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第四章 料理と仕事
口移しとエアコンの設置
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マイアさんの家に着くと、ミリアちゃんが玄関を開けて、元気に声を掛けた。
ミリア「ママー、 ただいま~♪ みんなとタカシさんが来たよ~」
マイアさんがリビングから出てきて、笑顔で迎えてくれたが、暑いのでかなり薄着で肌の露出が多い服だった。
マイア「おかえりミリア。タカシさん、娘を可愛がってくれて、ありがとうございます」
「ああ、いえいえ。ミリアちゃん、いい子ですから」
可愛がるという言葉に一瞬焦ってしまったが、ミリアちゃんの頭を撫でながら、無難な返事を返した。
マイアさん以外が仕事をしに中に入って行ったので、俺はマイアさんと外に出て、家の横に生えている木の所に向かった。
「さっきジョーイ社長には言ったんですが、この木に『転移』の魔法を付与して、ジョーイ社長達が毎日帰って来られるようにします。だから夜は毎日、家族団欒してください」
マイア「え? 『転移』って、タカシさんが移動される魔法ですよね? す、凄いです! ありがとうございます!」
「セドム村の復興工事は、ジョーイ社長達が頑張ってくれたお蔭でほとんど終わっているんですが、俺が追加で仕事を頼んでしまったので、もう少しセドム村で仕事をして欲しいんです」
マイア「いえいえ! 仕事を頼んでくださるのは、逆に助かりますから気になさらないでください」
俺は木に触れて、ジョーイ社長と、一応マイアさんも使えるように「転移」を付与し、セドム村にだけ転移できるようにした。マイアさんに使い方を説明するとかなり驚いていたが、慣れてくれるように頼んだ。
マイア「いろいろ気を使って頂いて、ありがとうございます」
マイアさんと家のリビングに行くと、みんなが裁縫の仕事をしていた。ミリアちゃんも、器用に刺繍をしたりしている。獣人は服に尻尾の穴を開けたりするから、裁縫が得意な人が多いとユナが言っていたな。
「マイアさん、ちょっと『テレパシー』の石を貸してもらえますか? ロンダも」
マイア、ロンダ「「はい」」
2人が念話の石を渡してくれたので、「使用対象指定」の付与をした。しかし女性に渡す物なのに、ただの石なのが少し申し訳ないな。何か綺麗な物を仕入れてくるか。
そうすると、ここに居る全員分を用意しないと⋯⋯。こういう時の為に、何か綺麗な物を大量に買って、持っておいた方がいいな。
「盗まれたり失くしたりした時の為に、この魔道具を本人にしか使えないように魔法を付与したんですが、ちょっとただの石ころなのが申し訳ない。何かアクセサリーみたいな物の方がいいですよね?」
マイア「え? あ、いえいえ! 石ころでも、便利過ぎる魔道具ですから、そんな事は気にしないでください」
ロンダ「そうですよ。それにタカシさんに貰った物ですから、石ころでも嬉しいです」
女性の意見が聞きたいんだが、やっぱり遠慮されてしまうな。う~ん⋯⋯。
「セドム村に匿っている獣人女性達や、俺に関わっている人達には渡しておきたいので、どんな物がいいか知りたいんです。だから遠慮なく言ってもらえませんか? できればいろんな意見が聞きたいです」
マイア「そ、そういう事なら⋯⋯」
ミリア「私、綺麗なネックレスがいい!」
やっぱりネックレスが無難か。子供は素直に言ってくれるから助かる。ミリアちゃんは、いつも自分の事を「ミリア」と言っていたのに、今日は「私」と言っている。大人を意識しているみたいだから、あまり子供扱いしないように気を付けよう。
マイア「ミリア、あまりタカシさんに我儘を言ったらダメよ」
「いえ、『テレパシー』の魔道具を女性に渡す時、どんな物がいいか知りたいので、別に構わないですよ。セドム村の獣人女性には、ネックレスに付与して渡してますから」
ミユ「そ、そうなんですね。でも高価なアクセサリーは、ちょっと受け取りにくいって女性もいるかも知れません。もちろん嬉しいですけど⋯」
リタ「タカシさんは、凄く優しい人間の男性ですから、あまり甘え過ぎると、ちょっと自己嫌悪になっちゃう女性も居るかも」
ロンダ「あまり高価な物じゃなくても、付与されてる魔法が凄く便利ですし、タカシさんからプレゼントして貰ったら、何でも嬉しいですよ」
なるほどなぁ⋯。宝石とかは逆に受け取りにくいか。金はあるから別に構わないが、手軽に受け取りやすい物の方が確かにいいな。
リタは俺とセックスして、自己嫌悪になったんだろうか。 アイリスも、あんなに中に出したり、パイズリさせてもらったりしたのに、帰る時は申し訳なさそうにしていた。俺が優しいから、無理をしてセックスしてくれた、とか思わせてしまうのか。
中に出したいとか、おっぱいで挟んで欲しいとか言ってるのに、何で無理にセックスしてると思われるのか。たぶん文化の違いだろうな。後でリタに聞いてみよう。獣人の文化を理解していかないと、ユナ達に嫌われてしまう事もあるかも知れない。
「なるほど。ちょっといろいろ考えてみます。何かいい物が思い付いたら交換しますから、今はこの石ころで我慢してください」
ロンダ「はい。でもこの石もタカシさんがくれた物なので、何か大事なんですよね」
マイア「そ、そうねぇ」
いや、東区に落ちてた石ころなんだが⋯。人間の俺からプレゼントされたら何でも嬉しいなら、いっそ何か手作りしようかな。俺も高価な物より、手作り弁当とか手編みのセーターとかの方が、女性に貰うと嬉しいし。
それにアクセサリーは、指輪とかチョーカーネックレスが欲しいと言われると困る。この2つだけは、ユナ達だけにプレゼントしたという事が大事だ。
ニールさんに教えてもらって、ネックレスかブローチを手作りしてみよう。石でもいいなら、綺麗な石を磨いてアクセサリーにしてもいい。
「話は変わりますが、この居住区周辺が綺麗になって、盗賊紛いのハーフエルフとかが絡んできたりしてませんか? リタも出会った時は、強盗みたいな事をされていたし⋯⋯」
マイア「家を綺麗に修繕したり、お風呂屋を作った時に、そういうハーフエルフが少し居ましたが、元はあの人達も私達と同じで、軍隊のせいで生活が苦しくなった人達なので、主人が話したらわかってくれました」
話で解決したのか! 凄いな、ジョーイ社長。
リタ「元々東区は、獣人とハーフエルフで住み分けてますし、少ないですが魔族の人も居ます」
ロンダ「盗賊紛いの人はハーフエルフだけじゃなく、獣人も居たんですが、社長達が説得して、今はこの居住区に住んでます」
確かに獣人は助け合う文化があるから、盗賊にまで落ちた人でも話せばわかってくれたんだろう。しかしハーフエルフの盗賊には、何て話して納得させたんだろう。
ジョーイ社長は元Aランクの冒険者だから、盗賊くらいにビビったりしないと思うが、無用な暴力を振るったりする人じゃない。
ミリア「タカシさんのお蔭だよ」
「え?」
俺は何もしていないが⋯⋯。
マイア「盗賊っぽいハーフエルフの男が数人来て、お風呂をよこせとか、家を差し出せとか言ってきたんですが、主人が『風呂に入りたいなら、脅したりしなくても別にいつでも入ったら構わない。金も要らん。家が欲しいなら、資材を用意してくれたら俺が作ってやる』って言ったんです」
ロンダ「そしたらラルフさん達も、俺も家を作るの手伝ってやるぞ!って⋯⋯」
リタ「盗賊達が何も言えなくなって帰って行こうとしたんで、社長達が無理矢理お風呂屋に連れて行って、背中を流してあげたそうです」
マイア「お風呂で盗賊達と話し合ったら、お礼を言って帰って行ったって⋯。どんな話をしたのか、詳しくは知らないんですが、主人はタカシさんのお蔭だって言ってましたよ」
ええっ! 肝心な部分がわからないじゃん! ジョーイ社長は盗賊に何を言ったんだろう。気になるが、こういう事は聞かない方がいいかな? 何か恥ずかしい事を言われそうだし⋯。
それにしてもジョーイ社長達、めっちゃカッコイイな。獣人は相手が盗賊のハーフエルフでも、助けてあげたいって思う種族なんだな。
「あまり覚えが無いんですが、平和に解決できたのなら良かったです」
気が付くと、ミユさん以外が欲情した顔で俺を見ていた。ミユさんも顔が赤いが、ちょっと辛そうな表情をしている。
また病気になってしまったのかと思い、すぐに「鑑定」を念じると、『ミユ フェネック族の獣人 ♀ 21歳 魔法種無し 発熱』と出た。発熱? 熱があるのか? 風邪なら風邪と出るはずだ。
「ミユさん! 大丈夫ですか?」
マイア「え?」
ロンダ「ミユ! どうしたの? ⋯⋯熱い!」
俺の言葉に、みんながミユさんを見て慌てた。俺はミユさんの側に行き、その場で寝かせて額に触れた。熱いな⋯。風邪じゃないのに熱があるって⋯⋯⋯あ! 熱中症になりかけてるのかも!
すぐに「病気の治癒」と念じてミユさんを指定したが、手の光がミユさんに吸い込まれない。熱中症って病気じゃないのか? それとも熱中症になりかけなだけだから、病気と認識されないのか?
