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第五章 姫様と宰相

ハンバーガー屋台の準備

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「ここがタカシさんの家ですか?」

「俺の家というか、俺が住んでいる狐族の獣人女性の家です。王都から馬車で3日くらい離れた、コレットという街の外れになります」

 サムさん達には言っていないから、俺は王都に住んでいて、大きな家に住んでいると思われていたかな?
 まあそう思われても仕方ないが、俺はこの家が好きだし、ユナとエマちゃんと一緒に住んでいる事は胸を張って言いたい。

 玄関をノックして声を掛ける。

コンコン! 「ユナ。タカシだけど、サムさんを連れて来たよ」 

 そう言うとすぐにユナが扉を開けてくれた。

「お帰りなさい、タカシさん♪」

「ただいま。この人がサムさんだよ」

「サ、サムです!」

 めっちゃ緊張しているな。

「ユナです。初めましてサムさん」

「この人がハンバーガー用のパンの作り方を教えてくれるユナ先生です」

「先生だなんて⋯⋯♡」

 ユナが照れてしまった。
 サムさんの前で可愛いユナを出されると、ちょっと嫉妬心が湧いてしまう。
 でもサムさんは普通の反応だな。
 同じ獣人なのに、こんなに可愛いユナを一瞬でも色目で見たりしていない。
 もしかして、同じ種族じゃないと魅力を感じないのかもな。

「よ、よろしくお願いします!」

 緊張した感じでサムさんが挨拶をして中へ入ると、すぐにユナがサムさんをキッチンへ連れて行ったので、エマちゃんに「念話」でサムさんを連れて来た事を伝えた。
 俺もパンの作り方を覚えたいので、サムさんの横でユナ先生に教えてもらう。

 小麦粉にお湯を交ぜ、バターとイースト菌を交ぜて捏ねていく。
 普通は砂糖やミルクも加えるらしいが、甘くない味の薄いパンなので少量だけだという。

 ユナ先生の言う通りパン生地を捏ねていると、エマちゃんが帰って来てパン作りに参加した。
 意外と言ったら失礼だが、サムさんはなかなか器用にパン生地を捏ねている。

 捏ね終わった生地を少し寝かせてから、今度はハンバーガー用の丸い形にしていく。

ユナ「ハンバーガー用なので、丸い形に整えます」

サム「はい!」

 サムさんはメモを取りながら真剣にパンを作っているし、エマちゃんも一生懸命作っている。
 エマちゃんが可愛い手で捏ねているし、ユナとエマちゃんが捏ねたパンを独り占めしたいと思ってしまい、ちょっと自己嫌悪になってしまった。
 2人のオマンコに中出ししまくっているのに、何て器の小さいヤツだ!

ユナ「屋台の為にたくさん作るなら、このまま収納箱に収納して、後で一気に焼いていくといいでしょう」

サム「はい!」

 そうか。
 パンを焼く魔道具も必要だから、大きなオーブンみたいな物を作ろう。

 ユナがトレイにパンを並べて、キッチンの横にある石窯に入れた。
 石窯があるのは知っていたが、加熱は薪じゃなくて火の魔道具みたいだ。

ユナ「均等に熱が加わるように、少し離して並べる事が大事です。この大きさなら、だいたい10分で焼き上がります」

サム「はい!」

 パンを焼いて、カツやハンバーグ、フィッシュフライにテリヤキチキン、後はポテトだな。

「1人では無理だと思いますから、誰かに手伝ってもらいましょう」

サム「そうですね。アイネちゃんも屋台の仕事がしたいと言っていたので、2人でしようかって話していたんです」

 アイネさんもだが、仕事を探している東区の獣人はたくさん居るだろうから、ハンバーガー屋台が軌道に乗るまで手伝ってもらおう。
 それに将来的には王都の南区にハンバーガー屋の店を建てるのもいい。
 そうなればサムさんも社長だ。
 仕事に困っている東区の獣人や、ガーランドのせいで盗賊紛いになってしまった人達も雇って働かせてあげればいい。

「まあ無理をする必要はありません。売り切れという状況も、希少価値が出て良いと思います。ただ最初だけ、みんなに美味しさを知ってもらう為に、多めに在庫が出来てから販売しましょう」

