魔法少年✰

寝切つく

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頼み事があるなら聞いてやる

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俺は鎌蟹かまかにミカミ。
蟹座の魔法少年だ。
「オレはシドウだー!」
ああ、こいつは來音らいおんシドウ。
獅子座の魔法少年だ。
俺たちは不幸である理由で魔法少年となった。
だが俺がやることは復讐だけだからな…。
「ミカミ、悪いやつどこにいるんだ?」
「ああ…バカッターなら…」
「ばかったー?」
「SNSに迷惑なことを載せるバカのことだ」
ケンプファーから聞いたけど魔法少年レグルスは絶望や苦しみに希望を与える能力を持っている。
それは周りを照らす太陽のように…まあ、俺は既に知ってるが。
今はシドウの手伝いをしている俺だが俺の使命である復讐のプランも考えている。
シドウはヒーローになりたいと言ってるが俺は生憎ヒーローになる気などないんでね。
「あ!このスーパー怪しいぜ!」
シドウはスーパーに指をさした。
確かにバカッターがいそうな気配がする…いや、ここでバカッターがやらかす。
人生が崩壊する前に、食い止めなければならない。
「行くぞ。ここにバカッターがいる」
「みゅ~…おう!」
俺とシドウはスーパーの中へ入った。
スーパーの中はよくありふれた店内で主婦や老人が買い物をしている姿が見える。
しかし俺たちの目的は買うことじゃない、バカッターを探すことだ。
なのだが…
「わー!肉だぁ!」
シドウは肉のコーナーで早速はしゃいできやがった。
「おい、今は買うんじゃないだろ」
「え?あ、あはは…そうだったな!よし、ルキにゃん頼むぞ!」
と言ってシドウは俺のことをあだ名で呼んだ。
ルキにゃんって言われるとなんか歯痒くなるんだが…仕方ない。
「お前探知できるんだろ?」
俺は特定の人の感情を探知することも出来る。
気づいたが感情の魔法って結構役に立つなと思った。
「任せろ…」
俺は目を閉じ、バカッターの感情を探知した。
透視みたいな感じで頭の中で肉のコーナーからまっすぐ進み、惣菜コーナーの右を曲がってすぐアイスクリームのコーナーがある…そこにバカッター2人がいる。
「バカッターはアイスクリームのコーナーにいる」
「アイスクリームコーナーだな!よし行くぞ!」
俺とシドウは肉のコーナーを後にし、惣菜コーナーの右を曲がり、アイスクリームコーナーへ。
やはりそこには男子高校生がアイスクリームが置いてある機械の上にダイブしていた。
その隣にいる友人らしき男子高校生が動画にしのうとしている。
「おい」
俺はその男子高校生に声をかけ、スマホを取り上げた。
「なにすんだよ!」
「動画を消している。後で人生が壊れたらどうするんだ」
「お前らには関係ねぇだろ!」
男子高校生の1人が俺を殴ろうとした。
だがそこへシドウが男子高校生の拳を抑える。
「さーせーなーいーぞー!」
「なんだよこのガキ!!うおっ!?」
シドウは護身術で男子高校生を食い止めた。
「お前らが今動画を投稿したら住所をすぐ特定され、ここは潰れる。その後に待っているのは損害賠償請求と借金地獄だ」
「うぐ…分かったよ」
「行くぞ」
と、男子高校生はアイスクリームコーナーから去っていった。
「やったな!」
「ふ…大したことない」
俺達もスーパーから出ていった。
シドウが買いたいとか言ったが何も買わなかった。
何度も「買わせろ!」と言ってうるさかった。
それから俺はシドウと別れ、復讐の計画を再び練った。
さあ、ようやくだぞ。
社長令嬢、お前を潰す時が来た。
俺の苦しみと悲しみの糧がどれくらい募ったか…その身で知るがいい。
「ねぇ、聞いた?元資産家のこと」
「ええ聞きましたわよ。その奥さんがホストと旅行に多くの金を使って破産したらホストにいる男のところに行ったんですって!あと長男がパチンカスで遊び好きだからそれも原因ですってね!」
何やら主婦たちの噂話を聞いたが、これは見過ごせないな。
悪いことだが、社長令嬢は後にしよう。
「その話本当か?」
「え、ええ…でも次男坊はそんな遊び好きじゃないけどね」
「子供は奥さん側にいる…ってことか」
「本当に大丈夫かしら?あの奥さん」
母に連れられ長男までクズだとはな、問題はその次男坊って奴だ。
