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第六十闘:極闘一家の始まり
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それから少しの時間が流れた頃、荒木は何かを思いついたように動き出す。
「初代と開始までの時間はどんなもんだ?」
その場にいた部下達は即座に一斉に時間を確認し伝える。
「えーと・・・残り1時間と45分ほどです!!」
「十分だな・・・よし、余興だ。四代目のお披露目会を始めるぞ。」
荒木の言葉でざわつく場内。
余興が行われることは何一つ聞かされておらず
二人の喧嘩のために作られていた舞台は未だ準備中であった。
しかもまだ一家の存続も決まっていない状態・・・。
まるで存続が決まったような勝手なことを出来る状態ではない。
「何をボケっと突っ立ってやがるてめぇらさっさと準備しねぇか!!」
「しかしボス、予定されていないことを勝手にやるとなると・・・。」
「向こうも黙っていないのでは・・・?」
苦言を呈する部下たち
「だからだろ・・・教えてやるんだよ、こっちに入った最高の存続の支持者をな!
柊さんに教えてやってくれ・・・四代目の存在と四代目の意思を!!」
この瞬間から、荒木陣営は一斉に動き出した。
行われていたステージの準備は中止され、
荒木に宣伝係に任命された者たちが走り回る。
「これより余興!宮澤陽菜四代目のお披露目会を開始します!
一家を潰そうとしている初代ですが、四代目候補はここに来て
後を継ぐ覚悟を決めて先ほど二代目の前ではっきりと継ぐことを明言しました!!
繰り返します!四代目候補であった宮澤陽菜!後を継ぐことを明言しました!!
それを二代目もしっかりと認め、事実上宮澤陽菜は四代目を襲名しました!!」
わざとらしく柊、初代陣営の前で大声で走り回る荒木の部下たち。
当然ながらその声は柊にもしっかり届いていた。
陽菜は荒木の指示で静かにステージに上がる。
「な、なんだ・・・!?陽動作戦か!?そんなバカな話があるか・・・。
宮澤陽菜はここにはいない筈・・・しかも襲名・・・どうなっている・・・!?」
急いで陣を出て外に駆け出した柊はステージの上に立つ陽菜の姿を見た。
「出てきたな・・・柊康仁・・・。」
わざとらしく一層声を上げて伝え続ける宣伝係。
「何がどうなって・・・!!」
ステージを見つめ立ち尽くす柊。
「宮澤陽菜!女だがお前はかなり強いらしいな!巽の馬鹿は負けやがったけど
お前の代で無敗の名を取り返せ!二度と負けるなよ!!」
「一家の代表として残虐の限りを尽くせェエエエ!!!」
「極闘一家は最強だァアアア!!!」
ステージに上がった陽菜の周りには多くの人間が集まり歓声を上げていた。
当然それは全員が二代目に指示されて行っているものであったが、
柊の精神を揺さぶるには十分な成果であった・・・。
視界の先にはステージの上で大衆に手を振る陽菜。
まだ信じることが出来なかった。
「紫炎はどうしたんだ・・・君は一家にいるべき人間ではないだろう・・・!
紫炎を確かに愛していたはずなのに何が起こったというんだ・・・!?
