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第二十五闘:夢現
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優しい朝日と共に、小鳥の美しいさえずりが陽菜に朝を告げる。
「・・・・・。」
昨夜の出来事はしっかり覚えている。
しかし陽菜には夢か現実か未だ分からない。
とりあえず凄まじいパンチをもらったところの痛みで陽菜は“生”を実感した。
グッと拳を握ってみる。
「何かが変わているようなことは・・・ない・・・。」
本当に契約なんて成立したのだろうか?
都合のいい夢を見ただけ?
それにしてはしっかり痛みが残っている。ぶつけたのか?
その時だった。
「よお。」
部屋の中から男性の声が陽菜には聞こえた。
明らかに父親の声ではない。
慌てて陽菜は侵入者と思わしき声に警戒に入る。
「待て待て俺だ、何をしてるんだお前は。」
よく聞くとそれは部屋の中からの声ではなかった。
「な・・・な・・・!?」
頭の中に響く声、それは紛れもなく例の“彼”だった。
しかしその声はこれまでとは全く違い、
恐ろしい悪魔のような声とは程遠くなっていた。
「あなた・・・もしかしてほむらなの・・・!?」
「まあな。」
この時を持って陽菜は昨夜のことが夢ではなかったことをようやっと実感する。
「なんでそんな綺麗な声に!?」
「さあな・・・。契約が成立したからじゃないか?」
心なしか口調も柔らかいように感じ意味が分からないことだらけの陽菜。
「お前には“夢”ってやつを見せてもらうことにした。
その代わりに俺はお前に力を貸す。間違いないな?」
「う・・・うん・・・!」
この力が遂に手に入ったんだ・・・!
じわじわと実感が出てくる陽菜は舞い上がるような気持ちだった。
「一つ、頼みたいことがあるんだがいいか?」
炎の突然の申し出、いったい何なのだろう。
陽菜はちょっとドキドキしながらもとりあえず聞いてみる。
「な、なに・・・。」
「俺をその紫炎とかいう組織に連れて行ってくれ。
佐川椿という奴と話をさせて欲しい。そしてあわよくば一戦交えさせてくれ。」
あまりにぶっ飛んだ申し出に陽菜は愕然とする。
「な!?何言ってるの!?全面戦争を前にそんなことできるわけ・・・!」
「俺を使う佐川椿という男との距離を推し量りたいだけだ・・・!!」
闘志をむき出しに炎は言う。
「それで戦ったとして椿さんが炎の言う強さに届いていなかった場合は・・・?」
「それはもちろん、紫炎という組織は俺がもらい受ける・・・!!」
とんでもない奴を味方にしてしまったのかも知れない。
陽菜は胃がキュッとなった・・・。
その後、陽菜は一旦制服に着替え朝食は取らずに家を出た。
「椿さんと会いたい・・・かぁ・・・!」
何の気なしに通学路を考え事をしながら歩く陽菜。
独り言がこぼれ落ちる。
「でも椿さんはうちのボスだし全面戦争を前に危険な真似をさせるわけには・・・。」
「何の話かな?」
「あ、いや・・・うちに炎っていう裏人格がいましてそれをやっと手懐けたというか
味方になってくれたんですけど椿さんに会いたいって言うんですよね・・・。
話がしたいっていうのはいいんですけど一戦交えたいとか言うんです・・・。」
「お、陽菜ちゃんついに例の裏人格を制御できるようになったんだね!!」
「ええ、まぁ・・・。そこまではよかったんですけど思いの外凄い人で・・・。」
「それで彼は僕と戦いたいって言うのかい?面白いねえ!ちょっと興味あるかな?」
「そうなんですよ僕と・・・ん?僕?」
陽菜がバッと横を向くと、そこには椿が立っていた。
「あっ!あれっ!?ボス!?なんでそんなところに!?」
「あはははは!遅いよ陽菜ちゃん!ずっと喋ってたじゃない!」
恥ずかしさで陽菜は顔がボッと赤くなる。
「ほむら君というのか・・・なるほどね、何にしてもおめでとう陽菜ちゃん。
全面戦争を前に達成してくれて我々としては大変ありがたい話だよ!」
「ありがとうございます。この力でお役に立てればと思います・・・。」
「うん、期待しているよ。さて、立ち話もなんだし
炎君も僕に話があるっていうしうちのアジトに行こうか・・・。」
こうして、二人は紫炎のアジトに向かった。
「・・・・・。」
昨夜の出来事はしっかり覚えている。
しかし陽菜には夢か現実か未だ分からない。
とりあえず凄まじいパンチをもらったところの痛みで陽菜は“生”を実感した。
グッと拳を握ってみる。
「何かが変わているようなことは・・・ない・・・。」
本当に契約なんて成立したのだろうか?
