんな「「「は~い♪」」」

 もう1度戻って葡萄を椀いでみたが、葡萄は湧いてこなかった。
 たぶん精子を直接かけていないからだろう。

 ここに実っている葡萄を指定すると、全部で450房以上あったので、まずはそれを「転移」させ、少し間を空けてからバナナを200房、梨とマンゴーを300個ずつ「転移」させた。

 他に実っている果実が無いか「探索魔法」で探すと、「サーグ」という知らない果実があった。
 見てみると、ヤシの実のような果実だったので、それも150個「転移」させて広場へ戻った。


「みんな大丈夫?」

 かなり多いから、みんな汗だくになって収納しているが、顔が嬉しそうだ。

エマ「溢れてしまった果実を収納箱に入れるだけですから大丈夫です♪」

ユナ「これはあまり美味しくない果実ですが、収納しますか?」

 ユナがサーグという果実を持って言ってきた。
 ヤシの実みたいな果実に見えるけど、ユナ達の好みじゃないだけという可能性もある。

「美味しくないの? 中に美味しい汁が詰まってる実だと思ったんだけど⋯」

ユナ「これはサーグという実で、取り出すのが大変ですし、実も塩辛くて美味しくないんです。でも⋯⋯タカシさんが収穫したなら収納しておきますね」

 少し間があったな。
 またユナの勘だろうか?
 サーグという実を仕込み刀で半分に切ってみると、めちゃくちゃ美味しそうな嗅いだことのある匂いがした。
 
 これは⋯⋯カレーだ!
 少し食べてみると、まさにカレー粉、いやカレールーだ。

 昔キャンプでカレーを作った時、料理をするのが初めてだという女子がカレーを作った。
 その時はカレーなんて誰でも作れる料理だと思っていたが、その女子が作ったカレーは、ルーが溶けてなくてルーの塊が入っていた。
 しかも俺の皿に盛られたカレーだけに!
 その女子を傷つけたくなくて言わなかったが、俺はカレールーをそのまま食べた味を知っている。
 ユナが塩辛いと言ったのは、薄めてないからだろう。
 米はあるし、めちゃくちゃカレーが食いたくなってきたな。

「それを使って料理してみたいから収納しておいて」

 全部収納したので、収納箱を収納してユナの家のリビングにみんなと「転移」した。


「汗をかいたから、みんなでお風呂に入ろうか?」

みんな「「「はい♡」」」

 まだ7時前だから、朝食の前にお風呂へ入る。
 みんなに服を脱がせてもらい、みんなの服も順番に脱がせて風呂場へ入り、先に汗だくのみんなを俺が順番に洗っていく。
 泡まみれのおっぱいは最高だ!

 次に3人が俺の身体をおっぱいで洗ってくれて、お互い我慢できなくなったので、3人と2回ずつセックスして、最後は6つのおっぱいでチンポを挟んでもらい、3人の顔に射精した。
 朝から最高の気分だ!

 シャワーで精子を洗い流し、お風呂を出てみんなに身体を拭いてもらい、俺だけ先にドライヤーで髪を乾かしてからリビングへ戻った。
 
 今日はユナもまだ朝食を作っていないから、俺が作るか。
 何にしようかな?
 炊きたてのご飯はあるが、朝からカレーは合わないし、サーグでカレーが出来るか分からない。
 ケチャップはあるし、オムライスなんてどうかな?
 オムライスも食いたいし、エマちゃんが喜んでくれそうだ。
 でも朝からオムライスは、ちょっと違う気がする。

 う~ん⋯⋯。
 愛しい女性が喜んでくれそうな朝食って考えると悩む。
 昼食なら思い浮かぶけど、朝食って難しいな。
 ユナが、いつも悩みながら朝食を作ってくれていると思うと、感謝しかない。

 ユナの調理器具用の収納箱を起動して、どんな調理器具があるか見てみると、四角いフライパンがあった。
 何に使うフライパンか分からないが、これなら出汁巻き卵が作れそうだ。
 
