Legend Girl!

広瀬あかり

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第六十一闘:所信表明

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その場にいた全員が何も言葉発せず風の音だけが小さく響く中、
初代総長、柊だけはステージを見つめ静かに涙を流していた。

「(陽菜ちゃん・・・君の見ている世界は俺の想像を遥かに超えているよ・・・。
 もう一度一家を作り直すか・・・今からでも間に合うんだろうか・・・。
 やり直せるんだろうか・・・仮にも初代の俺でさえ諦めていたことを、
 出来なかったことを四代目で尚且つ女の子の君が成せると言うのか・・・?
 道は簡単ではない・・・一度壊れてしまったものを作り直すというのは
 やはり膨大な時間を必要とする・・・。本当にやれると言うのか・・・?)」

しかし、止まっていた刻が動き出すように我に返った人々は声を荒げた。

「ふ、ふざけるな!お前の勝手で一家のこれまでの伝統を壊そうというのか!?」
「一家を偽善者の集まりにでもする気か!?一家は常に最強でなければならん!!」
「四代目!俺達はあんたを認めない!!こんな奴に四代目は務まらない!!」
「まだ完全に襲名はしていない!今のうちに何としてでもこのバカ女を止めろ!」
「そんなことになれば一家の信頼も落ち、傘下も離れる・・・一家が崩れるぞ!!」

批判の声が殺到する中、陽菜は叫ぶ。

「批判のされるのも分かっています!すぐに理解をしろなんて言いません!
 離れたい方は離れてくださって結構です!証明していくのはこれからですから!
 確かに極闘一家にはこれまで作り上げてきた威厳、伝統があると思います!!
 でもそこを壊して一歩を踏み出すことで得られるものは大きいと思うんです!!」

その時だった、一人の男がステージに上がり陽菜に殴りかかったのは。

「ふざけるなああああああああ!!」

バキッ・・・!

陽菜の口から血が流れる。
それでも陽菜は話しを続けた。

「こうやって・・・多くの暴力を見てきました、そして私自身も行ってきました。
 でも、武力だけで何が解決するんですか!?痛みと悲しみしか残らない!!」

「黙ってろよ・・・この偽善者が・・・!!」
次々と殴られる陽菜・・・鼻血も流れて来る。

「一家は今こそあるべき姿へ変わるべきです!!
 極闘の頂点に立ち、全てを管理しこの学校に平和をもたらす存在に!!
 それを伝える手段は結局武力だけど・・・そうするしかないんです!!」

ドンッ!
ステージ上に上がって陽菜を殴っていた男は陽菜のパンチで吹き飛んだ。

様子を伺っていた荒木・・・。
「ちっ、喋らせすぎたか・・・夢見てェな事ばっかり喋りやがってバカ女が。
 これじゃ逆効果じゃねえか・・・失敗だったな・・・。クソ、面倒くせぇ。」

ステージは陽菜のパンチで男が吹き飛んだことで静まり返っていた。

「あのか細い身体のどこにそんな力が・・・。」
「マジかよ・・・あの巨体を吹き飛ばすのか!?」
「なるほど・・・四代目と呼ばれるだけのことはある。」

その一方、一人荒木陣営に取り残された椿は美咲に電話をかけていた。

「ああ・・・今言ったように陽菜ちゃんは一家の四代目として紫炎を抜けた・・・。
 写真も送ったろ?陽菜ちゃん自身の手で、紫炎の証明となるナイフも破壊した。」

《そっか・・・陽菜っち抜けたんだ・・・すごいね、急に四代目就任か・・・!
 でもつばるんはそれでいいの?陽菜っちのこと納得できてるの・・・?》

美咲の言葉に何も返せない椿。

《抜けて欲しくないなら・・・ちゃんとそう言わないとダメなんじゃない・・・?》

「違う、違うんだ美咲・・・僕達は今陽菜ちゃんに守られてるんだよ・・・。
 陽菜ちゃんがあそこで断っていたら
 恐らく一家の怒りの矛先はこっちに向いていた。
 それを察した陽菜ちゃんが
 一家のボスを引き受けることで僕達は守られたんだ・・・。」

《そんな!それじゃ人質と何も変わんないじゃん!
 じゃあ陽菜っちは最初から一家のボスなんてやりたくなかったの!?》

「分からない・・・でも、美咲にも小さく聞こえてると思うけど
 今あの子は一家のボスとして所信表明をしているところだ・・・。
 今陽菜ちゃんが話してる彼女がこれから目指すという道が本心なのだとしたら、
 僕達にはもう止められないよ、あまりに夢のような世界だ。
 でもそんなあり得ないような夢でも、
 陽菜ちゃんなら不思議とやってのけちゃう気がするんだ。
 それだけ陽菜ちゃんの言葉には力があるなって最近思えるよ・・・。」

《そっか・・・。で、つばるんはこれからそこでどうするの?》

「そうだな、しばらく様子を伺うかな・・・敵だらけで危険な場所だし、
 もう用済みになった僕も何をされるか分からないんだけど・・・
 陽菜ちゃんを放ってはいけないからね・・・僕の大切な仲間だし。」

《くれぐれも気を付けてね・・・?》

「うん、ありがとう。」

そんな言葉を最後に、電話は切れた。

「さて・・・こいつらをどうにかしないとな・・・。」

気づけば椿の周りには10人程の男が集まっていた。

「宮澤陽菜がこっちに落ちた今、最早お前はいらない・・・。」
「紫炎とかいうグループのボスなんだってなお兄ちゃん・・・。」

男達は一斉に椿に襲い掛かる!!

「上等!!」

その頃外では・・・荒木が怒号を上げ場を収めていた。

「お披露目会は終わりだァ!!全員今すぐ下がれェ!!」

荒木の言葉で一斉に下がる男達であったが、皆その表情は曇っていた。

その後、陣に下がった陽菜は荒木の目の前に呼び出された。
「てめぇ何考えてやがんだ!?大人しく手ェ降ってりゃいいっつったろうが!!」
「申し訳ありません、でもあれが私の目指す道なんです。」
「んなこた知ったこっちゃねえんだよバカ女!好き放題喋りやがって!!
 あれじゃ完全に俺から初代の流れに・・・・。」

ピタリと言葉が止まる荒木。
「てめぇまさか・・・初代の心情を知ってやがったのか・・・・?」
「何のことでしょう・・・私がそんなこと知りえる筈ないじゃないですか。
 私はただそれを目指したかった、それだけです・・・。」
「(こいつ・・・いや何にしてもさっきので初代を完全に勢い付かせちまった・・・。
 やってくれたぜ・・・狙ってやったのか何なのかはもうどうでもいい・・・。
 どっちにしろさっきの作戦は完全に失敗だ・・・!!!)」

思いがけない展開に苦悶の表情を浮かべる荒木。
襲われた椿の運命は!?
そしていよいよ始まろうとしている二人の戦いは一体どうなる!?
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