吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ

月輪林檎

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世界を楽しむ吸血少女

猛吹雪エリアの上空

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 猛吹雪エリアに来た私は、【熾天使翼】を広げて、空へと飛ぶ。吹雪が雲の上まで続いているはずがないので、雲の上は静かなはず。そこに何かがあったら、面白いなと思って空を飛んでみた。雲を突き抜けてみると、何も無い空が広がっている……訳では無かった。

「何あれ……」

 私の視線の先にいたのは、大きな白い竜だった。スノウの二倍以上はあると思う。名前は、氷炎竜王。もしかしたら、スノウが進化した姿なのかもしれない。
 向こうも私を見つけたみたいで咆哮した。その衝撃は周囲に撒き散らされて、私にも届く。確実に戦闘になる。相手が竜という事もあり、竜狩刀を取り出して血を吸収させる。そして、【電光石火】を使い、氷炎竜王の背後に移動する。この時点で【蒼天】と【天聖】を【属性結合】しつつチャージを始める。
 竜狩刀で背後から斬りつけようとしたけど、その前に氷炎竜王から青い炎が噴き出してくる。スノウの進化形と考えたら、この攻撃はただの炎ではなく、食らえば凍り付くものだ。火に耐性があっても、氷の方には耐性はない。なので、当たらない方が良いと判断した。【支配(火)】で炎を避けて、背中に竜狩刀を突き刺そうとしたけど、その前に尻尾がお腹に突き刺さりそうになった。慌てて、竜狩刀で攻撃を弾く。
 それと同時に、今度は【神炎】を出して氷炎竜王に飛ばす。氷炎竜王は、尻尾の位置を中心に前回りをして、私の背後に移動する。嫌な予感がしたので、【電光石火】で前に向かって移動する。背後を確認すると、私がいた場所を氷炎竜王の爪が通り過ぎていた。
 【慣性制御】で止まり、炎、風、雷を竜狩刀に纏わせて、氷炎竜王に向かって飛ばす。それに対して、氷炎竜王はブレスで対抗してきた。でも、こっちは【神炎】を含んでいるので、ブレスを切り裂き、氷炎竜王に命中した。氷炎竜王に炎上ダメージが入るけど、麻痺状態にはならない。ただ、ダメージは微々たるものだった。

「やっぱり直接攻撃が一番ダメージになるよね」

 竜狩刀に【神炎】を纏わせて、【電光石火】で突っ込む。私の移動する道が分かっていたのか、氷炎竜王がブレスを吐いてくる。【神炎】を纏っている竜狩刀で斬り裂きつつ、身体から水と血を出して、氷の剣と血の剣を造り出し、氷炎竜王に向かってあらゆる方向から突き刺すように飛ばしていく。
 すると、氷炎竜王が身体に炎を纏った。その熱のせいで氷の剣は溶けたけど、血の剣は刺さった。私の血が体内に侵入した結果、氷炎竜王が猛毒状態と麻痺状態になる。地面に向かって落ちていく氷炎竜王の背後に近づき、その背中に竜狩刀を突き刺す。そして、その身体に噛み付いて、吸血を始めてから、【蒼天】と【天聖】を掛け合わせた熱線を氷炎竜王に向かって放つ。熱が私の元にも来るけど、【熾天使】の効果でダメージはない。
 氷炎竜王の体内を熱線が駆け巡り、その血すらも沸騰しているのが分かる。氷炎竜王は苦しそうに咆哮していたけど、やがてその咆哮も終わり、ポリゴンへと砕けて消えた。
 氷炎竜王からは、【氷炎】というスキルが手に入った。これは、【氷炎息吹】と【水氷武装】【火炎武装】の統合らしい。おかげで、【氷炎息吹】が消える事になった。【水氷武装】と【火炎武装】は、既に支配に変わっているので、影響がない。

「ふぅ……びっくりした。ん?」

 ドロップアイテムとかの確認をしようとしたら、別のウィンドウが開いていた。

『氷炎竜王の討伐及び氷炎竜王の核の入手により、テイムモンスター『スノウ』の進化が可能になりました』

 ウィンドウにはそう書いてあった。その文章を何度も読んでしっかりと確認する。

「おぉ……スノウの進化か……氷炎竜王になるとしたら、何が強化されるんだろう? 後の問題は、スノウの進化先が一つとは限らない事だよね。本当にこの進化で良いのか……まぁ、それはスノウに確認すれば良いか」

 取り敢えず、周囲を確認しつつ飛び回って他に何かないか確認する。でも、氷炎竜王以外には特に何もいないし、何も無かった。氷炎竜王と戦う事が出来る場所というだけみたいだ。そもそも空を飛べないといけないから、戦った事のある人は少ないと思う。
 多分、自分自身が飛ぶのではなく、竜と一緒に戦う事が前提だったのだと思う。だから、スノウの進化に繋がるものを手に入れられたのだ。まぁ、そもそもスノウをテイム出来る条件が分からないといけないのだけどね。

