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第五章 姫様と宰相
エアコンの取り付けとピンクダイヤの売却
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ユナ達に後を任せて悪いが、忙しい俺の役に立ちたいと言っていたし、何か仕事を任さないとユナ達が自己嫌悪になってしまう。
女性と付き合った事がなく童貞だった俺は、女性には優しくしなければいけないと思っていた。
優しくするのは間違ってないんだろうけど、優しくするだけでは相手に罪悪感や自己嫌悪感を与えてしまうんだな。
少しずつでも学んでいこう。
カルシェ村のお風呂屋の前に「転移」して来たが、周りには誰も居なかった。
なんで?と思ったが、お風呂屋の屋根辺りから湯気が出ているので、みんな朝風呂に入っているのかもな。
「飛行」と念じて空から屋根を見てみると、湯気が排出されるように斜めの柵で造られていて、それでいて雨が降っても大丈夫な造りになっていた。
凄いな。
宮大工のようなラルフさんや、こういう造りの発想が得意なニールさんも居るからだろう。
でもこの世界ではあまり見た事がない造りな気がして、改めてジョーイ建築会社の実力に感心してしまう。
空から女風呂を覗く変態に思われるかも知れないので、すぐにお風呂屋の入口に降りた。
そのまま男湯の脱衣場に入ると、腰にタオルを巻いて左手を腰に当て、右手で瓶に入った牛乳を飲んでいるベンさんが居た。
この世界でも牛乳を飲む時のポーズは同じなんだな。
ベン「あっ、おはようございますタカシさん。すみません。私も実際に入って確かめていたんですよ」
仕事中に朝風呂に入って、風呂上がりに牛乳を飲んでいた事が少し申し訳なかったのか、ベンさんが言い訳みたいな事を言ってきた。
そんな事、別に構わないのに⋯。
「他の社員達や村の人達も朝風呂ですか?」
ベン「社員はセドム村でみんなに必要な仕事場を造ってますし、カルシェ村の人達は、今はみんなお風呂に入ってます。お風呂を喜んでくれて、私達も造った甲斐がありますよ」
ベンさんが嬉しそうに答えた。
自分達が一生懸命造ったお風呂屋に、みんなが喜んで入ってくれるのが嬉しいんだろうな。
「その牛乳はどうしたんですか?」
ベン「これはアミさんが持って来てくれたんです。お風呂上がりに飲む牛乳は最高ですな!」
確かに最高だが、冷えていた方がもっと美味しいだろう。
ユナの家にある冷蔵庫みたいな魔道具を作って、脱衣場に置いてあげたら喜ばれそうだな。
一瞬、王都の南区にスーパー銭湯を作って経営すれば流行りそうだと考えたが、他のお風呂屋が困ってしまうだろうから止めておこう。
でもセドム村のお風呂屋をスーパー銭湯みたいにするのもいいかもな。
打たせ湯やジャグジー風呂、身体の凝りが解れる電気風呂なんかを作れないか考えてみよう。
本当はサウナと水風呂も欲しいが、暑さに弱い獣人には駄目だろう。
フィリスさんのエアコンを確認したいので、セドム村に「転移」しようとすると、ベンさんもセドム村に戻ると言うので、着替え終わったベンさんと一緒にセドム村に「転移」した。
休憩所の前に「転移」すると、ラルフさんとニールさんが居て、完成したと思われるエアコンが並んでいた。
ラルフ「ああ、タカシさん。宝石商のお客様用のエアコンは、こんな感じで大丈夫ですか?」
綺麗なパールホワイトで塗られていて、高級感のあるフィリスさんの宝石屋に取り付けても違和感の無い出来だな。
「はい。これならお店に取り付けても違和感が無いですよ。相変わらず流石ですね。お客様に連絡して都合を聞いてみます」
ラルフ「は、はい⋯」
連絡すると言うと、ラルフさん達が緊張してしまったが、早速フィリスさんに「念話」をしてみる。
『フィリスさん。タカシですが、今大丈夫ですか?』
フィリス『タカシくん。だ、大丈夫よ! ちゃんと聞こえてる?』
フィリスさんは「テレパシー」の魔法を知っていたけど、実際に使うのは初めてなんだな。
『はい、聞こえてますよ。エアコンが完成したんですが、都合の良い日はありますか?』
フィリス『もう出来たの!? なら、すぐに付けてもらっていいかしら? 今日も暑いし、午後から大事なお客様が来られるのよ』
『わかりました。なるべく早く伺います』
フィリスさんの家にも取り付けないといけないし、大事なお客が来るなら早く行かないと時間が無いな。
「今連絡したら、すぐに取り付けて欲しいみたいなので、今から行きましょう。ジョーイ社長は図面の作成で忙しいでしょうから、俺とベンさんとラルフさんで行きます」
ベン、ラルフ「「は、はい!」」
「ニールさんには作って欲しい物があるので、それをお願いします」
あまり大勢で行っても仕方ないし、ニールさんを連れて行かないのは申し訳ないので、俺は壁掛け時計と腕時計、あと懐中時計の絵を描いた紙をニールさんに渡した。
絵は下手だが、なるべく分かりやすいように説明も書いているので、器用なニールさんなら大丈夫だろう。
ついでに冷蔵庫もたくさんお願いしておく。
ニール「はい。お任せください」
ベン「一旦、東区に寄ってもらっていいですか?」
ラルフ「朝風呂には入ったんですが、会社の制服に着替えたいです」
お客様の所に行くから、その方がいいな。
エアコンを収納して、ラルフさんとベンさんに掴まってもらい、東区の居住区に「転移」した。
ラルフさん達が家へ着替えに行ったので、社長の家の前で待っていると、リタとロンダが俺に気付いて走ってきた。
リタ「タカシさん♪ おはようございます」
ロンダ「おはようございます。今日はどうしたんですか?」
「おはよう~。今から西区の店にエアコンを取り付けに行くんだ。今はラルフさんとベンさんを待っているところだよ」
リタ「そうなんですね。社長の会社、凄く繁盛しているみたいですね」
「ああ。西区の工場の増築があるし、少しずつだけど個人のお客さんからの仕事も入って来てる」
ロンダ「社長が、タカシさんが仕事を取って来てくれたって、凄く感謝していましたよ」
仕事を取って来たというか、そういう流れになった感じだが、俺にはジョーイさんを独立させた責任がある。
会社が軌道に乗ったら任せるけど、獣人差別がある王都で仕事を取って来るのは、最初は難しいだろう。
リタ達と話していると、会社の制服に着替えたラルフさんとベンさんが走って来た。