 俺は料理が得意って訳ではなく、自分が好きな料理しか作れない。
 唐揚げやカツに天ぷら、出汁巻き卵やオムレツにオムライス、後はカレーや牛丼や親子丼にカツ丼だ。
 一人暮らしを始めた時、金が無いから毎日弁当を作ろうと思ったが、誰に見せる訳でもないし、簡単に作れそうな弁当向きの料理を覚えた。

 だいたい丼料理にしておけば、ご飯を炊いて乗せるだけだし、寝る前に下拵えさえしていれば、朝起きて短時間で作れる。
 男の一人暮らしで毎日弁当を作るなら、短時間で作れるメニューじゃないと続かない。
 美味しくて、自分が腹一杯になれる料理なら何でもいい。

 料理は嫌いじゃないし、ネットで調べて好きなチェーン店の再現レシピを作ったりもしていた。
 男としては料理が出来る方だと思うが、プリンは作れてもケーキは作れないし、パンの作り方も知らなかった。
 自分の好きな料理は作れても、それ以外の料理は作れないんだよな。

 鰹出汁が無いので、ボウルに鶏がらスープと醤汁、あと砂糖も加えて、ハーストイーグルの卵を割り入れてかき混ぜる。

 四角いフライパンに油を引いた時、ユナが脱衣所から出てきた。

ユナ「朝食をすぐに作りますね」

「ありがとう。俺も卵料理を1品作るよ」

 そうして出汁巻き卵を作っていくと、ユナが料理をしながら興味津々に見ていた。
 出汁巻き卵を4人分作り終えた頃、エマちゃんとユーリも脱衣所から出てきた。
 2人とも髪が凄く整っているので聞くと、ドライヤーを使ってお互いに髪を整え合っていたそうだ。
 ドライヤーを作ってから、みんないろんな髪型を試して遊んでいるらしいが、逆にどんな髪型にも整えられるので、なかなか自分の好きな髪型を絞れないというのと、俺にもっと可愛いと思ってもらいたいから、自分が思う可愛い髪型が決まるまで、俺には見られたくないらしい。

ユーリ「ドライヤーって凄いですね♪」

エマ「髪型が綺麗に整うから楽しいです♪」

 女の子だから、そういうのが楽しいんだろう。
 愛しい女性が喜んでくれて幸せだ。

ユナ「タカシさんが凄い卵料理を作ってくれたから、朝食は楽しみにしてて♪」

 ユナ⋯、ハードルを上げないでくれ。
 出汁巻き卵は綺麗に作れたが、ユナとエマちゃんが美味しいと思うだろうか?
 ユーリは大丈夫な気がするけど、濃い味が好きな狐族は物足りないと思うかも知れない。

「素直な感想を知りたいから、俺が作ったからって考えないで感想を言って。お昼は別の卵料理を考えているから、今日の昼食は任せてくれ」

 ユナ、エマ「「はい♪」」

 昼食を俺が作ると言ったから、ユーリが寂しそうな表情になってしまった。

「ごめんユーリ。じゃあユーリにはお弁当を作ってあげるよ」

ユーリ「はぁぁぁ♪  タカシさんが私の為にお弁当を⋯⋯♡♡」

 胸の前で手を合わせ、ユーリが感激して目をウルウルさせている。
 爆乳が二の腕に寄せられて、凄い事になっているな。
 俺がお弁当を作るだけでそんなに喜んでくれる事が嬉しい。

ユナ「ふにゅぅぅ⋯⋯」

 ユナが狐耳を伏せて、声にならないような息を漏らした。
 嫉妬している時の感じだ。

エマ「タカシさん。あ、あの⋯⋯エマとお姉ちゃんにも、同じお弁当を作ってもらえませんか?」

 姉の様子を察したエマちゃんが、ちょっと申し訳なさそうに言ってきた。

 こういうのはダメなのか⋯。
 ユナとエマちゃんは、お昼に作りたてを食べられるのに、俺が作ったお弁当というのが大事なんだろう。
 愛されている事を実感して幸せだ!

