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第五十四闘:創設者の気持ち
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静かに跪き頭を下げた巽。
「柊様・・・極闘会では常日頃よりお世話になっております・・・。
しかしどうか教えていただきたい・・・初代様が何故このような場所に!?
先の戦争における私の敗北が原因でここにいらっしゃってるのだとしたら・・・
本当に申し訳ございません・・・処罰はいかようにも・・・・。」
柊は巽の言葉に耳を貸すこともなく部屋の中を歩き陽菜の前に立つ。
そしてそっと優しく陽菜の頭を撫でた。
「ほほー、君が宮澤陽菜ちゃんだね?ふむふむ・・・いい体つきをしている。
そして何よりかわいい・・・しかし本当に君があの雄吾をねぇ・・・。」
「え、ええ!?」
突然のなでなで攻撃に困惑する陽菜。
そして柊は延々と優しく撫でながら話す。
「巽雄吾君・・・負けてしまったことはもう気にしなくていいよ。」
そっと笑顔で巽を見つめる柊。
「しかし・・・一家の名に泥を塗ってしまったのは事実ですから・・・。
絶対に敗北が許されないというのに・・・本当に申し訳・・・!
どんなに謝罪したらいいか・・・!!」
ポロポロと涙が頬を伝い流れ落ちる。
柊は陽菜の前から巽の下へと移動し、同じように頭を撫でる。
「本当にもういいんだ巽君・・・落ち着きなさい・・・・!」
ここで椿が切り出す。
「横入失礼します、ここに来ていたのは荒木という二代目だったのでは?」
「君は佐川椿君・・・現紫炎のボスか・・・うん、君もいい顔をしている。
というかここのいる子たちはみんないい顔をしているな・・・・。
全員が全員を信頼している、そんな感じだ・・・うん、いいグループだ。
ああ、ごめんね、話を戻そうか。何故俺がここにいるのか、だったね。
実のところ、荒木の動きは前々から探っていたんだ・・・。」
「つまり・・・以前から荒木という男に怪しい動きがあったと?」
「いや・・・情報が入ってきたんだ。奴が裏でコソコソと何かをしている、とね。
俺はそれを何とか探って食い止めようとしていたんだがこの結果だ、申し訳ない。
あいつは俺の下で一家の前線にいたころから一家への愛を語っていた。
奴は今回の君の敗北がどうしても許せなかったのだろうな・・・。
基本的にはあいつも悪い奴じゃないんだ、無茶苦茶で粗暴な奴だが・・・
いや、奴に散々ストレス発散と言われながら暴力を受け続けた君の前で
こんな話をするのもおかしいな、失礼した巽君・・・。」
「い、いえ・・・。でも荒木さんもここに来ていましたよね?
姿は一度も見なかったですけど、まだいるんですか?」
「奴は俺がもうちょっとボコって追い返したよ、安心していい・・・。
奴の目的はこの紫炎というグループの破壊と巽君、君の殺害だった。」
グッと唇を噛む巽。
「・・・やっぱり俺はあの人に殺される寸前だったんですね・・・。
でもだからって何でこんなところに急に現れて止められたんです!?」
そう、これだけは誰にも理解しがたい状況だった。
そして柊の口から語られた真実は驚きを隠せないものだった。
「あー、それはあれだ。俺は紫炎のメンバーに扮してずっと隠れてたんだ。」
『はっ!?』
「ちょっとにわかには信じがたい話ですね・・・どうやって、ですか?」
メンバーや人数は誰よりもしっかりと把握している椿にとってはあり得ないことだった。
「いやー、実は俺に似ているのが丁度いたもんでね、
そいつボコって服とここの在籍証明のナイフ?を奪って成りすましてたの。
これね。たぶん本人もそろそろ目を覚ます頃だと思うけど・・・。
返しておいてくれるかな、それとごめんねって言っておいて?」
柊はポケットからナイフを取り出し椿に手渡す。
「色々とんでもないことしてますねこの人・・・。」
「いやでも陽菜っち私達この人のおかげで助かった訳だから・・・ね・・・。」
「何にせよこの度は本当にありがとうございました。」
巽が深々と頭を下げると、それに続いて椿、美咲、陽菜も頭を下げた。
「いや・・・いいんだ・・・無事ならそれでいい。
さて、終わったし俺も帰るとするかな・・・あ、晩飯何にしよう・・・。」
ぶつぶつと何かを言いながらこちらに背を向け歩き出す柊。
「ちょ、ちょっと待ってください!!」
声をかけ引き止めたのは巽だった。
「本当に、本当によろしいんですか・・・・。」
不安そうな顔で柊を見つめる巽。
しかし、この瞬間だった!
「なんだよ・・・・そんなに俺と殺し合いがしてぇのか・・・・!?」
ゴゴゴゴ・・・とまるで地響きがするような威圧感を全員は感じ取った。
「ちょ、ちょっとやばいんじゃない!?こっちが本性!?」
「美咲さん、下がってください私が何とか・・・・!」
しかし、一瞬でそれはピタッと止み・・・
柊は背を向けたまま話す。
「なんてな、殺す気で来てるならとっくにやってるさ・・・。
こういう言い方をすると自意識過剰みたいで何だが、
はっきり言って俺が本気出したらお前ら10秒も立ってらんねえぞ。
無事ならそれでいい、それでいいんだ。巽君、あんまり気にしちゃだめだよ?
一家のことは現当主である君に全てを任せる。解散するなり好きにしていい。
思うように進みなさい、それがきっと一家にとって一番正しい道だ・・・。
それじゃまたね若い芽達よ、君達がさらに強くなったらまた会おう・・・。」
そういうと、柊は手を振りながら去って行った。
「柊様・・・極闘会では常日頃よりお世話になっております・・・。
しかしどうか教えていただきたい・・・初代様が何故このような場所に!?