ベン「お待たせしました」
ラルフ「西区のお客様を待たせる訳にはいきませんから、早速行きましょう!」
少し緊張が解けたのか、やる気満々だな。
リタ「行ってらっしゃい!」
ロンダ「タカシさんが一緒だから大丈夫よ」
ラルフさんとベンさんが肩に掴まったので、西区の人の居ない路地を「探索魔法」で探して、リタとロンダに見送られながら「転移」した。
路地から出て、フィリスさんの店まで歩いて向かう。
ベン「あ、あの、宝石商のお客様って、どんな方なんですか?」
「フィリスさんというエルフの女性で、ギルドの依頼先で手に入れた宝石を買い取ってもらった時に知り合ったんです」
ラルフ「西区の宝石商の方と知り合いなんて、流石タカシさんですね」
「エアコンを取り付けるだけですから、緊張しなくても大丈夫ですよ」
ベン、ラルフ「「は、はい!」」
緊張が解けたと思っていたが、店に近付くにつれて緊張してきたようだ。
フィリスさんは「看破」の魔法が使えるけど、獣人は基本的に嘘をつく種族じゃないし、ベンさん達なら信用できる。
俺も流石に、嘘をつくような人をフィリスさんの店に連れて行って信用を失いたくない。
まあ何かあっても、俺は社員達の味方だし、それが俺の責任だろう。
フィリスさんの店、「ファベルチェ」に着いたので、そのまま中へ入るとエレンさんが受付に居た。
エレン「おはようございます、タカシ様♪」
「おはようございます。エアコンを取り付けに来ました」
奥からフィリスさんも出て来てくれた。
フィリス「おはようタカシくん。さっき連絡してくれたばかりなのに、もう来てくれたのね」
「はい。お客様をお待たせしてはいけませんから。早速エアコンを取り付けさせてもらっていいですか?」
フィリス「ええ。お昼まではお客様が来る予定が無いから、今の内にお願いするわ」
ベンさん達が緊張で固まっているので、俺から紹介した方が良さそうだな。
「この2人がエアコンを取り付けてくれる、ジョーイ建築会社のベンさんとラルフさんです」
ベン「ジョーイ建築会社のベンです」
ラルフ「お、同じくジョーイ建築会社のラルフと申します。エアコンを注文して頂き、ありがとうございます」
フィリス「私はこの店のオーナーで、フィリストゥーネ。エアコンの取り付けをお願いします」
挨拶が済んだので、フィリスさんにエアコンを取り付ける位置を確認して、エアコンとラルフさんとベンさんを「飛行」の魔法で天井に浮かび上がらせる。
フィリス「⋯⋯え? えぇっ!? た、タカシくん! これはどういう魔法なの? あ、いえ⋯⋯後で聞いた方がいいわねぇ⋯」
フィリスさんはかなり驚いた後、エアコンの取り付けを邪魔してはいけないと思ったのか、魔法の事は後で聞くと言ってきた。
この店は、ベンさんが脚立の1番上に座ってやっと届くくらいの高さだから、「飛行」で浮かび上がらせて取り付けをする方が安全だろう。
魔法の事は、俺も自分でも分からないと言えば大丈夫だろう⋯⋯たぶん。
ベンさんが天井を叩きながら柱の位置を確認して、くり貫く位置に線を引いていくので、俺は線を引きやすいように操作していく。
この作業には俺が馴れないといけないから、慎重に「飛行」の魔法を使う。
最初にベンさんだけ浮かせた方が良かったな。
エアコンとラルフさんを操作しながらベンさんを動かすのは、流石に難しい。
天井に線を引き終わると、ベンさんが腰袋からインパクトドライバーの魔道具を出して穴を空け、その穴にラルフさんがノコギリを通して天井をくり抜いていく。
どういう技術なのか、あまり木屑が落ちないように切っているが、多少は落ちてしまうのをラルフさんが気にしている。
お客が西区の宝石商だし、フィリスさんが下から作業を見ているから、緊張しても仕方ないな。
俺はラルフさんのノコギリに「転移」を付与し、発生した木屑がセドム村の山に「転移」するように「設定」した。
詠唱していないから、フィリスさんにはバレないだろう。
ラルフさんがノコギリを少し動かして、木屑が消えていくのに一瞬ビックリしたが、俺を見て察してくれたのか、素早く天井をくり貫いた。
俺が、くり貫いた天井の板を床に下ろし、エアコンを天井の穴に固定すると、すぐに2人はエアコンを取り付けてしまった。
本当に早いな。
インパクトドライバーの魔道具がいい仕事をしているが、宮大工のようなラルフさんが取り付けているからかも知れないな。
後でお客の前でエアコンを取り付ける時の段取りを話し合っておこう。
フィリス「凄いわねぇ⋯。 一瞬で取り付けちゃうなんて、流石タカシくんが連れて来た人達だわ」
俺は2人を浮かばせただけだが、ラルフさん達が褒められて俺も嬉しい。
2人も嬉しそうだが、俺を見て涙目になっている。
それから店の寝室のエアコンを新たな白で塗られたエアコンに替えて取り付け、フィリスさんの家に行った。
フィリスさんの家は意外にも大きくなかったが、リビングだけ大きかったので、大きいエアコンを取り付けた。
その後寝室に入ったが、綺麗なフィリスさんの寝室だからなのか、凄くいい匂いがしたのは黙っておく。
取り付け作業が終了したので店に戻ってくると、応接室に案内された。
エレンさんの俺を見る目が欲情しているようで気になったが、人間女性なので勘違いだろう。
フィリス「追加で申し訳ないのだけれど、この応接室にも取り付けてもらえる?」
「はい。同じ色のエアコンがまだあるので、すぐに取り付けてもらいます」
白の小さいエアコンを収納から出すと、すぐに2人が位置を確認して取り付けた。
何も言わなくても、応接室という事を考えて、中央のソファーに風が当たる位置に取り付ける2人。
流石過ぎるな。
今日取り付けたエアコンは全部リモコン付きにしたので、フィリスさんとエレンさんに使い方を説明し、とりあえず作業は終了した。
フィリス「急にお願いしたのに、対応してくれてありがとう。お代はこれで大丈夫かしら?」
銀色のトレイに金貨が48枚積まれている。
20枚と10枚、6枚で⋯⋯うん、48枚で合ってるな。
「はい。ご注文、ありがとうございました。何か不具合があれば、もちろん無料で対応しますから、遠慮なくご連絡ください」
フィリス「わかったわ。でも本当に凄い魔道具ねぇ。この、りもこん?という物で、離れた所から動かせるなんて、そんな魔道具は聞いた事が無かったわ」
