Legend Girl!

広瀬あかり

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第五十闘:巽雄吾の選択

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「・・・紫炎は全員ここで沈め!!」

椿に襲い掛かる巽、しかしその手は確かに震えていた。
巽のパンチをパシッと手で受け止めた椿は言う。

「ちょっと落ち着きなよ・・・荒木って人がどれほどか僕は知らないけど
 そんな震える手で殴りかかってこないでよ・・・まるで戦意が感じられないし
 今までの君のパンチの中で最も軽い・・・僕でも簡単に止められる。」 

巽はそれでも何度も何度も椿にパンチを打ち続ける。

「巽さん、それでいいんですよ。紫炎を潰さなきゃ俺らも死を待つばかり。
 生き残るためには荒木さんからの指示を完璧にこなすしかないんです・・・!!
 さあみんな行きなさい!ここで紫炎を完全に終わらせるのです!!」

瀬川の後ろにいた数十の戦力達も一斉に戦いを始め一気に乱戦状態となった。

「私も・・・やらなきゃ・・・ここでやられる訳には・・・!!」

陽菜は何とかベッドから立ち上がる。

そして攻撃を受け続ける椿。
しかし未だ一発として有効打は入っていない。

「いい加減にしなよ・・・目を覚ました方がいい・・・。」
「黙れ、荒木さんが来る前にお前らを潰さなきゃ俺らが死ぬんだよ!!
 早く倒れてくれ!どうしてパンチが当たらない!?俺はお前より強い筈だろ!?」
乱戦の中じっと巽を見つめる瀬川。
「(“荒木さんがここに来る”ただそれだけであの巽さんがこの怯えっぷり・・・。
  手足が震えて恐怖で本来の自らの力の半分も出せていない・・・。)」

この時だった。
パンッ!!という陽菜の強いビンタと共に巽のパンチが止まった。
「な・・・何の真似かな宮澤陽菜ちゃん・・・。」
「しっかりしてください、あなた程強い人が情けないですよ・・・。」

下を向き絶望に嘆く巽。

「前を見なさい!ここで私達を潰したとしてもあなたに何が残るの!?
 やるべきことを考えて!誰かの命令じゃなくてあなたの心で動いて!!」

「ダメだ・・・荒木さんがここに来ると分かっている以上
 俺はお前たちを荒木さんが来る前に何としてでも倒さないと・・・。
 だから佐川椿、宮澤陽菜、東條美咲・・・ここに倒れてくれ・・・!!」

ふぅ・・・と小さく息を吐くと陽菜は笑顔で言った。
「巽さんができないなら・・・私がその荒木さんって人と話してみるよ。」

その言葉が到底理解が出来ない巽は叫ぶ。

「何を言ってるんだお前!あの人はそんなに甘い人じゃない!!
 話が通じるような人じゃないしお前には絶対勝てない!死ぬだけだ!!」
「だったら他に何か方法があるの?」

唇を噛む巽。

「多分だけど、ここで上手い事私達を潰したところで、あなたはやられちゃうと思う。
 だからね?私達と一緒に戦ってくれないですか?私は・・・あなたも救いたい。」

「自分らが潰される寸前って時にお人好しもいいところだよ宮澤陽菜ちゃん・・・。」

「おかしいのは分かってます。でも、あなたのさっきの恐怖に震える
 手足や顔を見てたら、あぁ助けなきゃなって思っちゃった・・・。
 何もかも上手くは行かないかも知れないけど・・・やってみませんか!?
 私達にとっても、巽さんにとってもいい話だと思いますよ!!」

今まで荒木には散々な想いをさせられてきた巽は複雑だった。
立ち向かったことなどない、圧倒的な力を知っているから。
一方的に暴力を受けてきただけの日々を思い出していた。

でも、もしも上手くいってあの恐怖から解放されるとしたら?
いやでも上手くなど行くはずがない。あの人(荒木)には何も通用しない。

「選択肢は二つです、ここで私達を潰して荒木さんの到着をただ待って潰されるか、
 ここで私達と共に戦ってとりあえずこの無駄な乱戦を急いで終わらせて
 荒木さんの到着を待って話し合ってみるか・・・さぁどっちにしますか。」

「(荒木さんが他人の話など絶対に聞くはずがない・・・。
 喧嘩だって例え俺たち全員が全快していて力があったとしても勝てやしない。)」

だったら可能性なんて1%もないじゃないか・・・・。

本来であればただの絶望でしかないこの状況。
だけど巽は何となく思った。

「君(陽菜)がいるなら・・・何とかなるかも知れないな・・・。
 分かった、協力しよう紫炎。いや・・・宮澤陽菜ちゃん。」

負傷しているとはいえ巽が味方に入った今、苦戦を強いられていた戦局が一気に動く!

そして・・・
全力でバイクを走らせる荒木。
「待っていろ雄吾ォ・・・お仕置きの時間だ・・・。」

徐々に近づいてくる荒木と紫炎側に動いた巽。
なんとかこの状況を打破できるのか!!
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