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第三章 拐われた獣人女性の救出
拐われた獣人女性達と東区のお風呂
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南区の酒場で夕食を済ませ、宿屋に戻って風呂に入った。マイアさんと念話で話したが、ジョーイさんの家の風呂は、岩を削って組み合わせた風呂にしたそうで、岩と岩を接着しているセメントのような物が乾いて固まるのが明日になるそうだ。
岩風呂とは豪華だなぁと思ったが、ユナの家の風呂も岩風呂だったし、檜風呂みたいに木で作るより長持ちするのだろう。家の風呂はジョーイさんが一人で作ったそうだが、居住区のみんなの風呂屋は、他の建築が得意な獣人達や手の空いている者で、同じような岩風呂を男女別で作ったらしい。マジで仕事が早い。すぐ見てみたくなったが、明日の楽しみにしておこう。
外は真っ暗になり、開いているのは酒場だけだったが、その酒場も閉まってきた。宿屋の廊下の明かりも消え、南区が静かになったので、いよいよガーランドの屋敷に忍び込む。早く助け出してあげたいが、まだいろいろ準備ができてない。拐われた獣人女性が何人居るのかすらわからない。とりあえず現状を把握しないとな。
「透明」と念じ、自分を指定して姿を消してから、ガーランドの屋敷の前に転移した。屋敷の門の前には、警備の兵であろうハーフエルフの男が2人いた。飛んで門を越え、庭に入ると犬が何匹かいて、クンクンと鼻を鳴らしだした。姿を消していても、犬には匂いで気付かれるな。もしかしたら獣人には匂いでバレる可能性もある。
犬が騒ぎだすと面倒なので、飛んで屋根の上に上がった。「探索魔法」で「獣人女性」を指定すると、屋敷の地下にたくさん居るのがわかった。しかし獣人男性の警備兵が居たら、匂いでバレるかも知れないので、屋敷の中を歩き回るのは危険だ。「探索魔法」で調べた限り、地下には獣人女性以外居ないようなので、意識を集中して地下の部屋に直接転移した。
そこは部屋というより物置のような所で、床は石畳、入口は牢屋のような鉄柵の扉だった。そして中には14人の獣人女性が居た。みんな黒い首輪をして、メイドのような使用人の服を着ている。
狐耳や猫耳、犬耳などいろんな種族の獣人女性が居たが、みんな顔や足にアザがある。ガーランドに殴られアザだろうか? 服で見えないが、身体にもありそうだな⋯。その内の1人、犬耳の獣人女性がクンクンと匂いを嗅ぎだした。
「スンスン⋯⋯⋯何か、いい匂いがする。なんだろう?」
やはり匂いでバレたか。犬耳だから犬族の獣人なのだろう。鼻が効くんだな。「鑑定」すると、『リカ 犬族の獣人 ♀ 23歳 魔法種無し 背中と足の打撲』と出た。
「リカ、どうしたの?」
長い耳が、まるでツインテールのように垂れた獣人女性がリカさんに訪ねる。俺は種族が気になったので、この獣人女性も「鑑定」してみた。
『モナミ ウサギ族の獣人 ♀ 24歳 魔法種無し お腹と顔の打撲』と出た。同じウサギ族でも、ユーリとはケモ耳が違うな。ロップイヤーってウサギの耳っぽい。これも可愛い。触ってみたい。⋯⋯いやいや、そんな事を思ってる場合じゃなかった。
「なんかいい匂いがするの。でも嗅いだ事のない、安心するような⋯⋯」
俺は慌てて「念話」と念じ、「対象指定」を「リカさん」にして頭の中に話しかけた。
『リカさん。声を出さないで! 魔法で頭の中に直接話し掛けています。少し話を聞いてください』
「ひゃっ!」
驚いて短く悲鳴をあげたが、小さく頷いてくれた。
「リカ、大丈夫?」
「う、うん。ごめん、何でもない」
『リカさん、突然驚かせてすまない。俺は今、魔法で姿を消して君の目の前に居る。大丈夫、怪しい者じゃないし、俺は獣人女性の味方だ。今から魔法を解いて姿を現すから、ここに居るみんなに驚いて悲鳴を上げないよう頼んで欲しい』
リカさんは頷いて、みんなの所へ行った。俺は「探索魔法」でもう1度、地下に獣人女性以外が居ない事を確認した後、「防音」と念じ、今居る場所から音が漏れないようにした。
リカさんが匂いを頼りに俺の方を見て頷いた。みんなに説明してくれたようだが、みんな半信半疑のような表情だ。まあ「防音」したから悲鳴を上げられても大丈夫だろう。「透明」を解除して姿を現すと、全員目を見開いて驚いたが声は出さなかった。
「突然驚かせてすまない。俺はアカギ タカシという冒険者で、みなさんを助け出す為に来ました」
みんな俺を見たまま固まっている。
「ここに見廻りの兵が来ますか?」
「⋯⋯⋯はっ! だ、大丈夫です。もう夜ですから、旦那様に呼ばれない限り、朝まで誰も来る事はありません」
リカさんが我に帰り、答えてくれた。リカさんの言葉を聞いて、みんなも我に帰ったようだ。旦那様というのはガーランドの事だろう。みんなのアザが痛々しくて見ていて辛い。顔のアザが消えるとバレるので、「治癒」と念じて、対象指定を「この部屋に居る獣人女性の顔以外」にして治した。
「顔のアザを治すと怪しまれるだろうから、そっちは後日治します。すまないが少しだけ我慢してください」
「あ、あの⋯⋯タカシ様。今のは『治癒魔法』ですか?」
ユナと同じ狐耳の獣人女性が聞いてきた。年上っぽいからユナの妹ではないだろう。「鑑定」すると、『エリダ 狐族の獣人 ♀ 26歳 魔法種光魔法 顔の打撲』と出た。この人がアイリスの知り合いのエリダさんだな。
狐耳と尻尾が可愛くて、胸もユナより少し大きい。狐族はモフモフしているから、つい見てしまうな。ここに居る他の獣人女性も、アザが痛々しいがみんな美人で胸が大きい。やはりこの世界、獣人女性は美人なのが当たり前な気がする。この世界の人間の男は美的感覚がおかしいんじゃないか?