サム「希少価値ですか⋯⋯。な、なるほど!」

 アイネさんにも教えたいので「念話」して説明すると、「私にも教えてください!」とやる気満々で言われたので俺が迎えに行った。

 アイネさんも加わって、もう1度パンを作って、そのパンが焼き上がったので、次はハンバーグやトンカツ、チキン南蛮とフィッシュフライを俺が教えていく。
 ユナやエマちゃんもメモを取りながら真剣に聞いている。

 ユナが卵や野菜を大量に買っていてくれて本当に助かるな。
 俺がサムさんにハンバーガーの作り方を教えたいと言っただけで、必要な食材は全部揃えてくれている。
 また直感的な事かも知れないが、俺の役に立ちたいと言っていたからユナも満足だろう。
 後で感謝の気持ちを言葉とエッチで伝えておこう。

「今ある牛肉と鶏肉は、あまり手に入りにくい高級肉なので、他の肉で作ると味が少し変わってしまうかも知れませんが、作り方は同じです」

 バッカローとチキンバンバンの肉は高級肉だし、俺でも手に入れるのが難しい。
 今回は寺院の子供達やグーテンベルクの従業員に差し入れしたいから特別だ。
 通常販売する物は、普通の牛肉とニワトリの肉でいいだろう。

ユナ「少し値段を高くして、高級肉で作ったハンバーガーを限定販売してはどうですか? 魔物の肉が手に入った時だけとか⋯」

 流石ユナ、それもいいかもな。
 元の世界のハンバーガー屋にも、そういうメニューがあった気がする。

エマ「チキンバンバンの唐揚げは特別美味しかったですから、少し高くても買ってもらえると思います」

 チキンバンバンは本当に希少だから、ホロリ鳥のチキン南蛮になるだろう。
 チキンバンバンやバッカローが居たら、魔物だから迷わず狩るようにしよう。
 メニューを考えるのが楽しみになってきたな。
 差し入れに行った時、グーテンベルクでメニュー表の印刷をお願いしよう。

 みんなで効率良くハンバーガーを作っていき、3時間ほどで160個のハンバーガーが出来た。
 ハンバーグ、トンカツ、チキン南蛮、フィッシュフライを挟んだハンバーガーをそれぞれ40個ずつだ。
 丁度お昼なので、みんなで好きなハンバーガーを2個ずつ食べて、残りを笹の葉で包んで収納した。

「寺院と印刷会社に差し入れしてくるから、フライドポテトの作り方を教えてあげてくれる?」

ユナ「はい。行ってらっしゃい、タカシさん♪」

みんな「「「行ってらっしゃ~い♪」」」

 みんなに見送られながら、まずはグーテンベルクの近くの路地に「転移」した。


 そのまま歩いてグーテンベルクへ向かい、受付で声を掛けると、エルノールさんがハイデルベルク社長を呼んでくれた。
 ハンバーガーの試作品を差し入れに持ってきたと言うと凄く喜んでくれて、そのままエルノールさんに休憩室へ案内してもらった。

ハイデルベルク「もう昼休憩なので、そろそろみんな来ると思います」

「従業員は何人ですか?」

ハイデルベルク「事務員を合わせて17人です」

 もう休憩時間らしいので、収納からハンバーガーのいろんな種類を机の上に出した。

エルノール「こんなに!? 凄く美味しそうな匂い⋯♪」

「好みに合わせていろんな種類があるので、好きなハンバーガーを2個ずつ選んで食べてもらって、みなさんの感想を伺いたいです」

 ハーフエルフの好みも知りたいし、獣人の作業員も2人くらい居たはずだ。

 しばらくすると、作業員達が休憩室へ入ってきた。

ハイデルベルク「みんな、タカシさんが昼食を差し入れに持って来てくださったから、好きなハンバーガーを2個ずつ選んで食べてくれ」

「近々王都で屋台販売するので、食べた後に感想を聞かせてください」

従業員「「「あ、ありがとうございます!」」」

 みんなビックリした後、美味しそうな匂いに釣られて机の前に並んだ。
 中身が何か分かるように印を付けているので、中の具が何か説明していく。

「赤い印が付いているのは牛肉のミンチを挟んだハンバーガー、黄色の印のは豚肉を挟んだトンカツバーガー、緑の印のは鶏肉を挟んだチキンバーガー、青の印のは魚の肉を挟んだフィッシュフライバーガーになります。好きなハンバーガーを2個ずつ選んで食べてください」

