405 / 417
一周年の吸血少女
黄昏エリアの本格的な探索
しおりを挟む
今日は、三年生の卒業式だった。一年生は参加しないので、普通にワンオンをプレイする。今日の探索は、予定通り黄昏エリアだ。アカリに作って貰ったゴーグルを着けて、黄昏エリアを歩く。今日は誰も喚ばない。メアとマシロなら耐性があるだろうけど、ちょっと心配なので喚ばない。称号も【混沌に対抗する者】に入れ替えて、混乱耐性を上げておく。
準備を整えて歩き出そうとすると、私の身体をふわふわの尻尾が包み込んだ。
「玉藻ちゃん?」
『全く、この場所に来るのなら、妾に一声掛けてからにするのじゃ。危ないじゃろう』
「ごめんなさい」
『うむ。分かれば良いのじゃ。対策はしておるのか?』
「はい。アカリにゴーグルを作って貰いました。ちょっと見えにくいですけど、混乱せずに済みそうです」
『ふむ……まぁ、これなら大丈夫じゃろう。じゃが、用心はした方が良い。なるべくモンスターを見ぬようにのう』
「はい」
今の私は混乱状態になりにくいのであってならないわけじゃない。だから、基本的にはモンスターを見ないに越した事はないのだ。
「あっ、そういえば、玉藻ちゃんは、これがどこの鍵か分かりますか?」
『入れ墨のように見えるのう。ふむ……妾は知らぬな。これが鍵なのじゃ?』
「廃都市の地下で付けられたものなんです。一応、鍵という事は分かっているのですが、どこの鍵なのか不明で……」
『その廃都市にはないのじゃ?』
「エアリー達が調べてくれましたが、鍵の掛かった扉などは見つかっていないんです。だから、どこか別の場所にあるんじゃないかと思いまして」
『ふむ……少なくとも妖都で、この形の鍵を使う場所は見た事がないのう』
玉藻ちゃんは、私の手首の刻印を指先でなぞりながらそう言う。
「やっぱり自分で探さないといけないみたいですね」
『そうじゃのう。取り敢えず、妾に乗って探すと良いぞ。広い範囲を探さねばならぬじゃろう』
「はい。ありがとうございます」
九尾狐に変身した玉藻ちゃんの上に乗る。玉藻ちゃんに走って貰えば、広い範囲を調べられる。問題は、玉藻ちゃんの柔らかい毛で探索に集中できるかどうかだった。
「はぁ……玉藻ちゃんの身体って最高ですね……そういえば、玉藻ちゃんはフェンリルって知りませんか?」
『フェンリル? 知らぬのう。何じゃ、それは?』
「でっかい狼です。玉藻ちゃんよりも大きいと思います。狼の姿をした神様って感じかもしれません」
『ふむ……やはり知らぬのう』
「そうですか」
玉藻ちゃんもフェンリルについては知らないみたい。これは長い戦いになりそうだ。
玉藻ちゃんの上から黄昏エリアを見回してみて、改めてここが怖い場所という事が分かる。ゆらゆらとして不気味な不定形のモンスターが多い。見ただけで混乱状態になるのも頷ける。
『あまり見ちゃ駄目じゃぞ』
「はい。分かってます。なるべく見ないようにするというのも難しいですけど」
アカリのゴーグルは、しっかりと機能している。混乱状態にはなるけれど、錯乱する程の状態にはならないし、【血液変換】で状態異常の時間を減らせるので、すぐに治す事も出来る。それでも、玉藻ちゃんの言うとおり、見ない越した事はない。
「う~ん……あっ、玉藻ちゃん。あっちにある廃墟に向かってください」
『あっちじゃな』
少し遠いけど、朧気な輪郭が見えたので、玉藻ちゃんに進路を変えて貰う。近くまで来ると、そこが廃墟だという事がよく分かった。
『ふむ。どこからどう見ても廃墟じゃのう』
「前は誰かが残した日記がありましたけど、こっちは何かありますかね」
『周囲には何もなさそうじゃのう。それに、向こうに塀の跡があるのを見るに、ここは村の跡というところかのう』
「本当ですね。この廃墟を調べたら、他の家の跡も調べましょう」
『うむ』
廃墟の中に入ると、そこには特に何もなかった。青い靄もないし、何か重要そうな本が残っているという事もない。ただ、他に調べるものもある。それは床だ。私の手首の鍵が何かを隠している場所への鍵と考えると、地下などが怪しくなる。なので、床を重点的に調べて行く。
「ここの床には何もなさそう……」
『廃墟の周囲にも何も無しじゃ。隠し通路も見当たらぬのう』
「分かりました。ありがとうございます」
玉藻ちゃんも地面に何かないか調べてくれたみたい。おかげで、探索が捗る。後は家の周りを軽く見て青い靄がない事を確認し、次の家の跡を調べて行くだけだ。玉藻ちゃんが見つけてくれた家の跡を調べて行くけど、特に何かがある訳じゃない。そこに家があったという事が何となく分かるだけだ。
