Legend Girl！

第三十二闘：頂点に立つ者

翌日、陽菜はようやく目を覚ました。
４日も眠っている間に怪我等はほぼ回復した陽菜はすぐ紫炎に向かうことに。

紫炎のアジトはすっかり修繕し、ほとんど元通りになっていた。

敗北した二番隊は回復に努めながらも汚名返上に向け鍛錬を重ね、
椿はあの翌日から大怪我でありながら
かなりの無理をして最前線でアジトの守護や指導を行っていた。

その一方で美鬼も全面戦争においてはグループとして敗北し
《美鬼》としての存続も危ぶまれたが椿の恩赦で紫炎の傘下に入ることで
存続が許され怪我のあるものはゆっくりと療養しながらも
紫炎のアジトの守護などを行っていた。

そんな時のことだ。

「ダメだダメだ、今はまだ紫炎はそれどころではない！帰ってくれ！」
「僕紫炎に入りたいんです！」
「はぁ・・・だから今は忙しくてボスも出てこれないんだって！」

問答が繰り広げられているのはアジト正面入り口だった。
どうやら紫炎に入りたいという人間が現れたようだ。
全面戦争などに勝利し名を上げたグループにはたびたびこんなことがある。
だがとにかく今は納得してもらって出直してもらうしかないと説得を続ける。

各々が自覚をもって役目を果たし、一歩ずつ紫炎は回復に向かっていた。

「君が宮澤陽菜ちゃん・・・だね？」
道中、声をかけてきたのは優しそうだがガタイのいい男子だった。
「はい、そうですけど・・・どちら様で・・・。」
「ああいや、名乗るほどの者じゃないんだけどね！君の顔が見たかったんだ・・・。」

何故だろうか、陽菜はこの時この男に全てを見透かされているような
とてつもない戦意、いや・・・恐怖の様なものを感じ取っていた。

陽菜はとっさに身構える。

「ほぅ・・・俺を敵だと感じ取ったか、いい反応だ宮澤陽菜。
　黒銅の人間を何人も殺ったという噂は伊達ではなさそうだ・・・。」

「椿さんの敵ですね？これ以上近づかないでください！」

その男は“ただ立っているだけ”なのに陽菜にはとてつもない重圧を感じていた。
自然と呼吸も心拍も大きく乱れまるで身体が逃げろと言っているかのようだ。

「ま、ゆっくり深呼吸でもしろ・・・今お前に俺が自ら手を下す気はない。
　俺達が８人が全力なら・・・お前達紫炎は僅か“３０分”で落ちる。」

侮辱されているかのような気持ちになった陽菜は反論する。
「あなたが誰かは分かりませんが初対面のわりに言ってくれますね・・・
　紫炎はそんなに弱いと？椿さんはあなたなんかに負けない！！」

男は笑う。
「ははは！つくづく面白い女だ。弱い犬ほどよく吠えるとはよく言ったものよ！
　ならばさっさとこのクラスまで上がってこい！宮澤陽菜！そして紫炎！
　佐川椿に伝えろ、“頂上で待っている”とな・・・！」

そうとだけ言い残すと、男は高笑いしながら去って行った・・・。