ミユ「はぁ⋯はぁ⋯だ、大丈夫です。夏になると⋯はぁ⋯よく熱が出るので⋯⋯」
熱が出るんじゃなくて、熱中症になりかけなんだ。他のみんなも暑そうだが、ミユさんは特に暑さに弱いのかも知れない。種族的な事があるのかな。
「マイアさん! 桶とタオルを用意してください!」
マイア「はい!」
とりあえず冷やして水分補給だな。俺は収納から冷たいジュースを出して、ミユさんに飲ませた。
リタ「タカシさん、ミユは病気なんでしょうか?」
ロンダ「病気ならタカシさんの魔法で治りますよね?」
「ミリアちゃん、コップを持ってきてくれる?」
ミリア「う、うん!」
「ミユさんは熱中症になりかけてるんだ。熱中症は病気じゃないから、治癒魔法で治せない。フェネック族って、特別暑さに弱かったりするのか?」
リタ「は、はい。フェネック族もですが、尻尾の毛が長い獣人女性は暑さに弱いです」
な、何!? じゃあユナやエマちゃんも熱中症になってるかも知れない! 2人とも倒れてたら危ないぞ! 俺は慌ててユナに「念話」した。
『ユナ! タカシだけど、大丈夫か? 熱は無いか?』
『え? タカシさん、どうしたんですか? 私、熱は無いですよ?』
ん? 何か平気そうだな。
『い、いや、熱が無いならいいんだけど⋯⋯』
マイア「タカシさん! 桶とタオルです! ミユは大丈夫ですか?」
マイアさんが桶とタオルを持ってきてくれた。
『大丈夫ならいいんだ。ちょっと、後でまた連絡するよ!』
『は、はい⋯?』
俺は「念話」を切り、魔法で桶に氷と水を出して、タオルを入れた。
「大丈夫ですが、熱中症なので冷やしてあげないといけません」
とりあえず、冷えたタオルを絞ってミユさんの額に乗せた。服も少し脱がせた方がいいかと思ったが、薄着なので大丈夫だろう。別におっぱいが見たかった訳じゃないぞ!
ミリア「タカシさん、コップ!」
「ああ、ありがとう」
桶の氷を少し砕いてコップに入れ、ジュースを入れていると、ロンダがミユさんの胸元のボタンを4つほど外していた。
ロンダ「呼吸が苦しそうだし、冷やした方がいいなら⋯」
確かにそうだが、ボタンを外し過ぎじゃないか? 乳首が見えそうになってるぞ!
俺がミユさんの胸に目をやったのを、あざとく見逃さないリタとロンダ。まったく、友達が苦しがっているのに何をやってるんだ! ⋯⋯いや、俺が悪いか⋯。
「ミユさん、もう少しジュースを飲んでください」
ミユ「ううっ⋯⋯はぁ⋯」
目の焦点が合ってない。しかし無理にでも水分を取らせないと、完全な熱中症になってしまう。く、口移ししかない。いや、別に俺じゃなくてもいいな。リタかロンダに頼むか。
そう思ってリタ達を見ると、リタもロンダも顔が赤くなっていた。ヤバい。全員が熱中症になったら大変だ。とりあえずミユさんに冷えたジュースを飲ませて、すぐにエアコンを取り付けてもらおう。
俺は冷えたジュースを口に含んで、口移しでミユさんに無理矢理飲ませた。怒られる事はないだろうが、後で一応謝っておこう。
ミユ「んんっ⋯⋯んくっ、ゴクン⋯⋯んっ⋯んん!♡♡♡」
2回目の口移しの時、ミユさんが俺に口移しされている事に気付いたが、まだ辛そうでしゃべれないようだ。
「とりあえず、このまましばらく休んでて」
ミユ「んっ⋯⋯は、はい♡」
周りを見ると、マイアさんとミリアちゃんまで顔が真っ赤になっていた。マジでヤバいな。
「みんな大丈夫? マイアさん、暑いですか?」
マイア「だ、大丈夫⋯⋯です⋯♡」
ミリア「タカシさん⋯⋯ミ、ミリアにも♡」
「え?」
ロンダ「タカシさんったら⋯♡」
リタ「目の前で見せられたら、私⋯⋯♡」
ヤバい。ミユさん以外は熱中症になりかけなんじゃなくて、口移しを見て欲情していたのか!
何やってんだタカシ! 獣人女性の前でそんな事したら、こうなるのは想像できただろうが! ロンダがミユさんの胸を見せるから⋯⋯。乳首が見えそうで見えないから、逆に興奮して「口移し」なんて発想が浮かんだに違いない。 いや、やっぱり俺が悪いな⋯。
とりあえずミユさんの熱中症を治さないといけないから、セドム村にすぐ帰ってエアコンを付けてもらおう。
「へ、部屋を冷やす魔道具を作っているので、すぐに付けてもらいます。ちょ、ちょっとセドム村に行ってきますね」
そう言って俺は、慌ててセドム村に逃げ⋯いや、転移した。
ヤバい、どうしよう⋯。リタとロンダとはセックスした事あるからいいが、マイアさんとミリアちゃんはどうしたもんか⋯⋯。それにミユさんも、熱中症が治ったら、エリダさんみたいに発情してしまうかも知れない。
セックスする予定の獣人女性が、俺の前に20人くらい並んでいるような気分だ。嫌ではないし精力は大丈夫だか、ユナ達とセックスする暇がない。なんて贅沢な悩みなんだ、まったく!
休憩所に向かいながら、そんな事を考えて歩いていると、休憩所の前にニーナさんが居るのが見えた。忘れていたが、みんな楽しみに待っているだろうから、早く洗髪液と髪油をお風呂屋に届けてあげないと⋯。
ニーナ「タカシさん! あ、あの、洗髪液と髪油をありがとうございます。その⋯⋯」
早く欲しいんだな。東区でも朝から獣人女性が殺到したみたいだし。しかしシャワーもあった方が絶対いい。
「もちろん買ってきたんだけど、もう少しだけ待っててくれる? 髪を洗うのに便利な道具を作って貰ってるから、それをお風呂屋に付けてからの方がいいよ」
ニーナ「そ、そうなんですか? タカシさんがそうおっしゃるなら、もう少し待ってます♪」
コリン「タカシさん、えあこんの大きいのと小さいのを10個ずつ作ったんですが、あとどのくらい必要ですか?」
もう20台も作ったのか! みんな仕事が早いな。エリダさん達の家屋は、リビングも寝室も広いから、大きい方がいいだろう。あと俺が知ってる広い部屋は、ユナの家のリビングとジョーイ社長の家のリビングくらいだ。
あ、ケイトさんの店にも付けたら、お客さんがたくさん来てくれるかも知れないな。俺が作った事を内緒にしてくれたら、別に大丈夫だろう。あとはお風呂屋の脱衣場に付けたら、風呂上がりに涼む事ができる。だから大きいのは⋯⋯10台だな。
「大きい方はとりあえず10台で、小さい方はみんなの家の数だけ必要です。東区の家で、大きいエアコンが必要な部屋のある家は、どのくらいありますか?」
コリン「東区なら、親方の家のリビングくらいしか無いですね。あとは小さいので大丈夫でしょう。セドム村と東区の分でだいたい⋯⋯80台くらいは必要ですね」
俺の予想と同じだな。東区もセドム村も、家の数は40軒くらいだ。アイリ達の家にも付けてあげたいし、別に余っても無駄になる気はしないから、小さいのは100台くらい作ってもらおう。コリンさんの早さなら、今日か明日には作ってしまえるだろう。
「小さいのは100台お願いします。資材は大丈夫ですか?」
コリン「あと10台分くらいしか無いですねぇ⋯」
とりあえず早くエアコンをジョーイ社長の家に付けないといけないから、ついでに買ってこよう。
「さっき社長の家に行ったら、ミユさんが暑くて倒れてしまったので、早くエアコンを付けてあげたいんです。だから社長を連れて東区に行くので、ついでに買ってきますよ」
コリン「そ、そうなんですか!? ミユさんは大丈夫ですか?」
「身体を冷やして、冷たい飲み物を飲ませてきたので、すぐに良くなると思いますが、エアコンを付けてあげないと、また倒れてしまうかも知れません。とりあえずエアコンを2台貰っていきますね」
コリン「はい! 早く付けてあげてください」
「ごめんねニーナさん。そういう訳だから、もう少し待っててね」
ニーナ「はい、もちろんです!」
エアコンを付けるから、ベンさんも連れて行った方がいいな。休憩所に入ってベンさんに訳を説明すると、インパクトドライバーを持ってから、「すぐに行きましょう!」と言ってくれた。
そのまま外に出て、俺は大きいエアコンと小さいエアコンを1台ずつ収納して、ベンさんと一緒にジョーイ社長の所へ転移した。
おお! ビニールハウスの骨組みが、後は屋根だけになっている。2人なのに早いな。
「ジョーイ社長!」
ジョーイ「タカシさん、どうしたんですか?」
「さっき社長の家に行ったら、ミユさんが暑さで倒れてしまったんです。だからすぐにエアコンを付けてあげたいので、一緒に来てください!」
ジョーイ「えあこん?」
「ああ、部屋の温度を下げる魔道具の事です」
ジョーイ「そうでしたか。はい、すぐに行きましょう。ジャック、ちょっと東区に行ってくるから、俺が帰ってくるまで休憩所で休んでてくれ。屋根の部分は1人じゃ危ないから、絶対に1人で作業するなよ!」
