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成長する王女
学院トーナメント準決勝
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マリーが控え室に戻ると、すぐに三人の上級生に捕まった。
「勝ったね!」
「可愛い上に強いなんて、すごい!」
「ほら、こっちおいで!」
上級生相手なので、強く言うことが出来ないマリーは、不本意ながらも上級生三人にもみくちゃにされていた。
「続いて、第二試合、三年生ミリス・ラトバーナ対六年生ザリウス・ガルガニアの試合よ。準備して」
名前を呼ばれた禿頭の男子とマリーを可愛がっていた金髪ポニーテール女子が動き出す。
「はぁ、勝てるかな? マリーちゃん、またね」
ミリスは、マリーに手を振って控え室から出て行った。
「皆さんは、試合を観にいかないんですか?」
マリーは、他の二人が、その場から動こうとしないので、そう訊いた。
「ここにも遠隔投影魔法で、映せるから」
そう言って、二人が白い壁を指さしたので、そちらを見ると、試験の時の様に闘技場の様子が映し出された。だが、マリーは、そちらではなく、その映像を投影しているものに目がいった。
「あっ、遠影機だ。あれで映してたんだ」
「おぉ……さすがは、大賢者様の娘さんだね」
「魔道具は、気になっちゃう感じ?」
「えっと……はい」
少し照れながら返事をすると、
「あ~ん! 可愛い!」
「本当に、可愛いすぎ!」
二人から抱きしめられ、頬を触られるなどされる。最近リリーにされる事ではあるのだが、ここまで激しくはないので、マリーも戸惑っていた。
そんな中で、次の試合を観る。
「すごい。あの人の動き、異常だ」
「ああ、ザリウス先輩ね。今のところ、この学園で、一番強い生徒だよ」
「確か、去年も優勝してましたよね?」
「うん、その前までも、ずっと準優勝だった」
マリーは、少し疑問に思うことがあった。ザリウスは、立ち回りなども含めて、学生離れしている。そんな人が、一昨年まで準優勝で止まっていたということに。
「ん? 一昨年?」
マリーは、自分で少し考えて、何かが引っかかった。少しの間、考え続けてある事を思い出す。
「そうだ……一昨年まで先生が在学していたんだった……」
「先生? ああ、カレナ様の事ね」
「!?」
マリーは、カレナのことを様付けで呼んだことに驚いた。
「様?」
「そう。あの方は、天上人のような方だったからね。前人未踏の六年連続優勝に、六年間連続学年トップを達成したの。まさに、才色兼備の言葉にふさわしい方だったよ。ファンクラブも出来ているしね。マリーちゃんの担任をしてるんでしょ? 本当に羨ましい……」
上級生が語り終えると同時に、試合が終了した。
「終わったみたい。さすがに、三年生じゃ、ザリウス先輩の相手は厳しかったようだね。でも、健闘した方かな?」
マリーが映像を見る限りでは、ザリウスに怪我は一切無い。でも、健闘した方ということは、試合時間が長い方だったということだろう。
「次の試合も、すぐに行うから準備して。四年生サイラ・カルバール対二年生ローナ・ベイルの試合だからね」
ドアから顔だけ覗かせた先生がそう言うと、マリーを捕まえていた二人が立ち上がった。
「そうだった。私がサイラね」
「私がローナだよ」
茶髪の方がサイラで、赤茶の方がローナというらしい。
「じゃあ、頑張ってくるね」
「私が勝つからね」
サイラとローナは、互いに火花を散らしていた。そして、二人と入れ替わりに、ザリウスが控え室に入ってくる。
「…………」
ザリウスは、マリーに目礼すると、さっきと同じ壁際で腕を組んで寄りかかった。ずっと黙ったままだが、マリーは、不思議と気まずくなかった。
そして、サイラとローラの試合が始まる。激しい魔法の撃ち合いになったが、勝利したのは五年生のサイラだった。ローナは、一歩及ばずと言ったところだった。
「マ~リ~ちゃ~ん!!」
控え室に帰ってきたサイラは、真っ先にマリーに抱きつく。
(何でこんなに可愛がられているんだろう……?)
