上 下
366 / 429
クリスマスの吸血少女

桜エリアに眠る力

しおりを挟む
 翌日。私は、桜エリアの神桜都市を巡っていた。途中で団子屋があったので、団子を買って食べ歩いている。

「【心眼開放】でも何も見つからない。サクヤさんと知り合いになるための街って感じなのかな。条件さえ整っていれば、神の力が手に入るわけだし」
「そこの可愛い嬢ちゃん! こっちの肉串はどうだ!?」
「へ? 私?」
「あんた以外にそんなやついないだろう? ほれ! どうだ!? 甘いもん食べた後はしょっぱいもんが食いてぇだろ!?」
「う~ん……じゃあ、いただきます」
「あいよ!!」

 気の良いおじさんが肉串を売ってくれた。可愛いからと肉串をおまけしてくれたので、ちょっと量が多かったけど、ゲーム内だから気にせずに食べられる。香辛料が利いていて美味しい。団子との食べ合わせは、そこまでよくなかったけど。
 その後も歩いていると何度も呼び止められては、色々とおすすめされた。和服などもおすすめされたので、アカリとお揃いになるような浴衣なども購入した。まんまと商法に引っ掛かっている気もするけど、本当に欲しいものしか買っていないので、大丈夫なはず。
 一通り調べて回ったけど、特に何かがあるわけじゃなかった。綺麗な場所ではあるので、のんびりとしたデートには使えそうだけど、それなら現実でデートするからなぁ。
 まぁ、アカリへのお土産が出来たので、それで良しとしよう。
 大分時間を使ったけど、神桜都市は調べ終えたので、残りの時間を桜エリアの探索に使う。ラウネとエアリーとソイルを召喚して、全ての事を調べながら歩いていく。そうして小高い丘まで着いた。小高い丘には一際太い桜の木が生えていた。ソイルとラウネが何かを感じ取った。

『この木から何かを感じるの』
『土の中にも……力が眠ってる……』
「力? エアリーは何か感じる?」
『いえ、土や植物に関する力かと思います』
「なるほどね」

 二人だけが感じられる力があるらしい。それなら、その力を自分のものに出来たりはしないのかな。

「二人とも、その力を吸い取れたりしない?」
『やってみるの』
『うん』

 ラウネは桜の幹に手を触れ、ソイルは地面に足を着けて、目を閉じる。すると、ラウネとソイルに力が移動しているのが、私の目にも見えた。同時に周囲に花が咲き乱れて、桜の木にも新しい花が咲き始める。
 そして、ラウネとソイルの姿にも変化が訪れる。少しだけ身体が成長していく。それに合わせるように、半透明だった姿も濃くなっている。種族の名称も変わっており、地の神霊ノームと花の神霊アルラウネとなっていた。つまり、二人とも進化したという事だ。

────────────────────

ソイル:【魔導王】【大地魔法才能】【根源(地)】【完全支配(地)】【地神霊】【神霊体】【神力】【神土】【採鉱冶金】【土質調整】

ラウネ:【根源(植物)】【完全支配(植物)】【支配(毒)】【無限毒】【花神霊】【神霊体】【神力】【異常花粉】【花粉爆破】【光合成】【給水タンク】【状態異常の魔眼】【魂吸収】【生長自在】【肥料創造】

────────────────────

 二人とも進化してスキルが変わっていた。しかも、【神力】を得ている。

「おぉ……二人とも成長したねぇ」

 それでも、私よりも頭一つ分小さい。エアリーと比べると一・五倍くらいになっているかな。ちょっとお姉さんになっているのも分かる。二人とも容姿が整っているから可愛い。二人の頭を撫でてあげる。進化しても撫でられるのは嬉しいようだった。

「でも、どうして進化出来るような力が、こんなところにあったんだろう?」
『分からないの。でも、この木はずっと力を溜め続けていたみたいなの』
『どこかから……力が地面に……流れてるみたい……』
「力が? 神様の力と言えば……サクヤさんがいるからか」

 サクヤさんが土地神という事もあり、この地域に神の力が広がっているのかもしれない。そう考えると、他の場所でも同様に神様がいれば、皆の進化に繋がるかもしれない。今度、サクヤさんに土地神について訊いてみるのもいいかもしれない。