ジャック「はい、親方!」
安全第一。流石ジョーイ社長だ。
ジョーイ社長とベンさんが俺の肩に掴まったので、ジョーイ社長の家の前に転移した。
ジョーイ「マイアー、ミユさんは大丈夫か?」
マイア「え? あ、アナタ? ちょ、ちょっと待ってください!」
ん? なんだ? なんか慌ててるな。
少しすると、マイアさんがバタバタと玄関に出てきた。
マイア「お、お帰りなさいアナタ」
ジョーイ「ああ、ただいま。ミユさんは大丈夫か?」
マイア「さっき目を覚ましたんですが、一応寝かせてます」
とりあえず家に上がってリビングに向かうと、みんなの顔は普通に戻っていて、ミユさんの服も元に戻されていた。たぶんそれで慌ててたんだろう。
「ジョーイ社長、エアコンは何処に付けましょうか? 一応壁の上の方に付けた方がいいのですが⋯」
収納から大きいエアコンを出して聞いた。ジョーイ社長の家だから、家主の許可が必要だろう。
ジョーイ「そうですねぇ⋯。じゃあこっちの壁に付けましょう。ベン、手伝ってくれ」
ベン「はい!」
ジョーイ社長がエアコンを持ち上げて、ベンさんが取り付ける。ベンさんなら脚立が要らないな。しかし高すぎで、マイアさんの手が届かない気がする。
「社長。そこの羽を手で動かして、風の向きを変えられるようになっているので、マイアさんの手が届く高さまで下げてください」
ジョーイ「は、はい!」
風の向きを調整できる事を説明していなかったので、ジョーイ社長が少し驚きながら返事をした。
ジョーイ「マイア、このくらいなら羽に手が届くか?」
マイア「ええ、その高さなら大丈夫だわ」
高さが決まったので、ベンさんがインパクトドライバーでエアコンを固定した。ちょっと自慢気にドヤ顔をしている。インパクトドライバーの魔道具が、よっぽど気に入ったんだな。
まだ魔法を付与してなかったので、エアコンに手を触れて魔法を付与した。
「じゃあマイアさん、まずは普通に魔力を込めてみてください」
マイア「は、はい⋯?」
コリンさんと同じリアクションだな。マイアさんが魔力を込めると、コリンさんの時と同じように、中くらいの風が出た。
マイア「わぁぁぁ、涼しい風が!」
そこもコリンさんと同じだ。ちょっと面白いな。
「そのままもう少し魔力を込めてみてください」
マイア「は、はい⋯?」
マイアさんがもう1度魔力を込めると、少し風が強くなった。
「もう少し多めに」
マイアさんがもう1度魔力込めると、強風くらいになった。
「その魔力量を覚えていてください。それ以上魔力を込めると、羽が壊れるかも知れませんから」
ジョーイ「風の強さを調整できるんですか!?」
マイア「魔道具って、そんな事ができる物なんですか!?」
ベン「凄過ぎる⋯⋯」
コリンさんの時と全く同じリアクションだった事に俺がニヤニヤしていたので、ベンさんが最後に笑いながら同じ台詞を言ってくれた。
ジョーイ「ベン、なんか可笑しかったか?」
「いえ、コリンさんの時と全く同じ反応だったので、ちょっと面白くて⋯」
ベン「すみません親方。でも全く同じでしたよ」
ジョーイ「そりゃ同じ反応になりますよ~」
マイア「込める魔力量で、魔道具の効果が変わるなんて⋯⋯」
ミリア「タカシさん凄い!」
「このまま部屋を涼しくして、しばらく寝てればミユさんも大丈夫でしょう」
マイア「そうですね。それに仕事も捗ります。タカシさん、ありがとうございます」
「いえいえ、作ったのはコリンさんですから」
ジョーイ「確かにそうですが、付与が凄過ぎますよ!」
「もう1台持ってきてるので、とりあえずミユさんの家にも付けてあげてください」
ジョーイ「はい! フェネック族のような尻尾の獣人女性は暑さに弱いですから、その方がいいですね」
「まだまだ作って貰っているので、後でみんなの家にも付けましょう」
ロンダ「わぁぁぁ、ありがとうございます♪」
リタ「凄く贅沢ですね!」
まだ水道とシャワーもある。どんどん快適な生活にしてあげよう。贅沢と言っても、地球では一般的な環境だ。
そのまま男3人でミユさんの家に向かった。玄関をノックして声をかける。ミユさんは妹と2人暮らしだから、サラちゃんという妹さんが家に居るはずだ。
「こんにちは~、タカシです」
すると奥から、ミユさんによく似た獣人女性が走ってきた。ミユさんに名前は聞いたが、よく覚えてないので「鑑定」してみると、『サラ フェネック族の獣人 ♀ 14歳 魔法種光魔法』と出た。
病気を治した時に1度「鑑定」しているはずだが、あの時は次から次へと病気を治したから、正直誰のどんな病気を治したのか覚えていない。
サラ「こんにちはタカシさん♪ お姉ちゃんなら、社長の家に行ってますよ?」
「こんにちは、サラちゃん。実はお姉さんが社長の家で倒れちゃったんだ。もう大丈夫だから心配ないけど、暑さで倒れちゃったから、サラちゃんの事も心配でね」
サラ「そ、そうなんですね。タカシさん、お姉ちゃんを助けてくれて、ありがとうございました。私はまだ暑さに弱くないので大丈夫です」
まだ? 何か、そのうち弱くなるような言い方だな。
ジョーイ「ああ、タカシさん。獣人は発情期の後に尻尾の毛が少し伸びて、それから暑さに弱くなってしまうんです」
そういう事か。そう言えばエマちゃんも、発情期の後に尻尾が少しフワフワになった気がするな。知らないと気付かないくらいだけど。
サラちゃんは14歳だから、まだ暑さに弱くないんだな。
「またお姉さんが倒れたら大変だから、涼しい風が出る魔道具を家に付けに来たんだけど、上がっていいかな?」
サラ「はい。どうぞ上がってください」
ミユさんの家は、ユーリの家と同じで、1LDKの間取だった。寝室がリビングとほとんど繋がってるから、リビングに1台付けたら大丈夫だろう。
ジョーイ「タカシさん、この辺りに付けましょうか?」
ジョーイ社長が寝室の向かいの壁を指差して言った。
「そうですね。そこなら寝室まで冷やせると思います。サラちゃん、ここにこの箱を付けたいんだけど、いいかな?」
サラ「⋯? は、はい。お任せします」
エアコンの説明をしていないので、サラちゃんが不思議そうに返事をした。詳しく説明するより、涼しい風を出して見せた方がわかりやすいだろう。
またジョーイ社長がエアコンを持ち上げて、ベンさんが取り付ける。ジョーイ社長がサラちゃんの身長を考えて、丁度手が届く高さに持ち上げると、ベンさんがまたドヤ顔でエアコンを固定した。わかったから、もうドヤ顔は止めなさい。
エアコンに魔法を付与して、サラちゃんに魔力を込めてもらう。
「サラちゃん、この箱に魔力を込めてみて」
サラ「は、はい」
サラちゃんが魔力を込めると、いきなり強風が出た。サラちゃんは魔力量が少し多いのかな?
サラ「わっ! 冷たい風が!」
「その魔力量を覚えていてね。それ以上は羽が壊れちゃうかも知れないから。込める魔力の強さで、風の勢いを変えられるから、強過ぎたら魔力を弱めてみてね」
サラ「はい。凄い魔道具ですね! これがあれば、暑さに弱いお姉ちゃんも大丈夫ですよ。ありがとうございます」
「寝る時は風を弱くしてから寝ないと、身体が冷え過ぎちゃうかも知れないから、気を付けてね」
サラ「はい♪」
サラちゃんは凄く嬉しそうに返事をしたが、俺が家に来てから頬がずっと赤い。欲情してるっぽいな。14歳だから、あまり欲情させると、エマちゃんみたいに早めに発情期が来てしまうかも知れない。気を付けないといけないな。
「じゃあエアコンの資材を買ってから、セドム村に帰りましょうか? あ、さっき社長の家の木に『転移』を付与しておいたので、帰る時は試しに使ってみましょう」
ジョーイ「は、はい。ちょっと緊張します」
俺も最初はちょっと怖かった。知らない場所に飛ばされたら⋯って心配になるんだよな。
3人で資材屋に行って、エアコン用の木材を大量に買ってから社長の家に帰ってきた。外の木に社長が手を触れる。
「魔力を込めて『トランスファー』と詠唱してから、セレクトと出たら、『自分と肩に掴まっている人』と詠唱してください」
ジョーイ「は、はい。ちゃんと肩を掴んでてくださいね!」
別に大丈夫なんだが、やっぱり怖いよな。いや、「肩に掴まってる人」だから、ちゃんと肩に掴まってないとダメだな。俺も「俺に掴まってる人」と指定してるから、気を付けないといけない。
ジョーイ「『トランスファー』⋯⋯『自分と肩に掴まっている人』」
詠唱が終わると、休憩所の前に転移していた。成功だ!