「あ、あの⋯⋯」
見とれて返事をしない俺に、エリダさんが問い掛けてきた。いかんいかん! 今のは治癒魔法か?って質問だったな。
「あ、ああ、治癒魔法で顔以外の打撲を治しておきました。やはり⋯⋯ガーランドに殴られたんですか?」
「は、はい。何か粗相をするとお仕置をされるので⋯⋯。タカシ様、治癒魔法がお使いになれるなら、エマちゃんを⋯⋯、奥で寝ている子を助けていただけませんか?」
エマちゃん? ユナの妹か! 病気なのかな。俺はすぐ寝ている少女の元へ向かった。部屋の隅に薄い毛布が掛けられて、ユナにそっくりな狐耳の少女が寝ていた。顔が赤く、呼吸も少し荒い。少女の横に座り「鑑定」すると、『エマ 狐族の獣人 ♀ 14歳 魔法種無し 風邪』と出た。ただの風邪か⋯⋯良かった。エマちゃんは顔を殴られていないようだ。
「昨日から調子が悪かったんですが、休む事も許されず、夕方倒れてしまいました。大丈夫でしょうか?」
クソ! ガーランドのヤロウ、病気になっても働かせているのか! 絶対許さないぞ!
「ただの風邪だから大丈夫ですよ」
俺は「病気の治癒」と念じてエマちゃんの風邪を治した。呼吸が安定したので熱が下がったか確かめる為、額に手を当てると、エマちゃんが目を覚ました。
「エマちゃん、大丈夫? 身体は怠くない?」
「エリダさん、ごめんなさい。もう大丈夫みたいだから⋯。あれ? 腕も痛くない」
「⋯⋯良かった。タカシ様、ありがとうございました」
エリダさんが安心して、エマちゃんの頭を撫でながら、俺が腕の打撲を治してくれたと説明した。アイリスの言ったとおり、世話好きな獣人女性なんだろう。そんな事を思っていると、エマちゃんのお腹がグゥ~~っと鳴り、真っ赤になって恥ずかしそうに俯いてしまった。
「エマちゃん、夕食まだだったね。パンを持ってきてあげるわ」
エリダさんがあまり美味しくなさそうなパンを持ってきた。こんなパンしか食わせてもらってないのか?
「みなさん、こんなパンしか食べさせて貰えないのですか?」
「⋯⋯はい。でも屋敷の夕食が残れば、それを片付けるのも私達なので、何とか食べてます」
扱いが酷いな。みんな痩せたりはしていないが、不味そうなパン以外、残り物しか食べられないのか。俺は収納から、ユナに調理してもらっていたバッファローの肉と焼き立てのパンを出した。王都に行ってる間も、私の料理が食べられるようにと、ユナが大量に作ってくれた物だ。
「みなさんに大事な話があるので、これを食べながら話しましょう」
「い、いいんですか? こんな美味しそうな肉やパンを。それに⋯⋯いったいどこから出されたのですか!?」
「それも説明しますよ。さあ遠慮なく食べてください。足りなかったら、まだまだありますから」
全員ビックリしていたが、腹が減っている所に美味しそうな匂いがしたので、我慢できなくなり、「い、いただきます!」と言って料理を食べ始めた。みんな目を潤ませて肉やパンにかぶりついている。
「こんな美味しい肉やパン、食べた事ないです!」
「ほんと! 屋敷の料理の残りより美味しい!」
やはりユナの料理は美味しい。屋敷の料理人にも負けてない。愛情が籠ってるからだな。
「お、お姉ちゃんのパンと同じ味がする!」
エマちゃんがパンを食べながら、凄くビックリしていた。やはりわかるんだな⋯。
「この料理はエマちゃんのお姉さん、ユナが作ってくれた物だよ」
「「ええっ!?」」
そりゃビックリするわな。説明しないといけない事がたくさんある。ユナと一緒に住んでる事だけは内緒にして、順番に説明していこう。
「俺はユナの知り合いで、SSランクの冒険者です。みなさんの事を聞いて、助け出しに来ました。しかしまだみなさんを匿う場所ができてないので、申し訳ないですがもう少しだけ我慢してください。今日ここに来たのは、助け出す前にいろいろ調べる為です」
「お、お姉ちゃんは、元気ですか?」
エマちゃんがパンを食べながら、すがるように聞いてきた。
「大丈夫。エマちゃんが拐われた直後は、少し自暴自棄になっていたようだが、今は元気になったよ」
俺はユナを撫でる癖で、エマちゃんの狐耳を撫でながら答えてしまった。
「あっ⋯⋯♡ よ、良かったぁ」
エマちゃんが頬を赤く染めて嬉しそうにした。それを見ていた周りの獣人女性が、羨ましそうな目線を向けてきた。ヤバい。またヤってしまったか?