それに・・・俺が作った極闘一家はどうしてこうなってしまったんだ・・・?」
極闘一家の全ての始まりは20年以上も前・・・・。
柊や荒木が一家として活動していた頃よりもっと前の話だ・・・。
その頃から極闘一家は存在していたようだ。
しかし、一家の名は何故かそのまま一瞬にして途絶えた。
何が起こったのかが分かる人間は誰一人としていない・・・。
しかしそれから10年後、美術室のガラスケースの中にあった極闘一家と書かれた
輝かしい彫刻を見て過去のグループを知り改めてグループを作り直したのが柊。
この状況からすると厳密にいえば柊が初代という訳ではなくなるが、
新生極闘一家として初代を務めたのが柊康仁であった。
当時は・・・当時の俺達は今のように
ただただ喧嘩に明け暮れていたわけではなかった・・・。
俺達は弱きを助け強きを挫く・・・
そんなグループを目指していたはずだったんだ・・・。
あの頃の俺達は絶対に間違ってはいなかったんだと思う。
けどそれから程なくして、俺達は少しずつ少しずつ道を逸れ始めた。
誰かを助けるために人をどんどん倒していくうちに、俺達の名は上がった。
「突然現れた極闘一家と名乗る奴らが強い」そんな風に次々に言われるうちに
いつしか俺達は人助けという名目で喧嘩を楽しんでしまうグループになっていた。
そして終いにはその人助けさえも忘れて喧嘩だけを楽しんでいくようになった。
気づけば目指していたものは校内最強、地元最強・・・力だけを求めて
次々に人を集めて道は逸れ悪化の一途を辿るばかりであった。
荒木に二代目を託したのもそれが要因、こうなってしまった全ての責任は俺にある。
だからこうしてこの俺が作り上げてしまった悪の根城をぶち壊して
全てを終わらせに来たのに・・・
やっと自分の間違いに気づくことが出来たのに・・・
どうして君がそこに立とうとしているんだ・・・
やめてくれ・・・そこは間違いなく破滅の道だ・・・。
君を巻き込むわけにはいかない・・・
この荒木との勝負は何としてでも・・・勝たねば・・・。
「何故突然極闘一家の四代目として継ぐ決意を?」
インタビューのようにステージの上で陽菜に質問をぶつける荒木の部下。
「何故でしょうね・・・私には紫炎という最高のグループがあった筈なのに、
気づけば今どうしてか四代目としてここに立っています。」
「では継ぐと答えたのは間違いだったと?」
「いいえ・・・間違いではありません、確かに私はそう答えました。
それは、今後の極闘中学のためです・・・・。
今の極闘は、皆さんもご存じの通りはっきり言って荒れています。
私はそれを管理していきたい。戦争を管理し、いつもそこら中で起きている
喧嘩を止めることが出来れば、
全ての生徒が過ごしやすい環境を作れると思うんです。
人には感情というものがありますから、
それを管理というととても違和感があります。
でも、それが出来たら高校への進学率も上がりますし、怪我もしない。
いいことだらけです。しかも極闘一家と言えば犯罪者の巣窟だと聞きました。
私の代では、一切そんな危ないことはさせません。許しません。
四代目として、それも管理して見せます。
一度壊れてしまった一家を、私はもう一度綺麗に作り直したい!!」
陽菜の言葉に誰も言葉を発することは出来ず、風だけが静かに吹き抜けた・・・。
「初代と開始までの時間はどんなもんだ?」
その場にいた部下達は即座に一斉に時間を確認し伝える。
「えーと・・・残り1時間と45分ほどです!!」
「十分だな・・・よし、余興だ。四代目のお披露目会を始めるぞ。」
荒木の言葉でざわつく場内。
余興が行われることは何一つ聞かされておらず
二人の喧嘩のために作られていた舞台は未だ準備中であった。
しかもまだ一家の存続も決まっていない状態・・・。
まるで存続が決まったような勝手なことを出来る状態ではない。
「何をボケっと突っ立ってやがるてめぇらさっさと準備しねぇか!!」
「しかしボス、予定されていないことを勝手にやるとなると・・・。」
「向こうも黙っていないのでは・・・?」
苦言を呈する部下たち
「だからだろ・・・教えてやるんだよ、こっちに入った最高の存続の支持者をな!
柊さんに教えてやってくれ・・・四代目の存在と四代目の意思を!!」
この瞬間から、荒木陣営は一斉に動き出した。
行われていたステージの準備は中止され、
荒木に宣伝係に任命された者たちが走り回る。
「これより余興!宮澤陽菜四代目のお披露目会を開始します!
一家を潰そうとしている初代ですが、四代目候補はここに来て
後を継ぐ覚悟を決めて先ほど二代目の前ではっきりと継ぐことを明言しました!!
繰り返します!四代目候補であった宮澤陽菜!後を継ぐことを明言しました!!
それを二代目もしっかりと認め、事実上宮澤陽菜は四代目を襲名しました!!」
わざとらしく柊、初代陣営の前で大声で走り回る荒木の部下たち。
当然ながらその声は柊にもしっかり届いていた。
陽菜は荒木の指示で静かにステージに上がる。
「な、なんだ・・・!?陽動作戦か!?そんなバカな話があるか・・・。
宮澤陽菜はここにはいない筈・・・しかも襲名・・・どうなっている・・・!?」
急いで陣を出て外に駆け出した柊はステージの上に立つ陽菜の姿を見た。
「出てきたな・・・柊康仁・・・。」
わざとらしく一層声を上げて伝え続ける宣伝係。
「何がどうなって・・・!!」
ステージを見つめ立ち尽くす柊。
「宮澤陽菜!女だがお前はかなり強いらしいな!巽の馬鹿は負けやがったけど
お前の代で無敗の名を取り返せ!二度と負けるなよ!!」
「一家の代表として残虐の限りを尽くせェエエエ!!!」
「極闘一家は最強だァアアア!!!」
ステージに上がった陽菜の周りには多くの人間が集まり歓声を上げていた。
当然それは全員が二代目に指示されて行っているものであったが、
柊の精神を揺さぶるには十分な成果であった・・・。
視界の先にはステージの上で大衆に手を振る陽菜。
まだ信じることが出来なかった。
「紫炎はどうしたんだ・・・君は一家にいるべき人間ではないだろう・・・!
紫炎を確かに愛していたはずなのに何が起こったというんだ・・・!?
それに・・・俺が作った極闘一家はどうしてこうなってしまったんだ・・・?」
極闘一家の全ての始まりは20年以上も前・・・・。
柊や荒木が一家として活動していた頃よりもっと前の話だ・・・。
その頃から極闘一家は存在していたようだ。
しかし、一家の名は何故かそのまま一瞬にして途絶えた。
何が起こったのかが分かる人間は誰一人としていない・・・。
しかしそれから10年後、美術室のガラスケースの中にあった極闘一家と書かれた
輝かしい彫刻を見て過去のグループを知り改めてグループを作り直したのが柊。
この状況からすると厳密にいえば柊が初代という訳ではなくなるが、
新生極闘一家として初代を務めたのが柊康仁であった。
当時は・・・当時の俺達は今のように
ただただ喧嘩に明け暮れていたわけではなかった・・・。
俺達は弱きを助け強きを挫く・・・
そんなグループを目指していたはずだったんだ・・・。
あの頃の俺達は絶対に間違ってはいなかったんだと思う。
けどそれから程なくして、俺達は少しずつ少しずつ道を逸れ始めた。
誰かを助けるために人をどんどん倒していくうちに、俺達の名は上がった。
「突然現れた極闘一家と名乗る奴らが強い」そんな風に次々に言われるうちに
いつしか俺達は人助けという名目で喧嘩を楽しんでしまうグループになっていた。
そして終いにはその人助けさえも忘れて喧嘩だけを楽しんでいくようになった。
気づけば目指していたものは校内最強、地元最強・・・力だけを求めて
次々に人を集めて道は逸れ悪化の一途を辿るばかりであった。
荒木に二代目を託したのもそれが要因、こうなってしまった全ての責任は俺にある。
だからこうしてこの俺が作り上げてしまった悪の根城をぶち壊して
全てを終わらせに来たのに・・・
やっと自分の間違いに気づくことが出来たのに・・・
どうして君がそこに立とうとしているんだ・・・
やめてくれ・・・そこは間違いなく破滅の道だ・・・。
君を巻き込むわけにはいかない・・・
この荒木との勝負は何としてでも・・・勝たねば・・・。
「何故突然極闘一家の四代目として継ぐ決意を?」
インタビューのようにステージの上で陽菜に質問をぶつける荒木の部下。
「何故でしょうね・・・私には紫炎という最高のグループがあった筈なのに、
気づけば今どうしてか四代目としてここに立っています。」
「では継ぐと答えたのは間違いだったと?」
「いいえ・・・間違いではありません、確かに私はそう答えました。
それは、今後の極闘中学のためです・・・・。
今の極闘は、皆さんもご存じの通りはっきり言って荒れています。
私はそれを管理していきたい。戦争を管理し、いつもそこら中で起きている
喧嘩を止めることが出来れば、
全ての生徒が過ごしやすい環境を作れると思うんです。
人には感情というものがありますから、
それを管理というととても違和感があります。
でも、それが出来たら高校への進学率も上がりますし、怪我もしない。
いいことだらけです。しかも極闘一家と言えば犯罪者の巣窟だと聞きました。
私の代では、一切そんな危ないことはさせません。許しません。
四代目として、それも管理して見せます。
一度壊れてしまった一家を、私はもう一度綺麗に作り直したい!!」
陽菜の言葉に誰も言葉を発することは出来ず、風だけが静かに吹き抜けた・・・。
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