「う~ん……こういう廃墟にはないのかなぁ……」
『ふむ。村に置いておく事が出来なかったと考えておるのじゃな?』
「はい。危険なものの管理用とかだったら、寧ろ村からある程度離した場所に作るんじゃないかなと」
『あり得るのう。この村の周囲を回ってみるか?』
「はい。お願いします」
再び九尾狐になった玉藻ちゃんに乗って、村の周りをぐるぐると回って貰う。地面に目を落としながら、違和感や青い靄がないかを探していく。
「見当たりませんね」
『尻尾で地面を探っておるが、怪しい場所はないのう』
「完全に埋もれているって事もあり得るでしょうか?」
『ふむ。ないとは言い切れんのう。じゃが、それを調べる方法もあるまい』
「いえ、頑張れば、私でも感知は出来ると思います。一々止まらないと駄目だと思いますが」
私の【大地武装】でも、ソイル程ではないけど、地面の中を感知する事は出来るはず。ただ、動き回りながら感知するとなると、結構難しい。止まって一定範囲内を調べるというのを繰り返す方が現実的だった。
『ふむ。それだと、時間が掛かるのう』
「はい。なので、まずは表から見える部分を全て調べ上げる事からしていきたいと思います。玉藻ちゃんには悪いのですが」
『うむ! 付き合うのじゃ! この場所を調べる時は、一度妖都に寄るのじゃぞ』
「はい」
皆を喚び出せない黄昏エリアでは、玉藻ちゃんと一緒に探索するのが一番安全だ。なので、玉藻ちゃんの厚意には甘えさせて貰う。玉藻ちゃんに走って貰いながら、黄昏エリアの探索を進めていく。
玉藻ちゃんのおかげで、順調に探索が進んでいき廃墟や廃村を見つける事が出来たけど、その廃墟や廃村の中に地下への入口や隠し通路などは見つけられなかった。
この日は、特に何の収穫もなくログアウトする事になった。黄昏エリアの探索は、半分近くまで進める事は出来ている。明日も休みだから、黄昏エリアの探索自体は明日で終わらせる事が出来るかな。
準備を整えて歩き出そうとすると、私の身体をふわふわの尻尾が包み込んだ。
「玉藻ちゃん?」
『全く、この場所に来るのなら、妾に一声掛けてからにするのじゃ。危ないじゃろう』
「ごめんなさい」
『うむ。分かれば良いのじゃ。対策はしておるのか?』
「はい。アカリにゴーグルを作って貰いました。ちょっと見えにくいですけど、混乱せずに済みそうです」
『ふむ……まぁ、これなら大丈夫じゃろう。じゃが、用心はした方が良い。なるべくモンスターを見ぬようにのう』
「はい」
今の私は混乱状態になりにくいのであってならないわけじゃない。だから、基本的にはモンスターを見ないに越した事はないのだ。
「あっ、そういえば、玉藻ちゃんは、これがどこの鍵か分かりますか?」
『入れ墨のように見えるのう。ふむ……妾は知らぬな。これが鍵なのじゃ?』
「廃都市の地下で付けられたものなんです。一応、鍵という事は分かっているのですが、どこの鍵なのか不明で……」
『その廃都市にはないのじゃ?』
「エアリー達が調べてくれましたが、鍵の掛かった扉などは見つかっていないんです。だから、どこか別の場所にあるんじゃないかと思いまして」
『ふむ……少なくとも妖都で、この形の鍵を使う場所は見た事がないのう』
玉藻ちゃんは、私の手首の刻印を指先でなぞりながらそう言う。
「やっぱり自分で探さないといけないみたいですね」
『そうじゃのう。取り敢えず、妾に乗って探すと良いぞ。広い範囲を探さねばならぬじゃろう』
「はい。ありがとうございます」
九尾狐に変身した玉藻ちゃんの上に乗る。玉藻ちゃんに走って貰えば、広い範囲を調べられる。問題は、玉藻ちゃんの柔らかい毛で探索に集中できるかどうかだった。
「はぁ……玉藻ちゃんの身体って最高ですね……そういえば、玉藻ちゃんはフェンリルって知りませんか?」
『フェンリル? 知らぬのう。何じゃ、それは?』
「でっかい狼です。玉藻ちゃんよりも大きいと思います。狼の姿をした神様って感じかもしれません」
『ふむ……やはり知らぬのう』
「そうですか」
玉藻ちゃんもフェンリルについては知らないみたい。これは長い戦いになりそうだ。
玉藻ちゃんの上から黄昏エリアを見回してみて、改めてここが怖い場所という事が分かる。ゆらゆらとして不気味な不定形のモンスターが多い。見ただけで混乱状態になるのも頷ける。
『あまり見ちゃ駄目じゃぞ』