「そ、それで⋯⋯、今ここに居るみなさんで全員ですか?」
「いえ、後2人居るんですが、今は旦那様のお世話に行っています」
まだ夜中ではないが、こんな夜遅くに世話? ガーランドは獣人女性差別者だから、エッチな世話ではない。ガーランドも人間の男らしいから、獣人女性なら欲情しちゃうのか? いや、こんな酷い事されて、流石に欲情しないだろう。
「世話とは?」
「だいたい身の回りのお世話ですが⋯⋯。人間の男性であるタカシ様には言いにくいのですが、ガーランドは獣人女性が、人間の男性なら誰でも欲情するものだと思ってまして、それで⋯⋯」
エリダさんが言うのを躊躇っている。欲情と関係しているみたいだから言いにくい事なんだろうか?
「言いにくい事なら言わなくても大丈夫ですよ。それと⋯」
「いいえ、聞いてくださいタカシ様!」
突然細長い耳がピンと立った獣人女性が話に割り込んで来た。「鑑定」すると『リムナ ロバ族の獣人 ♀ 魔法種無し』と出た。ロバ耳か。ケモ耳は全部可愛いな。
「ガーランドは獣人女性が、どんな人間の男性にも欲情すると思ってて、お酒を呑むと服を脱いで私達に、お、お、おチンチンを見せてくるんです!」
なんだそれ! 獣人女性が欲情すると思って、からかっているのか? 最低な酒癖だな。
「ちょっとリムナ!」
エリダさんが慌ててリムナさんを窘める。
「あ⋯す、すみません。人間の男性のタカシ様の前で、おチン⋯⋯なんて⋯。で、でも、私達だって人間の男性なら誰でもって訳じゃないです。ガーランドは中年太りのオジさんで、しかもおチン⋯⋯も、獣人男性の親指くらい小さい上に、皮も被ってて⋯そんな物見たくないです!」
ガーランドは短小包茎なのか⋯。それを酔って自慢気に見せている変態オジさん。最低だな。
「す、すみません。私、つい⋯⋯」
「あ、ああ、いや、大丈夫ですよ。しかしそれは悪趣味な。獣人女性を何だと思っているのか⋯」
「タカシ様のような人間の男性なら、私達だって⋯⋯♡」
リムナさんのその一言で、部屋の全員が頬を赤く染めてしまった。話を元に戻そう。
「それで⋯⋯みなさんを助け出した後、セドムという村に一旦匿ってもらいます。匿う為の建物を作りますので、それまで後少しだけ我慢してください。建物は2、3日あれば出来ると思います」
「セ、セドム!? 私達、セドム村の者ですが、セドム村は魔物だらけで、ここより危ないですよ!」
白い猫耳の獣人女性が言ってきた。その隣の熊耳と犬耳の獣人女性も驚いた顔で俺を見ているので、この2人もセドム村の獣人だろう。
「セドム村の魔物は、俺が全滅させましたから大丈夫です。畑は復興してますが、魔物に壊された建物がまだ復興してないので、知り合いの建築屋に頼んだら、すぐに建て直してくれるそうです」
「そ、そうなんですか? タカシ様って凄いんですね⋯♡」
「でも⋯⋯でも私達には、この奴隷化の首輪があって、逃げると首輪が絞まってしまうんです」
「ああ、それも俺が外しますから心配ないです」
「ほ、本当ですか!?」
部屋の全員が驚いている。助け出すと言った時、なんとなくそんなに嬉しそうな表情にならなかった気がしたが、現実味が無かったのと首輪の事があったからだろう。全員の表情が一気に笑顔になった。泣いてしまっている人もいる。よほど首輪の拘束がツラいんだな。
「本当です。今外すとガーランドにバレてしまうので、助け出す時に外します。この屋敷に拐われた獣人女性が全員集まる時ってありますか?」
「はい。今お世話に行っている2人も、もう少ししたら戻って来ると思います。ですから夜中には毎日全員揃います。でもどうやって逃げ出すんですか?」
「なら準備が出来たら、夜中にまた来ます。セドム村まで魔法で移動するので心配ないです。魔力を込めると、離れていても連絡ができる魔道具を渡しておきたいのですが、何か持ってても不自然じゃない物ってありますか?」
アクセサリーは目立つだろうからダメだ。マイアさん達みたいに石ころでも、屋敷の中で持っていると不自然な気がする。何がいいかな⋯⋯。
「私達、基本的に持ち物を所持するのが禁止なんです。服も綺麗にしておかないとお仕置きされるので、毎日洗濯した後は屋敷の者がチェックする為、一旦回収されます。ですから後は⋯⋯下着くらいしか⋯⋯♡」
下着か⋯。髪飾りやリボンすらダメなら仕方ないな。でも女性に「下着を脱いで一旦渡してください」とは頼めない。
「あ、あの⋯⋯タカシ様がお嫌でなければ、恥ずかしいですけど、私の下着を⋯⋯♡ さっき履き替えたばかりですので♡」
「私の下着でも⋯⋯♡」
「いえ、私の下着に⋯⋯♡」
全員が欲情しかかった目で迫ってくる。エマちゃんまで、何か言いたそうだ。とりあえず下着が汚れていたら恥ずかしいだろうから、全員の身体と服と下着に「洗浄」をかけた。すると余計にみんなが「私の下着に⋯♡」と言ってきてしまった。収拾がつかないので、ジャンケンをして勝ち残ったエリダさんとリカさんの下着に「念話」を付与する事にした。下着だから毎日洗うので、2人の内どちらかが履いてる状態にするように頼んだ。
2人が俺の前で後ろを向いて下着を脱ぎ、渡してきた。脱ぎたてで生温かい。目の前にはノーパンのケモ耳美女2人。勃起しそうだ。下着に「念話」を付与して、使い方を説明した。
しかし気が付くと、獣人女性の下着を嫌がる事なく手に取ったり、これだけの獣人女性に囲まれても普通に接する俺に、全員が欲情した目を向けてきていた。14歳のエマちゃんまで⋯。ユナに似て可愛いから、俺の方がヤバい。
俺は、またすぐに助けに来ると言って、収納からファプールを16個出して、逃げるように地下の部屋から宿屋の部屋に転移した。そのままベッドに入ると、あっという間に眠った。
翌朝、朝風呂に入って目を覚まし、朝食を食べに南区の喫茶店のような店に入り、パンとカフインとベーコンエッグのセットを頼んだ。この間ユナの家に帰った時、みんなに料理屋のメニューを教えてもらったので、何となくどんな物かわかるようになった。しかし高級店の料理名は難しくて、まだよくわからない。
食事をしてカフインのおかわりを飲んでいると、マイアさんから「念話」が入った。風呂が出来たのかな?