コリン「わっ! お、お帰りなさい親方。ミユさんは大丈夫でしたか?」
休憩所の前でエアコンを作っていたコリンさんを脅かせてしまった。これは言っておいた方がいいな。
ジョーイ「ああ、エアコンを付けてきたから大丈夫だ。たくさん必要だから、頼むぞコリン!」
コリン「任せてください!」
休憩所に入ると、シャワーヘッドを作っているニールさんと、水道を組み立てているジャックさんが居た。シャワーヘッドは、すでに7個くらい机の上にある。
ジャック「あ、お帰りなさい親方!」
ジョーイ「ああ、ただいま。じゃあ畑に戻って続きだ、ジャック!」
ジャック「はい!」
ジョーイ社長とジャックさんは、すぐにビニールハウスを組み立てに行った。よく働くなぁ。
ニール「魔物の死体って、ガイズベアーだったんですね! 収納箱から出してビックリしましたよ!」
「あれなら一番魔骨が採れると思いまして」
ニール「首を切り落として倒したんですか?」
「ええ、一刀両断ですよ」
ニール「タカシさんって、剣の腕も凄いんですねぇ。硬い魔吸木も綺麗な断面で切り倒されてましたし⋯。流石はSSランクの冒険者ですね!」
全部チート武器のお陰です、とは言えないので、苦笑いしか出来ない。
それよりシャワーが出来ているから、早くお風呂屋に付けてあげよう。みんな待ってるだろうしな。ついでに脱衣場にエアコンを付けて、みんながお風呂に入っている間に、家屋にもエアコンを付けてあげよう。
あっ! ユナに「念話」しないといけないのを忘れてた。
『ユナ、タカシだけど』
『はい。さっきはどうしたんですか?』
『フェネック族の獣人女性が暑さで倒れちゃってね。聞いたら、尻尾がフサフサの獣人女性は暑さ弱いって言うから、ユナとエマちゃんが心配になって⋯⋯』
『心配してくれて、ありがとうございます。確かに私も暑さに弱いんですが、夏は氷をたくさん作っているのと、倒れちゃう前に水を浴びるようにしているので大丈夫ですよ』
ユナの家には冷蔵庫みたいな魔道具があるから、氷を作って舐めたりしてるのか。しかし水を浴びないと倒れてしまうなら、早くエアコンを付けてあげたい。
『ちょっと心配だから、昼前に1度帰るよ。建築会社の人を1人連れていくから、エッチな服とか着ないでね』
『は、はい⋯?』
言っておかないと、また裸エプロンとかを着ていそうだからな。
とりあえず女湯の分のシャワーを5個と、エアコンを3台、あと水道も必要だな。ユナの家の分も収納しておこう。
「ニールさん、早速付けてあげたいので、シャワーを貰っていきますね」
ニール「はい。余った魔骨はどうしますか?」
「シャワーを25個作ってもらったら、後は好きに使ってもらっていいですよ。ガイズベアーの素材も、欲しい物があったら使ってください」
ニール「い、いいんですか?」
「俺の収納には、まだまだ魔物の死体があるので、遠慮は要りません」
ニール「はい。ありがとうございます」
「ベンさん、いろいろ取り付けて欲しいので、一緒に来てもらえますか?」
ベン「はい。タカシさんが魔道具を買ってくれたから、取り付けは任せてください!」
インパクトドライバーが本当に気に入ってるな。
必要な数のエアコンとシャワーと水道を収納して、ベンさんとお風呂屋へ向かった。
お風呂屋に着いて思ったが、女湯に誰か入っていたら、設置ができないな。とりあえず入口の所で、女湯の脱衣場に向かって声を掛けてみる。
「すいませ~ん! 女湯に誰か居ますか~?」
すると脱衣場からマミさんが出てきた。暑いからなのか、髪をポニーテールにして、白のノースリーブシャツにホットパンツという、かなり露出の高い服装だ。少し汗をかいて、白いシャツから乳首が透けて見えている。⋯⋯たまらんな。
ベンさんは興奮しないんだろうか? 獣人女性のこんな格好を見ても、顔がニヤケたりしていないな。
マミ「あ、タカシさんにベンさん。 もしかして、洗髪液と髪油を持ってきてくださったんですか?」
マミさんが凄く期待した感じて言ってくる。
「それもなんだけど、ちょっと女湯の方に設置したい物があるんだ。今女湯に誰か入ってる?」
マミ「そうなんですね。今は私とノンノで、女湯の掃除をしている所だったので、大丈夫ですよ」
ちょうど良かった。今の内に設置してしまおう。
「じゃあちょっと女湯の方に入るね」
マミ「はい」
ベンさんと女湯の脱衣場に入って、大きいエアコンを設置する。脱衣場全体に風が広がる位置に、俺がエアコンを持ち上げて、ベンさんが固定した。
魔法を付与し、とりあえずマミさんに使い方を説明して起動してもらい、みんなにも教えてくれるように頼んだ。マミさんは、俺の非常識に慣れてきたのか、凄く喜んでくれたが、そこまで驚いている感じは無かった。
次にシャワーとシャワーフックを設置する為、女湯の曇りガラスの扉を開けると、俺の石像に抱き付いて掃除をしているノンノさんが居た。見てはいけない光景を見てしまった気がして、慌ててガラス扉を閉める。
ベン「あれ? 入らないんですか?」
「いや、入るんですが⋯。マミさん、ちょっと中に入って、ノンノさんに説明してきてくれる?」
マミ「⋯⋯? は、はい」
マミさんが中に入ってしばらくすると、ノンノさんの悲鳴が聞こえた。これは見なかった事にした方がいいな。
扉が開いて、中から涙目のノンノさんが出てきた。
ノンノ「あ、あの⋯⋯み、見ましたか?」
「何を? 何も見てないけど、どうしたの?」
ノンノ「そ、そうなんですね! ならいいんです!」
ノンノさんが凄く安心した顔になった。オナニーを見られたような物だから、見たと言うと俺も気まずい。
ベンさんと中に入って、マミさんにシャワーの使い方を説明しながら、ベンさんにシャワーフックを固定してもらう。
マミ「タカシさんって、やっぱり優しいですね」
さっきの事を言っているんだな。
「このまま内緒にしててね」
マミ「はい♪」
シャワーに魔法を付与して試しに出してみたが、ちょっと勢いが弱いので、「設定」で温度と勢いを変えられるようにした。「設定」があれば、付与に失敗しても手直しが効く。しかし付与を取り消す方法も調べておいた方がいいな。
シャワーを出して、マミさんに手を洗ってもらう。
マミ「わっ! わぁぁぁ、凄い! これ、絶対髪が洗いやすいですよ!」
「このフックに掛ければ、頭の上からお湯を浴びながら泡を流せるよ」
マミ「凄いですタカシさん! 絶対みんな喜びますよ!」
「じゃあ次は家屋にエアコンを設置しに行くから、みんなが来たら使い方を教えてあげてね」
マミ「はい、お任せください♪」
設置が終わったので、石鹸と洗髪液と髪油を置いて、エリダさん達の家屋に向かう。ニーナさんが楽しみに待っているから、「念話」しておこう。
『ニーナさん。さっきお風呂屋に洗髪液とかを置いてきたから、もう入っていいよ』
『わぁぁぁ、ありがとうございます♪』
『お風呂にある魔道具の使い方は、マミさんに聞いてね』
『はい♪』
凄く嬉しそうだ。洗髪液くらいでそんな喜んでくれるとは⋯。なんとなく、ジョーイ社長の気持ちがわかったな。
家屋に着いたので、いつものように玄関をノックして声を掛けると、リカさんが出迎えてくれた。
リカ「あの⋯タカシさん。せ、洗髪液は⋯」
「ああ、さっきお風呂屋に置いてきたから、もう入っていいよ。遠慮なく、尻尾にも使っていいからね」
みんな「「「わぁぁぁ、ありがとうございます♪」」」
みんな凄く嬉しそうにお礼を言ってくれたが、エリダさんとクララさんは、少し暑そうにしていた。クララさんは羊族だから、尻尾がモコモコしている。2人は暑さに弱いんだろう。
みんなすでに着替えとタオルを用意していて、お風呂に入る気満々だ。あれ? よく考えたら、暑さに弱いならお風呂はヤバくないか? 大丈夫なのかな? もしかしたら、お風呂の温度を下げられるように「設定」してあげた方がいいかも知れない。
みんながお風呂屋の方へ行き出したが、水道の使い方を教えておきたいので、リカさんにだけ残ってもらった。
「早くお風呂屋に行きたいのに、ごめんね。ちょっとだけ説明しておきたい事があるんだ」
リカ「いえ、大丈夫です」
ベンさんと台所へ行って、水道を設置してもらう。ここでもインパクトドライバーが大活躍で、ベンさんも満足そうだ。
魔法を付与して、リカさんに使い方を説明する。
「魔力を込めると、このパイプからは水が出て、こっちのパイプからはお湯が出るんだ。こっちのはシャワーといって、これで洗い物をすると油汚れなんかも落ちやすいと思うし、お湯が出るからお湯を沸かすのも短時間で済む」
リカ「⋯⋯す、凄い! 凄く便利です! ありがとうございます。魔法の水がいつでも飲めるなんて凄く贅沢ですよ!」
「喜んでもらえて良かったよ。あと涼しい風が出る魔道具を、リビングと寝室に付けておくから、もうお風呂屋に行ってもいいよ。使い方はマミさんに説明してあるから」
リカ「はい。私達の中では、エリダさんとクララが暑さに弱い種族なので、凄く助かります」
「尻尾がフサフサな獣人女性が暑さに弱いって聞いて、凄く心配だったんだ。でも熱いお風呂に入って大丈夫なの?」
ベン「あ、お風呂は大丈夫なんですよ。長く浸かると、のぼせたりはしますけど」
リカ「熱いお湯を浴びたり、熱いお湯に浸かったりするのは大丈夫なんですが、気温が高くて風通しが悪い部屋に居ると、熱が出ちゃうんです」
熱中症と似てるが、獣人特有の症状なのかも知れないな。「病気の治癒」で治らなかったから、病気では無いんだろうけど。
サウナを作ったら、獣人男性が喜ぶかと思ったが、そういう事ならダメだな。
リカさんが尻尾をブンブン振りながら、嬉しそうにお風呂屋へ行ったので、ベンさんとエアコンを付けていく。
リビングに付けたあと、寝室に降りて行くと、かなり暑かった。地下だから熱が籠るんだろうな。一応通気口があるけど、空気が流れないとあまり意味がない。エアコンを付ければ大丈夫だが、もっと広いケイトさんの服屋みたいな所だと、シーリングファンみたいな物があった方がいいかもな。