「はい。分かってます。なるべく見ないようにするというのも難しいですけど」
アカリのゴーグルは、しっかりと機能している。混乱状態にはなるけれど、錯乱する程の状態にはならないし、【血液変換】で状態異常の時間を減らせるので、すぐに治す事も出来る。それでも、玉藻ちゃんの言うとおり、見ない越した事はない。
「う~ん……あっ、玉藻ちゃん。あっちにある廃墟に向かってください」
『あっちじゃな』
少し遠いけど、朧気な輪郭が見えたので、玉藻ちゃんに進路を変えて貰う。近くまで来ると、そこが廃墟だという事がよく分かった。
『ふむ。どこからどう見ても廃墟じゃのう』
「前は誰かが残した日記がありましたけど、こっちは何かありますかね」
『周囲には何もなさそうじゃのう。それに、向こうに塀の跡があるのを見るに、ここは村の跡というところかのう』
「本当ですね。この廃墟を調べたら、他の家の跡も調べましょう」
『うむ』
廃墟の中に入ると、そこには特に何もなかった。青い靄もないし、何か重要そうな本が残っているという事もない。ただ、他に調べるものもある。それは床だ。私の手首の鍵が何かを隠している場所への鍵と考えると、地下などが怪しくなる。なので、床を重点的に調べて行く。
「ここの床には何もなさそう……」
『廃墟の周囲にも何も無しじゃ。隠し通路も見当たらぬのう』
「分かりました。ありがとうございます」
玉藻ちゃんも地面に何かないか調べてくれたみたい。おかげで、探索が捗る。後は家の周りを軽く見て青い靄がない事を確認し、次の家の跡を調べて行くだけだ。玉藻ちゃんが見つけてくれた家の跡を調べて行くけど、特に何かがある訳じゃない。そこに家があったという事が何となく分かるだけだ。
「う~ん……こういう廃墟にはないのかなぁ……」
『ふむ。村に置いておく事が出来なかったと考えておるのじゃな?』
「はい。危険なものの管理用とかだったら、寧ろ村からある程度離した場所に作るんじゃないかなと」
『あり得るのう。この村の周囲を回ってみるか?』
「はい。お願いします」
再び九尾狐になった玉藻ちゃんに乗って、村の周りをぐるぐると回って貰う。地面に目を落としながら、違和感や青い靄がないかを探していく。
「見当たりませんね」
『尻尾で地面を探っておるが、怪しい場所はないのう』
「完全に埋もれているって事もあり得るでしょうか?」
『ふむ。ないとは言い切れんのう。じゃが、それを調べる方法もあるまい』
「いえ、頑張れば、私でも感知は出来ると思います。一々止まらないと駄目だと思いますが」
私の【大地武装】でも、ソイル程ではないけど、地面の中を感知する事は出来るはず。ただ、動き回りながら感知するとなると、結構難しい。止まって一定範囲内を調べるというのを繰り返す方が現実的だった。
『ふむ。それだと、時間が掛かるのう』
「はい。なので、まずは表から見える部分を全て調べ上げる事からしていきたいと思います。玉藻ちゃんには悪いのですが」
『うむ! 付き合うのじゃ! この場所を調べる時は、一度妖都に寄るのじゃぞ』
「はい」
皆を喚び出せない黄昏エリアでは、玉藻ちゃんと一緒に探索するのが一番安全だ。なので、玉藻ちゃんの厚意には甘えさせて貰う。玉藻ちゃんに走って貰いながら、黄昏エリアの探索を進めていく。
玉藻ちゃんのおかげで、順調に探索が進んでいき廃墟や廃村を見つける事が出来たけど、その廃墟や廃村の中に地下への入口や隠し通路などは見つけられなかった。
この日は、特に何の収穫もなくログアウトする事になった。黄昏エリアの探索は、半分近くまで進める事は出来ている。明日も休みだから、黄昏エリアの探索自体は明日で終わらせる事が出来るかな。
30
お気に入りに追加
164
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
Alliance Possibility On-line~ロマンプレイのプレーヤーが多すぎる中で、普通にプレイしてたら最強になっていた~
百々 五十六
ファンタジー
極振りしてみたり、弱いとされている職やスキルを使ったり、あえてわき道にそれるプレイをするなど、一見、非効率的なプレイをして、ゲーム内で最強になるような作品が流行りすぎてしまったため、ゲームでみんな変なプレイ、ロマンプレイをするようになってしまった。
この世界初のフルダイブVRMMORPGである『Alliance Possibility On-line』でも皆ロマンを追いたがる。