マリーはされるがままになりながら、そう考えずにはいられなかった。
「は~い。次の試合だけど、くじ引きで対戦相手決めるから、この箱から紙を引いて」
審判役の先生が箱を持ってきて、控え室に入ってくる。マリー達は先生の元に歩いて行き、箱から紙を取り出す。そして、折りたたまれている紙を広げて中を見る。
「赤い印がありました」
マリーは、先生に見えるように掲げる。
「あっ! 私もあった!」
サイラも赤い印が付いた紙を引いたようだった。ということは……
「じゃあ、マリーさんとサイラさんの試合で、ザリウスくんは、シード枠ね」
「……分かった」
ザリウスは、もはや定位置となった壁際に移動する。
「二人は、一時間後に試合だから、そのつもりで準備しておいてね」
先生は、それだけ言うと、控え室から去って行った。
「一時間か……まぁ、魔力も回復するだろうし、大丈夫かな。マリーちゃんは、どこか行くの?」
「えっと、ここでゆっくりしておこうと思います」
今外に出ても、やることもないので、マリーは控え室に留まっておくことにした。
「じゃあ、私もここにいよっと。これ食べる?」
サイラは、控え室に何故か常備されているお菓子を取り出して、マリーに見せる。
「あっ、頂きます」
マリーは、サイラからお菓子を受け取り、二人で少し話ながら、お菓子を食べて控え室で過ごした。
────────────────────────
一時間後。
「は~い。じゃあ、二人の試合を始めるよ。準備して」
先生に言われて、マリーとサイラは、控え室から闘技場に向かう。
「遠慮しないでいいからね。全力で掛かってきて」
「分かりました。全力で行きます!」
マリーとサイラは、闘技場の所定の位置に着く。
『では、学年トーナメント準決勝、はじめ!』
「『剣舞・五重奏』!!」
マリーは、開始の合図と共に、五本の剣を飛ばす。
「それが、お得意の魔法だね。『嵐壁』!」
サイラを中心とした嵐の壁が現れる。風魔法の上位魔法である嵐魔法の一つだ。風壁と違い、全方向からの攻撃を防ぐ事が出来る上、その強度も高い。
「『炎弾・三連』」
剣を弾かれてしまったマリーは、少しだけ剣を遠ざけながら、炎の弾を三発放つ。風の勢いに、炎が巻き込まれて、火災旋風のようになった。
「考えたね。自分の魔法が自分を苦しめる結果になっちゃった。でも、『豪雨』!!」
サイラは、頭上から雨を降らせて鎮火させる。その結果、闘技場内が水蒸気に包まれてしまう。
「見えない……なら!!」
マリーは、五本の剣をそれぞれ回転させて放射状に飛ばしていく。しかし、
「当たってない?」
ほとんどどこにいても当たるはずなのだが、マリーの剣は、サイラに当たることはなかった。
「『地震』」
マリーが、サイラの気配を探っていると、いきなり地面が揺れる。
「おっとと……」
何とか、転ぶことはなかったが、少し体勢を崩してしまった。
「そこ! 『嵐弾』!」
マリー目掛けて、嵐の弾が飛んでくる。下位魔法である風弾よりも密度の濃い嵐の弾は、セレナの貫通・暴嵐とほぼ同じような威力を持っている。
「ヤバい! 『剣唄・夜想曲』!!」
マリーの頭上で五本の剣が回転し、静かな歌が響き始めた。そして、マリーの周りが微かに薄暗くなる。
そして、サイラの嵐の弾は、マリーの夜想曲に触れるといきなり勢いが削がれ消えていった。
「えっ!? 嘘!?」
サイラは、自分の放った嵐の弾が止められた事に驚愕する。
「今度は、こっちです! 『剣唄・増幅』!!」
五本中三本が魔法陣を描く。
『起動』
マリーは、風により速度を上げてサイラに突撃する。
「近づけば勝てるとでも! 『!氷剣《アイスソード》』!」
サイラは、氷の剣を生み出す。それを見たマリーは、先に仕掛けておくことにした。
「『稲妻・五連続』!!」
上位魔法に匹敵する威力を持った稲妻が、サイラに向かって飛んでいく。
「『風弾《ウィンドバレット》』」
サイラは、自分自身に風の弾をぶつけ、その場から移動することで、稲妻を避ける。そして、その勢いを殺さないようにしながら、弧を描くようにマリーに接近する。
「はぁっ!」
サイラが、氷の剣を振う。その動きは、およそ素人のものとは思えない動きだった。マリーは、余っている二本の剣で防いだ。
「うわっ! 剣も使えるんですか!?」
「魔法だけじゃだめだと思ったからね」
