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捨てられた王女
報告
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カイトは、任務の失敗を報告するため、国王の執務室にいた。
「それで、マリーナリアは始末出来たのか?」
「申し訳ありません。失敗いたしました。マリー様とその学友はキマイラ一匹を退けた後、キマイラの集団に囲まれましたが、担任教師が大魔法を行使し、これを撃退。その後、サリドニア大森林の入り口で野営している所を襲撃しましたが、新たに増えた民間人と担任教師とカストル、バルバロットのご子息により全滅させられました」
その報告を聞かされた国王は、机を思いっきり叩いて立ち上がった。
「ふざけるな!!!! 何をしているんだ、お前は!!!!」
「面目次第もございません」
「くっ! いや、それよりもお前達を退けたという事は、生半可な作戦は通用せぬな」
国王少し焦っていた。カイトが行けば、マリーごとき簡単に殺せると判断していた。
「ちっ! マリーナリアをなんとしても殺さなければ!!」
「そのことですが、マリー様の暗殺は止めに致しませんか?」
「何!?」
国王は、カイトの進言に怒りの表情になる。
「貴様!! マリーナリアに、王位を取られても良いというのか!!! あのような異物に王位を取られる事などあってはならぬ!!」
「マリー様は、異物ではございません。ただ、髪と眼の色が違うだけです」
「それが異物の証拠だ!! 我々王族は、代々この碧眼で産まれて来た!! だが、あやつの眼は血の色をしている!!」
国王からしたら、マリーの赤い眼は異物の証拠だった。
「それでも、陛下の娘でしょう! それに、マリー様に王位を奪う意志などございません!」
国王に対して、このように強く出られるのは、長く仕えているカイトだけだ。だからこそ、必死に国王を説得しようとしているのだ。
「そんなはずはないと言っているだろう! 王族に産まれた者が、王位を狙わないなどありえん!! リリアーニアですら狙っているだろう!!」
国王は、つばを飛ばしながらそう叫ぶ。当然ながら、リリーは王位など興味がない。
(もはや陛下に私の言葉は届かないか。何故こんなにも王位に固執しておられるのか。昔は、誰が王位についても恨みっこ無しだと言っておられたのに……)
カイトは、国王に怒鳴られながらもそう考えていた。
「カイト! 貴様には、一ヶ月の謹慎を言い渡す! 今一度、頭を冷やし、反省しろ!!」
「承知いたしました。では、失礼いたします」
カイトはそう言うと、執務室を出て行った。
「くそ!! マリーナリアめ……しぶとく生き残りおって!! 王位は絶対に渡さんぞ!! この席は、永遠に我のものだ!!」
国王は、高笑いをしていた。その目は誰が見ても正気では無いと判断するだろう。
執務室を出たカイトは、王城の中を歩いていた。
(何故、陛下はああまで変わってしまったんだ? 昔の陛下では、考えられない。誰かの洗脳か? だが、いつから?)
カイトは、国王が正気では無い事に薄々気付いていた。しかし、それを証明する方法がない。それに、正気を失った原因は分からない。
そうして、王城を立ち去り、自宅へと戻る。やらなくてはいけない事はある。しかし、行動を起こす事は出来ない。自分が行動を起こせば、家族が犠牲になるかもしれないからだ。
「マリー様……どうか、生き残ってください……陛下はまだ、あなたを諦めたわけではありません。身勝手ながら、あなたのご無事を祈ります」
そんな願いは、マリーの耳に届くはずも無い。
「それで、マリーナリアは始末出来たのか?」
「申し訳ありません。失敗いたしました。マリー様とその学友はキマイラ一匹を退けた後、キマイラの集団に囲まれましたが、担任教師が大魔法を行使し、これを撃退。その後、サリドニア大森林の入り口で野営している所を襲撃しましたが、新たに増えた民間人と担任教師とカストル、バルバロットのご子息により全滅させられました」
その報告を聞かされた国王は、机を思いっきり叩いて立ち上がった。
「ふざけるな!!!! 何をしているんだ、お前は!!!!」
「面目次第もございません」
「くっ! いや、それよりもお前達を退けたという事は、生半可な作戦は通用せぬな」
国王少し焦っていた。カイトが行けば、マリーごとき簡単に殺せると判断していた。
「ちっ! マリーナリアをなんとしても殺さなければ!!」
「そのことですが、マリー様の暗殺は止めに致しませんか?」
「何!?」
国王は、カイトの進言に怒りの表情になる。
「貴様!! マリーナリアに、王位を取られても良いというのか!!! あのような異物に王位を取られる事などあってはならぬ!!」
「マリー様は、異物ではございません。ただ、髪と眼の色が違うだけです」
「それが異物の証拠だ!! 我々王族は、代々この碧眼で産まれて来た!! だが、あやつの眼は血の色をしている!!」
国王からしたら、マリーの赤い眼は異物の証拠だった。
「それでも、陛下の娘でしょう! それに、マリー様に王位を奪う意志などございません!」
国王に対して、このように強く出られるのは、長く仕えているカイトだけだ。だからこそ、必死に国王を説得しようとしているのだ。
「そんなはずはないと言っているだろう! 王族に産まれた者が、王位を狙わないなどありえん!! リリアーニアですら狙っているだろう!!」
国王は、つばを飛ばしながらそう叫ぶ。当然ながら、リリーは王位など興味がない。
(もはや陛下に私の言葉は届かないか。何故こんなにも王位に固執しておられるのか。昔は、誰が王位についても恨みっこ無しだと言っておられたのに……)
カイトは、国王に怒鳴られながらもそう考えていた。
「カイト! 貴様には、一ヶ月の謹慎を言い渡す! 今一度、頭を冷やし、反省しろ!!」
「承知いたしました。では、失礼いたします」
カイトはそう言うと、執務室を出て行った。
「くそ!! マリーナリアめ……しぶとく生き残りおって!! 王位は絶対に渡さんぞ!! この席は、永遠に我のものだ!!」
国王は、高笑いをしていた。その目は誰が見ても正気では無いと判断するだろう。
執務室を出たカイトは、王城の中を歩いていた。
(何故、陛下はああまで変わってしまったんだ? 昔の陛下では、考えられない。誰かの洗脳か? だが、いつから?)
カイトは、国王が正気では無い事に薄々気付いていた。しかし、それを証明する方法がない。それに、正気を失った原因は分からない。
そうして、王城を立ち去り、自宅へと戻る。やらなくてはいけない事はある。しかし、行動を起こす事は出来ない。自分が行動を起こせば、家族が犠牲になるかもしれないからだ。
「マリー様……どうか、生き残ってください……陛下はまだ、あなたを諦めたわけではありません。身勝手ながら、あなたのご無事を祈ります」
そんな願いは、マリーの耳に届くはずも無い。
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