魔法少年✰

寝切つく

文字の大きさ
上 下
2 / 4

仲間と交流してみた

しおりを挟む
家にも学校にも居場所がない俺、鎌蟹かまかにミカミ。
ある日トールギスとかいう神様に魔法の力を与えられ、蟹座の魔法少年ルキノとなった。
「交流か…」
「そうそう!魔法少年は助け合いってのがあるでしょ?君と同じクラスの魔法少年がいるから、そいつらと交流してみなよ~?」
「んで、どうなる?」
「うーんこの…場合によっては上手くいかないかもよ?」
魔法少年は俺だけではないようだ。
ジ・Oによると、俺と同じクラスの魔法少年とまずは仲良くした方がいいってな。
俺のクラスはスターだから、クラスがスターである魔法少年を探さなければならない。
「けどどうやって交流すればいいんだ?」
俺はトールギスに尋ねた。
するとトールギスは相変わらずコミカルな表情で答えた。
「そ・れ・な・ら~!マジカルミライキャストを使ってコミュニティルームへ行けばいいのだよ!」
「コミュニティルーム?」
「コミュニティルームとは魔法少年が交流する特殊な場所です!クラス別にルームが用意されてるから、安心してね!!」
俺はどうやらコミュニティルームへ行って同じクラスの魔法少年と交流すればいいようだ。
「そこへ行けばいいのか」
「そゆこと!だからまずはコミュニティルームへGOGO!」
と言ってトールギスは去っていった。
俺はマジカルミライキャストのボタンを押すと、突然周りの景色がガラッと変わり、雲の上にいるような空間になり、目の前に白い扉が現れた。
「これがコミュニティの部屋へ行く扉か…」
『魔法少年であることを確認。手を置いて下さい』
その時、どこかで機械的な女性でも男性でもない声がした。
「この扉喋るのかよ…。まあいい、指示通りにするか」
俺は扉に手を置いた。
『貴方のクラスはスターです。スター専用の部屋の扉、オープン』
と、扉が開いた。
俺はその扉の向こうへ入った。
すると、部屋がそこにあり、俺と同じ魔法少年たちが3人いた。
どいつらも星座の部分があって分かりやすい。
「なんや?新入りか?」
長いソフトグリーンのストールにアシメントリーのグローブとブーツを身につけた緑色の魔法少年が言った。
あいつは双子座みたいだな。
「そのようだね」
祈祷師のような衣装に牛の角が生えた金色の魔法少年が言った。
どう見えてもあいつは牡牛座か。
「しかし弱そうだな、ワシには敵わぬ面しておるぞ!」
ロックミュージシャンのような姿に曲がった角が生えた銀色の魔法少年が言った。
こいつは牡羊座か?
「初めましてだな。俺は蟹座の魔法少年ルキノだ」
「ワシは牡羊座の魔法少年クリオスじゃ!宜しく頼むぞ!」
牡羊座の魔法少年クリオスは俺に強くぶんぶんと握手した。
「私は牡牛座の魔法少年タウロスだ。宜しく」
穏やかそうな牡牛座の魔法少年タウロスは優しく自己紹介をした。
「で、彼は…」
「双子座の魔法少年ディデモイや」
関西弁らしき方言で喋る双子座の魔法少年ディデモイは軽そうに自己紹介をした。
「ああ、よろしく」
「分からないことがあったら話してくれ。いつでも力になるよ」
タウロスはとても優しそうだ。
クリオスは口調が古臭いが暑苦しそうだし、ディデモイはなんか信用出来ない気がする。
「ま、お互い様やで。あと俺関西弁やなくて岐阜弁やから」
「ワシらが力になるぞい!」
これから忙しくなりそうだ。
けど、かつて戒められたあの時よりはマシだ。
俺は復讐するために魔法少年になった。
それだけは忘れられない。
「んで、魔法少年になったら何したいんや?」
「俺は…不幸な人生から抜け出したい。それだけだ」
本性が悟られないよう、俺は嘘をついた。
「そうなんか。普通やな」
「へ?」
「だって魔法少年になれんの不幸な男子だけやろ?あんたの言ってること普通過ぎるでw」
なんだこいつ、ムカつく…!
「私は両親を飛行機の事故で亡くし、全財産を使用人に奪われて…それで魔法少年になったんだ」
「ワシはネグレクトで妹を守れず、母上に追い出されてしまったところで魔法少年になったのじゃ」
「そうか…」
2人とも悲惨だなと俺は思った。
「ディデモイは?」
「さあな、知らへん」
ディデモイは自分の過去を語ろうとはしなかった。
多分言うのがめんどくさいのだろう。
けど、これから俺は魔法少年として生きていく。
何があってもあいつらだけには復讐してやるって心から誓った。
あいつらに悟られる前になんとしても復讐を終えて見せる。
「もう出ていいか?やることがあるんだ」
「そうなんだ。じゃあ頑張ってね」
他の魔法少年に見送られ、俺はコミュニティルームを出た。