 そう言うと、みんな順番に並んで好きなハンバーガーを2個ずつ選んでくれた。
 ハーフエルフの従業員は好みがバラバラみたいだから、食べ物の好みは人間と変わらないみたいだ。
 獣人の従業員は、やはり草食と肉食に分かれているようで、鹿族の男性従業員はフィッシュフライバーガーとチキンバーガーを選んでいるし、ハーフエルフの女性事務員も同じだ。
 ハーフエルフ女性には、牛肉や豚肉より、魚や鶏肉の方が好まれるみたいだな。

作業員A「んんっ! 凄く美味しいです!」

作業員B「ミンチ肉がこんなに美味しいとは⋯! それにパンと一緒に食べても違和感が無いです」

作業員C「はむっ、んんっ! ん~、この鶏肉は何ですか? ジューシーで⋯⋯それにこの白いソースが⋯⋯あむっ、んん~♪」

 やっぱりマヨネーズは好評だな。
 チキンバーガーを選ばなかった従業員も食べてみたくなったみたいで、半分ずつ交換し合って食べている。
 全種類食べさせてあげたかったが、普通の人ならハンバーガーは2個くらいでお腹いっぱいだろう。

エルノール「食べた事のない味で、全部凄く美味しいですが、私はフィッシュフライバーガーとチキンバーガーが好みです」

事務員達「「「私も♪」」」

 やはりハーフエルフ女性には魚と鶏肉が好評で、ハーフエルフ男性はバラバラだった。
 お客の好みで選んでもらって、よく売れるハンバーガーを多めに作るようにすればいいな。

「ご協力、ありがとうございました。みなさんの意見を参考にさせて頂きます」

従業員「「「ありがとうございました!」」」

 みんな嬉しそうにお礼を言ってくれた。

アルウェン「いつ頃から販売予定ですか?」

「早ければ今週末くらいからで、金、土、日曜日だけ南区で屋台を出す予定です。毎日販売するのは、ちょっと生産が追い付かないので⋯」

従業員「週末に販売なら、絶対買いに行きます!」

エルノール「週末が楽しみになりました♪」

「今回作った牛肉と鶏肉のハンバーガーは、あまり手に入らない高級肉を使っているので、実際に販売するハンバーガーは少し味が違うと思います。それを踏まえて聞きたいのですが、いくらくらいで販売するべきだと思いますか? 素直な意見を聞きたいので、遠慮なくお願いします」

従業員B「そうですねぇ⋯。今回のハンバーガーなら1つ銀貨5枚くらいは出しても食べたいです」

 だいたい1000円くらいか。
 確かに貴重なバッカローの肉だからそれでも売れそうだが、700円くらいにするか。
 普通の牛肉で作ったハンバーガーは、400円くらいでは販売したいから銀貨2枚にしよう。
 フライドポテトとジュースのセットで昼食としては満足だろうから、銀貨5枚のお得なセット販売もいい。
 俺がコレットの街の料理屋で食べた料理も、昼食1回で銀貨8枚とかだったしな。

「ありがとうございます。凄く参考になりました。午後も仕事を頑張ってください」

従業員達「「「はいぃっ!」」」

 言った後に、俺のトランプのせいで忙しくなってしまったのに⋯と、ちょっと後悔したが、みんな嬉しそうに返事をしてくれた。
 後でハイデルベルク社長に聞いた話だと、工場を増築しないとトランプの生産が追い付かないくらい儲かっているので、社員達の給料を上げる事が出来て、従業員全員俺への感謝が半端じゃないらしい。
 予想外だが、ハイデルベルク社長が儲かった分を従業員に還元する社長で良かった。
 会社は金を稼ぐ為に来ている。
 印刷の仕事自体が好きで情熱を燃やしていても、見返りが無いと情熱はいつか冷めてしまう。
 流石はハイデルベルク社長だな。
 