「エアコンは、なるべく高い位置に取り付けた方が部屋が冷えやすいので、魔道具に触れなくても操作できるようにしてあります」
フィリスさんは終始感心している感じだし、エレンさんは相変わらず俺をキラキラした目で見ている。
今日はフィリスさんも昼から忙しいみたいだから、詳しく聞かれる事は無いだろう。
「飛行」の魔法の事も今は忘れているみたいだから、思い出されない内に帰ろう。
「では、今日はこれで失礼しますね」
フィリス「えぇっ! もう少し時間があるから、お茶でも飲んでいかない? エレン、人数分のお茶を用意して」
エレン「はい♪」
強引に引き留められてしまった。
緊張しているベンさん達が少し可哀想だけど、お客様の誘いを断る訳にはいないな。
エレンさんがお茶を用意する為に部屋を出て行った。
フィリス「それで、さっき作業員さんやエアコンを浮かび上がらせたのは、どういう魔法なのかしら? あっ、もちろん人に言ったりしないし、答えられないなら構わないわ」
「あれは『フライト』という魔法で、指定した物や人を浮かび上がらせる事が出来ます」
フィリス「そんな無種魔法があるのねぇ。タカシくんは人間族なのに、魔力量がエルフより多いみたいだし、魔法もたくさん使える。無種魔法を複数使える人なんて、ハイエルフ族くらいだと思ってたわ」
そうなのか⋯。
これはちょっとヤバイかも知れない。
「魔力量や魔法に関しては、俺も正直、自分の事なのによく分からないんです。魔法の勉強は魔法書を読んでしていますけど⋯」
フィリス「そうなの? それは凄い事な気がするけど、タカシくんも自分で分からないなら、あまり聞いても仕方ないわね」
フィリスさんの目が一瞬光ったから、「看破」の魔法を使ったようだが、別に嘘は言っていない。
自分の魔力量なんて分からないし、魔法の事も魔法書に書いてある事しか知らないし、女神が俺にどんな能力をくれたのか、正直よく分からない。
絶倫で、魔法は何でも使えて、後は身体強化みたいな事しか分からないからな。
フィリスさんが魔法の事をそれ以上聞く事は無かったが、代わりにジョーイ建築会社の事を詳しく聞かれた。
ベンさん達は緊張しながらも、聞かれた事に丁寧に答えていったが、ずっと俺に対する感謝みたいな話になっていた。
フィリス「じゃあ、グーテンベルクを増築する工事でしばらく忙しいのね」
ベン「はい。図面が出来たら工事に取り掛かる予定です」
エレン「それにしても、トランプを考えたのがタカシ様だったなんて、凄く驚きました」
フィリス「そうねぇ。あれは凄く面白い遊びだし、高価じゃないから流行って当たり前だわ。なかなかやるわねぇ、タカシくん」
「みんなが遊べる物が欲しかっただけなんですが、グーテンベルクの社長が是非商品化したいとおっしゃってくれたので、その話に乗っかったんです」
ベンさん達が、ガーランドに拐われた獣人女性を助け出した事やセドム村の事は、上手く内緒にして話してくれたので大丈夫だな。
カルシェ村の山で手に入れた、薄紫色の魔石について聞いてみよう。
「最近この魔石を手に入れたんですが、詳しく教えてもらっていいですか?」
俺は収納からアメトリンを出して聞いてみた。
フィリス「⋯⋯えっ? あ、あ、アメトリン!? しかも凄い大きさ! 相変わらず私をビックリさせてくれるわね」
フィリスさんが目を見開いて驚いている。
ユナも言っていたが、やはり珍しいみたいだ。
「これも魔物討伐に行った山で見付けたんですが、調合師に聞くと、調合に使うと悪い効果があるみたいで⋯」
フィリス「確かに調合には不向きだと聞いているわ。でも空気中から魔力を吸収するから、魔力が尽きる事の無い魔石で、アクセサリーにして身に着ければ、魔力量が少ない人でも楽に魔法が使えたりするの。だからその大きさなら王金貨4枚くらいの価値があるし、アクセサリーに加工すれば、それ以上も有り得るわ」
凄いな。
俺が魔力を込めてミーシャが身に着ければ、魔力量を気にする事無く火魔法が使えるのか。
「なるほど、そうでしたか。ありがとうございました」
フィリス「これくらいお安い御用よ。そのアメトリンを売る気は無い?」
これは便利な魔石だから、売るのは勿体ない。
しかしフィリスさんは売って欲しそうだし、俺が他にも宝石を持っている事は知っている。
「そうですね。便利そうなんで、これは持っていたいです」
フィリス「タカシくんはお金に困る人じゃないものねぇ。じゃあこの間見せてくれたピンクダイヤは? あ、いえ⋯、お客様の意思は尊重しないと、この店のオーナーとして失格だわ」
ピンクダイヤは、フィリスさんが個人的に欲しいと言っていた宝石だな。
ちょっと残念そうな表情をしているから、よほど欲しいのだろう。
金がいる訳じゃないけど、俺には必要の無い物なのに売らないのは、少し意地悪をしているような気持ちになる。
「いいですよ。じゃあピンクダイヤを買い取って頂けますか?」
フィリス「本当!? 本当にいいの?」
めちゃくちゃ嬉しそうだな。
「はい。俺が持っているより、フィリスさんが持っていた方が宝石も喜ぶと思うので」
収納からピンクダイヤを出して、テーブルに置いてあった宝石を乗せるトレイに置いた。
フィリス「ありがとうタカシくん! 実は一目見た時から凄く欲しかったの。すぐにお金を用意するわ♪」
俺の気が変わらない内にと思ったのか、フィリスさんは早々に応接室を出て行った。
ベンさん達が静かだなぁと思っていたが、ベンさんもラルフさんも、エレンさんまでも固まっていた。
王金貨以上の価値がある宝石の取引をしていたから、そうなっても仕方ないな。
エレン「⋯⋯あっ、すみませんタカシ様。オーナーはピンクダイヤが大好きなので⋯⋯。本当にお売り頂いて良かったのですか?」
「はい。俺は男ですし、正直宝石の価値も分からないですから、フィリスさんが持っていた方がいいと思います」
ラルフ「でも凄いですね。あんな大きな宝石を簡単に売ってしまうなんて、流石タカシさんですよ」
予想外に感心されてしまった。
だがラルフさん達には、俺がお金に困って無いと分かってて欲しいから、良かったかも知れない。
ドアが開いて、フィリスさんがトレイにお金を乗せて戻ってきた。
フィリス「ピンクダイヤは、王金貨1枚と白金貨6枚で良かったかしら?」
ん? その金額は確か、アクセサリーに装飾した時の売値だった気がする。
「い、いいんですか?」