「エアリーは、何かの力を感じた事とか無い?」
『どのような力か分かりませんので、私は何とも言えません』
「そっか。じゃあ、これまでの場所にはいなさそうだね。取り敢えず、これ以上何もないみたいだから、ボスエリアに行こうか」
『はい』
『うんなの』
『うん……』

 皆でボスエリアまで歩いている途中、サクラトレントに襲われたけど、ソイルが地面を割って、サクラトレントを落とし、一気に押し潰した。そして、ラウネの方も周囲の桜の木を操って桜幽鬼をボコボコにしていた。それぞれの威力が上がっている。多分、進化出来たからだと思う。

「二人とも調子はどう?」
『絶好調なの!』
『今までより……遠くまで……操れる……それに……出力が……出るよ……』

 進化したので、より遠くまで届くし強さも上がっているらしい。頼もしい二人になった。スノウも戦わせてあげられればよかったけど、今日はこの三人で行く事にしているので、またお留守番だ。
 大暴れしながらボスエリアへの転移場所に着く。転移前にウィンドウが出て来るけど、的違って、一つ文面が足されていた。

「ん? 『一対一の戦闘のため、テイムモンスターは使用出来ません』? せっかく二人の強さを確認出来ると思ったのに。悪いんだけど、皆は先に帰ってもらうね」
『お気を付けて』
『うん……』
『分かったの』

 皆をギルドエリアに帰してから、桜エリアのボスエリアへと転移する。桜エリアのボスエリアは、開けた円形の場所だった。その中央には、赤い鎧の武者が膝を突いていた。名前は桜花武者。
 桜花武者は、少し長めの刀……多分、太刀かな。それを装備していて、その柄に手を添えている。私は白百合と黒百合を取りだして、血で強化する。そして、【蒼天】と【天聖】の複合熱線をチャージしながら、【電光石火】で突っ込む。この時も【心眼開放】でスローモーションにして、確実に攻撃を当てられるようにしたのだけど、これは別の形で役に立った。
 凄い速度で太刀を引き抜いた瞬間周囲から風が生まれて、その中にある塵が当たり判定を持っていて、ダメージを受ける。その風を【暴風武装】で退けて、黒百合で斬る。【黒百合の一刺し】で状態異常を与える。与えたのは、呪いの状態異常だった。ついでに、魔眼を使って魅了状態と暗闇状態にしようとしたけど、その二つは無効化された。どうやら、状態異常に対して完全な耐性を持っているみたい。
 状態異常で弱らせるのは諦めて、他で攻める事にする。桜花武者の背後に移動した私は、影を出して桜花武者を縛り上げる。これで動きを止められたら、吸血で終わりなのだけど、すぐに影が斬られた。そして、そのまま振り向きざまに太刀を振ってくる。夜霧になって背後に抜けて実体を取り戻し、白百合と黒百合を大斧に変えて振う
 この攻撃を桜花武者は、鞘を使って防いできた。鞘と大斧がぶつかり合った直後に熱線を放つ。桜花武者の身体が熱線に飲まれて、大きくHPを削っていく。でも、思った程HPが削れていない。その事に違和感を覚えたのと同時に嫌な予感がした。【電光石火】で背後に移動すると、私がさっきまでいた場所を太刀が通り過ぎていった。熱線を吐いている途中で口を閉じたので、身体中に熱が回るけど、ダメージは一切ない。熱系のダメージは無効化されるからだ。
 熱線から出て来た桜花武者の鎧が落ちる。どうやら、あれが熱線のダメージを軽減していたみたい。中から出て来たのは、筋骨隆々のおじさんだった。
 鎧を脱ぎ捨てた桜花武者は、凄い勢いでこっちに向かってくる。なので、思いっきり【神炎】を出して目眩ましにする。私の姿を隠して、【電光石火】で背後に移動する。そして、再び【電光石火】を使い桜花武者の身体に突っ込み、【加重闘法】を使って前のめりに倒れさせる。そこに血液、水、影、土を使って拘束する。さらに、白百合と黒百合を突き刺して、地面に縫い付けてから、吸血をして倒した。

「ふぅ……不味い……」

 口直しにうちの畑で採れた果物を食べながら、手に入れたスキルを確認する。

────────────────────

【精神統一】:一定時間同じ姿勢を取るとステータスが上昇する。控えでも効果を発揮する。

────────────────────

 ステータスが上昇するのは嬉しいけど、同じ姿勢を続けないといけないのは面倒くさいので、そこまで使わないと思う。

「武器スキルが手に入ったら良かったけど、隠れ里のスキルだし、吸血じゃ手に入らないとかあるのかな?」

 ドロップアイテムも桜花の太刀と桜花武者の核だけだった。これはアカリへのお土産にする。当然、ここから先に行くエリアも存在しないので、次のエリアのアップデートが来た時にボス戦をスキップ出来るようにだけしておく。