 満足そうで嬉しそうな社員達に休憩の続きを取ってもらい、俺は社長に促されてエルノールさんと3人で応接室へ案内された。

ハイデルベルク「美味しい昼食をありがとうございました。社員達も喜んでくれて、私も凄く嬉しいです」

エルノール「本当に美味しかったです。タカシ様はお料理も得意なんですね!」

 エルノールさんは少し欲情しているみたいだ。
 俺は混血種をすぐ欲情させてしまう存在なんだろう。

「忙しいのに申し訳ないですが、屋台販売するハンバーガーのメニュー表を印刷する仕事をお願いできませんか? やっぱり職人の人に、綺麗に印刷して欲しいです」

「トランプを印刷出来る機械以外はそれほど忙しくないので、仕事を頂けるのは助かります。ではハンバーガーの写真を撮影して、メニュー表のデザインを考えていきましょう」

 折角だからこの会社にあるカメラの魔道具で撮影してもらおう。
 フライドポテトやジュースの写真は、後で俺のカメラで撮影して持ってくれば大丈夫だろう。
 サムさんは料理を覚えるのに忙しいだろうから、デザインは俺とプロの社長で考えた方がいいな。

 前に案内してもらった撮影室へ行き、ハンバーガーの写真を撮影してもらい、また応接室へ戻って話を詰めていく。
 エルノールさんは絵が得意らしく、3人で意見を出し合っていくと、すんなりメニュー表のデザインが完成した。
 販売するのはサムさんという猿族の獣人男性だと言ったので、可愛い猿の絵が描いてあり、「サムのハンバーガーショップ!」と丸くて太いコミカルな書体で書かれている。

「まだフライドポテトという料理や、ジュースも一緒に販売する予定なので、その写真は撮影しておきます」

「キャメラの魔道具をお持ちなんですか?」

「はい。以前キャメラの魔道具を見せていただいて、俺も作ってみました。ちょっと寺院の子供達にもハンバーガーを差し入れしたいので、また夕方までに来ます」

 1時を過ぎているので、子供達がお腹を空かせているだろう。

「はい。早く子供達に持って行ってあげてください」

 デザインを考えるのが楽しくて長居してしまった。

 グーテンベルクを出て路地に入り、寺院へと慌てて「転移」した。


 すぐに寺院の中へ入って差し入れをする。

「遅くなってごめんね。昼食の差し入れに、みんなが作ってくれている笹籠へ入れるハンバーガーという料理を持って来たよ」

みんな「「「ありがとうございます、タカシさん♪」」」

 可愛い声を揃えてお礼を言ってくれた。
 グーテンベルクでも説明したように、ハンバーガーを包んでいる笹の葉に付けた印の意味を説明して、好きなハンバーガーを選んでもらう。
 ついでに冷えた甘いジュースも数種類出すと、ミランさんが子供達用のコップを用意してくれた。
 
ミラン「じゃあみんな、いただきます!」

みんな「「「いただきま~す♪」」」

 みんながハンバーガーを選んで自分の席に座ると、ミランさんがみんなに声を掛けた。
 寺院だからなのか、学校みたいな感じなんだな。
 というか学校はあるのかも知れない。
 でないとユナ達は、文字を覚えたり計算をしたり出来ないだろう。

 みんなハンバーガーに齧り付いて歓喜の声を上げている。
 ミランさんもチキンバーガーに齧り付いて、頬にマヨネーズを付けながら美味しそうに食べいる。

ミラン「こんなに美味しい料理、食べた事ないです♪ これを笹籠に入れて販売するなら、たくさん必要ですね!」

サリー「はむっ、んん~♪ 美味しい!」

ハル「ああ、サリー。頬っぺたにソースが付いてるよ。ほら⋯」

 ハルくんがサリーちゃんの頬っぺに付いたマヨネーズを指で拭っている。

サリー「ミランさんも付いてるもん!」

 サリーちゃんのその声に、慌ててミランさんが頬を拭った。
 みんなの先生みたいな人だから、教育上良くないと思ったのか、凄く焦っている。
 ⋯⋯と思ったが、俺を見て恥ずかしそうにしているから、俺に恥ずかしいところを見られて焦っているみたいだ。