「分かった。1人分作るのも、1度にたくさん作るのも変わらない料理だから、ユナ達の分もお弁当にしてあげるよ。でも食べた事ない料理だと思うから、本当に素直な感想を聞かせてね」

みんな「「「はい♪」」」

 
 出汁巻き卵を作ったので、ユナ達が朝食を作ってくれている間に、俺は庭に出てオムライスを作っていく。
 ユナに大きなフライパンとバターとケチャップをもらい、ユーリのお弁当用なので、ニンジンの微塵切りにホロリ鳥の胸肉とタマネギでチキンライスを作り、4人分のケチャップライスが出来た。

 次にハーストイーグルの卵でふわふわオムレツを作ってケチャップライスに乗せ、オムレツを切ってふわとろオムライスが完成した。
 上手く出来たが、やはりテフロン加工のフライパンが欲しいな。
 魔法で作れないか考えてみよう。

 それぞれのオムライスに、ケチャップを使ってこの世界の文字で名前を書いて♡マークを入れた。
 愛しいと思ってるって気持ちが伝わればいいな。

 ユーリ用のオムライスをガラスの入れ物に入れ、ユーリの収納鞄に入れおき、俺とユナとエマちゃんの分は俺が収納しておく。

「お弁当はユーリの収納鞄に入れたから、お昼に食べてね」

ユーリ「は~い♪」

 めちゃくちゃ嬉しそうだ。
 評判が良ければ、ミーシャとアイリにも作ってあげよう。
 2人は肉が好きだから、ホロリ鳥のモモ肉と皮も使おう。

 ユナ達の作ってくれた朝食が出来たので、みんなと朝食を始める。
 ユーリとエマちゃんが捏ねた焼き立てパンと、ユナが作ったコーンクリームシチューに、俺が作った出汁巻き卵だ。
 俺が頂きますと言うと、みんなも頂きますと言って朝食が始まった。

「もし物足りなかったら、ケチャップを掛けてみてね」

 ユナとエマちゃんの感想が不安なので、思わずケチャップに助けを求めた。

ユナ「はい♪ でもこのまま食べてみたいです」

エマ「タカシさんが作ってくれた卵料理♪♪」

ユーリ「作り方を教えてくださいね♪」

 食べる前から、俺が作ったというだけで嬉しそうだ。

 出汁巻き卵を食べみると、やっぱり美味しかった。
 朝食に出汁巻き卵は、パンでも合うな。

ユナ「⋯⋯凄く繊細な味です♪」

ユーリ「んふっ♪ 私は凄く好きです♪」

エマ「美味しい⋯♡ で、でも、ケチャップを掛けてみていいですか?」

 みんな一口食べて、それぞれの感想を言った。
 ユナは何か考えているようだし、ユーリは予想通り気にいったみたいだが、エマちゃんはケチャップを掛けたいと言ってきた。
 俺がケチャップを掛けてもいいと言ったからというのもあるが、やはり狐族には味が足りなかったようだ。

 だが獣人の好みが分かったので、それが収穫だ。
 ユーリは薄味が好きで、野菜料理なら濃い味が好き。
 アッサリ系が好きだけど肉が嫌いな訳じゃなく、肉も好きで食べたい気持ちも強いが、身体が受け付けないからアッサリした肉が食べたいんだろう。
 野菜ばかり食べていても、逆にタンパク質が不足してしまうからな。

 ユナとエマちゃんは、肉料理も野菜料理も好きだから、両方味わえる料理が好きなんだろう。
 卵はタンパク質が多いが、ケチャップを掛ければトマトの味も加わる。
 中間くらいの味が好きなんだな。

 ミーシャとアイリは肉食だから油多めの料理が好きだが、肉のタンパク質が必要な種族なんだろう。
 だが女性だから、甘いスイーツには目がないといった感じだ。

「素直に言ってくれてありがとう。愛しい女性の好みが解って助かるよ」

ユナ「愛しい⋯♡」

ユーリ「女性⋯♡」

エマ「タカシしゃま⋯♡」

 みんな欲情してしまった。
 本当に可愛くて愛しいな。

 朝食を食べて洗い物をして、欲情してしまったみんなと、また1回ずつキッチンでセックスした。
 キッチンプレイも最高だ!