「さてと、まだ少し時間があるし、師匠のところで稽古受けてからログアウトしよっと」

 街の探索と桜エリアの探索で時間を使ったので、今日はそれでログアウトした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ビースト・オンライン 〜追憶の道しるべ。操作ミスで兎になった俺は、仲間の記憶を辿り世界を紐解く〜

八ッ坂千鶴
SF
 普通の高校生の少年は高熱と酷い風邪に悩まされていた。くしゃみが止まらず学校にも行けないまま1週間。そんな彼を心配して、母親はとあるゲームを差し出す。  そして、そのゲームはやがて彼を大事件に巻き込んでいく……!

Select Life Online~最後にゲームをはじめた出遅れ組

瑞多美音
SF
 福引の景品が発売分最後のパッケージであると運営が認め話題になっているVRMMOゲームをたまたま手に入れた少女は……  「はあ、農業って結構重労働なんだ……筋力が足りないからなかなか進まないよー」※ STRにポイントを振れば解決することを思いつきません、根性で頑張ります。  「なんか、はじまりの街なのに外のモンスター強すぎだよね?めっちゃ、死に戻るんだけど……わたし弱すぎ?」※ここははじまりの街ではありません。  「裁縫かぁ。布……あ、畑で綿を育てて布を作ろう!」※布を売っていることを知りません。布から用意するものと思い込んでいます。  リアルラックが高いのに自分はついてないと思っている高山由莉奈(たかやまゆりな)。ついていないなーと言いつつ、ゲームのことを知らないままのんびり楽しくマイペースに過ごしていきます。  そのうち、STRにポイントを振れば解決することや布のこと、自身がどの街にいるか知り大変驚きますが、それでもマイペースは変わらず……どこかで話題になるかも?しれないそんな少女の物語です。  出遅れ組と言っていますが主人公はまったく気にしていません。      ○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*○  ※VRMMO物ですが、作者はゲーム物執筆初心者です。つたない文章ではありますが広いお心で読んで頂けたら幸いです。  ※1話約2000〜3000字程度です。時々長かったり短い話もあるかもしれません。

Recreation World ~とある男が〇〇になるまでの軌跡〜

虚妄公
SF
新月流当主の息子である龍谷真一は新月流の当主になるため日々の修練に励んでいた。 新月流の当主になれるのは当代最強の者のみ。 新月流は超実戦派の武術集団である。 その中で、齢16歳の真一は同年代の門下生の中では他の追随を許さぬほどの強さを誇っていたが現在在籍している師範8人のうち1人を除いて誰にも勝つことができず新月流内の順位は8位であった。 新月流では18歳で成人の儀があり、そこで初めて実戦経験を経て一人前になるのである。 そこで真一は師範に勝てないのは実戦経験が乏しいからだと考え、命を削るような戦いを求めていた。 そんなときに同じ門下生の凛にVRMMORPG『Recreation World』通称リクルドを勧められその世界に入っていくのである。 だがそのゲームはただのゲームではなく3人の天才によるある思惑が絡んでいた。 そして真一は気付かぬままに戻ることができぬ歯車に巻き込まれていくのである・・・ ※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも先行投稿しております。

後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~

夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。 多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』 一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。 主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!! 小説家になろうからの転載です。

VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

転生者、万能宇宙戦艦もらって無双する

手跡那舞
SF
転生者は、転生特典に万能宇宙戦艦を要求した。そんな宇宙戦艦をもらい、管理しながら、各地で暴れる物語である。

戦国時代の武士、VRゲームで食堂を開く

オイシイオコメ
SF
奇跡の保存状態で頭部だけが発見された戦国時代の武士、虎一郎は最新の技術でデータで復元され、VRゲームの世界に甦った。 しかし甦った虎一郎は何をして良いのか分からず、ゲーム会社の会長から「畑でも耕してみたら」と、おすすめされ畑を耕すことに。 農業、食堂、バトルのVRMMOコメディ! ※この小説はサラッと読めるように名前にルビを多めに振ってあります。

処理中です...