フィリス「ええ。少し我儘を言っちゃった気がするし、以前売ってもらったファルレインが高値で売れたから。それに『テレパシー』の付与された、純度の高いフローライトまで貰っちゃって、タカシくんには何かお礼をしたいくらいなの」
ファルレインにオークションで高値がついたのか。
王金貨5枚以上にはなると言っていたし、ピンクダイヤが好きだからって、王金貨を簡単に支払うくらいだから、相当儲かったのかもな。
「では遠慮なく⋯」
エレン「あ、あの⋯タカシ様。お金は支払うので、私にも『テレパシー』の付与されたフローライトを売って頂けませんか?」
フィリス「エレンがタカシくんに連絡したいって言うから貸してあげたんだけど、上手く起動しなかったの」
「ああ、フィリスさんのフローライトは、フィリスさんにしか起動できないようにしてあります。落としたり、盗まれて悪用されるといけませんから。フローライトはたくさんあるので、エレンさんにもプレゼントしますよ。でも相手も持っていないと返事が出来ないので、それは気を付けてくださいね」
エレン「い、いいんですか? あのフローライトは純度が高いのに⋯⋯」
フィリス「私にしか使えないって⋯。それにあんなに純度の高いフローライトをたくさん持ってるの?」
2人とも別の意味で驚いている。
「かなり大きなフローライトを手に入れたので、遠慮は要りません」
フィリス「かなり大きなって、一体どれくらいの大きさなの?」
ここの床に置くと、床が窪んでしまうだろうから、収納からセドム村の山で手に入れた、ドラム缶サイズのフローライトの結晶原石を出して、「飛行」の魔法で浮かばせた。
あまりフィリスさんに見せるのはどうかと思ったが、普段落ち着いた雰囲気のフィリスさんが、驚く様子を見てみたい。
応接室に居る全員が、宙に浮いている大きなフローライトを見上げて、口を開けて固まっている。
フィリス「な、な、何これぇぇ!? 何なのこの大きさ!」
「フローライトの結晶原石です。山を掘っていたら、たまたま埋まっていたので掘り出しました」
フィリス「結晶原石なんて初めて見たわ。フローライトの結晶って、こんなに綺麗なのね。タカシくんには驚かされてばかりだわ」
予想通りのリアクションだな。
その後、なんとか我に返ったエレンさんに「念話」を付与したフローライトを渡して、そろそろ大事なお客様が来るという事で、ベンさん達と店から出た。
エアコンの代金をベンさん達に渡そうとしたが、社長に渡して欲しいと言うので、ジョーイ社長に「念話」をする。
『ジョーイ社長。今は家ですか?』
ジョーイ『ああ、タカシさん。今はグーテンベルクで、ハイデルベルク社長と打ち合わせをしています』
丁度グーテンベルクに居るなら3人で向かおうとしたが、ベンさん達はセドム村の仕事に戻ると言うので、2人をセドム村に「転移」させ、俺はグーテンベルクへ向かった。
受付に居たエルノールさんに案内され、打ち合わせ中の応接室に向かい、エルノールさんがドアをノックして取り次いでくれた。
応接室に入ると、ジョーイ社長とハイデルベルク社長が、図面を見ながら楽しそうに談笑していた。
ハイデルベルク「タカシさん。ジョーイ社長に用事ですよね? 社長から聞いています」
「すみません、打ち合わせ中に⋯」
ジョーイ「増築の事でタカシさんに相談したい事があったので、丁度良かったですよ」
俺がジョーイ社長の隣に座ると、エルノールさんがお茶を汲みに行ってくれた。
「俺もジョーイ社長に仕事の相談がありましたし、ハイデルベルク社長にも相談したい事があったので、お邪魔させてもらいますね」
とりあえずジョーイ社長に、フィリスさんのお店と家にエアコンを取り付けた事を話して、代金の金貨48枚を渡した。
ジョーイ社長は一瞬驚いたが、前にお互い遠慮は無しにしようと言ったので、素直に代金を受け取ってくれた。
その後2人に増築の相談をされた。
相談内容は、印刷機の音が少し大きいので、「防音」の魔法を付与して欲しいという事と、工場長から水を冷やすような物を作れないかとお願いされた事だった。
作業場の壁に「防音」を付与するのは簡単だし、水を冷やす魔法も付与できると言うと、2人とも凄く喜んでくれた。
エアコンを起動しても、この会社の印刷に使う「湿し水」の温度が上がってしまうので困っていたらしい。
しかしエアコンと加湿器の効果は抜群で、今までより不良品が半分以下に減ったという。
それでもトランプがバカ売れし過ぎて生産は追い付かないので、増築の話も順調に進んでいるそうだ。
ジョーイ「タカシさんの相談は何ですか?」
「はい。俺の住んでいる街の外れに、孤児の子供達を養っている寺院があるんですが、その寺院を綺麗に改装して欲しいんです。もちろんグーテンベルクの増築工事の後で構いません。実は寺院の子達に、サムさんが屋台販売するハンバーガーの入れ物を作ってもらう仕事を頼みました。料理を入れる笹籠を作ってもらうので、清潔な所じゃないと衛生上良くありません」
一通り説明したが、2人とも俺を見て何か考えているようだ。
ジョーイ「孤児の子供達に仕事を⋯。流石タカシさんです!」
ハイデルベルク「増築の打ち合わせは来週くらいまで掛かると思うので、そっちを先に進めてください! 孤児の子供達の為なら、私も協力したいです」
予想外に感心されてしまった。
この世界なら、孤児の子供がたくさん居るだろうけど、その場凌ぎの善意をするのに抵抗があるんだろう。
ハイデルベルク社長まで協力的だ。
湯船は作ったので、お風呂の建物も作って欲しいとお願いすると、俺の作った湯船を見てみたいとジョーイ社長に言われた。
それからハイデルベルク社長には、ハンバーガーを是非食べてみたいと言われたので、収納からハンバーグを挟んだハンバーガーを出して食べてもらった。
凄く美味しいと絶賛してくれたので、今度従業員全員分を差し入れしてあげよう。
それから「権利」の取り方をハイデルベルク社長に教えてもらった。
「権利局」という所に行って、「権利」を登録したい物の説明をして、それを審査する人に認められないといけないらしい。
だが審査する人にハンバーガーを食べてもらったら、間違いなく「権利登録」をしてもらえるとハイデルベルク社長が言うので、いろんな種類のハンバーガーやドック、フライドポテトなんかを作って持って行こう。
今日の打ち合わせは終わったらしいので、エルノールさんに見送られながら、ジョーイ社長と一緒にグーテンベルクを後にした。