 苦労してきた人だろうから、俺がエッチな事をして癒せるなら、してあげたいな。
 いや、俺がエッチしてみたいと思っているだけかな?
 最近精力が強くなっているから、自分に欲情した女性にエッチな事をしたいと、すぐに思ってしまう傾向がある。
 ユナ達を愛しているのに、なんて最低な男だ。
 だがミランさんとエッチするのは、ユナ達も反対しないだろう。
 ミランさんも巨乳だし、スタイルもいい。

 ミーシャ達冒険者は魔物と戦って運動をしているから分かるが、ユナやエマちゃん、それにユーリやエリダさん達は、どうやってスタイルを維持しているんだろう。
 獣人の特性だろうか?
 ユナ達やエリダさん達は、最近俺の作ったカロリー高めの料理を食べている。
 少しくらい太りそうな気がするのに、ユーリは爆乳のままウエストの細さはキープしている。
 ミーシャは太って俺に嫌われたくないから、お金があっても身体を動かす為に魔物討伐に行くと言っていた。
 よく分からないから、後でユナ達に聞いてみよう。

 みんながハンバーガーを食べ終わって、凄く美味しかったとお礼を言ってくれた。
 だがみんな子供だからなのか、普段あまりカロリーの高い物を食べていないからなのか、草食の獣人の子供まで全部美味しいと言ってくれた。
 しかし細かく感想を聞くと、女の子はチキンバーガーとフィッシュフライバーガーが美味しいと言っている。
 やはり年齢に関係なく、女性は鶏肉と魚みたいだ。
 フィリスさんも迷わず「鶏肉!」と言っていたしな。 

 午後からも無理せず、笹籠作りを頑張ってと言って、俺は前払いで金貨10枚をミランさんに無理矢理受けとらせ、ユナの家に「転移」した。

 500個も作ってもらうのに、笹籠4個で銀貨1枚なら、全部で金貨2枚ほどだが、あまりに安過ぎる。
 ミランさんはめちゃくちゃ遠慮していたが、金貨10枚なんて、俺がエマちゃん達に着せてコスプレエッチをしたいだけのオーダーメイド服と同じ値段だと思って支払った。
 金には全く困っていないし、孤児達の為にもその方がいいだろう。
 金で解決出来る事なら、いくらでも支払いたい。
 偽善じゃなく、この寺院にはずっと協力してあげたい。
 住む所や食べ物、エッチにも困っていない俺に、ジョーイさん達に支払う給料以外、金の使い道は無い。

 人間の三大欲求、性欲と食欲と睡眠欲、それに金欲や男としてモテたい欲、全部満たされている。
 ほとんど人間としての欲が満たされている俺は、周りの人を幸せにしてあげたいという欲しかない。
 特にユナ達、愛してる女性達だが、俺に欲情する獣人女性とエッチしたら、ユナ達も嫉妬しながらも喜んでくれる。
 何という最高な世界だ!


 ユナの家に帰ってくると、大量にフライドポテトが出来上がっていて、器用に作ったと思われる笹の葉の入れ物に盛られていた。
 笹の葉を折り込んで、元の世界のフライドポテト入れみたいな形にしてある。
 フライドポテトの入れ物は、これでいいだろう。

ユナ「あっ、お帰りなさい、タカシさん♪」

みんな「「「お帰りなさ~い♪」」」

「ただいま。そのフライドポテトの入れ物、凄くいいね!」

アイネ「みんなで考えて作ってみたんです。こうすれば、1本ずつ摘まんで食べやすいと思います♪」

 アイネさんが自慢気に言ってきた。
 ラルフさんが笹籠を作りやすい道具を作ってくれたし、笹籠作りだけだと寺院の子供達の仕事が足りないだろう。
 あまり孤児達の仕事を増やしてしまうのは良くないかと思ったが、かなりハイペースで作っていたし、寺院にお金を渡す理由が欲しい。