 ユーリはそろそろ本屋へ出勤する時間なので、ねだられてパイズリ挟射すると、鼻歌を歌いながら本屋へ出勤して行った。


「じゃあ俺はみんなの様子を見てくるよ」

ユナ「はい。私とエマは、セドム村の家屋に料理を手伝いに行ってきます」

 今日もハンバーガー作りを手伝ってくれるみたいなので、2人に抱き付いてもらってセドム村に「転移」した。


 ユナとエマちゃんを家屋へ送り、俺はビニールハウスに向い、モナミさんに追加のファプールを50個渡して、王都の東区へ「転移」した。


 そのままドリンさんの家へ向かい、玄関をノックしてみたが返事がない。
「探索魔法」で家の中を覗くと、ランスさんが筋トレをしていた。
 軍隊の者に見付かるといけないから、居留守を使っているみたいだ。
 一応この家に「監視」の魔法を付与しておこう。

「タカシですが、ドアを開けてくれませんか?」

 するとすぐにドアが開いて、汗だくのランスさんが出てきた。

「すみません、タカシさん。軍隊の者が探しに来るかも知れないので⋯⋯」

「いや、その方がいいです。次からは『テレパシー』で連絡してから来るようにしますよ」

 先に「念話」で伝えておくべきだったな。

 ドリンさんは騎士団の仕事に行ったそうなので、中へ入って今後の事と必要な物は無いか聞いていく。

「昨日あれからドリンと話して、とりあえず軍隊やマードックの様子を調べるように指示しました。私が動き回る訳にはいかないので、騎士団から得た情報を元に今後の事を考えます」

 騎士団の人達が調べてくれるなら、その方が助かる。
 ランスさんは騎士団長だから、部下に指示するのは慣れているだろう。

 俺の役に立ちそうな情報は提供してくれるらしいので、それを元に俺も今後の動きを考えるが、姫様と王妃様の事は気になるので、もう1度忍び込んで様子を見てみよう。

 必要な物は無いか聞くと、この家にはエアコンや水道もあるので、快適に匿ってもらえるとお礼を言われた。
 ドリンさんが何か言ったのか、ランスさんまで俺を神様扱いしている感じだな。
 まあ信用されて悪い気はしないし、騎士団と連携して行動できそうだから助かる。

 多少お金も必要だろうと思ったので、遠慮するランスさんに言い聞かせて、金貨100枚とハンバーガーを2個渡して、俺はサムさんのキッチンへ向かった。


 獣人居住区へ向かっていると、劇団長のダリルさんから「念話」が来た。
 もしかして⋯⋯。

『タカシさん。ダリルですが、聞こえますか?』

『はい、聞こえますよ』

 当たり前だが、みんな初めて「念話」する時は、本当に聞こえているのか半信半疑になってしまうみたいだな。

『私達の演劇が撮影できたので、ご連絡致しました』

 早くないか?
 いつが休みか知らないが、土日も演劇の公演はあるだろう。

『大丈夫ですか? 急いで撮影してもらったみたいで申し訳ないです』

 そう言ったが、公演する演劇のリハーサルや練習はするし、撮影した動画を観ながら役者達が自分の演技をチェック出来るので、逆に凄く助かったとお礼を言われた。
 確かにそうかもな。
 やっぱりカメラとタブレットをプレゼントしてあげよう。

『こちらこそ、ありがとうございます。では今から受け取りに行きますね』

『はい。警備の人には言ってあるので、そのまま楽屋へお越しください』

 警備員が居るのか。
 熱狂的なファンがたくさん居るみたいだったから、中にはストーカーみたいなファンも居て危ないんだろう。
 俺を楽屋へ入れてくれたのは、やはり人間男性だし、オスカルみたいな見た目だからだろうな。

 西区の路地に「転移」して劇場へ向かい、警備員らしき人に事情を話すと、そのまま楽屋へ通してくれた。

「もう来られるとは、近くに居られたんですね」

 さっき連絡をもらってすぐに来たから、たまたま劇場の近くに居たと思われたみたいだ。
 あまり「転移」魔法の事を知られるのは良くないから、今度からは時間を空けてから「転移」しよう。