コミュニティルームを出るとそこには知ってる景色が映っており、俺はその空気を吸った。
「さて、まずはどいつにするか…」
俺はまず誰に復讐するか考えた。
本当はクソ姉か社長令嬢にしたいけど、もう少し先延ばししておこう…というわけで最初のターゲットは俺をイジメたグループにした。
「確か俺の魔法は…」
俺の魔法は心と感情に関わるんだってか。
確か心を読む他に他人の感情を操ることも出来るようだ。
「待ってろ。必ず復讐してやる」
そう心に誓った俺はあのイジメグループを探した。
魔法少年になれば身体能力が非常に高くなるらしく、喧嘩にも護身にも使える。
さて、どこにいるか…。
お、いたいた。こんなところにいたのか。
確か俺をイジメたのは前迫、森中、重田の3人だったようだな。
さて、何してるのかな。
「いやータダでアイスもらえるなんて最高だな!」
どうやらあいつら、コンビニで万引きをしたようだ。
よく中学生で万引きが出来るな。
しかしあいつらが俺をイジメたのは事実だ。
さて、終止符を打ちに行くか。
「よう」
「あ?なんだお前?仮面ライダーのコスプレ?」
「魔法少年だ」
そう言った俺はさっそくあいつらに向かって魔法を使った。
「お前ら…今日だけでなく昨日も一昨日も万引きしてるってな。そのアイスを金も払わずに食ってコンビニは何思う?」
「そ、それは…ってなんでそんなこと知ってるんだよ!」
「俺の魔法のひとつには心を読むことが出来るんでね。お前らの企みもやらかしたことも全て分かるんだよ」
「く…」
「あとはどうなるか…分かるな?」
と言って俺はイジメグループの前から去っていき、イジメグループが万引きしたコンビニへ来た。
「店員さん。万引きした人を見なかったか?」
「え、それって…まさか!」
女の店員はすぐ防犯カメラを確認した。
すると、やはりあの3人がアイス売り場で堂々と万引きをしていた。
「やはりな。警察を呼べ」
「はい!」
店員はすぐさま警察を呼び、万引きしたイジメグループをすぐ捕らえた。
あいつらの万引きは俺が中学に入ってから続いたらしく、常習犯となっていた。
イジメグループはすぐ少年院に入れられたとさ。
これで俺の復讐の1つが完了した。
「さて、あとは…」
俺は変身解除し、鎌蟹ミカミの姿に戻ると1人の少年がご飯らしきものを持って走っていた。
そこへ店員らしき男が少年を追っている。
「待てー!」
「へへ、これはオレのご飯だ!!」
意外と俺と同い年くらいなのに身体能力はバカ高い。
だが少年は転んでしまい、店員に捕まってしまった。
ご飯はおにぎりだから無事なのだが。
にしてもあの少年気になるな…。
「後を追うか…」
俺は少年の後を追った。
「やあやあどもども!」
「おわっ!!」
次の瞬間、トールギスが突然現れた。
「なんだよ!脅かすな!」
「君は魔法少年としてイジメグループを制裁しました!てことで報酬のお金を差し上げますZ!!」
と、トールギスは封筒を渡した。
中身は1000円札が3つ。
「何故金を与えられる」
「だって報酬ないと生きていけないと思わない?好きな物買ったりお菓子買ったりさぁ~?」
「まあそうだけどよ…」
「その金は君の好きにしていいよん」
そう行ってトールギスは去っていった。
「なんだあいつは…」
俺は魔法少年に変身し、再びあの少年を追った。
(誰か出してくれよー!)
あの少年の心の声が聞こえた。
少年の心の声を頼りに俺は少年を探した。
ここよりも少し遠くにいる。
たどり着いた先はスーパーのようだ。
しかし少年は冷たいところにいる。
「少年の心は冷たいと言ってる…冷房がきいてるところか?」
俺は少年がいる場所へ行った。
そこはスーパーの魚売り場で、少年は冷凍庫にいるに違いない。
「失礼」
俺は従業員の心を操り、俺を無視するようにし、少年がいる場所へ向かった。
「出せよー!寒いよー!!」
やはり少年は鍵付きの冷凍庫にいる。
「また頼む」
俺は1人の従業員の心を操って鍵を開けるように指示した。
鍵は開けられ、俺はその中に入った。
そこには寒さに凍える裸足の少年がいた。
Tシャツと短パンでいかにも寒そうであることが分かる。
「大丈夫か」
「大丈夫じゃねーよ!早くここから出せよ!」
「分かった」
俺は少年の細い手を掴み、冷凍庫から、そしてスーパーの裏から出た。
「ここだと不味いな…」
俺は安全な場所が無いかと探し、そこにフードコートがあったのでそこに座った。
フードコートは人数がかなり少なく、完全にガラガラに近い。
「ありがとな!お前なんて言うの?」
少年に聞かれるとオレはすぐ変身解除し、自分の名前を言った。
「ミカミ」