都合のいい夢を見ただけ?
それにしてはしっかり痛みが残っている。ぶつけたのか?
その時だった。
「よお。」
部屋の中から男性の声が陽菜には聞こえた。
明らかに父親の声ではない。
慌てて陽菜は侵入者と思わしき声に警戒に入る。
「待て待て俺だ、何をしてるんだお前は。」
よく聞くとそれは部屋の中からの声ではなかった。
「な・・・な・・・!?」
頭の中に響く声、それは紛れもなく例の“彼”だった。
しかしその声はこれまでとは全く違い、
恐ろしい悪魔のような声とは程遠くなっていた。
「あなた・・・もしかしてほむらなの・・・!?」
「まあな。」
この時を持って陽菜は昨夜のことが夢ではなかったことをようやっと実感する。
「なんでそんな綺麗な声に!?」
「さあな・・・。契約が成立したからじゃないか?」
心なしか口調も柔らかいように感じ意味が分からないことだらけの陽菜。
「お前には“夢”ってやつを見せてもらうことにした。
その代わりに俺はお前に力を貸す。間違いないな?」
「う・・・うん・・・!」
この力が遂に手に入ったんだ・・・!
じわじわと実感が出てくる陽菜は舞い上がるような気持ちだった。
「一つ、頼みたいことがあるんだがいいか?」
炎の突然の申し出、いったい何なのだろう。
陽菜はちょっとドキドキしながらもとりあえず聞いてみる。
「な、なに・・・。」
「俺をその紫炎とかいう組織に連れて行ってくれ。
佐川椿という奴と話をさせて欲しい。そしてあわよくば一戦交えさせてくれ。」
あまりにぶっ飛んだ申し出に陽菜は愕然とする。
「な!?何言ってるの!?全面戦争を前にそんなことできるわけ・・・!」
「俺を使う佐川椿という男との距離を推し量りたいだけだ・・・!!」
闘志をむき出しに炎は言う。
「それで戦ったとして椿さんが炎の言う強さに届いていなかった場合は・・・?」
「それはもちろん、紫炎という組織は俺がもらい受ける・・・!!」
とんでもない奴を味方にしてしまったのかも知れない。
陽菜は胃がキュッとなった・・・。
その後、陽菜は一旦制服に着替え朝食は取らずに家を出た。
「椿さんと会いたい・・・かぁ・・・!」
何の気なしに通学路を考え事をしながら歩く陽菜。
独り言がこぼれ落ちる。
「でも椿さんはうちのボスだし全面戦争を前に危険な真似をさせるわけには・・・。」
「何の話かな?」
「あ、いや・・・うちに炎っていう裏人格がいましてそれをやっと手懐けたというか
味方になってくれたんですけど椿さんに会いたいって言うんですよね・・・。
話がしたいっていうのはいいんですけど一戦交えたいとか言うんです・・・。」
「お、陽菜ちゃんついに例の裏人格を制御できるようになったんだね!!」
「ええ、まぁ・・・。そこまではよかったんですけど思いの外凄い人で・・・。」
「それで彼は僕と戦いたいって言うのかい?面白いねえ!ちょっと興味あるかな?」
「そうなんですよ僕と・・・ん?僕?」
陽菜がバッと横を向くと、そこには椿が立っていた。
「あっ!あれっ!?ボス!?なんでそんなところに!?」
「あはははは!遅いよ陽菜ちゃん!ずっと喋ってたじゃない!」
恥ずかしさで陽菜は顔がボッと赤くなる。
「ほむら君というのか・・・なるほどね、何にしてもおめでとう陽菜ちゃん。
全面戦争を前に達成してくれて我々としては大変ありがたい話だよ!」
「ありがとうございます。この力でお役に立てればと思います・・・。」
「うん、期待しているよ。さて、立ち話もなんだし
炎君も僕に話があるっていうしうちのアジトに行こうか・・・。」
こうして、二人は紫炎のアジトに向かった。
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