「その笹の葉の入れ物も、寺院の子供達に作ってもらいましょう。ラルフさんが笹籠を作る道具を作ってくれたから、笹籠だけでは⋯⋯」

アイネ「それ、いいですね! 笹の葉を折るだけで簡単だから、寺院の子供達の仕事にしてあげたいです♪」

 俺が考えている事を言いかけただけで、アイネさんが嬉しそうに言ってきた。

サム「それにフライドポテトも美味しいですし、ハンバーガーと合いますよ!」

「油で揚げているので、食べ過ぎると太ってしまいますが、週末だけの販売なので大丈夫でしょう。印刷会社へ差し入れに行って、ついでにメニュー表を印刷してもらえるように頼んでおきました。フライドポテトと、後は唐揚げもメニューに追加しましょう」

サム、アイネ「「はい!」」

 フライドポテトを白い壁の前に置き、写真を撮ってから収納する。
 次に唐揚げだが、チキンバーガーに挟むのはチキン南蛮なので、普通の唐揚げの少し小さいサイズを揚げて、フライドポテトを入れる笹の葉の入れ物に5個入れた。
 元の世界の某コンビニに売っている唐揚げみたいな感じだ。
 俺はあの唐揚げが好きで、コンビニに寄ったら必ず買っていたが、なかなか自分で作るのは難しかった。
 だが唐揚げマニアの俺は、なんとか試行錯誤して似たような唐揚げを作れる。
 いろんな味があったから、それは別の屋台で販売してもいいな。

 ハンバーガー屋台の唐揚げは、モモ肉、胸肉、ササミ肉で3種類、2個ずつ交ぜた6個入りも作って、計4種類販売する事になった。
 ジュースは小さな氷が出来る魔道具を俺が作り、とりあえず4種類販売する。
 コップは木のコップが安くて手に入りやすいと言うので、業者に注文する事にした。

 サムさんとアイネさんにメニューを一通り作ってもらったが、2人とも覚えがいいのか、問題なく全てのメニューを作れたので、夕方まで東区のキッチンで作って収納してもらう事になった。

 2人と一緒に東区へ「転移」すると、キッチンの建物はほとんど完成していたので、ハンバーグを焼く鉄板に火魔法を付与して、火加減もダイヤルで調節出来るように「設定」した。
 次に揚げ物を作る大きなステンレス製の四角い箱にも火魔法を同じように付与して、減った分だけ継ぎ足せば綺麗な油のままずっと使えるように「洗浄」も付与しておく。
 俺が付与した「洗浄」なら油の消費も少なくて、予想より出費が抑えられて儲かるだろう。
 
 丸いパンを大量に焼く為に、火魔法を付与したステンレス製の大きな釜が欲しいと言うと、ジャックがジョーイさんに「念話」して呼んでくれた。
 分からない事は聞く、それでいいんだ。
 職人仕事の場合は、師匠の仕事を見て目で盗む事が正解だと思うが、分からない事を聞かずに適当な仕事される方が困る。

ジョーイ「どうかしましたか?」

「パンを大量に焼けるステンレス製の物が欲しいんですが、どうしたらいいですか?」

 俺は王都の金属製の物を作ってくれる業者は知らないし、魔法で探すにしても腕のいい業者なんて分からない。

ジョーイ「うちの会社では、金属製の加工は小さな物しか出来ないので、知り合いの金属加工会社に注文します」

 ジョーイさんはいろんな職人に伝手があるんだな。
 流石だ!
 俺は本当に、凄い職人達にたまたま出会えたんだろう。

 パン焼き機の構造を絵に描いて説明すると、アイネさんが絵を覗き込んできた。

アイネ「これ、パン屋にある物と同じじゃないですか?」

 そうか!
 この世界にもパン屋はあるし、パンが主食だから毎日大量に作っているだろうから、そういう物がすでにあっても不思議じゃない。
 ユナの家にあったのが石窯だったから、ステンレス製のパン焼き機は無いと思っていた。

ジョーイ「なら、業務用の調理道具屋へ買いに行きますか?」

「そうですね。じゃあちょっと買ってきます」

 俺は収納から肉や野菜を出して収納箱に入れ、サムさんとアイネさんに早速ハンバーガーの具を作っててもらい、業務用の魔道具屋へ行く事にした。
 場所は「探索魔法」で探せば分かるだろうと思ってキッチンの建物から出ると、ジャックが案内すると言って付いて来てくれた。