マリーは、なんとかサイラの剣を自分の剣で防いでいる。いつもは、ここまで接近させない様にしているので、いざここまで接近されると対応が難しくなるようだ。
(この距離だと、剣をうまく使えない。下手したら自分にも当たるかもしれないし……)
「もう一本! 『氷剣』!」
マリーの剣の数に、一本では分が悪いと思ったのか、サイラは剣を増やした。
「こうなったら、『短剣舞・五重奏』!」
マリーは、剣だけでなく短剣を飛ばす。
「細かい操作なら、こっちの方がやりやすい!」
マリーは、短剣と剣を操って、サイラに攻撃していく。
「これ以上増えるの!?」
短剣が増えた事によって、サイラは、防戦一方になってしまった。
「『嵐壁《ストームウォール》』!」
このまま剣で弾き続けるのは、厳しいと感じ、最初に使ったのと同じ嵐の壁を生み出した。
「これだと、さっきと同じ事になっちゃう……なら、出来るか分からないけど!」
マリーは、剣を魔法鞄に戻し、短剣も自分の周りに戻した。
「『短剣舞《ダガーダンス》・十重奏《デクテット》』!」
そして、短剣の数を増やす。
「『短剣唄《ダガーソング》・交響曲《シンフォニー》』!」
リンとの準決勝やアルとの決勝で使った虹色の光の縮小版をサイラに向かって放つ。
「うぐっ!」
嵐の壁により、姿を確認出来ないので、正確にサイラを穿つことは、出来ないかと思われていたのだが、運良くサイラに当てる事が出来た。
「これが例の分解する光か……今見て、ようやく分かったよ。全ての属性を合わせた技だね。相反する属性が複数重なることで……そういう結果が……生まれるんだ……初めて知った……よ……」
サイラは、失い掛ける意識を必死で繋ぎ止めながら、初めて実際に見るマリーの技に少し興奮していた。
「これだと……生半可な技じゃ……防ぐ事は……出来なさそう……だね……次は……防ぐよ……」
まだ戦えると思われたサイラだったが、それを最後に、意識を失った。
『そこまで! 勝者一年生マリー・ラプラス!』
『うおおおおおおおおおお!!』
闘技場が、観客の歓声に包まれる。
「ふぅ、運良く勝てて良かった。さすがに、魔力を全損するわけにもいかないし」
マリーは勝てたことにホッとしながら、控え室の方に戻っていく。
『学院トーナメント決勝戦は、二時間後に始まるので、それまで休憩!』
ここから、二時間の休憩が挟まる。残すは、決勝のみとなった。
「勝ったね!」
「可愛い上に強いなんて、すごい!」
「ほら、こっちおいで!」
上級生相手なので、強く言うことが出来ないマリーは、不本意ながらも上級生三人にもみくちゃにされていた。
「続いて、第二試合、三年生ミリス・ラトバーナ対六年生ザリウス・ガルガニアの試合よ。準備して」
名前を呼ばれた禿頭の男子とマリーを可愛がっていた金髪ポニーテール女子が動き出す。
「はぁ、勝てるかな? マリーちゃん、またね」
ミリスは、マリーに手を振って控え室から出て行った。
「皆さんは、試合を観にいかないんですか?」
マリーは、他の二人が、その場から動こうとしないので、そう訊いた。
「ここにも遠隔投影魔法で、映せるから」
そう言って、二人が白い壁を指さしたので、そちらを見ると、試験の時の様に闘技場の様子が映し出された。だが、マリーは、そちらではなく、その映像を投影しているものに目がいった。
「あっ、遠影機だ。あれで映してたんだ」
「おぉ……さすがは、大賢者様の娘さんだね」
「魔道具は、気になっちゃう感じ?」
「えっと……はい」
少し照れながら返事をすると、
「あ~ん! 可愛い!」
「本当に、可愛いすぎ!」
二人から抱きしめられ、頬を触られるなどされる。最近リリーにされる事ではあるのだが、ここまで激しくはないので、マリーも戸惑っていた。
そんな中で、次の試合を観る。
「すごい。あの人の動き、異常だ」
「ああ、ザリウス先輩ね。今のところ、この学園で、一番強い生徒だよ」
「確か、去年も優勝してましたよね?」
「うん、その前までも、ずっと準優勝だった」
マリーは、少し疑問に思うことがあった。ザリウスは、立ち回りなども含めて、学生離れしている。そんな人が、一昨年まで準優勝で止まっていたということに。
「ん? 一昨年?」
マリーは、自分で少し考えて、何かが引っかかった。少しの間、考え続けてある事を思い出す。
「そうだ……一昨年まで先生が在学していたんだった……」