先の戦争における私の敗北が原因でここにいらっしゃってるのだとしたら・・・
本当に申し訳ございません・・・処罰はいかようにも・・・・。」
柊は巽の言葉に耳を貸すこともなく部屋の中を歩き陽菜の前に立つ。
そしてそっと優しく陽菜の頭を撫でた。
「ほほー、君が宮澤陽菜ちゃんだね?ふむふむ・・・いい体つきをしている。
そして何よりかわいい・・・しかし本当に君があの雄吾をねぇ・・・。」
「え、ええ!?」
突然のなでなで攻撃に困惑する陽菜。
そして柊は延々と優しく撫でながら話す。
「巽雄吾君・・・負けてしまったことはもう気にしなくていいよ。」
そっと笑顔で巽を見つめる柊。
「しかし・・・一家の名に泥を塗ってしまったのは事実ですから・・・。
絶対に敗北が許されないというのに・・・本当に申し訳・・・!
どんなに謝罪したらいいか・・・!!」
ポロポロと涙が頬を伝い流れ落ちる。
柊は陽菜の前から巽の下へと移動し、同じように頭を撫でる。
「本当にもういいんだ巽君・・・落ち着きなさい・・・・!」
ここで椿が切り出す。
「横入失礼します、ここに来ていたのは荒木という二代目だったのでは?」
「君は佐川椿君・・・現紫炎のボスか・・・うん、君もいい顔をしている。
というかここのいる子たちはみんないい顔をしているな・・・・。
全員が全員を信頼している、そんな感じだ・・・うん、いいグループだ。
ああ、ごめんね、話を戻そうか。何故俺がここにいるのか、だったね。
実のところ、荒木の動きは前々から探っていたんだ・・・。」
「つまり・・・以前から荒木という男に怪しい動きがあったと?」
「いや・・・情報が入ってきたんだ。奴が裏でコソコソと何かをしている、とね。
俺はそれを何とか探って食い止めようとしていたんだがこの結果だ、申し訳ない。
あいつは俺の下で一家の前線にいたころから一家への愛を語っていた。
奴は今回の君の敗北がどうしても許せなかったのだろうな・・・。
基本的にはあいつも悪い奴じゃないんだ、無茶苦茶で粗暴な奴だが・・・
いや、奴に散々ストレス発散と言われながら暴力を受け続けた君の前で
こんな話をするのもおかしいな、失礼した巽君・・・。」
「い、いえ・・・。でも荒木さんもここに来ていましたよね?
姿は一度も見なかったですけど、まだいるんですか?」
「奴は俺がもうちょっとボコって追い返したよ、安心していい・・・。
奴の目的はこの紫炎というグループの破壊と巽君、君の殺害だった。」
グッと唇を噛む巽。
「・・・やっぱり俺はあの人に殺される寸前だったんですね・・・。
でもだからって何でこんなところに急に現れて止められたんです!?」
そう、これだけは誰にも理解しがたい状況だった。
そして柊の口から語られた真実は驚きを隠せないものだった。
「あー、それはあれだ。俺は紫炎のメンバーに扮してずっと隠れてたんだ。」
『はっ!?』
「ちょっとにわかには信じがたい話ですね・・・どうやって、ですか?」
メンバーや人数は誰よりもしっかりと把握している椿にとってはあり得ないことだった。
「いやー、実は俺に似ているのが丁度いたもんでね、
そいつボコって服とここの在籍証明のナイフ?を奪って成りすましてたの。
これね。たぶん本人もそろそろ目を覚ます頃だと思うけど・・・。
返しておいてくれるかな、それとごめんねって言っておいて?」
柊はポケットからナイフを取り出し椿に手渡す。
「色々とんでもないことしてますねこの人・・・。」
「いやでも陽菜っち私達この人のおかげで助かった訳だから・・・ね・・・。」
「何にせよこの度は本当にありがとうございました。」
巽が深々と頭を下げると、それに続いて椿、美咲、陽菜も頭を下げた。
「いや・・・いいんだ・・・無事ならそれでいい。
さて、終わったし俺も帰るとするかな・・・あ、晩飯何にしよう・・・。」
ぶつぶつと何かを言いながらこちらに背を向け歩き出す柊。
「ちょ、ちょっと待ってください!!」
声をかけ引き止めたのは巽だった。
「本当に、本当によろしいんですか・・・・。」
不安そうな顔で柊を見つめる巽。
しかし、この瞬間だった!
「なんだよ・・・・そんなに俺と殺し合いがしてぇのか・・・・!?」
ゴゴゴゴ・・・とまるで地響きがするような威圧感を全員は感じ取った。
「ちょ、ちょっとやばいんじゃない!?こっちが本性!?」
「美咲さん、下がってください私が何とか・・・・!」
しかし、一瞬でそれはピタッと止み・・・
柊は背を向けたまま話す。
「なんてな、殺す気で来てるならとっくにやってるさ・・・。
こういう言い方をすると自意識過剰みたいで何だが、
はっきり言って俺が本気出したらお前ら10秒も立ってらんねえぞ。
無事ならそれでいい、それでいいんだ。巽君、あんまり気にしちゃだめだよ?
一家のことは現当主である君に全てを任せる。解散するなり好きにしていい。
思うように進みなさい、それがきっと一家にとって一番正しい道だ・・・。
それじゃまたね若い芽達よ、君達がさらに強くなったらまた会おう・・・。」
そういうと、柊は手を振りながら去って行った。
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