「さてと、これ以上は猛吹雪エリアには何もないかな。【熾天使翼】のおかげで、空の探索も早く済んだ事だし、スノウのところに行こうかな」

 ギルドエリアに戻ってくると、まだ精霊の集会場にアカリとアク姉がいた。アカリを膝に乗せたまま話が弾んでいるようだった。ちょっとだけモヤモヤとしてしまう。アク姉の膝に座っているアカリに対してなのか、アカリを抱きしめているアク姉に対するものなのか分からなくて、さらにモヤモヤしてしまう。
 取り敢えず、二人に近づいてアカリの手を掴み立ち上がらせる。また突然にこんな事をしたので、アカリが困惑していたけど、そんなアカリを抱きしめたまま、アク姉の膝に乗る。二人分の体重が掛かるけど、ゲームの中という事もあるのかアク姉は普通に受け入れていた。

「ハクちゃん、どうしたの? 私かアカリちゃんに嫉妬しちゃったの?」
「ん~……」

 アク姉に寄り掛かりながら適当に返事をする。正直、自分でもよく分からないし。

「でも、今日は随分と早く帰ってきたんだね」
「ちょっとスノウに用事があってね。氷炎竜王って知ってる?」

 アプデ前のエリアに全て行っているアク姉に訊いてみる。氷炎竜王が地上に降りてくる可能性もあるし。

「う~ん……聞いた事ないなぁ。エンカウントボスでも聞いた事ないね」
「そうなんだ。猛吹雪エリアの上空にいるよ。空を飛べば戦える。そうしたら、スノウの進化が出来るようになったんだ」
「へぇ~、良いなぁ。シルクとミルクも進化するかな?」
「シルクちゃんとミルクちゃんが進化して成虫になったら、多分糸を作れなくなると思うよ」
「あっ、それもそうですね」

 蚕という虫がそういう生き物だから、ゲームでも同じようになる可能性が高いという事かな。

「さてと、それじゃあスノウのところに行って来る」
「あっ、私も見て良い? スノウちゃんがどうなるのか見てみたい」
「私も」
「いいよ。スノウも気にしないだろうし」

 そんな事を言っていたら、上からスノウが飛んで来た。名前を呼んでいたから気になって飛んで来たって感じかな。頭を押し付けられるので、沢山撫でてあげる。

「スノウ。進化出来るみたいだけどしてみる?」
『ガァ?』
「スノウが強くなるかもしれないって事。でも、スノウがしたくないならしないよ」
『ガァ!!』

 スノウは笑いながら頷いた。進化したいって事みたい。だから、氷炎竜王の核をスノウに渡す。すると、スノウは氷炎竜王の核を食べた。

「えっ!?」

 まさか食べるとは思わず驚いてしまう。その後で、自分も変な物を食べまくっていた事を思い出して、何とも言えなくなってしまった。
 氷炎竜王の核を飲み込んだスノウの身体が光る。光に包まれたスノウの身体が少しずつ大きくなっていき、私の身長を超してきた。大体二メートルくらいになってから、スノウを覆っていた光が消えて、真っ白な鱗に覆われたスノウが出て来た。

「スノウ? 大丈夫?」
『ガァ!!』

 スノウは元気に返事をして、いつもみたいに頭を押し付けてきた。頭も大きくなっているので、今までよりも撫で甲斐がある。

「何のともないなら良かった。格好よくなったね」
『ガァ!!』

 スノウは嬉しそうに吠えてから、空を飛び始めた。大きくなった身体で風を感じたいとかかな。スノウが立派に進化したところで、アカリの腕に自分の腕を絡ませる。そして、アク姉の方を見た。

「そういえば、二人で長いこと何を話してたの?」

 私が訊くと、アカリがちょっと目を逸らしていた。でも、頬が赤くなっているのは丸見えだ。

「う~ん……内緒かな」
「ふ~~ん……」

 ジト目で睨んでもアク姉はニコニコと笑うだけで答えようとしない。本当に私に内緒の事を話していたみたい。アカリが赤くなっているから、ある程度予想は出来るけど、本当に合っているか分からないし、何とか聞き出せればいいのだけど。

「まぁ、いいや。今度、光から聞き出すから」
「ふっふっふ、光ちゃんは口が硬いかもよ?」
「光の口は柔らかいよ。ぷるぷるでハマる感触だもん」
「ちょっ!? 白ちゃん!?」
「くっ……確かに、そこまでラブラブだと、簡単に口を割るかもしれない……まぁ、私は困らないから良いんだけどね」
「水波さん!?」

 私達姉妹の口撃にアカリはあわあわと慌てていた。
 何だから、光と付き合い始めてから、みず姉が私にするような事を光にするようになっている気がする。姉妹じゃなくて恋人だから、みず姉より過激になっているけど。
 元々かー姉も含めて似たもの姉妹って言われていたし、性格も似ていたって事なのかな。まぁ、光に対して積極的になれているから、全然良いのだけどね。
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