Legend Girl!

広瀬あかり

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第十闘:適正

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その後、陽菜は美咲に案内されどういう訳か放送室に入った。

「ここ放送室・・・ですよね?」
「確かにそうなんだけど放送室に用はないんだ。その奥、こっちこっち!」

促されるまま進むと、放送室の奥には小さな部屋があった。

「ここ!運動会の時しか使われないあまりに無駄な部屋なんだ。
 もったいないから今は我々が使わせてもらってるんだ・・・。
 さてと、とりあえず宮澤ちゃんの適性検査をさせてもらおうかな?」

そういうと、美咲は静かにファインティングポーズをとった。
嘘でしょ!?まさかの実戦形式!?と恐怖に震える陽菜。

「あ、ちょっとそんな露骨に怖がらないでよ!違う違う!
 私は何もしない。だから宮澤ちゃんは持てる力の全てで私に
 パンチやキックを打ってみて?倒すつもりで来ていいよ。」

「でもそんなことしたら痛いんじゃ・・・!」

「いいからほら!」

やるしかないと悟った陽菜は全力のパンチを打つ。

「はい!繋げて!キック!」

それから5分・・・陽菜はひたすらにパンチとキックを繰り返した。
その間、陽菜の攻撃で美咲の身体が揺らぐことは一度もなかった・・・。

「はぁっ!はぁ、はぁ・・・・疲れ・・・た・・・!」
膝に手をつき明らかに体力的に限界な陽菜。

美咲はペットボトルの水を笑顔で差しだした。

「はい、お水をどうぞ!お疲れ様。」
「あ・・・ありがとう・・・ございます。」

ごくごくと陽菜は勢いよく水を喉に流し込む。

「さて・・・とりあえず5分やってもらった訳だけど・・・。」

困ったような顔をした美咲は陽菜をとりあえず床に座らせて言った。

「あ、あまりに・・・適性が低すぎる。一般人にも及ばない・・・。」

何となく分かっていた。当たり前だ、喧嘩の経験などない。
もっと言えば運動も苦手だし勉強以外に得意なことなどない。

「このままだと、戦力外ということで紫炎を抜けてもらうことになる。」

入ったばかりだというのにクビの宣告を受けた陽菜は激しく取り乱す。

「待ってください、じゃあどうしたら・・・どうしたらいいですか!?」

クビ、それだけは嫌だった。

「そうだねぇ・・・とりあえずよし、ちょっと待ってね?」

そういうと、美咲は携帯を取り出しどこかに電話をかけた。

「もしもし、あたしだけどつばるん?」
「(つばるん・・・・?どちら様・・・?)」
「その呼び方やめろって?あははっ!幼稚園の頃からそう呼んでるじゃん!」

会話を聞く限りとても親しい間柄のようだ。

「今宮澤陽菜ちゃんの適性検査が終わったとこだよ!
 うーん、はっきり言ってこのままだとどこの隊に置いても
 使い物にならないかな。体力も攻撃力もまったくないよ、どうする?」

電話でボロクソに言われる陽菜であったが紛れもない事実・・・。
今は受け止めるしかなかった。
ギュッと唇を噛む。

「ふんふん・・・それでいいならそうするけど。
 うん、わかった。じゃあバイバイつばるん!」

電話を終え携帯をテーブルに置いた美咲。

「今、つばるん・・・じゃなかった椿と喋ったんだけどさあ・・・。」
「今のボスだったんですね!!?」
「あはは!びっくりした?つばるんは私がずっと昔から呼んでるあだ名なの!」
「幼馴染なんですね・・・。」

椿の話をするときは幸せそうに笑顔を見せる美咲。

「もしかして美咲さんって椿さんのこと・・・・。」
「うん、好きだよ!そりゃあもう誰よりも椿が好き!」

はっきりと言い切った美咲に陽菜は驚いた。

「あっ!違う違う!私と椿の話はいいの!」

照れくさそうに話を戻す美咲。
「椿からの指示で、3か月後以内に校内のランキング表に載ること。
 これが条件だって。出来なきゃ紫炎を去ってもらうよ!ってさ。
 (本当は紫炎を去ってもらうなんて一言も言ってなかったけど、
 こういうプレッシャーが起爆剤になったりするから言っておこう。)」

「ランキング表・・・。」

この学校ではランキングに載っている者は強いと証明されている。らしい・・・。

「1位から100位のランキング、3か月以内にここに入れれば
 宮澤ちゃんは椿に本当に認められることになるだろうね・・・。」

美咲の言葉でグッとやる気が出る陽菜。

「ちなみに私は2位、ここまで来るとかなりの強者認定されるよ。
 さぁ、どうする?2か月半、私が宮澤ちゃんを鍛えよう。
 残り半月で公式にランキング戦を行って勝てば無事に100位圏内には入れる。
 ただし時間がない、私の指導は厳しいけどそれでもやる?いや、やれる?」

自分の胸に手を置く陽菜。

「はいっ!やれます!!」

「うん、いい返事だ!くれぐれも・・・吐かないようにね?」
「え゛ぇ・・・。」

こうして、私の修行は始まった・・・。
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