Legend Girl!

広瀬あかり

文字の大きさ
上 下
3 / 66

第三闘:覚醒

しおりを挟む
この学校において、「金を貸してくれ」という言葉を投げかけられた場合
“貸す”ではなく“金をよこせ” ”返す気つもりはまったくない”という意味になる。
そして上記の通りそれはお願いから命令へと意味を変える。
数少ない普通の生徒はトラブルを避けるため
暗黙の了解で財布のお金を全て献上するのが一般的である。

陽菜も無論それは承知していた。
進学のためなら仕方ない、そう自らに言い聞かせ財布を探す。

教室からはトラブルを避けたい生徒たちが一斉に飛び出していく姿が見える。
この時、一人教室に取り残された陽菜はふと色々なことを考えてしまった。

金髪の男はじっと待っているが陽菜の行動の遅さに苛立ちを見せ始める。

「おい!早くしろよこのくそアマ!!」

このままでいいのだろうか?一生この学校はこうやって進んでいくのか?

私もこうやってずっと社会不適合者に負けを認めて生きていくのか?

おかしいって分かってるのに何も出来ない。

何もできない?ううん違う・・・。私は《何もしようとしていないだけ》


怒りに身を任せ陽菜の胸倉を荒々しく掴む男。
「いい加減にしとけよコラ・・・さっさと金出せや!!!」
この時、男が陽菜の顔を睨むと焦点の合っていない虚ろな目で
口だけが小さく動いているのが分かった。何かを言っている。

「何か言いてェことがあるなら言ってみろや!!」

この騒ぎに廊下からはクラスメイトや
他のクラスの野次馬が心配そうに見つめている。
しかし、“誰一人として陽菜を助けようとはしない”

ぶつぶつぶつぶつとなにかを呟き続ける陽菜。
「な、なんなんだよこいつ気持ちわりぃな!!!」

バキィッ!

鈍い音が教室に響き渡る。
男は激しく陽菜を激しく殴り飛ばした。
陽菜が飛ぶと同時に教室の机や椅子も激しい音を立てて倒れ
廊下で見ていた連中も悲鳴を上げ一目散に逃げていく。

床に倒れた陽菜。
口や鼻からは流血し制服も少し赤く染まる。
ゆっくりと陽菜はゆっくりと立ち上がった。
まるでゾンビでも見ているかのように・・・。

「なんだ・・・こいつ・・・。」

その瞬間のことだった。

ドゴン!!

男の顔の横を通り何かが黒板に激しくぶつかった。
・・・教室の机だ。

「は・・・?」

状況がまったく理解できない男。

次々と椅子や机が物凄い勢いで飛んでくる。
「ちょ、ちょっと待ててめー何して・・・!!」

この時、陽菜の呟いていたことがやっと男の耳にも聞き取れた。
「コロシテヤル」陽菜はそうひたすらに連呼していたのだ。

まるで機械でも使っているかのようにひたすらに激しく飛んでくる机や椅子。
中学生の女の子の力のそれではなかった。物凄い勢いで投げ続ける陽菜。
ガシャアアアアンと窓ガラスも割れ始める。
「ひ、ひいいいいいい!!」

うずくまり頭を抱え身を守る体制の男は震えている。

男の頭上で陽菜は机を片手で軽く持ち、大きく振りかぶった。
「バイバイ・・・。」

まさしく男の頭に振り下ろされようというその時、
颯爽と机をガッと掴む者が現れた。
「あはは、すごいね君!でもさすがにやりすぎじゃないかな、彼死んじゃうよ?」

ゆっくりとその人間に顔を向ける陽菜。
「うわーお、こわいこわい。かわいい顔が台無しだよ?」

陽菜は傍にあった机をガッと掴みその男に投げつける。
「おっとっと・・・危ない危ない。」

軽くそれを避けた男は陽菜に言う。

「うん、今は見境なしだけどいい人材だね。君の様な兵がうちに欲しかったんだ。
 今は多分君に何を言っても通じないだろうから
   またうちの別の奴を勧誘に寄越すよ。 
 とりあえず今は君も疲れただろうから一回休もうか!」

ドスッ・・・

鳩尾に一発パンチをもらった陽菜はその場で気を失い倒れた。

「ああ・・・君はどこのグループの下っ端かな?君も処分しとこうかな・・・。」
「あ、あんたは・・・!うわあああああ!!」

こうして、この一件は激しくもあっという間に幕を閉じた・・・。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

レインボーサイクロン

kobby
青春
何気ない日常、少年は日々憂鬱だった。 「俺は、そこら辺にいる奴らとは違うんだ。」 どこにでもいるさえない少年が、ある日をきっかけに夢や希望に向かおうとするそんな物語。

GIVEN〜与えられた者〜

菅田刈乃
青春
囲碁棋士になった女の子が『どこでもドア』を作るまでの話。

バッサリ〜由紀子の決意

S.H.L
青春
バレー部に入部した由紀子が自慢のロングヘアをバッサリ刈り上げる物語

僕は 彼女の彼氏のはずなんだ

すんのはじめ
青春
昔、つぶれていった父のレストランを復活させるために その娘は 僕等4人の仲好しグループは同じ小学校を出て、中学校も同じで、地域では有名な進学高校を目指していた。中でも、中道美鈴には特別な想いがあったが、中学を卒業する時、彼女の消息が突然消えてしまった。僕は、彼女のことを忘れることが出来なくて、大学3年になって、ようやく探し出せた。それからの彼女は、高校進学を犠牲にしてまでも、昔、つぶされた様な形になった父のレストランを復活させるため、その思いを秘め、色々と奮闘してゆく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

乙男女じぇねれーしょん

ムラハチ
青春
 見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。 小説家になろうは現在休止中。

処理中です...