憧れの、個性あふれるプレイ、一見非効率なプレイ、変なプレイを皆がしだした。
そんな中、実直に地道に普通なプレイをする少年のプレイヤーがいた。
名前は、早乙女 久。
プレイヤー名は オクツ。
運営が想定しているような、正しい順路で少しずつ強くなる彼は、非効率的なプレイをしていくプレイヤーたちを置き去っていく。
何か特別な力も、特別な出会いもないまま進む彼は、回り道なんかよりもよっぽど効率良く先頭をひた走る。
初討伐特典や、先行特典という、優位性を崩さず実直にプレイする彼は、ちゃんと強くなるし、ちゃんと話題になっていく。
ロマンばかり追い求めたプレイヤーの中で”普通”な彼が、目立っていく、新感覚VRMMO物語。
また、つまらぬものを斬ってしまった……で、よかったっけ? ~ 女の子達による『Freelife Frontier』 攻略記
一色 遥
SF
運動神経抜群な普通の女子高生『雪奈』は、幼なじみの女の子『圭』に誘われて、新作VRゲーム『Freelife Frontier(通称フリフロ)』という、スキルを中心としたファンタジーゲームをやることに。
『セツナ』という名前で登録した雪奈は、初期スキルを選択する際に、0.000001%でレアスキルが出る『スーパーランダムモード』(リセマラ不可)という、いわゆるガチャを引いてしまう。
その結果……【幻燈蝶】という謎のスキルを入手してしまうのだった。
これは、そんなレアなスキルを入手してしまった女の子が、幼なじみやその友達……はたまた、ゲーム内で知り合った人たちと一緒に、わちゃわちゃゲームを楽しみながらゲーム内トップランカーとして走って行く物語!
Bless for Travel ~病弱ゲーマーはVRMMOで無双する~
NotWay
SF
20xx年、世に数多くのゲームが排出され数多くの名作が見つかる。しかしどれほどの名作が出ても未だに名作VRMMOは発表されていなかった。
「父さんな、ゲーム作ってみたんだ」
完全没入型VRMMOの発表に世界中は訝、それよりも大きく期待を寄せた。専用ハードの少数販売、そして抽選式のβテストの両方が叶った幸運なプレイヤーはゲームに入り……いずれもが夜明けまでプレイをやめることはなかった。
「第二の現実だ」とまで言わしめた世界。
Bless for Travel
そんな世界に降り立った開発者の息子は……病弱だった。
後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~
夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。
多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』
一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。
主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!!
小説家になろうからの転載です。
VRMMOでスナイパーやってます
nanaさん
SF
ーーーーーーーーーーーーーーーー
私の名は キリュー
Brave Soul online というVRMMOにてスナイパーをやっている
スナイパーという事で勿論ぼっちだ
だが私は別にそれを気にしてはいない!
何故なら私は一人で好きな事を好きにやるのが趣味だからだ!
その趣味というのがこれ 狙撃である
スキルで隠れ敵を察知し技術で当てる
狙うは頭か核のどちらか
私はこのゲームを始めてから数ヶ月でこのプレイスタイルになった
狙撃中はターゲットが来るまで暇なので本とかを読んでは居るが最近は配信とやらも始めた
だがやはりこんな狙撃待ちの配信を見る人は居ないだろう
そう思っていたが...
これは周りのレベルと自分のレベルの差を理解してない主人公と配信に出現する奇妙な視聴者達 掲示板の民 現実での繋がり等がこのゲームの世界に混沌をもたらす話であり 現実世界で過去と向き合い新たな人生(堕落した生活)を過ごしていく物語である
尚 偶に明らかにスナイパーがするような行為でない事を頻繁にしているが彼女は本当にスナイパーなのだろうか...
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる