Legend Girl!

広瀬あかり

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第三十九闘:零

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美咲の脱退から数時間、紫炎は小さなパニック状態となっていた。
残された美咲の隊は何の詳しい説明もないまま
美咲の紫炎脱退だけを伝えられ椿から直接隊の解散を明言された。

「椿さんどういうことなのか説明してください!!」
「説明する必要はないよ、美咲は抜けた、それだけだよ。」
「それではとても・・・何があったかぐらい・・・!」
「不満があるなら出て行っても構わないよ、とにかくここにもう美咲の席はない。」
「では残された私達はどうすればいいのですか!?」
「こっちで調整して二番隊か宮澤陽菜の隊に散ってもらうよ。」
「そんな突然・・・美咲さんに忠誠を誓ってここにいたのに・・・。」

美咲の脱退により残された隊は完全に分裂した。

紫炎を抜けた者。
美咲の行方を捜しに出た者。
二番隊に入った者。
陽菜の隊に入った者。

それぞれがそれぞれの道を歩み始めた瞬間だった。


ー同日深夜ー
・・・私は今、どこを歩いているのだろうか・・・・。
追っ手は振り切ったのだろうか・・・。

《紫炎》という光を無くした美咲は人目につかない暗がりを歩いていた。
隊はもういない、椿という強い後ろ盾もない。
当然美咲をスカウトしようという人間も多いが、それだけではなかった。

過去に美咲の隊に敗戦した者、美咲に負けた者、友人が美咲にやられた者・・・
多くの人間が美咲を恨み、今完全に力を無くしてしまった美咲を狙っていた。

やられるのも時間の問題だ・・・私の不良人生はここまでなのだろうか・・・。
引退も考えたが引退したところで状況は何も変わらない。

「・・・・今私は何ができるのだろうか・・・・。」

静かに天を仰いだ美咲は公園の草むらの中にドッと倒れた。
綺麗な星々が美しく輝いている。

このままじゃ襲われると分かっていながらも、身体はもう動かなかった。

「・・・・見つけましたよ。」

そんな言葉と共に上から見ていた星空を遮り美咲の顔を覗く者がいた。

それは隊の一番美咲を慕っていた一つ下の後輩の綾瀬千夏であった。

「千夏・・・どうしてこんなところに・・・ボロボロじゃん・・・。」
服は汚れ口から少し血を流しているのが美咲にはすぐ見て分かった。
「美咲さんの追っ手に引っかかっちゃいました、でも大丈夫です!」
ゴシゴシと服の袖で口を拭く千夏。

「私、紫炎抜けたよ・・・いや・・・クビになっちゃった。」
「そんなこと知ってますよ、ボスも詳しいことは話してくれませんでした。」
「だったらなんでこんなところに?こんな時間に危ないぞ?」
「一番危ないのは誰ですか?ほっとける訳ないじゃないですか・・・。」

千夏も同じように美咲の横に倒れた。
「一日中美咲さん探してたら疲れちゃいました、私も休ませてください。」
「私と一緒にいることがバレたら千夏もクビになっちゃうかもよ?」
「あはは!大丈夫ですよ、私も紫炎抜けましたから!」

笑って軽く言う千夏に驚きガバッと起き上がる美咲。
「紫炎を抜けたのか!?なんでそんなことを!?」
「そんなことって言われるとちょっとショックですよ。
 私がどれだけ美咲さんを慕っていたか分かってるくせに・・・。」

静かに横を向き美咲の顔を笑顔で見つめる千夏。
「いいのか・・・?千夏もでっかい夢持ってたじゃん・・・。」
「いいんです、その夢も美咲さんなしじゃ意味ないです。」
「じゃあ・・・これからどうするんだ?」
「そうですねぇ・・・とりあえずは美咲さんと再出発したいです。」
「もう何も残ってない私と一緒にか・・・・?」
「はい、そうです。また一歩ずつ進みましょう、一緒に。」

この時美咲の目にはいっぱいの涙が溜まっていた。
「地獄だぞ・・・?」
「地獄ですか、大変ですねぇ・・・じゃあ一緒に行きましょうよ。
 一人で歩くのも大変な地獄でも、二人ならきっと大丈夫です。
 一緒に歩かせてください!今までと一緒に!ねっ!美咲さん!!」

千夏は立ち上がり、美咲に手を伸ばす。
そして美咲もその手を取り立ち上がる。

「ほんと・・・こんなところまで大馬鹿だよ千夏は・・・。」
「あぁもう、美咲さんそんなボロボロ泣かないでくださいよ~!」

こうして、二人は闇夜の中へと消えて行った・・・。
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