ジョーイ社長は引き続き図面の作成をしなければいけないが、寺院の改装に取り掛かりたいと言うので、近くの路地に入ってセドム村に「転移」した。
女性と付き合った事がなく童貞だった俺は、女性には優しくしなければいけないと思っていた。
優しくするのは間違ってないんだろうけど、優しくするだけでは相手に罪悪感や自己嫌悪感を与えてしまうんだな。
少しずつでも学んでいこう。
カルシェ村のお風呂屋の前に「転移」して来たが、周りには誰も居なかった。
なんで?と思ったが、お風呂屋の屋根辺りから湯気が出ているので、みんな朝風呂に入っているのかもな。
「飛行」と念じて空から屋根を見てみると、湯気が排出されるように斜めの柵で造られていて、それでいて雨が降っても大丈夫な造りになっていた。
凄いな。
宮大工のようなラルフさんや、こういう造りの発想が得意なニールさんも居るからだろう。
でもこの世界ではあまり見た事がない造りな気がして、改めてジョーイ建築会社の実力に感心してしまう。
空から女風呂を覗く変態に思われるかも知れないので、すぐにお風呂屋の入口に降りた。
そのまま男湯の脱衣場に入ると、腰にタオルを巻いて左手を腰に当て、右手で瓶に入った牛乳を飲んでいるベンさんが居た。
この世界でも牛乳を飲む時のポーズは同じなんだな。
ベン「あっ、おはようございますタカシさん。すみません。私も実際に入って確かめていたんですよ」
仕事中に朝風呂に入って、風呂上がりに牛乳を飲んでいた事が少し申し訳なかったのか、ベンさんが言い訳みたいな事を言ってきた。
そんな事、別に構わないのに⋯。
「他の社員達や村の人達も朝風呂ですか?」
ベン「社員はセドム村でみんなに必要な仕事場を造ってますし、カルシェ村の人達は、今はみんなお風呂に入ってます。お風呂を喜んでくれて、私達も造った甲斐がありますよ」
ベンさんが嬉しそうに答えた。
自分達が一生懸命造ったお風呂屋に、みんなが喜んで入ってくれるのが嬉しいんだろうな。
「その牛乳はどうしたんですか?」
ベン「これはアミさんが持って来てくれたんです。お風呂上がりに飲む牛乳は最高ですな!」
確かに最高だが、冷えていた方がもっと美味しいだろう。
ユナの家にある冷蔵庫みたいな魔道具を作って、脱衣場に置いてあげたら喜ばれそうだな。
一瞬、王都の南区にスーパー銭湯を作って経営すれば流行りそうだと考えたが、他のお風呂屋が困ってしまうだろうから止めておこう。
でもセドム村のお風呂屋をスーパー銭湯みたいにするのもいいかもな。
打たせ湯やジャグジー風呂、身体の凝りが解れる電気風呂なんかを作れないか考えてみよう。
本当はサウナと水風呂も欲しいが、暑さに弱い獣人には駄目だろう。
フィリスさんのエアコンを確認したいので、セドム村に「転移」しようとすると、ベンさんもセドム村に戻ると言うので、着替え終わったベンさんと一緒にセドム村に「転移」した。
休憩所の前に「転移」すると、ラルフさんとニールさんが居て、完成したと思われるエアコンが並んでいた。
ラルフ「ああ、タカシさん。宝石商のお客様用のエアコンは、こんな感じで大丈夫ですか?」
綺麗なパールホワイトで塗られていて、高級感のあるフィリスさんの宝石屋に取り付けても違和感の無い出来だな。
「はい。これならお店に取り付けても違和感が無いですよ。相変わらず流石ですね。お客様に連絡して都合を聞いてみます」
ラルフ「は、はい⋯」
連絡すると言うと、ラルフさん達が緊張してしまったが、早速フィリスさんに「念話」をしてみる。
『フィリスさん。タカシですが、今大丈夫ですか?』
フィリス『タカシくん。だ、大丈夫よ! ちゃんと聞こえてる?』
フィリスさんは「テレパシー」の魔法を知っていたけど、実際に使うのは初めてなんだな。
『はい、聞こえてますよ。エアコンが完成したんですが、都合の良い日はありますか?』
フィリス『もう出来たの!? なら、すぐに付けてもらっていいかしら? 今日も暑いし、午後から大事なお客様が来られるのよ』
『わかりました。なるべく早く伺います』
フィリスさんの家にも取り付けないといけないし、大事なお客が来るなら早く行かないと時間が無いな。
「今連絡したら、すぐに取り付けて欲しいみたいなので、今から行きましょう。ジョーイ社長は図面の作成で忙しいでしょうから、俺とベンさんとラルフさんで行きます」
ベン、ラルフ「「は、はい!」」
「ニールさんには作って欲しい物があるので、それをお願いします」
あまり大勢で行っても仕方ないし、ニールさんを連れて行かないのは申し訳ないので、俺は壁掛け時計と腕時計、あと懐中時計の絵を描いた紙をニールさんに渡した。
絵は下手だが、なるべく分かりやすいように説明も書いているので、器用なニールさんなら大丈夫だろう。
ついでに冷蔵庫もたくさんお願いしておく。
ニール「はい。お任せください」
ベン「一旦、東区に寄ってもらっていいですか?」
ラルフ「朝風呂には入ったんですが、会社の制服に着替えたいです」
お客様の所に行くから、その方がいいな。
エアコンを収納して、ラルフさんとベンさんに掴まってもらい、東区の居住区に「転移」した。
ラルフさん達が家へ着替えに行ったので、社長の家の前で待っていると、リタとロンダが俺に気付いて走ってきた。
リタ「タカシさん♪ おはようございます」
ロンダ「おはようございます。今日はどうしたんですか?」
「おはよう~。今から西区の店にエアコンを取り付けに行くんだ。今はラルフさんとベンさんを待っているところだよ」
リタ「そうなんですね。社長の会社、凄く繁盛しているみたいですね」
「ああ。西区の工場の増築があるし、少しずつだけど個人のお客さんからの仕事も入って来てる」
ロンダ「社長が、タカシさんが仕事を取って来てくれたって、凄く感謝していましたよ」
仕事を取って来たというか、そういう流れになった感じだが、俺にはジョーイさんを独立させた責任がある。
会社が軌道に乗ったら任せるけど、獣人差別がある王都で仕事を取って来るのは、最初は難しいだろう。
リタ達と話していると、会社の制服に着替えたラルフさんとベンさんが走って来た。
ベン「お待たせしました」
ラルフ「西区のお客様を待たせる訳にはいきませんから、早速行きましょう!」
少し緊張が解けたのか、やる気満々だな。
リタ「行ってらっしゃい!」
ロンダ「タカシさんが一緒だから大丈夫よ」