「みかみぃ?女みてーな名前だなお前」
「悪いか。美しい神になれると思ってクソ親がつけたんだが」
「クソ親?」
「ああ、家に事情があって戻れないんだよ」
「クソ親ってひでー奴か?」
「酷い。クソ姉しか愛さん」
「なんでやつだ!そんなのオレのプライドが許さねぇ!!」
「まあそうだな。お前、結構分かってくれるじゃないの。で、名前はあるのか?」
「オレはシドウ!來音シドウだ!」
少年は俺と同じくらいで名前は來音らいおんシドウというそうだ。
「ところで、なんでお前はおにぎりを盗んだんだ?」
「だって…腹減ったんだもん!」
理由は非常に単純だった。
「それが理由か…じゃあ俺があそこで買って食わせてやる。ちょっと待ってろ」
俺はポケットに入った金を取り出した。
「おい、店員」
「いらっしゃいませ。ご注文は?」
「ラーメン2つ頼む」
「はい。かしこまりました」
「あと醤油と豚骨だ。あと小さいので頼む」
「分かりました。少々お待ち下さい」
俺は醤油ラーメンと豚骨ラーメンを注文し、スモールサイズにした。
どうやらここのフードコートは小さい子供でも食べれるよう、スモールサイズとビックサイズも用意されてるようだ。
暫くして、スモールサイズの醤油ラーメンと豚骨ラーメンが出来た。
「お待たせしました。こちらスモールサイズの醤油ラーメンと豚骨ラーメンで間違いないでしょうか?」
俺はお盆に乗ったスモールサイズの醤油ラーメンと豚骨ラーメンを持ち、シドウがいる席へ置いた。
スモールサイズといえ2つだから十分栄養が取れてない俺には荷が重かった。
「ほら食え」
「わあ!ラーメンだ!!」
少年はすぐ目を輝かせ、箸を持ってラーメンの麺にかぶりついた。
「いただきますぐらい言わないか…」
「なんひゃよ!オレはしもひぇるひ!」
箸が持てるのはいいがぎこちない。
「さて、初めての贅沢ってことだな」
と、俺もラーメンの麺をすすった。
俺は贅沢したことが全くない。
だがその対称的にクソ姉は何度も贅沢している。
豚骨スープの味が口いっぱいに広がる。
テストで非常に良い点取ってもカップ麺しか食えなかったからな。
特に豚骨ラーメンは久々に食えて少し嬉しい。
けど本格的なラーメンは食べたことないから今までより心が安らげる。
「美味いな!このラーメン!!」
「俺は初めてだよ」
「えー!?お前初めてなの!?」
「ああ、贅沢の少しも無かったよ」
「マジかよ!!」
「そういうお前も初めてだろ?」
すると少年は「え?」と首を傾げて?マークを浮かべる。
「ぜいたくってなに?」
こいつ、贅沢という言葉を知らないのかよ…。
俺は少し呆れた。
「なんか…実際の生活より度が過ぎたものを贅沢って言うんだっけな」
「へー、そっか。俺は中学行ったことないから分かんないや」
シドウは中学に行ったことがないらしい。
「お前、本当に中学行ってないのかよ」
「うん。オレ中学行く金ないから」
「中学は義務教育だから行かないとダメだぞ」
「でもお母ちゃんいないし!!」
「いない?どういうことだ?」
「だって、オレお母ちゃんとお父ちゃんに捨てられたんだもん。それにオレが入ってるところ金が無くて不味い飯ばっかだし…」
「それでおにぎりを盗んだわけか」
「そうだよ。ご飯少なくて腹減ったもん」
「あのな、いくら貧乏だからとはいえ、二度とそんなことするんじゃない。お前の将来に害が出たらどうする」
「ミカミ…オレ…」
「もし困ったことがあったら俺が解決してやる。お前をこれ以上酷い目に合わせたくないんだ」
と、俺はシドウの頭を撫でる。
「うん、分かった!」
シドウは明るい笑顔を浮かべた。
「じゃあオレ魔法少年になる!」
その時、シドウは自信げに魔法少年になると言った。
「おい…今なんて…」
「だって、お前魔法少年なんだろ?見ただけでわかるぜ!」
まさかこいつが魔法少年を知ってるなんて…予想外だ。
「オレ聞いたことあるぜ!魔法少年がいるってこと!だから、オレ魔法少年になるよ!!」
俺ははぁ…とため息をつくと真剣な話をした。
「魔法少年は簡単になれるもんじゃない」
「へ?」
「いくら不幸とはいえ、魔法少年になれるとは限らないよ」
「なんでだよー!いいじゃねぇか!!」
「まあ、とりあえずラーメン食わせたことだけは感謝しろ」
と、俺は豚骨スープを飲み干し、少年の元から去っていった。
「まだわかんねぇだろ!!オレだって魔法少年になってやるからなー!!」
シドウが大きな声を出して言ったが俺は無視し、スーパーを出た。
さて、復讐の続きをするか。
俺の復讐はまだ始まったばかりだ。
後でみっちり痛い目に合わせてやるからな…!
しおりを挟む

処理中です...