「先生? ああ、カレナ様の事ね」
「!?」
マリーは、カレナのことを様付けで呼んだことに驚いた。
「様?」
「そう。あの方は、天上人のような方だったからね。前人未踏の六年連続優勝に、六年間連続学年トップを達成したの。まさに、才色兼備の言葉にふさわしい方だったよ。ファンクラブも出来ているしね。マリーちゃんの担任をしてるんでしょ? 本当に羨ましい……」
上級生が語り終えると同時に、試合が終了した。
「終わったみたい。さすがに、三年生じゃ、ザリウス先輩の相手は厳しかったようだね。でも、健闘した方かな?」
マリーが映像を見る限りでは、ザリウスに怪我は一切無い。でも、健闘した方ということは、試合時間が長い方だったということだろう。
「次の試合も、すぐに行うから準備して。四年生サイラ・カルバール対二年生ローナ・ベイルの試合だからね」
ドアから顔だけ覗かせた先生がそう言うと、マリーを捕まえていた二人が立ち上がった。
「そうだった。私がサイラね」
「私がローナだよ」
茶髪の方がサイラで、赤茶の方がローナというらしい。
「じゃあ、頑張ってくるね」
「私が勝つからね」
サイラとローナは、互いに火花を散らしていた。そして、二人と入れ替わりに、ザリウスが控え室に入ってくる。
「…………」
ザリウスは、マリーに目礼すると、さっきと同じ壁際で腕を組んで寄りかかった。ずっと黙ったままだが、マリーは、不思議と気まずくなかった。
そして、サイラとローラの試合が始まる。激しい魔法の撃ち合いになったが、勝利したのは五年生のサイラだった。ローナは、一歩及ばずと言ったところだった。
「マ~リ~ちゃ~ん!!」
控え室に帰ってきたサイラは、真っ先にマリーに抱きつく。
(何でこんなに可愛がられているんだろう……?)
マリーはされるがままになりながら、そう考えずにはいられなかった。
「は~い。次の試合だけど、くじ引きで対戦相手決めるから、この箱から紙を引いて」
審判役の先生が箱を持ってきて、控え室に入ってくる。マリー達は先生の元に歩いて行き、箱から紙を取り出す。そして、折りたたまれている紙を広げて中を見る。
「赤い印がありました」
マリーは、先生に見えるように掲げる。
「あっ! 私もあった!」
サイラも赤い印が付いた紙を引いたようだった。ということは……
「じゃあ、マリーさんとサイラさんの試合で、ザリウスくんは、シード枠ね」
「……分かった」
ザリウスは、もはや定位置となった壁際に移動する。
「二人は、一時間後に試合だから、そのつもりで準備しておいてね」
先生は、それだけ言うと、控え室から去って行った。
「一時間か……まぁ、魔力も回復するだろうし、大丈夫かな。マリーちゃんは、どこか行くの?」
「えっと、ここでゆっくりしておこうと思います」
今外に出ても、やることもないので、マリーは控え室に留まっておくことにした。
「じゃあ、私もここにいよっと。これ食べる?」
サイラは、控え室に何故か常備されているお菓子を取り出して、マリーに見せる。
「あっ、頂きます」
マリーは、サイラからお菓子を受け取り、二人で少し話ながら、お菓子を食べて控え室で過ごした。
────────────────────────
一時間後。
「は~い。じゃあ、二人の試合を始めるよ。準備して」
先生に言われて、マリーとサイラは、控え室から闘技場に向かう。
「遠慮しないでいいからね。全力で掛かってきて」
「分かりました。全力で行きます!」
マリーとサイラは、闘技場の所定の位置に着く。
『では、学年トーナメント準決勝、はじめ!』
「『剣舞・五重奏』!!」
マリーは、開始の合図と共に、五本の剣を飛ばす。
「それが、お得意の魔法だね。『嵐壁』!」
サイラを中心とした嵐の壁が現れる。風魔法の上位魔法である嵐魔法の一つだ。風壁と違い、全方向からの攻撃を防ぐ事が出来る上、その強度も高い。
「『炎弾・三連』」
剣を弾かれてしまったマリーは、少しだけ剣を遠ざけながら、炎の弾を三発放つ。風の勢いに、炎が巻き込まれて、火災旋風のようになった。
「考えたね。自分の魔法が自分を苦しめる結果になっちゃった。でも、『豪雨』!!」
サイラは、頭上から雨を降らせて鎮火させる。その結果、闘技場内が水蒸気に包まれてしまう。
「見えない……なら!!」
マリーは、五本の剣をそれぞれ回転させて放射状に飛ばしていく。しかし、
「当たってない?」
ほとんどどこにいても当たるはずなのだが、マリーの剣は、サイラに当たることはなかった。
「『地震』」
マリーが、サイラの気配を探っていると、いきなり地面が揺れる。
「おっとと……」
何とか、転ぶことはなかったが、少し体勢を崩してしまった。
「そこ! 『嵐弾』!」
マリー目掛けて、嵐の弾が飛んでくる。下位魔法である風弾よりも密度の濃い嵐の弾は、セレナの貫通・暴嵐とほぼ同じような威力を持っている。
「ヤバい! 『剣唄・夜想曲』!!」
マリーの頭上で五本の剣が回転し、静かな歌が響き始めた。そして、マリーの周りが微かに薄暗くなる。
そして、サイラの嵐の弾は、マリーの夜想曲に触れるといきなり勢いが削がれ消えていった。
「えっ!? 嘘!?」
サイラは、自分の放った嵐の弾が止められた事に驚愕する。
「今度は、こっちです! 『剣唄・増幅』!!」
五本中三本が魔法陣を描く。
『起動』
マリーは、風により速度を上げてサイラに突撃する。
「近づけば勝てるとでも! 『!氷剣《アイスソード》』!」
サイラは、氷の剣を生み出す。それを見たマリーは、先に仕掛けておくことにした。
「『稲妻・五連続』!!」
上位魔法に匹敵する威力を持った稲妻が、サイラに向かって飛んでいく。
「『風弾《ウィンドバレット》』」
サイラは、自分自身に風の弾をぶつけ、その場から移動することで、稲妻を避ける。そして、その勢いを殺さないようにしながら、弧を描くようにマリーに接近する。
「はぁっ!」
サイラが、氷の剣を振う。その動きは、およそ素人のものとは思えない動きだった。マリーは、余っている二本の剣で防いだ。
「うわっ! 剣も使えるんですか!?」
「魔法だけじゃだめだと思ったからね」
マリーは、なんとかサイラの剣を自分の剣で防いでいる。いつもは、ここまで接近させない様にしているので、いざここまで接近されると対応が難しくなるようだ。
(この距離だと、剣をうまく使えない。下手したら自分にも当たるかもしれないし……)
「もう一本! 『氷剣』!」
マリーの剣の数に、一本では分が悪いと思ったのか、サイラは剣を増やした。
「こうなったら、『短剣舞・五重奏』!」
マリーは、剣だけでなく短剣を飛ばす。
「細かい操作なら、こっちの方がやりやすい!」
マリーは、短剣と剣を操って、サイラに攻撃していく。
「これ以上増えるの!?」
短剣が増えた事によって、サイラは、防戦一方になってしまった。
「『嵐壁《ストームウォール》』!」
このまま剣で弾き続けるのは、厳しいと感じ、最初に使ったのと同じ嵐の壁を生み出した。
「これだと、さっきと同じ事になっちゃう……なら、出来るか分からないけど!」
マリーは、剣を魔法鞄に戻し、短剣も自分の周りに戻した。
「『短剣舞《ダガーダンス》・十重奏《デクテット》』!」
そして、短剣の数を増やす。
「『短剣唄《ダガーソング》・交響曲《シンフォニー》』!」
リンとの準決勝やアルとの決勝で使った虹色の光の縮小版をサイラに向かって放つ。
「うぐっ!」
嵐の壁により、姿を確認出来ないので、正確にサイラを穿つことは、出来ないかと思われていたのだが、運良くサイラに当てる事が出来た。
「これが例の分解する光か……今見て、ようやく分かったよ。全ての属性を合わせた技だね。相反する属性が複数重なることで……そういう結果が……生まれるんだ……初めて知った……よ……」
サイラは、失い掛ける意識を必死で繋ぎ止めながら、初めて実際に見るマリーの技に少し興奮していた。
「これだと……生半可な技じゃ……防ぐ事は……出来なさそう……だね……次は……防ぐよ……」
まだ戦えると思われたサイラだったが、それを最後に、意識を失った。
『そこまで! 勝者一年生マリー・ラプラス!』
『うおおおおおおおおおお!!』
闘技場が、観客の歓声に包まれる。
「ふぅ、運良く勝てて良かった。さすがに、魔力を全損するわけにもいかないし」
マリーは勝てたことにホッとしながら、控え室の方に戻っていく。
『学院トーナメント決勝戦は、二時間後に始まるので、それまで休憩!』
ここから、二時間の休憩が挟まる。残すは、決勝のみとなった。
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