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第六闘:夢
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「え・・・断ったのに殴ったりしてこないんですか?」
陽菜のその問いに、椿は笑う。
「あはは!殴られると思った?そんなことしないよー!あくまで勧誘だからね!
鍛えれば筋はかなりいいと思ったんだけど残念だなあ。理由を聞いてもいい?」
理由、そんなものは最初から決まっている。
レベルの高い高校に進むためだ、それ以外はない。
「理由・・・ですか。私は、何としてでも
明解高校に進まなくてはならないので…。
それに、私は椿さんが思っているように
喧嘩なんてしたことないし強くも、ないので・・・。
今は、進学に向けて信頼できる先生達と
勉強を頑張らないといけないかなって・・・。
お母さんにも、これ以上迷惑をかけるわけには・・・。
それに・・・不良は、怖いので・・・。」
それを聞いた椿は、陽菜に背を向け
ゆっくりと立ち上がり部屋の全てのブラインドを下げる。
「ねーねー、二人とも映像出してもらえるかな?」
薄暗くなった部屋に、プロジェクタースクリーンに映る
PCのディスプレイだけが光る。
迅速に準備を進める遥と由香。
それからすぐに映像はスクリーンに映された。
「何これ・・・リアルタイム映像・・・?職員室・・・・?」
そこに映っていたのは天井からの視点の職員室だった。
担任の真鍋と教頭が話をしているようだが、音声はない。
「音出してよ、これじゃ何の意味もない。」
「は、はい!失礼しました!」
急いで設定を切り替える遥。
《ですから!早く宮澤陽菜を救出しないと!!》
音声はすぐにはっきりと聞こえるようになった。
《しかしねぇ・・・相手はあの紫炎だろう?どうやって・・・。》
先生達が自分の話をしている、真鍋先生が私を心配してくれている・・・。
安心感と共に、やはり信頼できる先生だと陽菜には思えた。
《何とかしてください教頭!警察を呼ぶなり何なり出来るでしょう!
アレはうちのクラスの平均学力を上げる貴重な駒なんですよ!
今あの駒を紫炎に奪われる訳にはいかない!アレは私の大事な道具なんです!!》
は・・・・・・?
《分かっている、しかし警察なんて呼んでこの学校の現状をどう説明する?
今更たった一人道具が消えたところで・・・なぁ・・・。
ま、宮澤に勇気があれば自分で戻ってくるでしょう真鍋先生。
では、これ以上はいいですね?私も暇じゃないんですよ・・・。》
道具・・・?駒・・・・?
教頭はカメラ前から立ち去り、映像はここでストップした。
呆然と立ち尽くす陽菜。
「これが君の言う、信頼できる先生かい?・・・じゃあ次に行こうか。」
カチッというクリック音と共に映像は別の場所に切り替わった。
《宮澤さん今日来ないねー!》
《俺朝見たよ、制服は来てたけど学校とは逆の方向に歩いて行ったよ!
しかも横にいたのは深山と山口!紫炎の馬鹿連中だよ!
昨日の大暴れの一件であいつらに目をつけられたに違いない!!》
《うっそー、宮澤さんがぁ?あり得なくない?超地味じゃん!》
それは、陽菜の教室の映像だった。
深山と山口とは、遥と由香のことだ。
《宮澤はもうダメじゃね?紫炎と繋がってるってだけで裏切りもんでしょ。》
《陽菜はそんな子じゃないよー・・・。》
《出た、取り巻きのがり勉!早く切り捨てた方がいいぞお前も!》
《そ・・・そんなこと・・・!》
《俺らはもうあいつはあっち側の人間に成り下がったと思ってる。》
《・・・何にしても関わらない方が得策よね・・・。》
《昨日の大暴れで大体の察しはついてたけどね。》
自然と涙があふれ出る陽菜。
映像はここで終わった。
「これが現実だよ、陽菜ちゃん。君はどうしたい?
今言われたことの大体は僕らのせいだけど・・・。
このふざけた学校に戻りたいと思うかい?」
静かに首を横に振る陽菜。
「でも・・・でも・・・!不良になんて・・・!!」
「陽菜ちゃんは何か、夢や目標があって明解高校に行こうと思ってるのかな?」
突然の椿の質問に、固まる陽菜。
「え・・・?」
「明確な目標があるんなら止めたりしないんだけど、どうかな?」
すぐには出てこなかった、当然である。そんなものは存在しないのだから。
「・・・やっぱり、まだなさそうだね。」
ニコッと陽菜の顔を見つめる椿。
「僕にはそれが、夢があるんだ。でっかい奴。」
陽菜はふと、聞いてみたくなった。不良の夢って・・・何だろう。
「聞いてもいいですか?」
「うん、それはね。この国の、日本の不良の統一。」
その言葉自体は不良がよく言う全国制覇等のありきたりな台詞だった。
しかしこの時、陽菜は不思議と惹かれた。佐川椿という男に。
もっとこの人を知りたいと、そう思ってしまったのだ。
「って言っても、まだそれに比べればこんな遥かに小さい
学校一つですら統一できてないんだけどね!あははっ!」
夢なんて一つもない私と違って、
この人は不良という外れた道で国を取ろうとしてる。
それは、なんて大きいのだろう・・・。
この人に着いていったら・・・この人の夢の果てが・・・見られるだろうか・・・。
あ、待って・・・私今、何を言おうとしてる・・・?