ラルフさんとベンさんが肩に掴まったので、西区の人の居ない路地を「探索魔法」で探して、リタとロンダに見送られながら「転移」した。
路地から出て、フィリスさんの店まで歩いて向かう。
ベン「あ、あの、宝石商のお客様って、どんな方なんですか?」
「フィリスさんというエルフの女性で、ギルドの依頼先で手に入れた宝石を買い取ってもらった時に知り合ったんです」
ラルフ「西区の宝石商の方と知り合いなんて、流石タカシさんですね」
「エアコンを取り付けるだけですから、緊張しなくても大丈夫ですよ」
ベン、ラルフ「「は、はい!」」
緊張が解けたと思っていたが、店に近付くにつれて緊張してきたようだ。
フィリスさんは「看破」の魔法が使えるけど、獣人は基本的に嘘をつく種族じゃないし、ベンさん達なら信用できる。
俺も流石に、嘘をつくような人をフィリスさんの店に連れて行って信用を失いたくない。
まあ何かあっても、俺は社員達の味方だし、それが俺の責任だろう。
フィリスさんの店、「ファベルチェ」に着いたので、そのまま中へ入るとエレンさんが受付に居た。
エレン「おはようございます、タカシ様♪」
「おはようございます。エアコンを取り付けに来ました」
奥からフィリスさんも出て来てくれた。
フィリス「おはようタカシくん。さっき連絡してくれたばかりなのに、もう来てくれたのね」
「はい。お客様をお待たせしてはいけませんから。早速エアコンを取り付けさせてもらっていいですか?」
フィリス「ええ。お昼まではお客様が来る予定が無いから、今の内にお願いするわ」
ベンさん達が緊張で固まっているので、俺から紹介した方が良さそうだな。
「この2人がエアコンを取り付けてくれる、ジョーイ建築会社のベンさんとラルフさんです」
ベン「ジョーイ建築会社のベンです」
ラルフ「お、同じくジョーイ建築会社のラルフと申します。エアコンを注文して頂き、ありがとうございます」
フィリス「私はこの店のオーナーで、フィリストゥーネ。エアコンの取り付けをお願いします」
挨拶が済んだので、フィリスさんにエアコンを取り付ける位置を確認して、エアコンとラルフさんとベンさんを「飛行」の魔法で天井に浮かび上がらせる。
フィリス「⋯⋯え? えぇっ!? た、タカシくん! これはどういう魔法なの? あ、いえ⋯⋯後で聞いた方がいいわねぇ⋯」
フィリスさんはかなり驚いた後、エアコンの取り付けを邪魔してはいけないと思ったのか、魔法の事は後で聞くと言ってきた。
この店は、ベンさんが脚立の1番上に座ってやっと届くくらいの高さだから、「飛行」で浮かび上がらせて取り付けをする方が安全だろう。
魔法の事は、俺も自分でも分からないと言えば大丈夫だろう⋯⋯たぶん。
ベンさんが天井を叩きながら柱の位置を確認して、くり貫く位置に線を引いていくので、俺は線を引きやすいように操作していく。
この作業には俺が馴れないといけないから、慎重に「飛行」の魔法を使う。
最初にベンさんだけ浮かせた方が良かったな。
エアコンとラルフさんを操作しながらベンさんを動かすのは、流石に難しい。
天井に線を引き終わると、ベンさんが腰袋からインパクトドライバーの魔道具を出して穴を空け、その穴にラルフさんがノコギリを通して天井をくり抜いていく。
どういう技術なのか、あまり木屑が落ちないように切っているが、多少は落ちてしまうのをラルフさんが気にしている。
お客が西区の宝石商だし、フィリスさんが下から作業を見ているから、緊張しても仕方ないな。
俺はラルフさんのノコギリに「転移」を付与し、発生した木屑がセドム村の山に「転移」するように「設定」した。
詠唱していないから、フィリスさんにはバレないだろう。
ラルフさんがノコギリを少し動かして、木屑が消えていくのに一瞬ビックリしたが、俺を見て察してくれたのか、素早く天井をくり貫いた。
俺が、くり貫いた天井の板を床に下ろし、エアコンを天井の穴に固定すると、すぐに2人はエアコンを取り付けてしまった。
本当に早いな。
インパクトドライバーの魔道具がいい仕事をしているが、宮大工のようなラルフさんが取り付けているからかも知れないな。
後でお客の前でエアコンを取り付ける時の段取りを話し合っておこう。
フィリス「凄いわねぇ⋯。 一瞬で取り付けちゃうなんて、流石タカシくんが連れて来た人達だわ」
俺は2人を浮かばせただけだが、ラルフさん達が褒められて俺も嬉しい。
2人も嬉しそうだが、俺を見て涙目になっている。
それから店の寝室のエアコンを新たな白で塗られたエアコンに替えて取り付け、フィリスさんの家に行った。
フィリスさんの家は意外にも大きくなかったが、リビングだけ大きかったので、大きいエアコンを取り付けた。
その後寝室に入ったが、綺麗なフィリスさんの寝室だからなのか、凄くいい匂いがしたのは黙っておく。
取り付け作業が終了したので店に戻ってくると、応接室に案内された。
エレンさんの俺を見る目が欲情しているようで気になったが、人間女性なので勘違いだろう。
フィリス「追加で申し訳ないのだけれど、この応接室にも取り付けてもらえる?」
「はい。同じ色のエアコンがまだあるので、すぐに取り付けてもらいます」
白の小さいエアコンを収納から出すと、すぐに2人が位置を確認して取り付けた。
何も言わなくても、応接室という事を考えて、中央のソファーに風が当たる位置に取り付ける2人。
流石過ぎるな。
今日取り付けたエアコンは全部リモコン付きにしたので、フィリスさんとエレンさんに使い方を説明し、とりあえず作業は終了した。
フィリス「急にお願いしたのに、対応してくれてありがとう。お代はこれで大丈夫かしら?」
銀色のトレイに金貨が48枚積まれている。
20枚と10枚、6枚で⋯⋯うん、48枚で合ってるな。
「はい。ご注文、ありがとうございました。何か不具合があれば、もちろん無料で対応しますから、遠慮なくご連絡ください」
フィリス「わかったわ。でも本当に凄い魔道具ねぇ。この、りもこん?という物で、離れた所から動かせるなんて、そんな魔道具は聞いた事が無かったわ」
「エアコンは、なるべく高い位置に取り付けた方が部屋が冷えやすいので、魔道具に触れなくても操作できるようにしてあります」
フィリスさんは終始感心している感じだし、エレンさんは相変わらず俺をキラキラした目で見ている。
今日はフィリスさんも昼から忙しいみたいだから、詳しく聞かれる事は無いだろう。
「飛行」の魔法の事も今は忘れているみたいだから、思い出されない内に帰ろう。
「では、今日はこれで失礼しますね」
フィリス「えぇっ! もう少し時間があるから、お茶でも飲んでいかない? エレン、人数分のお茶を用意して」
エレン「はい♪」
強引に引き留められてしまった。
緊張しているベンさん達が少し可哀想だけど、お客様の誘いを断る訳にはいないな。
エレンさんがお茶を用意する為に部屋を出て行った。
フィリス「それで、さっき作業員さんやエアコンを浮かび上がらせたのは、どういう魔法なのかしら? あっ、もちろん人に言ったりしないし、答えられないなら構わないわ」
「あれは『フライト』という魔法で、指定した物や人を浮かび上がらせる事が出来ます」
フィリス「そんな無種魔法があるのねぇ。タカシくんは人間族なのに、魔力量がエルフより多いみたいだし、魔法もたくさん使える。無種魔法を複数使える人なんて、ハイエルフ族くらいだと思ってたわ」
そうなのか⋯。
これはちょっとヤバイかも知れない。
「魔力量や魔法に関しては、俺も正直、自分の事なのによく分からないんです。魔法の勉強は魔法書を読んでしていますけど⋯」
フィリス「そうなの? それは凄い事な気がするけど、タカシくんも自分で分からないなら、あまり聞いても仕方ないわね」
フィリスさんの目が一瞬光ったから、「看破」の魔法を使ったようだが、別に嘘は言っていない。
自分の魔力量なんて分からないし、魔法の事も魔法書に書いてある事しか知らないし、女神が俺にどんな能力をくれたのか、正直よく分からない。
絶倫で、魔法は何でも使えて、後は身体強化みたいな事しか分からないからな。
フィリスさんが魔法の事をそれ以上聞く事は無かったが、代わりにジョーイ建築会社の事を詳しく聞かれた。
ベンさん達は緊張しながらも、聞かれた事に丁寧に答えていったが、ずっと俺に対する感謝みたいな話になっていた。
フィリス「じゃあ、グーテンベルクを増築する工事でしばらく忙しいのね」
ベン「はい。図面が出来たら工事に取り掛かる予定です」
エレン「それにしても、トランプを考えたのがタカシ様だったなんて、凄く驚きました」
フィリス「そうねぇ。あれは凄く面白い遊びだし、高価じゃないから流行って当たり前だわ。なかなかやるわねぇ、タカシくん」
「みんなが遊べる物が欲しかっただけなんですが、グーテンベルクの社長が是非商品化したいとおっしゃってくれたので、その話に乗っかったんです」
ベンさん達が、ガーランドに拐われた獣人女性を助け出した事やセドム村の事は、上手く内緒にして話してくれたので大丈夫だな。
カルシェ村の山で手に入れた、薄紫色の魔石について聞いてみよう。
「最近この魔石を手に入れたんですが、詳しく教えてもらっていいですか?」
俺は収納からアメトリンを出して聞いてみた。
フィリス「⋯⋯えっ? あ、あ、アメトリン!? しかも凄い大きさ! 相変わらず私をビックリさせてくれるわね」
フィリスさんが目を見開いて驚いている。
ユナも言っていたが、やはり珍しいみたいだ。
「これも魔物討伐に行った山で見付けたんですが、調合師に聞くと、調合に使うと悪い効果があるみたいで⋯」
フィリス「確かに調合には不向きだと聞いているわ。でも空気中から魔力を吸収するから、魔力が尽きる事の無い魔石で、アクセサリーにして身に着ければ、魔力量が少ない人でも楽に魔法が使えたりするの。だからその大きさなら王金貨4枚くらいの価値があるし、アクセサリーに加工すれば、それ以上も有り得るわ」
凄いな。
俺が魔力を込めてミーシャが身に着ければ、魔力量を気にする事無く火魔法が使えるのか。
「なるほど、そうでしたか。ありがとうございました」
フィリス「これくらいお安い御用よ。そのアメトリンを売る気は無い?」
これは便利な魔石だから、売るのは勿体ない。
しかしフィリスさんは売って欲しそうだし、俺が他にも宝石を持っている事は知っている。
「そうですね。便利そうなんで、これは持っていたいです」
フィリス「タカシくんはお金に困る人じゃないものねぇ。じゃあこの間見せてくれたピンクダイヤは? あ、いえ⋯、お客様の意思は尊重しないと、この店のオーナーとして失格だわ」
ピンクダイヤは、フィリスさんが個人的に欲しいと言っていた宝石だな。
ちょっと残念そうな表情をしているから、よほど欲しいのだろう。
金がいる訳じゃないけど、俺には必要の無い物なのに売らないのは、少し意地悪をしているような気持ちになる。
「いいですよ。じゃあピンクダイヤを買い取って頂けますか?」
フィリス「本当!? 本当にいいの?」
めちゃくちゃ嬉しそうだな。
「はい。俺が持っているより、フィリスさんが持っていた方が宝石も喜ぶと思うので」
収納からピンクダイヤを出して、テーブルに置いてあった宝石を乗せるトレイに置いた。
フィリス「ありがとうタカシくん! 実は一目見た時から凄く欲しかったの。すぐにお金を用意するわ♪」
俺の気が変わらない内にと思ったのか、フィリスさんは早々に応接室を出て行った。
ベンさん達が静かだなぁと思っていたが、ベンさんもラルフさんも、エレンさんまでも固まっていた。
王金貨以上の価値がある宝石の取引をしていたから、そうなっても仕方ないな。
エレン「⋯⋯あっ、すみませんタカシ様。オーナーはピンクダイヤが大好きなので⋯⋯。本当にお売り頂いて良かったのですか?」
「はい。俺は男ですし、正直宝石の価値も分からないですから、フィリスさんが持っていた方がいいと思います」
ラルフ「でも凄いですね。あんな大きな宝石を簡単に売ってしまうなんて、流石タカシさんですよ」
予想外に感心されてしまった。
だがラルフさん達には、俺がお金に困って無いと分かってて欲しいから、良かったかも知れない。
ドアが開いて、フィリスさんがトレイにお金を乗せて戻ってきた。
フィリス「ピンクダイヤは、王金貨1枚と白金貨6枚で良かったかしら?」
ん? その金額は確か、アクセサリーに装飾した時の売値だった気がする。
「い、いいんですか?」
フィリス「ええ。少し我儘を言っちゃった気がするし、以前売ってもらったファルレインが高値で売れたから。それに『テレパシー』の付与された、純度の高いフローライトまで貰っちゃって、タカシくんには何かお礼をしたいくらいなの」
ファルレインにオークションで高値がついたのか。
王金貨5枚以上にはなると言っていたし、ピンクダイヤが好きだからって、王金貨を簡単に支払うくらいだから、相当儲かったのかもな。
「では遠慮なく⋯」
エレン「あ、あの⋯タカシ様。お金は支払うので、私にも『テレパシー』の付与されたフローライトを売って頂けませんか?」
フィリス「エレンがタカシくんに連絡したいって言うから貸してあげたんだけど、上手く起動しなかったの」
「ああ、フィリスさんのフローライトは、フィリスさんにしか起動できないようにしてあります。落としたり、盗まれて悪用されるといけませんから。フローライトはたくさんあるので、エレンさんにもプレゼントしますよ。でも相手も持っていないと返事が出来ないので、それは気を付けてくださいね」
エレン「い、いいんですか? あのフローライトは純度が高いのに⋯⋯」
フィリス「私にしか使えないって⋯。それにあんなに純度の高いフローライトをたくさん持ってるの?」
2人とも別の意味で驚いている。
「かなり大きなフローライトを手に入れたので、遠慮は要りません」
フィリス「かなり大きなって、一体どれくらいの大きさなの?」
ここの床に置くと、床が窪んでしまうだろうから、収納からセドム村の山で手に入れた、ドラム缶サイズのフローライトの結晶原石を出して、「飛行」の魔法で浮かばせた。
あまりフィリスさんに見せるのはどうかと思ったが、普段落ち着いた雰囲気のフィリスさんが、驚く様子を見てみたい。
応接室に居る全員が、宙に浮いている大きなフローライトを見上げて、口を開けて固まっている。
フィリス「な、な、何これぇぇ!? 何なのこの大きさ!」
「フローライトの結晶原石です。山を掘っていたら、たまたま埋まっていたので掘り出しました」
フィリス「結晶原石なんて初めて見たわ。フローライトの結晶って、こんなに綺麗なのね。タカシくんには驚かされてばかりだわ」
予想通りのリアクションだな。
その後、なんとか我に返ったエレンさんに「念話」を付与したフローライトを渡して、そろそろ大事なお客様が来るという事で、ベンさん達と店から出た。
エアコンの代金をベンさん達に渡そうとしたが、社長に渡して欲しいと言うので、ジョーイ社長に「念話」をする。
『ジョーイ社長。今は家ですか?』
ジョーイ『ああ、タカシさん。今はグーテンベルクで、ハイデルベルク社長と打ち合わせをしています』
丁度グーテンベルクに居るなら3人で向かおうとしたが、ベンさん達はセドム村の仕事に戻ると言うので、2人をセドム村に「転移」させ、俺はグーテンベルクへ向かった。
受付に居たエルノールさんに案内され、打ち合わせ中の応接室に向かい、エルノールさんがドアをノックして取り次いでくれた。
応接室に入ると、ジョーイ社長とハイデルベルク社長が、図面を見ながら楽しそうに談笑していた。
ハイデルベルク「タカシさん。ジョーイ社長に用事ですよね? 社長から聞いています」
「すみません、打ち合わせ中に⋯」
ジョーイ「増築の事でタカシさんに相談したい事があったので、丁度良かったですよ」
俺がジョーイ社長の隣に座ると、エルノールさんがお茶を汲みに行ってくれた。
「俺もジョーイ社長に仕事の相談がありましたし、ハイデルベルク社長にも相談したい事があったので、お邪魔させてもらいますね」
とりあえずジョーイ社長に、フィリスさんのお店と家にエアコンを取り付けた事を話して、代金の金貨48枚を渡した。
ジョーイ社長は一瞬驚いたが、前にお互い遠慮は無しにしようと言ったので、素直に代金を受け取ってくれた。
その後2人に増築の相談をされた。
相談内容は、印刷機の音が少し大きいので、「防音」の魔法を付与して欲しいという事と、工場長から水を冷やすような物を作れないかとお願いされた事だった。
作業場の壁に「防音」を付与するのは簡単だし、水を冷やす魔法も付与できると言うと、2人とも凄く喜んでくれた。
エアコンを起動しても、この会社の印刷に使う「湿し水」の温度が上がってしまうので困っていたらしい。
しかしエアコンと加湿器の効果は抜群で、今までより不良品が半分以下に減ったという。
それでもトランプがバカ売れし過ぎて生産は追い付かないので、増築の話も順調に進んでいるそうだ。
ジョーイ「タカシさんの相談は何ですか?」
「はい。俺の住んでいる街の外れに、孤児の子供達を養っている寺院があるんですが、その寺院を綺麗に改装して欲しいんです。もちろんグーテンベルクの増築工事の後で構いません。実は寺院の子達に、サムさんが屋台販売するハンバーガーの入れ物を作ってもらう仕事を頼みました。料理を入れる笹籠を作ってもらうので、清潔な所じゃないと衛生上良くありません」
一通り説明したが、2人とも俺を見て何か考えているようだ。
ジョーイ「孤児の子供達に仕事を⋯。流石タカシさんです!」
ハイデルベルク「増築の打ち合わせは来週くらいまで掛かると思うので、そっちを先に進めてください! 孤児の子供達の為なら、私も協力したいです」
予想外に感心されてしまった。
この世界なら、孤児の子供がたくさん居るだろうけど、その場凌ぎの善意をするのに抵抗があるんだろう。
ハイデルベルク社長まで協力的だ。
湯船は作ったので、お風呂の建物も作って欲しいとお願いすると、俺の作った湯船を見てみたいとジョーイ社長に言われた。
それからハイデルベルク社長には、ハンバーガーを是非食べてみたいと言われたので、収納からハンバーグを挟んだハンバーガーを出して食べてもらった。
凄く美味しいと絶賛してくれたので、今度従業員全員分を差し入れしてあげよう。
それから「権利」の取り方をハイデルベルク社長に教えてもらった。
「権利局」という所に行って、「権利」を登録したい物の説明をして、それを審査する人に認められないといけないらしい。
だが審査する人にハンバーガーを食べてもらったら、間違いなく「権利登録」をしてもらえるとハイデルベルク社長が言うので、いろんな種類のハンバーガーやドック、フライドポテトなんかを作って持って行こう。
今日の打ち合わせは終わったらしいので、エルノールさんに見送られながら、ジョーイ社長と一緒にグーテンベルクを後にした。
ジョーイ社長は引き続き図面の作成をしなければいけないが、寺院の改装に取り掛かりたいと言うので、近くの路地に入ってセドム村に「転移」した。
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