『タカシさん、おはようございます♪ マイアです』
『おはようございます、マイアさん』
『お風呂ができました♪ 広くて凄く豪華です』
『見るのが楽しみです。じゃぁ今からお宅に伺いますね』
『はい。お願いします』
凄く嬉しそうな声だ。俺も楽しみで仕方ない。カフインを一気に飲み干し、喫茶店を出て路地に入り、マイアさんの家の玄関前に転移した。
「わぁぁっ!」
ロンダが家の前に居て、驚かせてしまった。楽しみで転移先に人が居るか確認するのを忘れていた。
「す、すまんロンダ。大丈夫か?」
「た、タカシさん⋯♡ ビックリしましたが、大丈夫ですよ。お風呂を見に来たんですか?」
「ああ、完成したって連絡がらあったから⋯」
そのままロンダと2人でマイアさんの家に入り、「タカシです」と言うと、またミリアちゃんが腰に抱き付いて迎えてくれた。熊耳を撫でると、小さな胸を腰に押し付けきた。母親の前で勘弁して欲しい。チンポに近い位置なので、ちょっとヤバい。ロンダがニヤニヤした顔で見ている。また何か言いやがったな?
「おはようございますタカシさん。待ってました。よろしくお願いします」
ジョーイさんが早速風呂場に案内してくれた。奥の扉を開けると脱衣場があり、その先に風呂場があった。ユナの家の風呂ほどじゃないが、十分大きい立派な岩風呂だった。排気の為の小さな窓もあるし、洗い場もユナの家と同じ何の素材かわからないが、踏み心地のいい物が敷き詰められていて、石鹸やタオルもすでに用意してある。配管工事まで1日でやったのか⋯⋯凄すぎるな。
「ジョーイさん、凄く豪華な風呂ですね。よく1日で⋯⋯、ビックリしましたよ!」
「風呂が楽しみで張り切っちゃいました」
ジョーイさんが嬉しそうにガハハと笑った。岩風呂の淵に、熊が大きく口を開けた顔の石像があり、それに魔法を付与して欲しいという。この石像は、彫刻なんかが得意な獣人に、パテのような物で作ってもらったらしい。ジョーイさん以外の建築仲間も凄く器用だな。
ちょっと集中しないといけないから静かにしてくれるよう頼んで、熊の石像に手を翳し「水流」と言う水を出すだけの水魔法を付与し、次に「炎」という火魔法を魔力を調整しながら付与した。この「炎」の付与が難しいが、かなり練習したので上手くいった。練習した時、ヤカンを何個無駄にしたかは内緒だ。
温度は最初に込める魔力によって多少変えられるが、熱湯とか冷水は出ない。だいたい35度~43度だ。失敗すると熱湯しか出なかったりする。付与魔法の魔法書によると、攻撃魔法を2つ付与すると、詠唱は要らないらしく、魔力を込めるだけで発動する。しかし攻撃魔法の付与は2つが限界で、魔法の相性もあるので難しいと書いてあった。
付与ができたので温度調節のやり方を説明をして、みんなが見守る中、ジョーイさんが石像に魔力を込めた。すると熊の口からお湯がダバダバ~と出て、風呂場に湯気が上がった。みんなが「おおぉ~!」と拍手をして、ミリアちゃんがはしゃいでいる。手を浸けると丁度いい温度だった。
とりあえず朝から家族で風呂に入ってもらい、俺はみんなの風呂の方へ行った。ミリアちゃんが一緒に入りたいと小声で言ってきたが、俺は宿で朝風呂に入ったからと、やんわり断った。俺には両親と一緒にその娘と風呂に入る度胸は無い。ロンダがまたニヤニヤ見ていた。こいつは⋯⋯後でお仕置きだな。
居住区の中心にあった空き地に風呂屋が建っていた。中に入ると番台は無いが、男女別に入り口が別れていて、大きめの脱衣場の奥に10人くらい入れる大きな岩風呂があった。流石にユナの家の風呂よりデカイ。男湯の方に入ると、ジョーイさんの家の風呂と同じく、風呂の淵にドラゴンが口を開けた石像があり、そこに魔法を付与してお湯を出した。みんなにも朝から風呂に入ってもらおう。
次に女湯の方に行くと、壁の色がピンク色で所々に花の絵が描かれている、女性らしいデザインの風呂だった。男湯と雰囲気が違い、女湯に居るという事に、ちょっと興奮してしまった。
風呂の淵を見ると、壺を肩に担いだ俺の胸から上の石像があった。な、なんじゃこりゃ~! いったい誰の仕業だ! ロンダとリタに聞くと、居住区の獣人女性全員の希望らしい。奥さんがいる獣人男性に怒られるんじゃないか?と聞くと、タカシさんの石像を作って怒る獣人は、東区に居ないと言われた。そんな物なのか? 凄く恥ずかしいが仕方ない。石像の壺に魔法を付与して、お湯を出してた。
何日か後にリタに聞いた話では、裸で石像に抱き付いたりする獣人女性が続出して、大人気になったそうだ。家に風呂があるのに、マイアさんとミリアちゃんまで入りに行ったらしい。
岩風呂とは豪華だなぁと思ったが、ユナの家の風呂も岩風呂だったし、檜風呂みたいに木で作るより長持ちするのだろう。家の風呂はジョーイさんが一人で作ったそうだが、居住区のみんなの風呂屋は、他の建築が得意な獣人達や手の空いている者で、同じような岩風呂を男女別で作ったらしい。マジで仕事が早い。すぐ見てみたくなったが、明日の楽しみにしておこう。
外は真っ暗になり、開いているのは酒場だけだったが、その酒場も閉まってきた。宿屋の廊下の明かりも消え、南区が静かになったので、いよいよガーランドの屋敷に忍び込む。早く助け出してあげたいが、まだいろいろ準備ができてない。拐われた獣人女性が何人居るのかすらわからない。とりあえず現状を把握しないとな。
「透明」と念じ、自分を指定して姿を消してから、ガーランドの屋敷の前に転移した。屋敷の門の前には、警備の兵であろうハーフエルフの男が2人いた。飛んで門を越え、庭に入ると犬が何匹かいて、クンクンと鼻を鳴らしだした。姿を消していても、犬には匂いで気付かれるな。もしかしたら獣人には匂いでバレる可能性もある。
犬が騒ぎだすと面倒なので、飛んで屋根の上に上がった。「探索魔法」で「獣人女性」を指定すると、屋敷の地下にたくさん居るのがわかった。しかし獣人男性の警備兵が居たら、匂いでバレるかも知れないので、屋敷の中を歩き回るのは危険だ。「探索魔法」で調べた限り、地下には獣人女性以外居ないようなので、意識を集中して地下の部屋に直接転移した。
そこは部屋というより物置のような所で、床は石畳、入口は牢屋のような鉄柵の扉だった。そして中には14人の獣人女性が居た。みんな黒い首輪をして、メイドのような使用人の服を着ている。
狐耳や猫耳、犬耳などいろんな種族の獣人女性が居たが、みんな顔や足にアザがある。ガーランドに殴られアザだろうか? 服で見えないが、身体にもありそうだな⋯。その内の1人、犬耳の獣人女性がクンクンと匂いを嗅ぎだした。
「スンスン⋯⋯⋯何か、いい匂いがする。なんだろう?」
やはり匂いでバレたか。犬耳だから犬族の獣人なのだろう。鼻が効くんだな。「鑑定」すると、『リカ 犬族の獣人 ♀ 23歳 魔法種無し 背中と足の打撲』と出た。
「リカ、どうしたの?」
長い耳が、まるでツインテールのように垂れた獣人女性がリカさんに訪ねる。俺は種族が気になったので、この獣人女性も「鑑定」してみた。
『モナミ ウサギ族の獣人 ♀ 24歳 魔法種無し お腹と顔の打撲』と出た。同じウサギ族でも、ユーリとはケモ耳が違うな。ロップイヤーってウサギの耳っぽい。これも可愛い。触ってみたい。⋯⋯いやいや、そんな事を思ってる場合じゃなかった。
「なんかいい匂いがするの。でも嗅いだ事のない、安心するような⋯⋯」
俺は慌てて「念話」と念じ、「対象指定」を「リカさん」にして頭の中に話しかけた。
『リカさん。声を出さないで! 魔法で頭の中に直接話し掛けています。少し話を聞いてください』
「ひゃっ!」
驚いて短く悲鳴をあげたが、小さく頷いてくれた。
「リカ、大丈夫?」
「う、うん。ごめん、何でもない」
『リカさん、突然驚かせてすまない。俺は今、魔法で姿を消して君の目の前に居る。大丈夫、怪しい者じゃないし、俺は獣人女性の味方だ。今から魔法を解いて姿を現すから、ここに居るみんなに驚いて悲鳴を上げないよう頼んで欲しい』
リカさんは頷いて、みんなの所へ行った。俺は「探索魔法」でもう1度、地下に獣人女性以外が居ない事を確認した後、「防音」と念じ、今居る場所から音が漏れないようにした。
リカさんが匂いを頼りに俺の方を見て頷いた。みんなに説明してくれたようだが、みんな半信半疑のような表情だ。まあ「防音」したから悲鳴を上げられても大丈夫だろう。「透明」を解除して姿を現すと、全員目を見開いて驚いたが声は出さなかった。
「突然驚かせてすまない。俺はアカギ タカシという冒険者で、みなさんを助け出す為に来ました」
みんな俺を見たまま固まっている。
「ここに見廻りの兵が来ますか?」
「⋯⋯⋯はっ! だ、大丈夫です。もう夜ですから、旦那様に呼ばれない限り、朝まで誰も来る事はありません」
リカさんが我に帰り、答えてくれた。リカさんの言葉を聞いて、みんなも我に帰ったようだ。旦那様というのはガーランドの事だろう。みんなのアザが痛々しくて見ていて辛い。顔のアザが消えるとバレるので、「治癒」と念じて、対象指定を「この部屋に居る獣人女性の顔以外」にして治した。
「顔のアザを治すと怪しまれるだろうから、そっちは後日治します。すまないが少しだけ我慢してください」
「あ、あの⋯⋯タカシ様。今のは『治癒魔法』ですか?」
ユナと同じ狐耳の獣人女性が聞いてきた。年上っぽいからユナの妹ではないだろう。「鑑定」すると、『エリダ 狐族の獣人 ♀ 26歳 魔法種光魔法 顔の打撲』と出た。この人がアイリスの知り合いのエリダさんだな。
狐耳と尻尾が可愛くて、胸もユナより少し大きい。狐族はモフモフしているから、つい見てしまうな。ここに居る他の獣人女性も、アザが痛々しいがみんな美人で胸が大きい。やはりこの世界、獣人女性は美人なのが当たり前な気がする。この世界の人間の男は美的感覚がおかしいんじゃないか?
「あ、あの⋯⋯」
見とれて返事をしない俺に、エリダさんが問い掛けてきた。いかんいかん! 今のは治癒魔法か?って質問だったな。
「あ、ああ、治癒魔法で顔以外の打撲を治しておきました。やはり⋯⋯ガーランドに殴られたんですか?」
「は、はい。何か粗相をするとお仕置をされるので⋯⋯。タカシ様、治癒魔法がお使いになれるなら、エマちゃんを⋯⋯、奥で寝ている子を助けていただけませんか?」
エマちゃん? ユナの妹か! 病気なのかな。俺はすぐ寝ている少女の元へ向かった。部屋の隅に薄い毛布が掛けられて、ユナにそっくりな狐耳の少女が寝ていた。顔が赤く、呼吸も少し荒い。少女の横に座り「鑑定」すると、『エマ 狐族の獣人 ♀ 14歳 魔法種無し 風邪』と出た。ただの風邪か⋯⋯良かった。エマちゃんは顔を殴られていないようだ。
「昨日から調子が悪かったんですが、休む事も許されず、夕方倒れてしまいました。大丈夫でしょうか?」
クソ! ガーランドのヤロウ、病気になっても働かせているのか! 絶対許さないぞ!
「ただの風邪だから大丈夫ですよ」
俺は「病気の治癒」と念じてエマちゃんの風邪を治した。呼吸が安定したので熱が下がったか確かめる為、額に手を当てると、エマちゃんが目を覚ました。
「エマちゃん、大丈夫? 身体は怠くない?」
「エリダさん、ごめんなさい。もう大丈夫みたいだから⋯。あれ? 腕も痛くない」
「⋯⋯良かった。タカシ様、ありがとうございました」
エリダさんが安心して、エマちゃんの頭を撫でながら、俺が腕の打撲を治してくれたと説明した。アイリスの言ったとおり、世話好きな獣人女性なんだろう。そんな事を思っていると、エマちゃんのお腹がグゥ~~っと鳴り、真っ赤になって恥ずかしそうに俯いてしまった。
「エマちゃん、夕食まだだったね。パンを持ってきてあげるわ」
エリダさんがあまり美味しくなさそうなパンを持ってきた。こんなパンしか食わせてもらってないのか?
「みなさん、こんなパンしか食べさせて貰えないのですか?」
「⋯⋯はい。でも屋敷の夕食が残れば、それを片付けるのも私達なので、何とか食べてます」
扱いが酷いな。みんな痩せたりはしていないが、不味そうなパン以外、残り物しか食べられないのか。俺は収納から、ユナに調理してもらっていたバッファローの肉と焼き立てのパンを出した。王都に行ってる間も、私の料理が食べられるようにと、ユナが大量に作ってくれた物だ。
「みなさんに大事な話があるので、これを食べながら話しましょう」
「い、いいんですか? こんな美味しそうな肉やパンを。それに⋯⋯いったいどこから出されたのですか!?」
「それも説明しますよ。さあ遠慮なく食べてください。足りなかったら、まだまだありますから」
全員ビックリしていたが、腹が減っている所に美味しそうな匂いがしたので、我慢できなくなり、「い、いただきます!」と言って料理を食べ始めた。みんな目を潤ませて肉やパンにかぶりついている。
「こんな美味しい肉やパン、食べた事ないです!」
「ほんと! 屋敷の料理の残りより美味しい!」
やはりユナの料理は美味しい。屋敷の料理人にも負けてない。愛情が籠ってるからだな。
「お、お姉ちゃんのパンと同じ味がする!」
エマちゃんがパンを食べながら、凄くビックリしていた。やはりわかるんだな⋯。
「この料理はエマちゃんのお姉さん、ユナが作ってくれた物だよ」
「「ええっ!?」」
そりゃビックリするわな。説明しないといけない事がたくさんある。ユナと一緒に住んでる事だけは内緒にして、順番に説明していこう。
「俺はユナの知り合いで、SSランクの冒険者です。みなさんの事を聞いて、助け出しに来ました。しかしまだみなさんを匿う場所ができてないので、申し訳ないですがもう少しだけ我慢してください。今日ここに来たのは、助け出す前にいろいろ調べる為です」
「お、お姉ちゃんは、元気ですか?」
エマちゃんがパンを食べながら、すがるように聞いてきた。
「大丈夫。エマちゃんが拐われた直後は、少し自暴自棄になっていたようだが、今は元気になったよ」
俺はユナを撫でる癖で、エマちゃんの狐耳を撫でながら答えてしまった。
「あっ⋯⋯♡ よ、良かったぁ」
エマちゃんが頬を赤く染めて嬉しそうにした。それを見ていた周りの獣人女性が、羨ましそうな目線を向けてきた。ヤバい。またヤってしまったか?
「そ、それで⋯⋯、今ここに居るみなさんで全員ですか?」
「いえ、後2人居るんですが、今は旦那様のお世話に行っています」
まだ夜中ではないが、こんな夜遅くに世話? ガーランドは獣人女性差別者だから、エッチな世話ではない。ガーランドも人間の男らしいから、獣人女性なら欲情しちゃうのか? いや、こんな酷い事されて、流石に欲情しないだろう。
「世話とは?」
「だいたい身の回りのお世話ですが⋯⋯。人間の男性であるタカシ様には言いにくいのですが、ガーランドは獣人女性が、人間の男性なら誰でも欲情するものだと思ってまして、それで⋯⋯」
エリダさんが言うのを躊躇っている。欲情と関係しているみたいだから言いにくい事なんだろうか?
「言いにくい事なら言わなくても大丈夫ですよ。それと⋯」
「いいえ、聞いてくださいタカシ様!」
突然細長い耳がピンと立った獣人女性が話に割り込んで来た。「鑑定」すると『リムナ ロバ族の獣人 ♀ 魔法種無し』と出た。ロバ耳か。ケモ耳は全部可愛いな。
「ガーランドは獣人女性が、どんな人間の男性にも欲情すると思ってて、お酒を呑むと服を脱いで私達に、お、お、おチンチンを見せてくるんです!」
なんだそれ! 獣人女性が欲情すると思って、からかっているのか? 最低な酒癖だな。
「ちょっとリムナ!」
エリダさんが慌ててリムナさんを窘める。
「あ⋯す、すみません。人間の男性のタカシ様の前で、おチン⋯⋯なんて⋯。で、でも、私達だって人間の男性なら誰でもって訳じゃないです。ガーランドは中年太りのオジさんで、しかもおチン⋯⋯も、獣人男性の親指くらい小さい上に、皮も被ってて⋯そんな物見たくないです!」
ガーランドは短小包茎なのか⋯。それを酔って自慢気に見せている変態オジさん。最低だな。
「す、すみません。私、つい⋯⋯」
「あ、ああ、いや、大丈夫ですよ。しかしそれは悪趣味な。獣人女性を何だと思っているのか⋯」
「タカシ様のような人間の男性なら、私達だって⋯⋯♡」
リムナさんのその一言で、部屋の全員が頬を赤く染めてしまった。話を元に戻そう。
「それで⋯⋯みなさんを助け出した後、セドムという村に一旦匿ってもらいます。匿う為の建物を作りますので、それまで後少しだけ我慢してください。建物は2、3日あれば出来ると思います」
「セ、セドム!? 私達、セドム村の者ですが、セドム村は魔物だらけで、ここより危ないですよ!」
白い猫耳の獣人女性が言ってきた。その隣の熊耳と犬耳の獣人女性も驚いた顔で俺を見ているので、この2人もセドム村の獣人だろう。
「セドム村の魔物は、俺が全滅させましたから大丈夫です。畑は復興してますが、魔物に壊された建物がまだ復興してないので、知り合いの建築屋に頼んだら、すぐに建て直してくれるそうです」
「そ、そうなんですか? タカシ様って凄いんですね⋯♡」
「でも⋯⋯でも私達には、この奴隷化の首輪があって、逃げると首輪が絞まってしまうんです」
「ああ、それも俺が外しますから心配ないです」
「ほ、本当ですか!?」
部屋の全員が驚いている。助け出すと言った時、なんとなくそんなに嬉しそうな表情にならなかった気がしたが、現実味が無かったのと首輪の事があったからだろう。全員の表情が一気に笑顔になった。泣いてしまっている人もいる。よほど首輪の拘束がツラいんだな。
「本当です。今外すとガーランドにバレてしまうので、助け出す時に外します。この屋敷に拐われた獣人女性が全員集まる時ってありますか?」
「はい。今お世話に行っている2人も、もう少ししたら戻って来ると思います。ですから夜中には毎日全員揃います。でもどうやって逃げ出すんですか?」
「なら準備が出来たら、夜中にまた来ます。セドム村まで魔法で移動するので心配ないです。魔力を込めると、離れていても連絡ができる魔道具を渡しておきたいのですが、何か持ってても不自然じゃない物ってありますか?」
アクセサリーは目立つだろうからダメだ。マイアさん達みたいに石ころでも、屋敷の中で持っていると不自然な気がする。何がいいかな⋯⋯。
「私達、基本的に持ち物を所持するのが禁止なんです。服も綺麗にしておかないとお仕置きされるので、毎日洗濯した後は屋敷の者がチェックする為、一旦回収されます。ですから後は⋯⋯下着くらいしか⋯⋯♡」
下着か⋯。髪飾りやリボンすらダメなら仕方ないな。でも女性に「下着を脱いで一旦渡してください」とは頼めない。
「あ、あの⋯⋯タカシ様がお嫌でなければ、恥ずかしいですけど、私の下着を⋯⋯♡ さっき履き替えたばかりですので♡」
「私の下着でも⋯⋯♡」
「いえ、私の下着に⋯⋯♡」
全員が欲情しかかった目で迫ってくる。エマちゃんまで、何か言いたそうだ。とりあえず下着が汚れていたら恥ずかしいだろうから、全員の身体と服と下着に「洗浄」をかけた。すると余計にみんなが「私の下着に⋯♡」と言ってきてしまった。収拾がつかないので、ジャンケンをして勝ち残ったエリダさんとリカさんの下着に「念話」を付与する事にした。下着だから毎日洗うので、2人の内どちらかが履いてる状態にするように頼んだ。
2人が俺の前で後ろを向いて下着を脱ぎ、渡してきた。脱ぎたてで生温かい。目の前にはノーパンのケモ耳美女2人。勃起しそうだ。下着に「念話」を付与して、使い方を説明した。
しかし気が付くと、獣人女性の下着を嫌がる事なく手に取ったり、これだけの獣人女性に囲まれても普通に接する俺に、全員が欲情した目を向けてきていた。14歳のエマちゃんまで⋯。ユナに似て可愛いから、俺の方がヤバい。
俺は、またすぐに助けに来ると言って、収納からファプールを16個出して、逃げるように地下の部屋から宿屋の部屋に転移した。そのままベッドに入ると、あっという間に眠った。
翌朝、朝風呂に入って目を覚まし、朝食を食べに南区の喫茶店のような店に入り、パンとカフインとベーコンエッグのセットを頼んだ。この間ユナの家に帰った時、みんなに料理屋のメニューを教えてもらったので、何となくどんな物かわかるようになった。しかし高級店の料理名は難しくて、まだよくわからない。
食事をしてカフインのおかわりを飲んでいると、マイアさんから「念話」が入った。風呂が出来たのかな?
『タカシさん、おはようございます♪ マイアです』
『おはようございます、マイアさん』
『お風呂ができました♪ 広くて凄く豪華です』
『見るのが楽しみです。じゃぁ今からお宅に伺いますね』
『はい。お願いします』
凄く嬉しそうな声だ。俺も楽しみで仕方ない。カフインを一気に飲み干し、喫茶店を出て路地に入り、マイアさんの家の玄関前に転移した。
「わぁぁっ!」
ロンダが家の前に居て、驚かせてしまった。楽しみで転移先に人が居るか確認するのを忘れていた。
「す、すまんロンダ。大丈夫か?」
「た、タカシさん⋯♡ ビックリしましたが、大丈夫ですよ。お風呂を見に来たんですか?」
「ああ、完成したって連絡がらあったから⋯」
そのままロンダと2人でマイアさんの家に入り、「タカシです」と言うと、またミリアちゃんが腰に抱き付いて迎えてくれた。熊耳を撫でると、小さな胸を腰に押し付けきた。母親の前で勘弁して欲しい。チンポに近い位置なので、ちょっとヤバい。ロンダがニヤニヤした顔で見ている。また何か言いやがったな?
「おはようございますタカシさん。待ってました。よろしくお願いします」
ジョーイさんが早速風呂場に案内してくれた。奥の扉を開けると脱衣場があり、その先に風呂場があった。ユナの家の風呂ほどじゃないが、十分大きい立派な岩風呂だった。排気の為の小さな窓もあるし、洗い場もユナの家と同じ何の素材かわからないが、踏み心地のいい物が敷き詰められていて、石鹸やタオルもすでに用意してある。配管工事まで1日でやったのか⋯⋯凄すぎるな。
「ジョーイさん、凄く豪華な風呂ですね。よく1日で⋯⋯、ビックリしましたよ!」
「風呂が楽しみで張り切っちゃいました」
ジョーイさんが嬉しそうにガハハと笑った。岩風呂の淵に、熊が大きく口を開けた顔の石像があり、それに魔法を付与して欲しいという。この石像は、彫刻なんかが得意な獣人に、パテのような物で作ってもらったらしい。ジョーイさん以外の建築仲間も凄く器用だな。
ちょっと集中しないといけないから静かにしてくれるよう頼んで、熊の石像に手を翳し「水流」と言う水を出すだけの水魔法を付与し、次に「炎」という火魔法を魔力を調整しながら付与した。この「炎」の付与が難しいが、かなり練習したので上手くいった。練習した時、ヤカンを何個無駄にしたかは内緒だ。
温度は最初に込める魔力によって多少変えられるが、熱湯とか冷水は出ない。だいたい35度~43度だ。失敗すると熱湯しか出なかったりする。付与魔法の魔法書によると、攻撃魔法を2つ付与すると、詠唱は要らないらしく、魔力を込めるだけで発動する。しかし攻撃魔法の付与は2つが限界で、魔法の相性もあるので難しいと書いてあった。
付与ができたので温度調節のやり方を説明をして、みんなが見守る中、ジョーイさんが石像に魔力を込めた。すると熊の口からお湯がダバダバ~と出て、風呂場に湯気が上がった。みんなが「おおぉ~!」と拍手をして、ミリアちゃんがはしゃいでいる。手を浸けると丁度いい温度だった。
とりあえず朝から家族で風呂に入ってもらい、俺はみんなの風呂の方へ行った。ミリアちゃんが一緒に入りたいと小声で言ってきたが、俺は宿で朝風呂に入ったからと、やんわり断った。俺には両親と一緒にその娘と風呂に入る度胸は無い。ロンダがまたニヤニヤ見ていた。こいつは⋯⋯後でお仕置きだな。
居住区の中心にあった空き地に風呂屋が建っていた。中に入ると番台は無いが、男女別に入り口が別れていて、大きめの脱衣場の奥に10人くらい入れる大きな岩風呂があった。流石にユナの家の風呂よりデカイ。男湯の方に入ると、ジョーイさんの家の風呂と同じく、風呂の淵にドラゴンが口を開けた石像があり、そこに魔法を付与してお湯を出した。みんなにも朝から風呂に入ってもらおう。
次に女湯の方に行くと、壁の色がピンク色で所々に花の絵が描かれている、女性らしいデザインの風呂だった。男湯と雰囲気が違い、女湯に居るという事に、ちょっと興奮してしまった。
風呂の淵を見ると、壺を肩に担いだ俺の胸から上の石像があった。な、なんじゃこりゃ~! いったい誰の仕業だ! ロンダとリタに聞くと、居住区の獣人女性全員の希望らしい。奥さんがいる獣人男性に怒られるんじゃないか?と聞くと、タカシさんの石像を作って怒る獣人は、東区に居ないと言われた。そんな物なのか? 凄く恥ずかしいが仕方ない。石像の壺に魔法を付与して、お湯を出してた。
何日か後にリタに聞いた話では、裸で石像に抱き付いたりする獣人女性が続出して、大人気になったそうだ。家に風呂があるのに、マイアさんとミリアちゃんまで入りに行ったらしい。
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