「次男坊はどうしてる?」
「えーっと…確か大人しい子だったわね」
「でも今は引きこもってるって奥さんは言ってましたわよ」
「そうか、分かった」
俺はすぐその次男坊がいる家に向かった。
「マジカルミライキャスト、オープン!プリティキャンサースタイル!」
マジカルミライキャストでプリティキャンサースタイルのマジカルチェンジカードをスキャンした。
「努力と我慢を魂に込めて…マジカルフラッシュ!!」
そう言った瞬間、俺の髪が長くなり、体のラインにフィットする白いアンダースーツ姿になり、そこから光のリボンが魔法の衣装に変えていく…。
こうして俺は魔法少年ルキノになった。
「魔法少年ルキノ、推参!」
魔法少年ルキノに変身した俺は次男坊がいるところへ向かう。
次男坊はボロめのアパートの3階くらいにいる…その気配を俺の魔法で探知した。
「ここだな…」
鍵はしていない。
だが酒のきつい臭いは漂う。
家事は全くしてない…かと思いきや部屋は意外と綺麗だった。
ここに次男坊がいるんだな…。
「ひっ!」
どこかで少年の声がした。
「誰だ」
「こ、こっちこそ誰ですぅ?」
少年は痩せ型で健康的ではない。
髪色はオリーブグリーンでベタついた長髪をしており、女と間違えそうな外見をしている。
「お前…ここの人間か?」
「は、はいです~」
「そうか。見たところ、お前不幸だな?」
「ふ、ふふ、不幸どころじゃないですよ~」
「他に誰かいたか」
「お、お母様とお兄様はハワイ旅行に…」
最低だ。
こいつの母と兄は本当に最低だ。
俺のクソ親とクソ姉を思い出す。
「ここを出て警察に言った方がいい」
「け、警察…怖いです」
「警察が怖い?」
「お母様は警察は怖い人だって言ってたです。でも、ここに居るの嫌になったです…」
要するに、こいつは虐待を受けている。
「虐待されてるんだな」
「はい?」
「その痣と痩せた体で分かる」
こいつは長袖だが生足と頬には痣が出来ている。
「ご飯が不味いと言ってお母様とお兄様は殴るです。健康を気遣ってやってるのですが、味が薄い味が薄いとわがままばっかり!もう嫌です!」
「なるほど…お前の母と兄はとんだクズだな」
「なんか分からないけど…そんな気がするです」
「ここを出たほうがいい。じゃないと同じ目に会うぞ」
すると、こいつは曇った表情で俯いた。
「外に出るの…出来ないです」
「何?」
「ここに来て以来、外に出たことがないんです」
「…マジか」
ということはこいつは引きこもりだ。
「それに、小学校は行ってないです…」
「お前いくつだ?」
「今年で13です」
13なら中学生になる年だが、こいつは中学校にも通ってないということになる。
「まさかと思うが、名前はあるんだろうな?」
「あ、あるですよ!」
「じゃあ答えろ」
「ラン・奈乙なおとです」
こいつの名前はラン・奈乙というらしい。
「変わった名前だな。ハーフか?」
「はいです。ドイツ人のハーフです」
「父が母かどっちだ?」
「元お父様です…」
「聞いたぞ。お前の元父親は資産家だってな」
「そうです。お母様は金目当てで元お父様と結婚したですよ」
「…だったら、ここを出て警察のところへ行った方がいい」
「む、無理です~!無理無理!警察は味方にならないってお母様は言ったです~!」
「味方にならないのはお前のお母様とお兄様だけだが」
「そう…ですか?」
「そうですとも」
「じゃあ、魔法少年さんがそう言うなら…」
そう言ってラン・奈乙はゆっくりと立ち上がり、俺の手を取る。
そして俺はラン・奈乙のペースに合わせてオンボロアパートを出た。
「で…ラン・奈乙」
「あ、ランでいいです。そっちが名前ですから」
奈乙が名前だと思ったが、まさかランの方が名前だとはな。
「眩しいか?」
ランは久々の外の景色なので眩しかった。
「はい…6年振りの」
「じゃあ小学校ですら通ってないということか」
「なのです。あ、お兄様は10個歳が離れてるですから僕が10歳の時にパチンコに没頭するようになったんです」
20歳すぐパチンカスになってしまった…ということか。
「ところで、魔法少年さん…」
「なんだ?」
「正体…見せちゃダメになってるですよね?」
「まあな」
「今から警察さんのところに行くんです?」
「当たり前だろ。俺がなんのために来たと思ってる」
「すまんです…案内宜しくです」
ランはサンダルを履き、俺はランの手を掴んで警察のところへ向かった。
