Legend Girl!

広瀬あかり

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第五十一闘:昨日の敵は今日の友

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「巽さん、頭の怪我は大丈夫ですか?」

乱戦の中、ドッと巽と背を合わせた陽菜。

「ん・・・まぁかなり痛みはするが支障はない。」
「それは何よりです、しかし、あなたが味方になるほど心強いことないですね!」
「・・・お喋りはここまでだ、とっととこれを切り抜けるぞ。」
「はいっ!!」

氷のように冷たい眼差しで巽の動きを静かに見つめる瀬川。

「完全な裏切者に変貌しましたね・・・巽さん・・・。
 お前にも俺がお前にもらったさっきの言葉をそっくりそのまま返すぞ。
 “一家のプライドはどこに行った!?”なぁ・・・巽雄吾!!
 もういい・・・お前の顔を見るのも、お前の背を負うのももう終わりだ・・・。
 ここで殺してやる・・・。」

ここで瀬川は全員にとって思いがけない指示をする。

「全員!目標を巽雄吾に絞れ!!他(紫炎)はもうどうだっていい!
 この場において何としてでも元我らがボス、巽雄吾を打ち取れ!
 こいつはもう完全に裏切者だ!絶対に逃すな!!」

「なっ・・・!?(こいつ血迷ったか!?)」

全員が瀬川の指示を聞き一斉に巽に襲い掛かる。

何とか救出しようと美咲や椿も巽のところへ駆けつけたいところだったが、
もはや二人にそんな体力は残されておらずその場でドッと床に膝を落とした。

「ねぇ、炎・・・まだいける・・・?」
《ふん、行けねぇって言ってもお前は行くんだろう・・・!?》
「あははっ、もうバレちゃってるか。」

キッと瀬川を睨みつける陽菜。

「行くよ・・・何としてでも巽さんをあそこから救い出す!!」
《力は貸すが、死ぬなよ。》
「ちょ・・・縁起でもないこと言わないでよ。」

炎からの力の供給を受けた陽菜は全力で巽を襲う一家の塊の中へと突入する。
見た限り完全に袋叩き状態となっている巽に陽菜は必死に手を伸ばす。

「巽さん!こっちです!!」

その声に気づいた一家が陽菜を襲い始めるも
陽菜も持てる力の全てを使って応戦する。

何度も何度も呼び掛け手を伸ばす陽菜。
「巽さん手を伸ばして!!私はここです!!」
巽も手を伸ばし始めるも未だ陽菜の手には届かない。

しかしその瞬間、陽菜は突如一人の男に背を掴まれ投げ飛ばされる。
「おい・・・人の獲物に勝手に手を出すなよ宮澤陽菜!!」

床に転がる陽菜はすぐに体勢を立て直しその男と対峙する。

「はぁ・・・はぁ・・・あなたは・・・!」
「余計なことをするな!巽をここで死なせてやるんだ!!」
「それを・・・させないために私がいます・・・!」
「じゃあお前も一緒に送ってやるから死ねよ!!」
「いやです・・・私がいる限り誰も死なない、死なせない!!」

向かい合い、拳に互いに想いを詰め込み駆け出す二人。
完全に一騎打ちとなった。

「はぁぁぁあああああ!!」
「死ね小娘がァァァ!!!」

ドスッ・・・鈍い音と共にどちらかが倒れた。

場の空気は凍り、巽に殴る蹴るの暴行を加えていた
一家のメンバーもその成り行きを静かに見つめていた。

「はぁ・・・はぁ・・・私の・・・勝ち・・・です・・・。」

力を使い果たし陽菜もその場にドサッと倒れる。

「くそくそくそ・・・計画が狂った・・・!!」
「あなたの負けです、大人しく投降してください・・・!」

倒れ一歩も動けなくなったと思われた瀬川であったが、
全身から血を流すもここで気力を振り絞り立ち上がる。

「ははっ・・・最後まで立ってたやつが勝ちなんだよ・・・知ってたか!?」

カラン・・・と瀬川が手に持ったのは鉄パイプ。

「待て!瀬川よせ!!」

倒れた陽菜の頭上で大きくそれを振りかぶる瀬川!

「やば・・・!」
《クソッ!回避できねぇ!!》

「弾けろや・・・!!」

勢い激しく振り下ろされる鉄パイプ!陽菜の運命やいかに!?
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