「さっきの言葉を撤回します・・・やっぱり私を・・・仲間に入れてください・・・!!」
こうして私は、勢いで紫炎の一員となってしまった。
陽菜のその問いに、椿は笑う。
「あはは!殴られると思った?そんなことしないよー!あくまで勧誘だからね!
鍛えれば筋はかなりいいと思ったんだけど残念だなあ。理由を聞いてもいい?」
理由、そんなものは最初から決まっている。
レベルの高い高校に進むためだ、それ以外はない。
「理由・・・ですか。私は、何としてでも
明解高校に進まなくてはならないので…。
それに、私は椿さんが思っているように
喧嘩なんてしたことないし強くも、ないので・・・。
今は、進学に向けて信頼できる先生達と
勉強を頑張らないといけないかなって・・・。
お母さんにも、これ以上迷惑をかけるわけには・・・。
それに・・・不良は、怖いので・・・。」
それを聞いた椿は、陽菜に背を向け
ゆっくりと立ち上がり部屋の全てのブラインドを下げる。
「ねーねー、二人とも映像出してもらえるかな?」
薄暗くなった部屋に、プロジェクタースクリーンに映る
PCのディスプレイだけが光る。
迅速に準備を進める遥と由香。
それからすぐに映像はスクリーンに映された。
「何これ・・・リアルタイム映像・・・?職員室・・・・?」
そこに映っていたのは天井からの視点の職員室だった。
担任の真鍋と教頭が話をしているようだが、音声はない。
「音出してよ、これじゃ何の意味もない。」
「は、はい!失礼しました!」
急いで設定を切り替える遥。
《ですから!早く宮澤陽菜を救出しないと!!》
音声はすぐにはっきりと聞こえるようになった。
《しかしねぇ・・・相手はあの紫炎だろう?どうやって・・・。》
先生達が自分の話をしている、真鍋先生が私を心配してくれている・・・。
安心感と共に、やはり信頼できる先生だと陽菜には思えた。
《何とかしてください教頭!警察を呼ぶなり何なり出来るでしょう!
アレはうちのクラスの平均学力を上げる貴重な駒なんですよ!
今あの駒を紫炎に奪われる訳にはいかない!アレは私の大事な道具なんです!!》
は・・・・・・?
《分かっている、しかし警察なんて呼んでこの学校の現状をどう説明する?
今更たった一人道具が消えたところで・・・なぁ・・・。
ま、宮澤に勇気があれば自分で戻ってくるでしょう真鍋先生。
では、これ以上はいいですね?私も暇じゃないんですよ・・・。》
道具・・・?駒・・・・?
教頭はカメラ前から立ち去り、映像はここでストップした。
呆然と立ち尽くす陽菜。
「これが君の言う、信頼できる先生かい?・・・じゃあ次に行こうか。」
カチッというクリック音と共に映像は別の場所に切り替わった。
《宮澤さん今日来ないねー!》
《俺朝見たよ、制服は来てたけど学校とは逆の方向に歩いて行ったよ!
しかも横にいたのは深山と山口!紫炎の馬鹿連中だよ!
昨日の大暴れの一件であいつらに目をつけられたに違いない!!》
《うっそー、宮澤さんがぁ?あり得なくない?超地味じゃん!》
それは、陽菜の教室の映像だった。
深山と山口とは、遥と由香のことだ。
《宮澤はもうダメじゃね?紫炎と繋がってるってだけで裏切りもんでしょ。》
《陽菜はそんな子じゃないよー・・・。》
《出た、取り巻きのがり勉!早く切り捨てた方がいいぞお前も!》
《そ・・・そんなこと・・・!》
《俺らはもうあいつはあっち側の人間に成り下がったと思ってる。》
《・・・何にしても関わらない方が得策よね・・・。》
《昨日の大暴れで大体の察しはついてたけどね。》
自然と涙があふれ出る陽菜。
映像はここで終わった。
「これが現実だよ、陽菜ちゃん。君はどうしたい?
今言われたことの大体は僕らのせいだけど・・・。
このふざけた学校に戻りたいと思うかい?」
静かに首を横に振る陽菜。
「でも・・・でも・・・!不良になんて・・・!!」
「陽菜ちゃんは何か、夢や目標があって明解高校に行こうと思ってるのかな?」
突然の椿の質問に、固まる陽菜。
「え・・・?」
「明確な目標があるんなら止めたりしないんだけど、どうかな?」
すぐには出てこなかった、当然である。そんなものは存在しないのだから。
「・・・やっぱり、まだなさそうだね。」
ニコッと陽菜の顔を見つめる椿。
「僕にはそれが、夢があるんだ。でっかい奴。」
陽菜はふと、聞いてみたくなった。不良の夢って・・・何だろう。
「聞いてもいいですか?」
「うん、それはね。この国の、日本の不良の統一。」
その言葉自体は不良がよく言う全国制覇等のありきたりな台詞だった。
しかしこの時、陽菜は不思議と惹かれた。佐川椿という男に。
もっとこの人を知りたいと、そう思ってしまったのだ。
「って言っても、まだそれに比べればこんな遥かに小さい
学校一つですら統一できてないんだけどね!あははっ!」
夢なんて一つもない私と違って、
この人は不良という外れた道で国を取ろうとしてる。
それは、なんて大きいのだろう・・・。
この人に着いていったら・・・この人の夢の果てが・・・見られるだろうか・・・。
あ、待って・・・私今、何を言おうとしてる・・・?
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