「久々のお外…」
「まだ怖いか?」
「怖いです」
「だろうな」
そう話してるうちに、俺たちは交番へ来た。
「ここが警察がいるところだ」
「ほ~お」
「後はお前に託す」
「え?いいですか?」
「こんなチャンス滅多にないが?」
「は、はいです!ですから、お母様とお兄様の制裁よろしくです!」
ランは交番の中へ入った。
俺はその交番の外で話を聞くだけにしていた。
「その…お母様とお兄様に…」
しかし、話はあっという間に終わった。
そこを俺は不思議に感じる。
「どうだった?」
「…警察さんいなかったです」
やはり警察は交番にいなかったようだ。
「じゃあここで待つしかないな」
「そうしかないです。お付き合いありがとうです。さよならです~」
「ああ、達者でな」
と、俺はランの元を去っていった。
さて、あいつのお母様とお兄様に痛い目を合わせないとな。
しかし、そのためには空港に行かなければならない。
俺は空港へ向かった。
「ここか、空港は」
俺はあのバカどもが来ることを待つ。
あのバカどもは今日の夜に来る。
1時間後、ほら、奴らが来た…。
あのバカ女、男2人を連れてルンルン気分で帰って来たよ。
「よお、婆さん」
俺はその女と男2人の前に現れた。
「な、何よ婆さんって!」
「で、兄さんと…愛人」
俺は男2人がランの兄とバカ女の愛人であることが理解した。
「あんた、療育費を遊びに使ってるんだってな。それを資産家だった元旦那に毎回送れ…と脅迫したようで」
この女の心は療育費でホストで出会った愛人と遊びに使って楽しまくってやる…と。
兄は療育費を盗む他、女を騙して金を奪い、パチンコに使ってる。
どちらもクズだ。
「今から警察に通報する…と言ってももう通報したけどな」
ランの母と兄は一瞬で青ざめた。
それから空港に警察が来て、ランの母と兄は逮捕された。
人のための復讐と言っておこうか、なんかスカッとしていい気分だ。
「さて、ランのところに行くか」
俺はランがいる交番に行った。
交番には今度こそ警察がいて、ランを無事保護してくれたそうだ。
「お前の家族は逮捕されたそうだ」
「そうですか…ありがとうです」
ランが移動しようとした時、カタン…と何か落とした音がした。
それはマジカルミライキャストだった。
「あ…ごめんなさいごめんなさいです!」
「お前、まさか…」
「はい、そのまさかです。あ、警察さん少し空気を吸うです」
ランは交番の外を出て、俺も連れられて外に出た。
「すいませんが…今まで隠してごめんです~。えっと、なんというか…魔法少年さんが言った通り…」
と、ランはマジカルミライキャストにマジカルチェンジカード4枚1セットを取り出した。
「マジカルミライキャスト、オープン!パプリックバルゴ!
みっちりきっちりとです…マジカルフラッシュ!
!!」
すると、ランの体が光に包まれ、光が衣装へ変えていき、ライムグリーンを基調とした軍服をイメージした魔法少年の姿になった。
「改めてです、魔法少年パルテノスです!宜しくです!」
魔法少年パルテノス…乙女座の魔法少年だ。
魔法は修復で傷はもちろん壊れたものならなんでも治せる。
「乙女座の魔法少年ですが…どうですか?」
乙女座は可憐なイメージがあるが実際はそうではなく、真面目でストイックかつ完璧主義者でシンプルかつきっちりしたものを好む。
しかしパルテノスは乙女座らしく細やかな対応はできるがオドオドしている。
「まあ別にいいが」
「あの…魔法少年さん」
「ルキノ。蟹座の魔法少年だ」
「ルキノさん、ですね?ルキノさん、僕には帰るところは無くなったです。だから、お手伝い出来ることがあったら…」
今のパルテノスには居場所がない。
だとするなら俺について行くことを決めてたのだろう。
「いいのか?俺は復讐のために魔法少年になったんだが?」
「いいです!お料理もお掃除も出来るです!宜しくです!」
「…分かった。だが復讐は甘くないぞ」
「…はいです!困った時があれば頼ってほしいです!」
と、胸をぽんと叩いて言った。
「あ、でも昨日魔法少年になったので教えてほしいです」
あの時助けた少年ランがまさか魔法少年とは思わなかった。
だがラン、いやパルテノス。
お前が仲間になった時点で復讐の手伝いもしてもらうからな…。
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