吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ

月輪林檎

文字の大きさ
上 下
380 / 510
クリスマスの吸血少女

妖怪道中の風雷

しおりを挟む
 妖怪道中エリアの探索を進めていると、エレクが急に止まり、エアリーとライが何かに反応した。

「どうしたの?」
『何か来ます』
『……』こくり

 エアリーの声に緊張感が含まれている。どうやら、本当に危ないモンスターがいるみたい。

「逃げられる?」
『厳しいかと』
「なら、戦うしかないね。どこにいる感じ?」
『あちらです』

 エアリーが指さす方向には、激しい雷鳴と暴風が吹き荒れるような音が聞こえていた。しかも、それが近づいてきている。

「モンスターが地上から来てるとかは分かる?」
『空を飛んできています』
「それじゃあ、エレク、二人を乗せて移動し続けて。私は空で戦うよ。そんなに危ない相手なら、拘束とかは考えないで良いから。とにかく倒す事に専念ね」
『はい』
『……』こくり
『ブルルッ』

 【熾天使翼】を使い、エレクから飛び立つ。皆がこれまでになく警戒する相手という事で、私も警戒しないといけない相手と考えた。雷と風に関係するような妖怪と言われても、パッと思いつく妖怪はいない。
 一分もしないうちに私達のところにも嵐がやってくる。激しい落雷と強い暴風が来るけど、エアリーとライが逸らしているので、比較的安全でいられる。そう思っていたら、【万能探知】に二体のモンスターが反応する。同じような形をしているけど、片方は背中に沢山の小さな太鼓を背負っていて、もう片方は袋のようなものを背負っている。そして、鬼のような見た目をしていて、雲の上に乗って移動してきている。
 近づいてきた事で、名前も見えてきた。風神と雷神。その姿は、学校の授業で見た事のある姿にそっくりだった。緑の肌をしているのが風神。白い肌をしているのが雷神みたいだ。どうりで、エアリーとライが警戒するわけだった。
 ただ神という事もあって、コミュニケーションが取れるかもと思ったのだけど、相手は問答無用で攻撃を繰り出していた。
 雷神が太鼓を四連続で鳴らす。その直前に既に嫌な予感と第六感がセットで危険を知らせていた。【雷電武装】で雷を逸らそうとしたけど、こっちの制御を受け付けなかった。ギリギリでライが逸らしてくれたから、事なきを得たけど、私では相手の制御を上書きできないみたい。ライでも少し逸らすだけしか出来ないという事は、相手は【完全支配(雷)】を持っているという事になる。恐らく、風神の方は【完全支配(風)】を持っていると思う。精霊であるエアリーとライなら、多少の対抗は出来るけど、完全に上書きする事は出来ないみたい。
 地上に落ちてくる雷の方は、エレクが察知して持ち前の速度で避けている。その間に、雷神から倒しに向かう。
 【電光石火】で一気に背後に回り、取り出して白百合と黒百合で斬ろうとする。でも、その直前に、風神が袋から放った暴風によって吹き飛ばされる。そこに雷神が太鼓を叩いて雷を放ってくるので、白百合と黒百合で打ち払う。
 雷神から倒そうと思っても、風神が隙間を埋め。恐らく逆も同じ事だ。だから、二体まとめて攻撃する。【蒼天】と【天聖】の混合熱線をチャージする。同時に、【鬼】を解放する。【色欲の大罪】と【嫉妬の大罪】は発動しているけど、二体は状態異常にならない。無効化されている感じかな。でも、MPは吸収しているし、私のステータスが上昇しているのが分かる。さすがに、向こうの方がスキルレベルの合計が上という事はないと思う。そもそもモンスターにスキルレベルの概念があるのかは疑問だし。実際、テイムモンスターには、レベル表記がないから。でも、私よりも強敵という判定にはなっているのだと思う。問題は、その強敵具合がどの程度なのかという事。
 再び、【電光石火】で突っ込む。今度は、風神の方に向かってだ。背後に回り、白百合と黒百合を振おうとするけど、今度は雷に邪魔をされる。でも、その雷は、私から逸れていった。同時に、雷神を竜巻が覆う。内側で斬り刻まれる筈が、すぐに竜巻が消された。風神が竜巻を消したのだ。エアリーの攻撃でも、向こうからしたら消せるものみたいだ。
 でも、ここでようやく二体に隙が生まれた。ノックバックが鬱陶しいので、風神の方を先に倒す事にする。雷神の方を向いていた風神を背後から斬る。血と影で強化した白百合と黒百合を交互に振り、連続で攻撃していこうとしたけど、二連撃のところで風神の身体から溢れ出した風に吹き飛ばされる。

