Legend Girl!

広瀬あかり

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第六十五、最終闘:極闘一家四代目継承式

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ー極闘一家アジト、控室ー

この一週間は、長いようで本当に早かった・・・。
気づけばもう、今日継承式の日を迎えてここに座っている。

この一週間は忙しくも本当に大切に過ごしたと思う。
三代目に言われたように、紫炎のみんなとはたくさん時間を一緒に過ごした。
後悔のないように・・・たくさんたくさん・・・。

紫炎に入ることになったあの日、私はこんなことになるとは想像もしていなかった。

この私が、こんな私がここまで来た・・・人生とはよく分からないものだ。
ただ一つ分かることは、あの日椿さんに声をかけられていなければ
こうなる可能性は微塵もなくきっと私は未だ勉強だけに明け暮れていたと思う。
そう思うと今、あの日声をかけて誘ってくれた椿さんに感謝しかない・・・。

「気分はどうだ、いよいよだぞ・・・。」

声をかけてきたのは三代目、巽雄吾。

「緊張は当然しますが・・・悪くはないです。」

「それは何よりだ・・・今日のお前の世話は全部俺がするからな。
 これもしきたり、継承式当日新しいボスのお世話は全て前代のボスがする。
 何かあればすぐ俺に言うことだ、何があっても助けてやる・・・。」

和服に身を包んだ巽はこの日優しかった。

そんな巽の優しさを素直に聞き入れた陽菜は
「ありがとうございます!」と笑顔で答えた。

「お前の要請通り、紫炎の奴らは全員ここに既に呼んである・・・がだ・・・。
 何度も言うがこれは一家の神聖な儀式!本来なら一家以外のメンバーなど
 一人も入れないということを忘れるなよ、本来ならな!
 まったく・・・お前が四代目になってから異例なことばかりで胃が痛い・・・。
 さて、もうすぐ時間か・・・お前も正装に着替えるぞ。ここで待っていろ。」

そういうと、巽は部屋を出て行った。
一週間前伝統に則った服で継承式を行うとか言われたっけ・・・。
紫炎と共同で作ったとか・・・そんなことも言っていたような気もする。

「よし、持ってきたぞ。目を閉じろ、俺が着せてやる・・・。」

この日のために必要だというさらしの巻き方は頑張って覚えた。

下着だけを身に着けたほとんど裸の様な格好に服が着せられた。

「目を開けてみろ。」

その言葉で目を開き鏡の前に立つ陽菜。

「うわ・・・すごい・・・!」

純白の特攻服に金の刺繍で極闘一家四代目、宮澤陽菜と書いてあった。
そして右腕には紫炎と言う文字も大きく。

「色々相談して決めたんだが、入れたい台詞とかは後々自分で決めて入れろ。
 専属の刺繍屋も一家にはあるからな・・・いつでも頼むといい。
 よし、行くぞ四代目宮澤陽菜・・・いよいよ継承式だ。」
「はいっ!!!」

巽に連れられ廊下をゆっくりと歩いて行く陽菜。

そして、大きなテラスから顔を出すと下には一家のメンバーはもちろん
紫炎の数百人まで全員がそこに揃い、陽菜を見上げている。
陽菜が顔を出した瞬間、大歓声が響いた・・・。

「静粛に!これより極闘一家四代目!宮澤陽菜の継承式を開始する!!」

巽の絶叫が届くと、全員が静まり返った・・・。

「今日を持ち、私巽雄吾は三代目を降り、
 この極闘一家の全権を四代目宮澤陽菜に託す!!
 これより当人より皆に最初の言葉がある、心して聞くように!!」

陽菜の出番が来た、色々考えてはきたが陽菜は何も思いつかなかった。
でも、これだけの人達の上に立つと思うと陽菜は心が震えた。

「みなさんこんにちわ・・・ただいま三代目より紹介に与りました宮澤陽菜です。
 えー・・・こうしてここに立てること、本当に嬉しく思います。
 きっとまだ、一家にまだいるメンバーの中にも女である私がボスだなんて
 納得できない人もいると思います。でも当然だと思うんですよね、
 今までは全て男性がボスとして成り立ってきた極闘一家ですから・・・。
 でも、どうかまだここにいる方々には女の私にもここまでできるということを
 見て頂きたいと思っています。そして信じていて頂きたい。
 これから私は極闘中学に存在する全てのグループの統一を目指します。
 それはこれまで誰も成し得なかった、不可能だと言われてきたことですが
 私はそれを達成して極闘中学を統一し、新たな一家の時代を作り上げたい!!
 ここにいる皆さんを筆頭に、ここに伝説を作りましょう!!!」

陽菜の言葉でまるで地震でも起きているかのような大歓声が響く・・・。

「そして・・・ここで私がこれまでお世話になった紫炎の皆さん。
 今日まで本当にありがとうございました・・・。
 今の私があるのは本当に皆さんの支えがあってのことです。
 感謝してもしきれません。
 そこで、極闘統一の第一歩として紫炎は今日から一家の傘下となって頂きたい。」

紫炎側としてはそんなことは聞いていなかった。
しかし、学校統一を志す以上当然のこと。

椿は笑顔で一歩前に出で大声で話し出す。
「ありがたきお言葉!もちろん入らせて頂きます!
 宮澤陽菜四代目、私達紫炎はあなたに忠誠を誓います!!」

ついさっきまで自分のボスだったはずの椿が自分より下になる。
陽菜は複雑な気持ちだったがこうしてまた紫炎と関われることが嬉しかった。

「一家が歩む道はこれからさらに険しい道になります!!
 今はまだ一家と紫炎の勢力しかありませんが皆さんの力で
 更に戦力を強化拡大し極闘中学に一家の伝説を刻みましょう!!!」



この先、極闘一家が中学統一を果たしたのは約一年後のことである・・・。
卒業間際ギリギリまで時間はかかったもののついに陽菜は極闘完全統一を達成する。
しかし、達成して一か月後には陽菜は卒業・・・。

後の五代目に全てを受け継ぐも一瞬にして破綻し
統一の夢は彼方へと消え去った・・・。

ただ、一か月でも極闘中学の統一を達成した例は一つとなく、
紛れもなく彼女は伝説となり後世まで語り継がれることとなる・・・。

そして、いつしか美術室には誰が作ったとも知れぬガラス細工が置かれていた。

そこに刻まれた文字は

“Legend Girl!宮澤陽菜!”

それから数年・・・
陽菜は卒業後も椿と共に全国統一に向けて動き出す・・・。

しかし二人は全国でも名が通って来た頃突如として引退を発表。
表舞台から完全に姿を消したのだ・・・。

「椿さん・・・私達の子、もうすぐ生まれるよ・・・。」
「うん、楽しみだね・・・。」

こうしてまた、新たな時代が幕を開けようとしていた・・・。
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