エアコンを付ける為にベッドの上に乗ると、足元にエロ本があった。俺とベンさんは、顔を見合わせて頷いてから、エアコンを設置した。男なら、こういうのは見て見ぬ振りしないといけないのは、獣人男性も同じなんだな。
エアコンを設置し終えたので、中くらいの涼しい風を出しておいた。お風呂から帰ってきて、部屋が涼しかったら喜んでくれるだろう。
ベン「じゃあ休憩所に戻って、仕事の続きをしますね」
「あ、まだ付けて欲しい家があるんで、もう一軒だけいいですか?」
ベン「はい、設置は任せてください!」
ベンさんがインパクトドライバーを見せながら、得意気に言った。確かにカッコイイんだが、ドヤ顔をすると台無しだ。
帰る前にユナに連絡しておく。
『ユナ。今から帰るけど、いいかな?』
『はい。私もエマも、普通の服を着てるから大丈夫ですよ』
『う、うん。ありがとう』
なぜか「念話」の声がやけに嬉しそうだ。理由はわからないが、熱中症っぽくなってないようで安心する。
ベンさんに肩を掴んでもらい、ユナの家の玄関前に転移した。
ミリア「ママー、 ただいま~♪ みんなとタカシさんが来たよ~」
マイアさんがリビングから出てきて、笑顔で迎えてくれたが、暑いのでかなり薄着で肌の露出が多い服だった。
マイア「おかえりミリア。タカシさん、娘を可愛がってくれて、ありがとうございます」
「ああ、いえいえ。ミリアちゃん、いい子ですから」
可愛がるという言葉に一瞬焦ってしまったが、ミリアちゃんの頭を撫でながら、無難な返事を返した。
マイアさん以外が仕事をしに中に入って行ったので、俺はマイアさんと外に出て、家の横に生えている木の所に向かった。
「さっきジョーイ社長には言ったんですが、この木に『転移』の魔法を付与して、ジョーイ社長達が毎日帰って来られるようにします。だから夜は毎日、家族団欒してください」
マイア「え? 『転移』って、タカシさんが移動される魔法ですよね? す、凄いです! ありがとうございます!」
「セドム村の復興工事は、ジョーイ社長達が頑張ってくれたお蔭でほとんど終わっているんですが、俺が追加で仕事を頼んでしまったので、もう少しセドム村で仕事をして欲しいんです」
マイア「いえいえ! 仕事を頼んでくださるのは、逆に助かりますから気になさらないでください」
俺は木に触れて、ジョーイ社長と、一応マイアさんも使えるように「転移」を付与し、セドム村にだけ転移できるようにした。マイアさんに使い方を説明するとかなり驚いていたが、慣れてくれるように頼んだ。
マイア「いろいろ気を使って頂いて、ありがとうございます」
マイアさんと家のリビングに行くと、みんなが裁縫の仕事をしていた。ミリアちゃんも、器用に刺繍をしたりしている。獣人は服に尻尾の穴を開けたりするから、裁縫が得意な人が多いとユナが言っていたな。
「マイアさん、ちょっと『テレパシー』の石を貸してもらえますか? ロンダも」
マイア、ロンダ「「はい」」
2人が念話の石を渡してくれたので、「使用対象指定」の付与をした。しかし女性に渡す物なのに、ただの石なのが少し申し訳ないな。何か綺麗な物を仕入れてくるか。
そうすると、ここに居る全員分を用意しないと⋯⋯。こういう時の為に、何か綺麗な物を大量に買って、持っておいた方がいいな。
「盗まれたり失くしたりした時の為に、この魔道具を本人にしか使えないように魔法を付与したんですが、ちょっとただの石ころなのが申し訳ない。何かアクセサリーみたいな物の方がいいですよね?」
マイア「え? あ、いえいえ! 石ころでも、便利過ぎる魔道具ですから、そんな事は気にしないでください」
ロンダ「そうですよ。それにタカシさんに貰った物ですから、石ころでも嬉しいです」
女性の意見が聞きたいんだが、やっぱり遠慮されてしまうな。う~ん⋯⋯。
「セドム村に匿っている獣人女性達や、俺に関わっている人達には渡しておきたいので、どんな物がいいか知りたいんです。だから遠慮なく言ってもらえませんか? できればいろんな意見が聞きたいです」
マイア「そ、そういう事なら⋯⋯」
ミリア「私、綺麗なネックレスがいい!」
やっぱりネックレスが無難か。子供は素直に言ってくれるから助かる。ミリアちゃんは、いつも自分の事を「ミリア」と言っていたのに、今日は「私」と言っている。大人を意識しているみたいだから、あまり子供扱いしないように気を付けよう。
マイア「ミリア、あまりタカシさんに我儘を言ったらダメよ」
「いえ、『テレパシー』の魔道具を女性に渡す時、どんな物がいいか知りたいので、別に構わないですよ。セドム村の獣人女性には、ネックレスに付与して渡してますから」
ミユ「そ、そうなんですね。でも高価なアクセサリーは、ちょっと受け取りにくいって女性もいるかも知れません。もちろん嬉しいですけど⋯」
リタ「タカシさんは、凄く優しい人間の男性ですから、あまり甘え過ぎると、ちょっと自己嫌悪になっちゃう女性も居るかも」
ロンダ「あまり高価な物じゃなくても、付与されてる魔法が凄く便利ですし、タカシさんからプレゼントして貰ったら、何でも嬉しいですよ」
なるほどなぁ⋯。宝石とかは逆に受け取りにくいか。金はあるから別に構わないが、手軽に受け取りやすい物の方が確かにいいな。
リタは俺とセックスして、自己嫌悪になったんだろうか。 アイリスも、あんなに中に出したり、パイズリさせてもらったりしたのに、帰る時は申し訳なさそうにしていた。俺が優しいから、無理をしてセックスしてくれた、とか思わせてしまうのか。
中に出したいとか、おっぱいで挟んで欲しいとか言ってるのに、何で無理にセックスしてると思われるのか。たぶん文化の違いだろうな。後でリタに聞いてみよう。獣人の文化を理解していかないと、ユナ達に嫌われてしまう事もあるかも知れない。
「なるほど。ちょっといろいろ考えてみます。何かいい物が思い付いたら交換しますから、今はこの石ころで我慢してください」
ロンダ「はい。でもこの石もタカシさんがくれた物なので、何か大事なんですよね」
マイア「そ、そうねぇ」
いや、東区に落ちてた石ころなんだが⋯。人間の俺からプレゼントされたら何でも嬉しいなら、いっそ何か手作りしようかな。俺も高価な物より、手作り弁当とか手編みのセーターとかの方が、女性に貰うと嬉しいし。
それにアクセサリーは、指輪とかチョーカーネックレスが欲しいと言われると困る。この2つだけは、ユナ達だけにプレゼントしたという事が大事だ。
ニールさんに教えてもらって、ネックレスかブローチを手作りしてみよう。石でもいいなら、綺麗な石を磨いてアクセサリーにしてもいい。
「話は変わりますが、この居住区周辺が綺麗になって、盗賊紛いのハーフエルフとかが絡んできたりしてませんか? リタも出会った時は、強盗みたいな事をされていたし⋯⋯」
マイア「家を綺麗に修繕したり、お風呂屋を作った時に、そういうハーフエルフが少し居ましたが、元はあの人達も私達と同じで、軍隊のせいで生活が苦しくなった人達なので、主人が話したらわかってくれました」
話で解決したのか! 凄いな、ジョーイ社長。
リタ「元々東区は、獣人とハーフエルフで住み分けてますし、少ないですが魔族の人も居ます」
ロンダ「盗賊紛いの人はハーフエルフだけじゃなく、獣人も居たんですが、社長達が説得して、今はこの居住区に住んでます」
確かに獣人は助け合う文化があるから、盗賊にまで落ちた人でも話せばわかってくれたんだろう。しかしハーフエルフの盗賊には、何て話して納得させたんだろう。
ジョーイ社長は元Aランクの冒険者だから、盗賊くらいにビビったりしないと思うが、無用な暴力を振るったりする人じゃない。
ミリア「タカシさんのお蔭だよ」
「え?」
俺は何もしていないが⋯⋯。
マイア「盗賊っぽいハーフエルフの男が数人来て、お風呂をよこせとか、家を差し出せとか言ってきたんですが、主人が『風呂に入りたいなら、脅したりしなくても別にいつでも入ったら構わない。金も要らん。家が欲しいなら、資材を用意してくれたら俺が作ってやる』って言ったんです」
ロンダ「そしたらラルフさん達も、俺も家を作るの手伝ってやるぞ!って⋯⋯」
リタ「盗賊達が何も言えなくなって帰って行こうとしたんで、社長達が無理矢理お風呂屋に連れて行って、背中を流してあげたそうです」
マイア「お風呂で盗賊達と話し合ったら、お礼を言って帰って行ったって⋯。どんな話をしたのか、詳しくは知らないんですが、主人はタカシさんのお蔭だって言ってましたよ」
ええっ! 肝心な部分がわからないじゃん! ジョーイ社長は盗賊に何を言ったんだろう。気になるが、こういう事は聞かない方がいいかな? 何か恥ずかしい事を言われそうだし⋯。
それにしてもジョーイ社長達、めっちゃカッコイイな。獣人は相手が盗賊のハーフエルフでも、助けてあげたいって思う種族なんだな。
「あまり覚えが無いんですが、平和に解決できたのなら良かったです」
気が付くと、ミユさん以外が欲情した顔で俺を見ていた。ミユさんも顔が赤いが、ちょっと辛そうな表情をしている。
また病気になってしまったのかと思い、すぐに「鑑定」を念じると、『ミユ フェネック族の獣人 ♀ 21歳 魔法種無し 発熱』と出た。発熱? 熱があるのか? 風邪なら風邪と出るはずだ。
「ミユさん! 大丈夫ですか?」
マイア「え?」
ロンダ「ミユ! どうしたの? ⋯⋯熱い!」
俺の言葉に、みんながミユさんを見て慌てた。俺はミユさんの側に行き、その場で寝かせて額に触れた。熱いな⋯。風邪じゃないのに熱があるって⋯⋯⋯あ! 熱中症になりかけてるのかも!
すぐに「病気の治癒」と念じてミユさんを指定したが、手の光がミユさんに吸い込まれない。熱中症って病気じゃないのか? それとも熱中症になりかけなだけだから、病気と認識されないのか?
ミユ「はぁ⋯はぁ⋯だ、大丈夫です。夏になると⋯はぁ⋯よく熱が出るので⋯⋯」
熱が出るんじゃなくて、熱中症になりかけなんだ。他のみんなも暑そうだが、ミユさんは特に暑さに弱いのかも知れない。種族的な事があるのかな。
「マイアさん! 桶とタオルを用意してください!」
マイア「はい!」
とりあえず冷やして水分補給だな。俺は収納から冷たいジュースを出して、ミユさんに飲ませた。
リタ「タカシさん、ミユは病気なんでしょうか?」
ロンダ「病気ならタカシさんの魔法で治りますよね?」
「ミリアちゃん、コップを持ってきてくれる?」
ミリア「う、うん!」
「ミユさんは熱中症になりかけてるんだ。熱中症は病気じゃないから、治癒魔法で治せない。フェネック族って、特別暑さに弱かったりするのか?」
リタ「は、はい。フェネック族もですが、尻尾の毛が長い獣人女性は暑さに弱いです」
な、何!? じゃあユナやエマちゃんも熱中症になってるかも知れない! 2人とも倒れてたら危ないぞ! 俺は慌ててユナに「念話」した。
『ユナ! タカシだけど、大丈夫か? 熱は無いか?』
『え? タカシさん、どうしたんですか? 私、熱は無いですよ?』
ん? 何か平気そうだな。
『い、いや、熱が無いならいいんだけど⋯⋯』
マイア「タカシさん! 桶とタオルです! ミユは大丈夫ですか?」
マイアさんが桶とタオルを持ってきてくれた。
『大丈夫ならいいんだ。ちょっと、後でまた連絡するよ!』
『は、はい⋯?』
俺は「念話」を切り、魔法で桶に氷と水を出して、タオルを入れた。
「大丈夫ですが、熱中症なので冷やしてあげないといけません」
とりあえず、冷えたタオルを絞ってミユさんの額に乗せた。服も少し脱がせた方がいいかと思ったが、薄着なので大丈夫だろう。別におっぱいが見たかった訳じゃないぞ!
ミリア「タカシさん、コップ!」
「ああ、ありがとう」
桶の氷を少し砕いてコップに入れ、ジュースを入れていると、ロンダがミユさんの胸元のボタンを4つほど外していた。
ロンダ「呼吸が苦しそうだし、冷やした方がいいなら⋯」
確かにそうだが、ボタンを外し過ぎじゃないか? 乳首が見えそうになってるぞ!
俺がミユさんの胸に目をやったのを、あざとく見逃さないリタとロンダ。まったく、友達が苦しがっているのに何をやってるんだ! ⋯⋯いや、俺が悪いか⋯。
「ミユさん、もう少しジュースを飲んでください」
ミユ「ううっ⋯⋯はぁ⋯」
目の焦点が合ってない。しかし無理にでも水分を取らせないと、完全な熱中症になってしまう。く、口移ししかない。いや、別に俺じゃなくてもいいな。リタかロンダに頼むか。
そう思ってリタ達を見ると、リタもロンダも顔が赤くなっていた。ヤバい。全員が熱中症になったら大変だ。とりあえずミユさんに冷えたジュースを飲ませて、すぐにエアコンを取り付けてもらおう。
俺は冷えたジュースを口に含んで、口移しでミユさんに無理矢理飲ませた。怒られる事はないだろうが、後で一応謝っておこう。
ミユ「んんっ⋯⋯んくっ、ゴクン⋯⋯んっ⋯んん!♡♡♡」
2回目の口移しの時、ミユさんが俺に口移しされている事に気付いたが、まだ辛そうでしゃべれないようだ。
「とりあえず、このまましばらく休んでて」
ミユ「んっ⋯⋯は、はい♡」
周りを見ると、マイアさんとミリアちゃんまで顔が真っ赤になっていた。マジでヤバいな。
「みんな大丈夫? マイアさん、暑いですか?」
マイア「だ、大丈夫⋯⋯です⋯♡」
ミリア「タカシさん⋯⋯ミ、ミリアにも♡」
「え?」
ロンダ「タカシさんったら⋯♡」
リタ「目の前で見せられたら、私⋯⋯♡」
ヤバい。ミユさん以外は熱中症になりかけなんじゃなくて、口移しを見て欲情していたのか!
何やってんだタカシ! 獣人女性の前でそんな事したら、こうなるのは想像できただろうが! ロンダがミユさんの胸を見せるから⋯⋯。乳首が見えそうで見えないから、逆に興奮して「口移し」なんて発想が浮かんだに違いない。 いや、やっぱり俺が悪いな⋯。
とりあえずミユさんの熱中症を治さないといけないから、セドム村にすぐ帰ってエアコンを付けてもらおう。
「へ、部屋を冷やす魔道具を作っているので、すぐに付けてもらいます。ちょ、ちょっとセドム村に行ってきますね」
そう言って俺は、慌ててセドム村に逃げ⋯いや、転移した。
ヤバい、どうしよう⋯。リタとロンダとはセックスした事あるからいいが、マイアさんとミリアちゃんはどうしたもんか⋯⋯。それにミユさんも、熱中症が治ったら、エリダさんみたいに発情してしまうかも知れない。
セックスする予定の獣人女性が、俺の前に20人くらい並んでいるような気分だ。嫌ではないし精力は大丈夫だか、ユナ達とセックスする暇がない。なんて贅沢な悩みなんだ、まったく!
休憩所に向かいながら、そんな事を考えて歩いていると、休憩所の前にニーナさんが居るのが見えた。忘れていたが、みんな楽しみに待っているだろうから、早く洗髪液と髪油をお風呂屋に届けてあげないと⋯。
ニーナ「タカシさん! あ、あの、洗髪液と髪油をありがとうございます。その⋯⋯」
早く欲しいんだな。東区でも朝から獣人女性が殺到したみたいだし。しかしシャワーもあった方が絶対いい。
「もちろん買ってきたんだけど、もう少しだけ待っててくれる? 髪を洗うのに便利な道具を作って貰ってるから、それをお風呂屋に付けてからの方がいいよ」
ニーナ「そ、そうなんですか? タカシさんがそうおっしゃるなら、もう少し待ってます♪」
コリン「タカシさん、えあこんの大きいのと小さいのを10個ずつ作ったんですが、あとどのくらい必要ですか?」
もう20台も作ったのか! みんな仕事が早いな。エリダさん達の家屋は、リビングも寝室も広いから、大きい方がいいだろう。あと俺が知ってる広い部屋は、ユナの家のリビングとジョーイ社長の家のリビングくらいだ。
あ、ケイトさんの店にも付けたら、お客さんがたくさん来てくれるかも知れないな。俺が作った事を内緒にしてくれたら、別に大丈夫だろう。あとはお風呂屋の脱衣場に付けたら、風呂上がりに涼む事ができる。だから大きいのは⋯⋯10台だな。
「大きい方はとりあえず10台で、小さい方はみんなの家の数だけ必要です。東区の家で、大きいエアコンが必要な部屋のある家は、どのくらいありますか?」
コリン「東区なら、親方の家のリビングくらいしか無いですね。あとは小さいので大丈夫でしょう。セドム村と東区の分でだいたい⋯⋯80台くらいは必要ですね」
俺の予想と同じだな。東区もセドム村も、家の数は40軒くらいだ。アイリ達の家にも付けてあげたいし、別に余っても無駄になる気はしないから、小さいのは100台くらい作ってもらおう。コリンさんの早さなら、今日か明日には作ってしまえるだろう。
「小さいのは100台お願いします。資材は大丈夫ですか?」
コリン「あと10台分くらいしか無いですねぇ⋯」
とりあえず早くエアコンをジョーイ社長の家に付けないといけないから、ついでに買ってこよう。
「さっき社長の家に行ったら、ミユさんが暑くて倒れてしまったので、早くエアコンを付けてあげたいんです。だから社長を連れて東区に行くので、ついでに買ってきますよ」
コリン「そ、そうなんですか!? ミユさんは大丈夫ですか?」
「身体を冷やして、冷たい飲み物を飲ませてきたので、すぐに良くなると思いますが、エアコンを付けてあげないと、また倒れてしまうかも知れません。とりあえずエアコンを2台貰っていきますね」
コリン「はい! 早く付けてあげてください」
「ごめんねニーナさん。そういう訳だから、もう少し待っててね」
ニーナ「はい、もちろんです!」
エアコンを付けるから、ベンさんも連れて行った方がいいな。休憩所に入ってベンさんに訳を説明すると、インパクトドライバーを持ってから、「すぐに行きましょう!」と言ってくれた。
そのまま外に出て、俺は大きいエアコンと小さいエアコンを1台ずつ収納して、ベンさんと一緒にジョーイ社長の所へ転移した。
おお! ビニールハウスの骨組みが、後は屋根だけになっている。2人なのに早いな。
「ジョーイ社長!」
ジョーイ「タカシさん、どうしたんですか?」
「さっき社長の家に行ったら、ミユさんが暑さで倒れてしまったんです。だからすぐにエアコンを付けてあげたいので、一緒に来てください!」
ジョーイ「えあこん?」
「ああ、部屋の温度を下げる魔道具の事です」
ジョーイ「そうでしたか。はい、すぐに行きましょう。ジャック、ちょっと東区に行ってくるから、俺が帰ってくるまで休憩所で休んでてくれ。屋根の部分は1人じゃ危ないから、絶対に1人で作業するなよ!」
ジャック「はい、親方!」
安全第一。流石ジョーイ社長だ。
ジョーイ社長とベンさんが俺の肩に掴まったので、ジョーイ社長の家の前に転移した。
ジョーイ「マイアー、ミユさんは大丈夫か?」
マイア「え? あ、アナタ? ちょ、ちょっと待ってください!」
ん? なんだ? なんか慌ててるな。
少しすると、マイアさんがバタバタと玄関に出てきた。
マイア「お、お帰りなさいアナタ」
ジョーイ「ああ、ただいま。ミユさんは大丈夫か?」
マイア「さっき目を覚ましたんですが、一応寝かせてます」
とりあえず家に上がってリビングに向かうと、みんなの顔は普通に戻っていて、ミユさんの服も元に戻されていた。たぶんそれで慌ててたんだろう。
「ジョーイ社長、エアコンは何処に付けましょうか? 一応壁の上の方に付けた方がいいのですが⋯」
収納から大きいエアコンを出して聞いた。ジョーイ社長の家だから、家主の許可が必要だろう。
ジョーイ「そうですねぇ⋯。じゃあこっちの壁に付けましょう。ベン、手伝ってくれ」
ベン「はい!」
ジョーイ社長がエアコンを持ち上げて、ベンさんが取り付ける。ベンさんなら脚立が要らないな。しかし高すぎで、マイアさんの手が届かない気がする。
「社長。そこの羽を手で動かして、風の向きを変えられるようになっているので、マイアさんの手が届く高さまで下げてください」
ジョーイ「は、はい!」
風の向きを調整できる事を説明していなかったので、ジョーイ社長が少し驚きながら返事をした。
ジョーイ「マイア、このくらいなら羽に手が届くか?」
マイア「ええ、その高さなら大丈夫だわ」
高さが決まったので、ベンさんがインパクトドライバーでエアコンを固定した。ちょっと自慢気にドヤ顔をしている。インパクトドライバーの魔道具が、よっぽど気に入ったんだな。
まだ魔法を付与してなかったので、エアコンに手を触れて魔法を付与した。
「じゃあマイアさん、まずは普通に魔力を込めてみてください」
マイア「は、はい⋯?」
コリンさんと同じリアクションだな。マイアさんが魔力を込めると、コリンさんの時と同じように、中くらいの風が出た。
マイア「わぁぁぁ、涼しい風が!」
そこもコリンさんと同じだ。ちょっと面白いな。
「そのままもう少し魔力を込めてみてください」
マイア「は、はい⋯?」
マイアさんがもう1度魔力を込めると、少し風が強くなった。
「もう少し多めに」
マイアさんがもう1度魔力込めると、強風くらいになった。
「その魔力量を覚えていてください。それ以上魔力を込めると、羽が壊れるかも知れませんから」
ジョーイ「風の強さを調整できるんですか!?」
マイア「魔道具って、そんな事ができる物なんですか!?」
ベン「凄過ぎる⋯⋯」
コリンさんの時と全く同じリアクションだった事に俺がニヤニヤしていたので、ベンさんが最後に笑いながら同じ台詞を言ってくれた。
ジョーイ「ベン、なんか可笑しかったか?」
「いえ、コリンさんの時と全く同じ反応だったので、ちょっと面白くて⋯」
ベン「すみません親方。でも全く同じでしたよ」
ジョーイ「そりゃ同じ反応になりますよ~」
マイア「込める魔力量で、魔道具の効果が変わるなんて⋯⋯」
ミリア「タカシさん凄い!」
「このまま部屋を涼しくして、しばらく寝てればミユさんも大丈夫でしょう」
マイア「そうですね。それに仕事も捗ります。タカシさん、ありがとうございます」
「いえいえ、作ったのはコリンさんですから」
ジョーイ「確かにそうですが、付与が凄過ぎますよ!」
「もう1台持ってきてるので、とりあえずミユさんの家にも付けてあげてください」
ジョーイ「はい! フェネック族のような尻尾の獣人女性は暑さに弱いですから、その方がいいですね」
「まだまだ作って貰っているので、後でみんなの家にも付けましょう」
ロンダ「わぁぁぁ、ありがとうございます♪」
リタ「凄く贅沢ですね!」
まだ水道とシャワーもある。どんどん快適な生活にしてあげよう。贅沢と言っても、地球では一般的な環境だ。
そのまま男3人でミユさんの家に向かった。玄関をノックして声をかける。ミユさんは妹と2人暮らしだから、サラちゃんという妹さんが家に居るはずだ。
「こんにちは~、タカシです」
すると奥から、ミユさんによく似た獣人女性が走ってきた。ミユさんに名前は聞いたが、よく覚えてないので「鑑定」してみると、『サラ フェネック族の獣人 ♀ 14歳 魔法種光魔法』と出た。
病気を治した時に1度「鑑定」しているはずだが、あの時は次から次へと病気を治したから、正直誰のどんな病気を治したのか覚えていない。
サラ「こんにちはタカシさん♪ お姉ちゃんなら、社長の家に行ってますよ?」
「こんにちは、サラちゃん。実はお姉さんが社長の家で倒れちゃったんだ。もう大丈夫だから心配ないけど、暑さで倒れちゃったから、サラちゃんの事も心配でね」
サラ「そ、そうなんですね。タカシさん、お姉ちゃんを助けてくれて、ありがとうございました。私はまだ暑さに弱くないので大丈夫です」
まだ? 何か、そのうち弱くなるような言い方だな。
ジョーイ「ああ、タカシさん。獣人は発情期の後に尻尾の毛が少し伸びて、それから暑さに弱くなってしまうんです」
そういう事か。そう言えばエマちゃんも、発情期の後に尻尾が少しフワフワになった気がするな。知らないと気付かないくらいだけど。
サラちゃんは14歳だから、まだ暑さに弱くないんだな。
「またお姉さんが倒れたら大変だから、涼しい風が出る魔道具を家に付けに来たんだけど、上がっていいかな?」
サラ「はい。どうぞ上がってください」
ミユさんの家は、ユーリの家と同じで、1LDKの間取だった。寝室がリビングとほとんど繋がってるから、リビングに1台付けたら大丈夫だろう。
ジョーイ「タカシさん、この辺りに付けましょうか?」
ジョーイ社長が寝室の向かいの壁を指差して言った。
「そうですね。そこなら寝室まで冷やせると思います。サラちゃん、ここにこの箱を付けたいんだけど、いいかな?」
サラ「⋯? は、はい。お任せします」
エアコンの説明をしていないので、サラちゃんが不思議そうに返事をした。詳しく説明するより、涼しい風を出して見せた方がわかりやすいだろう。
またジョーイ社長がエアコンを持ち上げて、ベンさんが取り付ける。ジョーイ社長がサラちゃんの身長を考えて、丁度手が届く高さに持ち上げると、ベンさんがまたドヤ顔でエアコンを固定した。わかったから、もうドヤ顔は止めなさい。
エアコンに魔法を付与して、サラちゃんに魔力を込めてもらう。
「サラちゃん、この箱に魔力を込めてみて」
サラ「は、はい」
サラちゃんが魔力を込めると、いきなり強風が出た。サラちゃんは魔力量が少し多いのかな?
サラ「わっ! 冷たい風が!」
「その魔力量を覚えていてね。それ以上は羽が壊れちゃうかも知れないから。込める魔力の強さで、風の勢いを変えられるから、強過ぎたら魔力を弱めてみてね」
サラ「はい。凄い魔道具ですね! これがあれば、暑さに弱いお姉ちゃんも大丈夫ですよ。ありがとうございます」
「寝る時は風を弱くしてから寝ないと、身体が冷え過ぎちゃうかも知れないから、気を付けてね」
サラ「はい♪」
サラちゃんは凄く嬉しそうに返事をしたが、俺が家に来てから頬がずっと赤い。欲情してるっぽいな。14歳だから、あまり欲情させると、エマちゃんみたいに早めに発情期が来てしまうかも知れない。気を付けないといけないな。
「じゃあエアコンの資材を買ってから、セドム村に帰りましょうか? あ、さっき社長の家の木に『転移』を付与しておいたので、帰る時は試しに使ってみましょう」
ジョーイ「は、はい。ちょっと緊張します」
俺も最初はちょっと怖かった。知らない場所に飛ばされたら⋯って心配になるんだよな。
3人で資材屋に行って、エアコン用の木材を大量に買ってから社長の家に帰ってきた。外の木に社長が手を触れる。
「魔力を込めて『トランスファー』と詠唱してから、セレクトと出たら、『自分と肩に掴まっている人』と詠唱してください」
ジョーイ「は、はい。ちゃんと肩を掴んでてくださいね!」
別に大丈夫なんだが、やっぱり怖いよな。いや、「肩に掴まってる人」だから、ちゃんと肩に掴まってないとダメだな。俺も「俺に掴まってる人」と指定してるから、気を付けないといけない。
ジョーイ「『トランスファー』⋯⋯『自分と肩に掴まっている人』」
詠唱が終わると、休憩所の前に転移していた。成功だ!