「袋じゃなくても風は出せるのか……」

 袋だけを警戒していればいい訳ではない事が分かった。
 今度は、飽和攻撃で攻める。【天聖】【邪鬼】で光と闇の短剣を作り、二体に向かって放つ。続いて、水、影、血でも短剣を作りだして放つ。三百六十度全ての方向から飛んでくる短剣は、風神が生み出した風の壁によって阻まれる。二体を覆うような球体の壁の一部に急に穴が空いた。エアリーが道を開いてくれたのだ。
 その手助けを無駄にする訳にはいかないので、空いた穴に向かって短剣を殺到させる。ダメージを稼げるかと思ったけど、その穴から雷が溢れ出したのを見たのと、操作している感覚がなくなった事から打ち消されたのだと分かる。
 私の攻撃が消えた事で、風の壁が消える。そこに混合熱線を放った。二体とも巻き込まれて、HPが大きく削れる。そんな熱線の中から稲妻が放たれて、身体が貫かれる。私には【蓄放電】のスキルがあるので、雷を吸収出来るのだけど、吸収の限界を迎えて【夜霧の執行者】が発動する。

「有効だけど、ダメージを受けながら攻撃してくるのか」

 風神と雷神が追撃をしてこようとするけど、そこに、エアリーとライの攻撃が来て、二体が攻撃を逸らす。下からの攻撃を鬱陶しいと思ったのか、エアリー達に攻撃をする。エレクが上手く避けているので、皆にダメージはない。
 【色欲の大罪】で、ヘイトが集まりやすくなっているはずなのだけど、お構いなしといった感じだ。皆を狙われるのは、望むところではないので、【電光石火】で不意打ちではなく直接攻撃する。勢いを殺さずに風神に蹴りを入れる。これを風神は風の壁で防いできた。
 相手が風を使うという事もあって、使用を控えていたけど、ここで【神炎】を使う。一気に【神炎】を放ち、風神を覆う。風神は、その【神炎】を風で吹き飛ばす。
 その間に白百合で弓を形成し、黒百合を矢とする。その黒百合に【炎翼】を併用した【神炎】を極大まで纏わせて、雷神の方に放つ。放たれた黒百合は、真っ直ぐ雷神に向かっていく。雷神は、極大の稲妻を放って、黒百合を迎撃しようとしたけど、完全に打ち消す事は出来ず、太鼓の一部が削れた。それを見て怒り狂った雷神が、残っている太鼓を滅多打ちにして、私に大量の稲妻を放ってくる。
 【共鳴】で黒百合を戻して稲妻の一部を打ち消していく。でも、全てを打ち消す事は出来ずに、何度か被弾して【夜霧の執行者】を全て消費してしまう。
 でも、避けている最中で再び【電光石火】を使い、雷神に黒百合を突き刺す。怒り狂っていた雷神は、反応に遅れて黒百合による刺突を受ける。周囲に落雷が降り注いでいたからか、風神の援護も出来なかったみたいだ。
 至近距離まで接近出来たので、突き刺した黒百合から手を放し、その顔面に拳をめり込ませる。思いっきりぶん殴った瞬間に、影を雷神に纏わり付かせて、吹っ飛んだところでこちら側に引き戻して、今度は蹴りを入れる。この蹴りで雷神は隕石のように地面へと落ちていった。このまま雷神に追撃を掛けようとしたけど、背後から風神の暴風の槍が飛んで来たので、【重力操作】で上に重力を作りつつ思いっきり羽ばたいて避ける。
 雷神の様子を軽く見てみると、下でエアリー達と戦っていた。完全に不利なはずだけど、上手く戦いながら少しずつダメージを稼いでいる。雲の上に乗らないと空は飛べないみたいなので、あのまま地上戦に持っていけそうだ。
 二体を分断できたので、連携による妨害はなくなる。エアリー達には申し訳ないけど、私は、このまま風神を倒す事にする。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

New Life

basi
SF
なろうに掲載したものをカクヨム・アルファポにて掲載しています。改稿バージョンです。  待ちに待ったVRMMO《new life》  自分の行動でステータスの変化するアビリティシステム。追求されるリアリティ。そんなゲームの中の『新しい人生』に惹かれていくユルと仲間たち。  ゲームを進め、ある条件を満たしたために行われたアップデート。しかし、それは一部の人々にゲームを終わらせ、新たな人生を歩ませた。  第二部? むしろ本編? 始まりそうです。  主人公は美少女風美青年?

吸血少女 設定資料集(おまけ付き)

月輪林檎
SF
 『吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ』のスキルやその技、武具の追加効果などを章ごとに分けて簡潔に説明します。その章で新しく出て来たものを書いていくので、過去の章に出て来ているものは、過去の章から確認してください。  さらに、ハク以外の視点で、ちょっとした話も書くかもしれません。所謂番外編です。  基本的に不定期更新です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

【おんJ】 彡(゚)(゚)ファッ!?ワイが天下分け目の関ヶ原の戦いに!?

俊也
SF
これまた、かつて私がおーぷん2ちゃんねるに載せ、ご好評頂きました戦国架空戦記SSです。 この他、 「新訳 零戦戦記」 「総統戦記」もよろしくお願いします。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

処理中です...