「楽しみで、急いで来ちゃいました」

「残りの9公演を撮影しておきました。あの⋯また新しい脚本が出来たら、それも買って頂けますか? もちろん1度観てからでいいので⋯」

 ダリルさんが少し申し訳なさそうに言ってきた。
 いくらでも欲しいから、追加されたら買い取りたい。

「はい。観られる演劇が多いのは嬉しいので、よろしくお願いします」

 演者が自分の演技をチェックするのに役立つし、カメラとタブレットを渡しておこう。

「この劇場では、演劇だけじゃなく、曲芸をやる人や面白い話をする芸人さんも居ます。タカシさんが家で観たいなら、私から話を通してみますが、いかがですか?」

 ダリルさん達の劇団以外に芸人さんとかも居るなら、それも欲しいな。

「いいですね! ではそちらもお願いします」

 テレビ局が無いから、観られる映像はいくらでも欲しい。

「一応お伝えしておきますが、私の住んでいる街の外れに、孤児の子供達を養っている寺院があって、そこの子達にみなさんの演劇を観せました。それは大丈夫でしたか?」

「孤児の子供達に⋯⋯。そんなの、大歓迎ですよ! いや、素晴らしい! タカシさんの作られたカメラとタブレットを使えば、そんな素敵な事が出来るんですね!」

 金を取っている訳じゃないから大丈夫だろうと思っていたが、個人的に楽しむ目的と言って許可をもらったので一応聞いてみると、予想以上に感激されてしまった。
 この国の人は、みんな孤児の子供達の事を気にしているんだな。

 詳しく聞くと、孤児の子供達がいる所へ行って、無料で演劇の公演をしたいと以前から考えていたらしい。
 しかし劇場での公演もあるし、休日に役者を休ませないのは団長として失格だと思い、モヤモヤしていたらしい。

 カメラとタブレットがあるし、俺なら編集も出来るから、ドラマや映画も撮影出来るかもな。
 エマ監督に任せれば上手に撮影してくれるかも⋯⋯。
 いや、エッチな動画撮影が上手なだけかも知れないから、まずは自分達で短編映画を撮ってみるべきか。
 ちょっと楽しくなってきたな。

 ダリルさんにお礼を言って、一応口止めしてカメラとタブレットをプレゼントしてから楽屋を出て、路地に入って東区のキッチンへ「転移」した。


 サムさんのキッチン前に「転移」すると、外でニールさんが何か作っていた。
 エアコンや換気扇、シャワーも少しある。

「おはようございます、ニールさん」

「あっ、おはようございます」

 大量に作っている理由を聞くと、まだまだエアコンや換気扇が必要だから、また魔法の付与をして欲しいと遠慮がちに言われた。
 ハーフエルフ居住区の分も要るからだろうな。
 付与は簡単だが、大量となると大変なので、俺はまとめて魔法の付与が出来るやり方を付与魔法の魔法書で覚えた。
 同じ物なら、指定すれば1度に出来るので便利だ。

 だがニールさんが、魔道具だから一応販売した方がいいと言うので、ハーフエルフ居住区の分はエアコンが金貨3枚、換気扇は金貨1枚という値段にした。
 販売している分もあるから、あまりタダで設置しまくるのは良くないし、東区の住人以外に俺の付与した魔道具の事が知られるのは、後々面倒な事になりかねない。

 それからジョーイ建築会社の社員全員の懐中時計と、俺用のカッコイイ腕時計が完成していたので、全部に「時計」の魔法を付与した。
 みんな喜んでくれたら嬉しいな。

 キッチンの中へ入ると、サムさんとアイネさんがハンバーガーや唐揚げを作っていた。

「おはようございます」

サム「おはようございます」

アイネ「おはようございます、タカシさん♪」

「かなりハンバーガーの在庫が出来たんじゃないですか?」

サム「はい! でも魚が足りなくて、フィッシュフライバーガーとアジフライバーガーが作れないので、魚を仕入れてもらえますか?」

 そう言えば用意した魚は少なかったな。
 南区の海洋人居住区へ行って仕入れるか、海に魚を捕りに行くか⋯。

「わかりました。ちょっと時間が掛かるかも知れませんが、今日中には仕入れてきます」

サム「よろしくお願いします」

 ハンバーガーの生産が予想以上に早かったから、金曜までには余裕で間に合うだろう。
 フィッシュフライバーガー用の魚は、やはりたらだろうな。
 サンマやブリなんかの魚を渡したが、何かに決めないと良くないかも知れない。

 元の世界のフィッシュフライバーガーと違い、魚のミンチ肉にパン粉をまぶして揚げたフィッシュフライバーガーだから、俺が食べた感じは違和感が無かったが、白身魚に決めた方がいい。
 猫族の獣人に聞いてみるか。

 キッチンを出て南区の海洋人居住区の路地に「転移」し、そのまま魚屋へ向かった。


 朝だから、捕れたての魚がどの店にもたくさん並んでいる。
 買い占めるのは良くないので、順番に魚屋を回ってアジと鱈を10匹ずつ買い、全部で200匹の魚が手に入った。
 とりあえず足りるだろうが、やはり海に行って漁をしよう。

 サムさんのキッチンへ魚を届けると、ジュースの仕入れもお願いされた。
 俺はいろいろ考えが足りないな。

 だが今朝たくさん果実を収穫したから、それをジュースにしようと思っていたので、昨日ピーラーを作ってもらった金属加工会社へ行って、ジューサーの絵を描いて説明し、10台注文した。
 ついでにミンチ肉用にフードプロセッサー、あと昨日の盗賊達の仕事の為に、タコ焼き用の鉄板も注文し、俺も家でタコ焼きを作りたいので、家庭用のサイズも1つ注文した。
 忙しいが、俺が動かないとみんなに迷惑がかかる。

 そのまま今度は盗賊達が居る街道へ「転移」した。


「探索魔法」で盗賊達を探すと、昨日居た場所の近くに全員居たので、そこへ歩いて向かった。

盗賊D「ぼ、冒険者様! おはようございます!」

盗賊達「「「おはようございます!」」」

「おはよう。昨日言った通り、仕事の話をしようか?」

 元はミーシャ達を襲おうとしていた盗賊達なので、ちょっと上から目線になってしまう。
 でも敬語なのも変だし、逆にこの人達もリアクションに困るだろう。

 とりあえず今考えている仕事は、農業、畜産業、それとタコ焼き屋の屋台だ。
 ハンバーガー屋台の為に畑を増やしたいが、それには人手がいる。

 そう提案してみると、身内が危険な目に遭うから冒険者を続けられないので、農業や畜産の仕事をしたいと言って、その為なら家族みんなで引っ越したいという事だった。

 だが盗賊Dはタコ焼き屋の屋台に興味津々で、元々料理が得意なのでやってみたいと言ってきた。
 盗賊Dを「鑑定」すると、「カリフ ハーフエルフ ♂ 28歳 魔法種水魔法」と出た。
 タコ焼き屋はカリフさんに任せてみよう。

 まだ畑やタコ焼き屋の準備に時間がかかるので、元盗賊達には家に帰って引っ越しの準備をしておくよう言って、準備資金として金貨50枚渡した。
 遠慮されたが、仕事をして返してくれたらいいと説得し、俺は少し離れてヘイラスの街まで飛んだ。


 街道に沿って15分くらい飛ぶと街が見えたので、「透明」の魔法を使ってから街道に降りた。
 荷馬車や商人らしき人がたくさん居て、街の入口に並んでいるので、人の居ない所で「透明」を解除して俺も列に並んだ。

 どうやら街に入るのに銀貨10枚必要らしい。
 俺の思った通り、並んで居る人達はほとんど商人みたいで、ヘイラスにしか無い商品を仕入れに来た人や、逆にヘイラスに商品を卸しに来た人ばかりみたいだ。

 俺の順番が来たので銀貨10枚を払うと、日付と受領済みと書かれた木札をくれた。
 これは街を出る時には返却しないといけないらしい。

「探索魔法」で街全体を見てみると、コレットと同じくらいの大きさだが、南側は海で、そこにもいろいろお店があるみたいだった。

 ミーシャ達を探すと、西側のお店に居るのが分かったので、とりあえずそこへ向かった。
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