「親方の知り合いの店があるので、僕が案内しますよ」

 詳しく聞くと、粗悪品を売り付ける悪い業者もあるので、知り合いの店で買った方がいいという事だった。
 その辺りの事は分からないから凄く助かるな。

 ジャックと話しながら南区の裏通りに入って少し歩くと、ジョーイさんの知り合いの店に着いたので、周りに誰も居ない事を確認してから、収納から店の前に荷車を出した。
 収納すれば簡単に持って帰れるが、やはり収納魔法はあまり知られない方がいい。

 店に入ると、業務用らしき大きなステンレス製の魔道具が並んでいて、奥からガチャッガチャッと機械音がしていた。
 ジャックが業務用パン焼き魔道具ならこれだと言うので「鑑定」してみると、火魔法が付与してあるだけのステンレス製の大きな箱だった。
 中にはパンが並べられる棚があるけど、これでは微妙な温度調節も出来ないから、美味しくパンを焼くのは大変だろう。
 付与は「設定」も含めて俺がやるから、ステンレス製の商品だけ欲しい。
 金はあるからケチる必要は無いけど、自分で魔法を付与出来る俺としては、魔道具というだけで高価になってしまう物を買うのには抵抗がある。
 そんなお金は少しでも孤児達の為に使いたいし、温度調節が出来ないとパンの大きさや種類によっては使い方が難しいだろう。

「魔法は俺が付与出来るから、これだけ買えないかな? 俺が魔法を付与した方が温度調節なんかも出来るし」

「ああ、そうですね! たぶん大丈夫だと思いますよ」

 ジャックと話していると、奥から店主らしき黒い熊耳の獣人男性が出てきてくれた。
「鑑定」すると、『テンテン パンダ族の獣人 ♂ 31歳 魔法種無し』と出た。
 パンダ耳だったのか。

「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」

「このパンを焼く魔道具が欲しいのですが、魔法を付与する前の物ってありますか?」

「ああ、ステンレス製の入れ物をお求めですね。もちろん御座います」

 勘違いされたようだが、そういうのが欲しい客も居るみたいだな。
 店の奥に案内されると、魔法を付与する前のパン焼き機が2台あった。

「これを1台売ってください」

 温度調節用のダイヤルは、後でラルフさんに頼んで付けてもらおう。

「ありがとうございます。魔法を付与する前の物なので、金貨5枚になります」

 さっき見た、魔法が付与されたパン焼き機は金貨50枚もしていたから、魔法を付与するだけで金貨45枚、およそ90万も取るのか。
 付与魔法師は儲かる仕事なんだな。
 同じ火魔法が付与されたユナの家の石窯やコンロなんかは、だいたい金貨15枚だと聞いているから、必要な火力によって付与する値段が変わるようだ。
 後で付与魔法の魔法書で調べてみよう。

 ついでに製氷機に使えそうな、丁度真ん中に穴が空いたステンレス製の小さな箱が銀貨45枚で売っていたので、それも買っておく。
 一応、何に使う物か気になったので聞いてみると、真ん中の穴に配管などを繋いだりする部品だった。

 金貨5枚と銀貨45枚を払い、ジャックに「パン焼き機を一緒に持つ振りをしてくれ」と念話で頼み、パン焼き機を持ち上げながら「飛行」の魔法で店の外まで運んで荷車に乗せた。
 俺の力なら簡単に持ち上げられるだろうが、力加減を間違えて凹んだら困る。
 テンテンさんは少しビックリしていたが、男2人なら持ち上げられない重さではないだろう。

 東区に戻って来たので、荷車からパン焼き機を下ろしてラルフさんを呼び、温度調節用のダイヤルを作って取り付けてもらった。
 一旦収納してキッチンの建物へ入り、中で収納から出してパン焼き機を設置して魔法を付与した。

 それから製氷機用に買ったステンレス製の箱に簡易なスイッチを付けてもらい、「雹(ひょう)」という水魔法を付与して、スイッチを押している間だけ粒氷が真ん中の穴から出るように「設定」した。
 
 換気扇や水道、冷蔵庫もあるから、後は木製のコップや笹の葉のポテト入れだな。

 調理の様子を見ると、アイネさんがミンチを作ってタマネギなどの具を混ぜ、サムさんが薄いハンバーグを作っていた。
 手際良くスムーズに作っているが、やはり2人では大変だろう。
 
 俺はサムさん達に言って、リカさん達に手伝ってもらう為にセドム村へ「転移」した。


 家屋の玄関をノックして声を掛けると、いつものようにバタバタと音がしてから、今日はコリーさんが迎えてくれた。

「こんにちは、タカシさん♪」

「こんにちは」

 後ろではレムさんとランさんが悔しがっている。
 とりあえず今居るみんなにテーブルを囲んで座ってもらい、いろいろ考えながら説明していく。

「ちょっとお願いがあって来たんだ。手が空いている人は、屋台販売用のハンバーガー作りを手伝ってくれないかな? 初めに、ハンバーガーの美味しさをいろんな人に知ってもらう為にたくさん在庫を作りたいんだ」

みんな「「「はぁぁぁ~♪♪」」」

 な、何だ?
 欲情しているというより、凄く嬉しそうな声色だな。

レム「いくらでも手伝わせてください♪」

ラン「精肉ならお任せください!」

エリダ「みんな仕事がしたかったので嬉しいんです」

 ああ、そういう事か。
 ミミさんとロリーさんはケイトさんの店で働いてるし、マミさんはファプールの栽培や畑の手伝い、リカさんは今建てている飲食店の準備をしている。
 まだ仕事を始めていない人達は羨ましく思っていたんだろうな。

 ユナとエマちゃんを連れて来て、残っているみんなにパンの作り方を教えてもらい、俺は揚げ物の作り方を教えて、ランさんには収納に残っている使えそうな魔物を精肉してもらう。
 ランさんが言うには、魔物の肉は毒持ち以外高級肉になるそうで、ミンチにすればハンバーグの具として使えると言うので、収納箱を新たに作って魔物の死骸を大量に入れておいた。

 それからフライドポテトを作る時、やはりピーラーがあった方がいいと思ったので、ジョーイさんの知り合いの金属加工会社に行って、とりあえず10個作ってもらった。
 さすがはジョーイさんの知り合いだ。
 絵に描いて簡単な説明をしただけで、薄い金属を金槌で叩いてすぐに作ってしまった。
 この会社の人達も凄腕の職人ばかりみたいだから、ジョーイさんと知り合えて良かったな。

 ジャガイモの芽取りが出来る突起も付けて欲しいとお願いすると、金属加工会社の社長はピーラーに凄く感激して、是非商品化したいと言われたので、マヨネーズやポテトチップの権利を取るついでに、ピーラーの権利も取る事にした。


 キッチンの建物へ戻ってその事を話す。

ラルフ「権利局へ行かれるなら、“突っ張り棒”の権利も取ってもらえますか? あれはかなり便利なので、建築の時に使いたいです」

 自分で言ったのに忘れていた。
 だが突っ張り棒の権利はジョーイさんに渡して、権利金がジョーイ建築会社へ入るようにしよう。

 エリダさん達にはセドム村の家屋と東区のキッチンに分かれて調理を手伝ってもらい、俺は権利局へ行って無事に権利書を発行してもらった。
 この世界には今まで無かった物ばかりなので、簡単に審査が通ったみたいだ。
 ただ俺の予想通り、ハンバーガーはすぐに真似されてしまうだろうという事で、マヨネーズの権利だけを取った。
 料理は権利が通りにくいと言われたが、収納に残っていたプリンを出して権利を取りたいとお願いすると、これは美味しすぎると女性の審査官に絶賛され、権利書を発行してくれた。
 審査する人の好みもあるみたいだな。

 あまり権利を取り過ぎると、銀行の口座を見るのが益々怖くなるが、ミランさんに権利を譲って、権利金は寺院の為に使ってもらうという事も出来るな。
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[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
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ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

月が導く異世界道中extra

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 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
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 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
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高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

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