コリン「わっ! お、お帰りなさい親方。ミユさんは大丈夫でしたか?」
休憩所の前でエアコンを作っていたコリンさんを脅かせてしまった。これは言っておいた方がいいな。
ジョーイ「ああ、エアコンを付けてきたから大丈夫だ。たくさん必要だから、頼むぞコリン!」
コリン「任せてください!」
休憩所に入ると、シャワーヘッドを作っているニールさんと、水道を組み立てているジャックさんが居た。シャワーヘッドは、すでに7個くらい机の上にある。
ジャック「あ、お帰りなさい親方!」
ジョーイ「ああ、ただいま。じゃあ畑に戻って続きだ、ジャック!」
ジャック「はい!」
ジョーイ社長とジャックさんは、すぐにビニールハウスを組み立てに行った。よく働くなぁ。
ニール「魔物の死体って、ガイズベアーだったんですね! 収納箱から出してビックリしましたよ!」
「あれなら一番魔骨が採れると思いまして」
ニール「首を切り落として倒したんですか?」
「ええ、一刀両断ですよ」
ニール「タカシさんって、剣の腕も凄いんですねぇ。硬い魔吸木も綺麗な断面で切り倒されてましたし⋯。流石はSSランクの冒険者ですね!」
全部チート武器のお陰です、とは言えないので、苦笑いしか出来ない。
それよりシャワーが出来ているから、早くお風呂屋に付けてあげよう。みんな待ってるだろうしな。ついでに脱衣場にエアコンを付けて、みんながお風呂に入っている間に、家屋にもエアコンを付けてあげよう。
あっ! ユナに「念話」しないといけないのを忘れてた。
『ユナ、タカシだけど』
『はい。さっきはどうしたんですか?』
『フェネック族の獣人女性が暑さで倒れちゃってね。聞いたら、尻尾がフサフサの獣人女性は暑さ弱いって言うから、ユナとエマちゃんが心配になって⋯⋯』
『心配してくれて、ありがとうございます。確かに私も暑さに弱いんですが、夏は氷をたくさん作っているのと、倒れちゃう前に水を浴びるようにしているので大丈夫ですよ』
ユナの家には冷蔵庫みたいな魔道具があるから、氷を作って舐めたりしてるのか。しかし水を浴びないと倒れてしまうなら、早くエアコンを付けてあげたい。
『ちょっと心配だから、昼前に1度帰るよ。建築会社の人を1人連れていくから、エッチな服とか着ないでね』
『は、はい⋯?』
言っておかないと、また裸エプロンとかを着ていそうだからな。
とりあえず女湯の分のシャワーを5個と、エアコンを3台、あと水道も必要だな。ユナの家の分も収納しておこう。
「ニールさん、早速付けてあげたいので、シャワーを貰っていきますね」
ニール「はい。余った魔骨はどうしますか?」
「シャワーを25個作ってもらったら、後は好きに使ってもらっていいですよ。ガイズベアーの素材も、欲しい物があったら使ってください」
ニール「い、いいんですか?」
「俺の収納には、まだまだ魔物の死体があるので、遠慮は要りません」
ニール「はい。ありがとうございます」
「ベンさん、いろいろ取り付けて欲しいので、一緒に来てもらえますか?」
ベン「はい。タカシさんが魔道具を買ってくれたから、取り付けは任せてください!」
インパクトドライバーが本当に気に入ってるな。
必要な数のエアコンとシャワーと水道を収納して、ベンさんとお風呂屋へ向かった。
お風呂屋に着いて思ったが、女湯に誰か入っていたら、設置ができないな。とりあえず入口の所で、女湯の脱衣場に向かって声を掛けてみる。
「すいませ~ん! 女湯に誰か居ますか~?」
すると脱衣場からマミさんが出てきた。暑いからなのか、髪をポニーテールにして、白のノースリーブシャツにホットパンツという、かなり露出の高い服装だ。少し汗をかいて、白いシャツから乳首が透けて見えている。⋯⋯たまらんな。
ベンさんは興奮しないんだろうか? 獣人女性のこんな格好を見ても、顔がニヤケたりしていないな。
マミ「あ、タカシさんにベンさん。 もしかして、洗髪液と髪油を持ってきてくださったんですか?」
マミさんが凄く期待した感じて言ってくる。
「それもなんだけど、ちょっと女湯の方に設置したい物があるんだ。今女湯に誰か入ってる?」
マミ「そうなんですね。今は私とノンノで、女湯の掃除をしている所だったので、大丈夫ですよ」
ちょうど良かった。今の内に設置してしまおう。
「じゃあちょっと女湯の方に入るね」
マミ「はい」
ベンさんと女湯の脱衣場に入って、大きいエアコンを設置する。脱衣場全体に風が広がる位置に、俺がエアコンを持ち上げて、ベンさんが固定した。
魔法を付与し、とりあえずマミさんに使い方を説明して起動してもらい、みんなにも教えてくれるように頼んだ。マミさんは、俺の非常識に慣れてきたのか、凄く喜んでくれたが、そこまで驚いている感じは無かった。
次にシャワーとシャワーフックを設置する為、女湯の曇りガラスの扉を開けると、俺の石像に抱き付いて掃除をしているノンノさんが居た。見てはいけない光景を見てしまった気がして、慌ててガラス扉を閉める。
ベン「あれ? 入らないんですか?」
「いや、入るんですが⋯。マミさん、ちょっと中に入って、ノンノさんに説明してきてくれる?」
マミ「⋯⋯? は、はい」
マミさんが中に入ってしばらくすると、ノンノさんの悲鳴が聞こえた。これは見なかった事にした方がいいな。
扉が開いて、中から涙目のノンノさんが出てきた。
ノンノ「あ、あの⋯⋯み、見ましたか?」
「何を? 何も見てないけど、どうしたの?」
ノンノ「そ、そうなんですね! ならいいんです!」
ノンノさんが凄く安心した顔になった。オナニーを見られたような物だから、見たと言うと俺も気まずい。
ベンさんと中に入って、マミさんにシャワーの使い方を説明しながら、ベンさんにシャワーフックを固定してもらう。
マミ「タカシさんって、やっぱり優しいですね」
さっきの事を言っているんだな。
「このまま内緒にしててね」
マミ「はい♪」
シャワーに魔法を付与して試しに出してみたが、ちょっと勢いが弱いので、「設定」で温度と勢いを変えられるようにした。「設定」があれば、付与に失敗しても手直しが効く。しかし付与を取り消す方法も調べておいた方がいいな。
シャワーを出して、マミさんに手を洗ってもらう。
マミ「わっ! わぁぁぁ、凄い! これ、絶対髪が洗いやすいですよ!」
「このフックに掛ければ、頭の上からお湯を浴びながら泡を流せるよ」
マミ「凄いですタカシさん! 絶対みんな喜びますよ!」
「じゃあ次は家屋にエアコンを設置しに行くから、みんなが来たら使い方を教えてあげてね」
マミ「はい、お任せください♪」
設置が終わったので、石鹸と洗髪液と髪油を置いて、エリダさん達の家屋に向かう。ニーナさんが楽しみに待っているから、「念話」しておこう。
『ニーナさん。さっきお風呂屋に洗髪液とかを置いてきたから、もう入っていいよ』
『わぁぁぁ、ありがとうございます♪』
『お風呂にある魔道具の使い方は、マミさんに聞いてね』
『はい♪』
凄く嬉しそうだ。洗髪液くらいでそんな喜んでくれるとは⋯。なんとなく、ジョーイ社長の気持ちがわかったな。
家屋に着いたので、いつものように玄関をノックして声を掛けると、リカさんが出迎えてくれた。
リカ「あの⋯タカシさん。せ、洗髪液は⋯」
「ああ、さっきお風呂屋に置いてきたから、もう入っていいよ。遠慮なく、尻尾にも使っていいからね」
みんな「「「わぁぁぁ、ありがとうございます♪」」」
みんな凄く嬉しそうにお礼を言ってくれたが、エリダさんとクララさんは、少し暑そうにしていた。クララさんは羊族だから、尻尾がモコモコしている。2人は暑さに弱いんだろう。
みんなすでに着替えとタオルを用意していて、お風呂に入る気満々だ。あれ? よく考えたら、暑さに弱いならお風呂はヤバくないか? 大丈夫なのかな? もしかしたら、お風呂の温度を下げられるように「設定」してあげた方がいいかも知れない。
みんながお風呂屋の方へ行き出したが、水道の使い方を教えておきたいので、リカさんにだけ残ってもらった。
「早くお風呂屋に行きたいのに、ごめんね。ちょっとだけ説明しておきたい事があるんだ」
リカ「いえ、大丈夫です」
ベンさんと台所へ行って、水道を設置してもらう。ここでもインパクトドライバーが大活躍で、ベンさんも満足そうだ。
魔法を付与して、リカさんに使い方を説明する。
「魔力を込めると、このパイプからは水が出て、こっちのパイプからはお湯が出るんだ。こっちのはシャワーといって、これで洗い物をすると油汚れなんかも落ちやすいと思うし、お湯が出るからお湯を沸かすのも短時間で済む」
リカ「⋯⋯す、凄い! 凄く便利です! ありがとうございます。魔法の水がいつでも飲めるなんて凄く贅沢ですよ!」
「喜んでもらえて良かったよ。あと涼しい風が出る魔道具を、リビングと寝室に付けておくから、もうお風呂屋に行ってもいいよ。使い方はマミさんに説明してあるから」
リカ「はい。私達の中では、エリダさんとクララが暑さに弱い種族なので、凄く助かります」
「尻尾がフサフサな獣人女性が暑さに弱いって聞いて、凄く心配だったんだ。でも熱いお風呂に入って大丈夫なの?」
ベン「あ、お風呂は大丈夫なんですよ。長く浸かると、のぼせたりはしますけど」
リカ「熱いお湯を浴びたり、熱いお湯に浸かったりするのは大丈夫なんですが、気温が高くて風通しが悪い部屋に居ると、熱が出ちゃうんです」
熱中症と似てるが、獣人特有の症状なのかも知れないな。「病気の治癒」で治らなかったから、病気では無いんだろうけど。
サウナを作ったら、獣人男性が喜ぶかと思ったが、そういう事ならダメだな。
リカさんが尻尾をブンブン振りながら、嬉しそうにお風呂屋へ行ったので、ベンさんとエアコンを付けていく。
リビングに付けたあと、寝室に降りて行くと、かなり暑かった。地下だから熱が籠るんだろうな。一応通気口があるけど、空気が流れないとあまり意味がない。エアコンを付ければ大丈夫だが、もっと広いケイトさんの服屋みたいな所だと、シーリングファンみたいな物があった方がいいかもな。
エアコンを付ける為にベッドの上に乗ると、足元にエロ本があった。俺とベンさんは、顔を見合わせて頷いてから、エアコンを設置した。男なら、こういうのは見て見ぬ振りしないといけないのは、獣人男性も同じなんだな。
エアコンを設置し終えたので、中くらいの涼しい風を出しておいた。お風呂から帰ってきて、部屋が涼しかったら喜んでくれるだろう。
ベン「じゃあ休憩所に戻って、仕事の続きをしますね」
「あ、まだ付けて欲しい家があるんで、もう一軒だけいいですか?」
ベン「はい、設置は任せてください!」
ベンさんがインパクトドライバーを見せながら、得意気に言った。確かにカッコイイんだが、ドヤ顔をすると台無しだ。
帰る前にユナに連絡しておく。
『ユナ。今から帰るけど、いいかな?』
『はい。私もエマも、普通の服を着てるから大丈夫ですよ』
『う、うん。ありがとう』
なぜか「念話」の声がやけに嬉しそうだ。理由はわからないが、熱中症っぽくなってないようで安心する。
ベンさんに肩を掴んでもらい、ユナの家の玄関前に転移した。
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