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第三章 大規模調査
披露宴
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更衣室に戻った私達は、花嫁衣装から着替えて、過ごしやすい綺麗なドレスを纏っている。
「こっちのドレスの方が過ごしやすい」
「そうですね。だから、着替えているんですよ。ずっと花嫁衣装のままだと、披露宴の中でも過ごしづらくなりますから」
「実はこのドレスは、皆、お揃いなんだよ。ほら、ここに同じ装飾が入っているでしょ?」
リリアさんが、自分のスカートの裾を指さす。私とキティさんは、自分のスカートの裾と互いのスカートの裾を確認した。
「本当だ」
「皆、一緒ですね」
私達のドレスは、色違いの同じものになっていた。これは、リリアさんが用意したものなので、私達は知らなかった。
私とキティさんは、嬉しくなって互いに笑う。
「それじゃあ、会場に戻るわよ。向こうも準備を終えているころだと思うわ」
「準備……ああ、食事のですね」
「それもあるけど、あなた達の席の用意よ。主祭壇を取っ払って、入れ替えているの。教会やそういう場所じゃないから出来る事よね」
カルメアさんは、そう言って頷いていた。どう考えても罰当たりな感じもするけど。
私達は、カルメアさんに付いていき、再び会場へと戻っていった。中に入る前から、喧騒としていたけど、私達が戻ってきたら、大きな歓声に変わった。
本日の主役ではあるけど、ここまで歓声が上がると、私も気後れしてしまう。そんな私の背中をリリアさんが優しく押す。たったそれだけで、私は脚を踏み出すことが出来た。
「皆、祝ってくれているんだから、大丈夫だよ」
「そうですよね。少しびっくりしちゃって」
「ん。こんな歓声を浴びるのは初めて」
私達は、カルメアさんに連れられて、自分達の席に移動した。本当にミリーさんがいた主祭壇がなくなって、私達の席になっていた。今度も私を真ん中にして、左にリリアさん、右にキティさんが座る。
何で、さっきから私が真ん中になっているのかというと、私が皆を繋いだからだ。私が結婚をしようと言わなければ、こんな関係になることはなかっただろう。
だから、私は二人を繋ぐ位置にいるのだ。
ミリーさんが立ち上がって、皆から見える位置に移動する。披露宴の司会もミリーさんが担当するらしい。
「それでは、披露宴を始めます。アイリスさん、リリアさん、キティさんのおめでたい日です。皆さんでお祝いをしつつ、楽しく盛り上がりましょう!!」
『おー!!!』
ミリーさんの言葉で、皆が盛り上がる。同時に、料理が運ばれてくる。コース料理なので、一つ一つの量は少ないけど、美味しさは満点だ。
「美味しい。でも、少ない」
これに関しては、キティさんは不満だったみたい。
「コースなんですから、仕方ないですよ。メインは、少し量があるみたいですから、我慢してください」
「ん」
「全部食べて足りなかったら、家で作ってあげるね」
「ん」
リリアさんの言葉で、キティさんはご機嫌になった。後でお腹一杯になれると分かったからだ。こういうところは、まだまだリリアさんの方が上手みたいだ。
「さて、そろそろ挨拶回りに行くよ。二人とも準備は良い?」
「はい」
「ん」
私達は席から立ち上がって、一つ一つのテーブルを回っていく。最初は、リリアさんの友達だった。その後は、職員の皆と冒険者の方々のテーブルを回る。そして、ライネルさん達のテーブルの番が来た。
「結婚おめでとう、アイリス、キティ、リリア」
「おめでとう」
「おめでとさん」
「おめで……とう……」
ライネルさん、ドルトルさん、クロウさんは、普通にお祝いの言葉をくれた。ただ、マインさんだけは、大泣きしながらお祝いしてくれる。
「マインさん、お化粧が流れちゃいますよ」
「そう思って……目元の化粧は……していないわよ……ぐすっ……」
マインさんは、大泣きすると自分で思って、化粧を控えたみたい。
「全く……私よりも早く……結婚するなんて……思わない……じゃない……」
「もう、そんなに泣かないでください。マインさんだって、良い相手が見付かりますって」
「その心配はしていないわよ!」
私が少し茶化したら、いつもマインさんが戻ってきた。
「まぁ、確かに、マインの言うとおりだな。俺達も、アイリス達が結婚するとは思わなかったぞ」
「僕もだ。でも、皆、幸せそうで良かったよ」
クロウさんとドルトルさんも驚いていたみたい。そりゃ、いきなり結婚しますって言ったら、驚くよね。
「結婚をしても、仕事は続けるのか?」
「はい。三人とも続けますよ」
「そうか。また、仕事で一緒になったら、頼むぞ」
「はい」
ライネルさんは、いつも通りだった。結婚したら、専業主婦になる人もいるから訊いたって感じかな。
「そうだ……ドレス、綺麗だったわよ……画家を呼んでおけば良かったわ」
「マインさんは、私達の母親ですか……」
「違うわよ」
マインさんは、本気で言っていそうだった。
「それじゃあ、私達は次のテーブルに行きますね。楽しんでいってください」
「ああ、本当に結婚おめでとう」
私達は、ライネルさん達のテーブルから移動して、今度はサリアとおばさんがいるテーブルに移動した。
「アイリス、結婚おめでとう」
「おめでとう。アイリスちゃん!」
おばさんもマインさんと同じく涙を流していた。
「あんなに小さかったアイリスちゃんも、結婚出来る歳になっていたのね。感慨深いわ」
「出来る歳になって、すぐなので、珍しいですよね」
「そうね。いい人がいる子は早いけど、アイリスちゃんも可愛いお嫁さんが二人も出来るなんて……お母さん達も鼻が高いわね」
おばさんはそう言って、また泣いていた。私が、おばさんと話している間、サリアは、リリアさん、キティさんと話していた。
「アイリスは、基本的に溜め込むので、適度に吐き出させちゃってください」
「それは、分かってる。一緒に暮らしていてもそうだし。少し遠慮がちなんだよね」
「ん。最近は、少しずつ吐き出そうとしているかもしれない」
「そうですね。結婚したら、少しは変わってくるかもですね」
話している事は、色々とあれだけど。
「私、そこまで溜め込みませんよ」
『嘘』
サリア、リリアさん、キティさん、おばさんの声が重なった。まさか、おばさんまで重なるとは思わなかった。
「え、そんなに溜め込んでいるように見えますか?」
「だって、結婚の話も溜め込んでいたでしょ?」
「それは、仕方ないじゃないですか。求婚なんて、どう言おうか悩むのは当たり前ですよ」
「そっちじゃない。そもそも求婚しようかしないかで、凄く悩んでいた」
リリアさんとキティさんにはバレバレだった。
「サリアもいい人が出来ると良いんだけどね」
「お母さん、まだ早いって。ついこの間、学校を卒業したばっかだよ。さっきも言っていたじゃん。早いのは珍しいって」
「それでも、いい人が出来るのを祈るのは良いでしょ?」
話が、サリアの結婚の方に移行した。
「冒険者家業って、どうなのかしら?」
「受付の人と恋に落ちることが多いって聞きますけど、リリアさんは何か知っています?」
「う~ん、同じパーティーで結婚するって方が多いんじゃない?」
「あっ、お母さん達もそれだったんだ」
「そうじゃない! 早くパーティーでも組みなさい」
「もう! せっかくの祝いの場なんだから、私の話はなし!」
サリアが怒って、そう言った。そのタイミングで、私達はサリア達のテーブルから離れていった。次に来たのは、リリアさんのご両親のマリッサさんとラインネスさんのところだ。
「結婚おめでとう」
「おめでとう」
「ありがとう。お母さん、お父さん」
「ありがとうございます」
「ん。ありがとうございます」
私達は、またキティさんが丁寧な言葉を使った事に驚く。さすがに二回目となると、キティさんも怒った。マリッサさん達に気付かれないように、尻尾で私を攻撃してくる。リリアさんは遠すぎて届かないから、今朝の二倍叩かれている。
「これからはどうするの? 新婚旅行にでも行くの?」
「う~ん、考えていないけど、まだ新婚旅行には行かないかな。私の仕事も長期で休めるかどうか分からないし」
「そうなの。もし行けるのなら、南がおすすめよ」
「うん。分かった」
リリアさんがマリッサさんと話している時に、私とキティさんは、ラインネスさんと話していた。
「そうか。リリアは、ちゃんとやれているのか」
「いつも助かっています」
「ん。ご飯も美味しい……です」
リリアさんを褒めると、ラインネスさんは嬉しそうな顔をする。
「そうだ。二人とも、もし暇が出来たら、リリアと一緒にカラサリに来なさい。リリアの思い出の品などを見せてあげよう」
「本当ですか!? 皆で休みを取れるときに伺わせていただきます!」
「ん!」
そう話してから、次のテーブルに移る。そこには、カルメアさんとガルシアさんとミリーさんが座っている。
「ミリーさんは、こっちに座っているんですね」
「はい。こっちの方が、私が立つ場所に近いので」
「なるほど」
ミリーさんは司会の役割を、果たすためにやりやすい席に座っていたらしい。
「改めて、結婚おめでとう」
「結婚おめでとう!!」
ガルシアさんは、まだ泣いていた。
「ガルシアさん、泣きすぎです。マインさんよりも泣いていますよ?」
「仕方ないだろう……親友の娘と育てた娘の結婚式なんだぞ……泣かずにいられるか!」
「あはは……」
「さっきのドレス、本当に綺麗だったぞ。アイリスは、あいつに似てきたな」
「そうですか?」
ガルシアさんが言っているのは、お母さんの事だ。お母さんに似てきたっていうのは、結構嬉しいかもしれない。
「ああ、画家を呼ぶべきだったな……」
「何で、マインさんと同じ事を言っているんですか……」
私は、少し呆れ顔になってしまう。
「マインは本当に……」
それは、サリーさんも同じだった。
「リリアも大変になるわね。わんぱくな二人が奥さんになるんだから」
「そうですね。でも、楽しくなると思います」
「それもそうね。さて、そろそろメインよ。席に戻りなさい」
「はい。アイリスちゃん、キティ、戻るよ」
「分かりました」
「ん」
私達は、自分達の席に戻ろうとする。その前に、少し気になった事があった。
「そういえば、アルビオ殿下は?」
「もう帰られたぞ。やることが満載だったからな」
「そうですか……お礼を言いたかったのですが」
「そうだな。全員が休暇を与えられる時になったら、王都にでも行けばいいだろう。その時は、伝手を用意しておいてやる」
「ありがとうございます」
今すぐにアルビオ殿下にお礼を言うことは出来なそうだ。私達が結婚したきっかけは、アルビオ殿下の話だから、私達を繋いだのはアルビオ殿下とも言える。ガルシアさんの言うとおり、王都に行ったときに挨拶に行こう。
それを確認出来たので、私達は自分達の席に戻った。
隣には、ずっとリリアさんとキティさんがいる。今の私は、本当に幸せだ。
だから、失念していた。私に巣くっている邪悪に……
『復活せり』
頭の中に声が響く。暗く重い気持ちの悪い声が木霊し続ける。
「うぐ……」
頭を揺さぶられるかのうような感覚。目の前が暗くなっていく。それにいち早く気が付いたリリアさんとキティさんが駆け寄ってこようとする。
「リリア……さん……キティ……さん……」
そこで私は、意識を失った。幸せの真っ只中だったのに……
「こっちのドレスの方が過ごしやすい」
「そうですね。だから、着替えているんですよ。ずっと花嫁衣装のままだと、披露宴の中でも過ごしづらくなりますから」
「実はこのドレスは、皆、お揃いなんだよ。ほら、ここに同じ装飾が入っているでしょ?」
リリアさんが、自分のスカートの裾を指さす。私とキティさんは、自分のスカートの裾と互いのスカートの裾を確認した。
「本当だ」
「皆、一緒ですね」
私達のドレスは、色違いの同じものになっていた。これは、リリアさんが用意したものなので、私達は知らなかった。
私とキティさんは、嬉しくなって互いに笑う。
「それじゃあ、会場に戻るわよ。向こうも準備を終えているころだと思うわ」
「準備……ああ、食事のですね」
「それもあるけど、あなた達の席の用意よ。主祭壇を取っ払って、入れ替えているの。教会やそういう場所じゃないから出来る事よね」
カルメアさんは、そう言って頷いていた。どう考えても罰当たりな感じもするけど。
私達は、カルメアさんに付いていき、再び会場へと戻っていった。中に入る前から、喧騒としていたけど、私達が戻ってきたら、大きな歓声に変わった。
本日の主役ではあるけど、ここまで歓声が上がると、私も気後れしてしまう。そんな私の背中をリリアさんが優しく押す。たったそれだけで、私は脚を踏み出すことが出来た。
「皆、祝ってくれているんだから、大丈夫だよ」
「そうですよね。少しびっくりしちゃって」
「ん。こんな歓声を浴びるのは初めて」
私達は、カルメアさんに連れられて、自分達の席に移動した。本当にミリーさんがいた主祭壇がなくなって、私達の席になっていた。今度も私を真ん中にして、左にリリアさん、右にキティさんが座る。
何で、さっきから私が真ん中になっているのかというと、私が皆を繋いだからだ。私が結婚をしようと言わなければ、こんな関係になることはなかっただろう。
だから、私は二人を繋ぐ位置にいるのだ。
ミリーさんが立ち上がって、皆から見える位置に移動する。披露宴の司会もミリーさんが担当するらしい。
「それでは、披露宴を始めます。アイリスさん、リリアさん、キティさんのおめでたい日です。皆さんでお祝いをしつつ、楽しく盛り上がりましょう!!」
『おー!!!』
ミリーさんの言葉で、皆が盛り上がる。同時に、料理が運ばれてくる。コース料理なので、一つ一つの量は少ないけど、美味しさは満点だ。
「美味しい。でも、少ない」
これに関しては、キティさんは不満だったみたい。
「コースなんですから、仕方ないですよ。メインは、少し量があるみたいですから、我慢してください」
「ん」
「全部食べて足りなかったら、家で作ってあげるね」
「ん」
リリアさんの言葉で、キティさんはご機嫌になった。後でお腹一杯になれると分かったからだ。こういうところは、まだまだリリアさんの方が上手みたいだ。
「さて、そろそろ挨拶回りに行くよ。二人とも準備は良い?」
「はい」
「ん」
私達は席から立ち上がって、一つ一つのテーブルを回っていく。最初は、リリアさんの友達だった。その後は、職員の皆と冒険者の方々のテーブルを回る。そして、ライネルさん達のテーブルの番が来た。
「結婚おめでとう、アイリス、キティ、リリア」
「おめでとう」
「おめでとさん」
「おめで……とう……」
ライネルさん、ドルトルさん、クロウさんは、普通にお祝いの言葉をくれた。ただ、マインさんだけは、大泣きしながらお祝いしてくれる。
「マインさん、お化粧が流れちゃいますよ」
「そう思って……目元の化粧は……していないわよ……ぐすっ……」
マインさんは、大泣きすると自分で思って、化粧を控えたみたい。
「全く……私よりも早く……結婚するなんて……思わない……じゃない……」
「もう、そんなに泣かないでください。マインさんだって、良い相手が見付かりますって」
「その心配はしていないわよ!」
私が少し茶化したら、いつもマインさんが戻ってきた。
「まぁ、確かに、マインの言うとおりだな。俺達も、アイリス達が結婚するとは思わなかったぞ」
「僕もだ。でも、皆、幸せそうで良かったよ」
クロウさんとドルトルさんも驚いていたみたい。そりゃ、いきなり結婚しますって言ったら、驚くよね。
「結婚をしても、仕事は続けるのか?」
「はい。三人とも続けますよ」
「そうか。また、仕事で一緒になったら、頼むぞ」
「はい」
ライネルさんは、いつも通りだった。結婚したら、専業主婦になる人もいるから訊いたって感じかな。
「そうだ……ドレス、綺麗だったわよ……画家を呼んでおけば良かったわ」
「マインさんは、私達の母親ですか……」
「違うわよ」
マインさんは、本気で言っていそうだった。
「それじゃあ、私達は次のテーブルに行きますね。楽しんでいってください」
「ああ、本当に結婚おめでとう」
私達は、ライネルさん達のテーブルから移動して、今度はサリアとおばさんがいるテーブルに移動した。
「アイリス、結婚おめでとう」
「おめでとう。アイリスちゃん!」
おばさんもマインさんと同じく涙を流していた。
「あんなに小さかったアイリスちゃんも、結婚出来る歳になっていたのね。感慨深いわ」
「出来る歳になって、すぐなので、珍しいですよね」
「そうね。いい人がいる子は早いけど、アイリスちゃんも可愛いお嫁さんが二人も出来るなんて……お母さん達も鼻が高いわね」
おばさんはそう言って、また泣いていた。私が、おばさんと話している間、サリアは、リリアさん、キティさんと話していた。
「アイリスは、基本的に溜め込むので、適度に吐き出させちゃってください」
「それは、分かってる。一緒に暮らしていてもそうだし。少し遠慮がちなんだよね」
「ん。最近は、少しずつ吐き出そうとしているかもしれない」
「そうですね。結婚したら、少しは変わってくるかもですね」
話している事は、色々とあれだけど。
「私、そこまで溜め込みませんよ」
『嘘』
サリア、リリアさん、キティさん、おばさんの声が重なった。まさか、おばさんまで重なるとは思わなかった。
「え、そんなに溜め込んでいるように見えますか?」
「だって、結婚の話も溜め込んでいたでしょ?」
「それは、仕方ないじゃないですか。求婚なんて、どう言おうか悩むのは当たり前ですよ」
「そっちじゃない。そもそも求婚しようかしないかで、凄く悩んでいた」
リリアさんとキティさんにはバレバレだった。
「サリアもいい人が出来ると良いんだけどね」
「お母さん、まだ早いって。ついこの間、学校を卒業したばっかだよ。さっきも言っていたじゃん。早いのは珍しいって」
「それでも、いい人が出来るのを祈るのは良いでしょ?」
話が、サリアの結婚の方に移行した。
「冒険者家業って、どうなのかしら?」
「受付の人と恋に落ちることが多いって聞きますけど、リリアさんは何か知っています?」
「う~ん、同じパーティーで結婚するって方が多いんじゃない?」
「あっ、お母さん達もそれだったんだ」
「そうじゃない! 早くパーティーでも組みなさい」
「もう! せっかくの祝いの場なんだから、私の話はなし!」
サリアが怒って、そう言った。そのタイミングで、私達はサリア達のテーブルから離れていった。次に来たのは、リリアさんのご両親のマリッサさんとラインネスさんのところだ。
「結婚おめでとう」
「おめでとう」
「ありがとう。お母さん、お父さん」
「ありがとうございます」
「ん。ありがとうございます」
私達は、またキティさんが丁寧な言葉を使った事に驚く。さすがに二回目となると、キティさんも怒った。マリッサさん達に気付かれないように、尻尾で私を攻撃してくる。リリアさんは遠すぎて届かないから、今朝の二倍叩かれている。
「これからはどうするの? 新婚旅行にでも行くの?」
「う~ん、考えていないけど、まだ新婚旅行には行かないかな。私の仕事も長期で休めるかどうか分からないし」
「そうなの。もし行けるのなら、南がおすすめよ」
「うん。分かった」
リリアさんがマリッサさんと話している時に、私とキティさんは、ラインネスさんと話していた。
「そうか。リリアは、ちゃんとやれているのか」
「いつも助かっています」
「ん。ご飯も美味しい……です」
リリアさんを褒めると、ラインネスさんは嬉しそうな顔をする。
「そうだ。二人とも、もし暇が出来たら、リリアと一緒にカラサリに来なさい。リリアの思い出の品などを見せてあげよう」
「本当ですか!? 皆で休みを取れるときに伺わせていただきます!」
「ん!」
そう話してから、次のテーブルに移る。そこには、カルメアさんとガルシアさんとミリーさんが座っている。
「ミリーさんは、こっちに座っているんですね」
「はい。こっちの方が、私が立つ場所に近いので」
「なるほど」
ミリーさんは司会の役割を、果たすためにやりやすい席に座っていたらしい。
「改めて、結婚おめでとう」
「結婚おめでとう!!」
ガルシアさんは、まだ泣いていた。
「ガルシアさん、泣きすぎです。マインさんよりも泣いていますよ?」
「仕方ないだろう……親友の娘と育てた娘の結婚式なんだぞ……泣かずにいられるか!」
「あはは……」
「さっきのドレス、本当に綺麗だったぞ。アイリスは、あいつに似てきたな」
「そうですか?」
ガルシアさんが言っているのは、お母さんの事だ。お母さんに似てきたっていうのは、結構嬉しいかもしれない。
「ああ、画家を呼ぶべきだったな……」
「何で、マインさんと同じ事を言っているんですか……」
私は、少し呆れ顔になってしまう。
「マインは本当に……」
それは、サリーさんも同じだった。
「リリアも大変になるわね。わんぱくな二人が奥さんになるんだから」
「そうですね。でも、楽しくなると思います」
「それもそうね。さて、そろそろメインよ。席に戻りなさい」
「はい。アイリスちゃん、キティ、戻るよ」
「分かりました」
「ん」
私達は、自分達の席に戻ろうとする。その前に、少し気になった事があった。
「そういえば、アルビオ殿下は?」
「もう帰られたぞ。やることが満載だったからな」
「そうですか……お礼を言いたかったのですが」
「そうだな。全員が休暇を与えられる時になったら、王都にでも行けばいいだろう。その時は、伝手を用意しておいてやる」
「ありがとうございます」
今すぐにアルビオ殿下にお礼を言うことは出来なそうだ。私達が結婚したきっかけは、アルビオ殿下の話だから、私達を繋いだのはアルビオ殿下とも言える。ガルシアさんの言うとおり、王都に行ったときに挨拶に行こう。
それを確認出来たので、私達は自分達の席に戻った。
隣には、ずっとリリアさんとキティさんがいる。今の私は、本当に幸せだ。
だから、失念していた。私に巣くっている邪悪に……
『復活せり』
頭の中に声が響く。暗く重い気持ちの悪い声が木霊し続ける。
「うぐ……」
頭を揺さぶられるかのうような感覚。目の前が暗くなっていく。それにいち早く気が付いたリリアさんとキティさんが駆け寄ってこようとする。
「リリア……さん……キティ……さん……」
そこで私は、意識を失った。幸せの真っ只中だったのに……
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