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世界を楽しむ吸血少女

天使の試練

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 翌日。祝日なので、今日の学校は休みだ。昨日のうちにアカリと話して、来週の土曜日にデートする約束を取り付けておいた。アカリも喜んでくれていたので、そこは良かった。何でもデートするとなるとお金も必要になるので、バイトも始める事にした。これは前から考えていたので、平日の間に面接を受けて、合格を貰っていた。近くの小さな本屋で平日の放課後に働くって感じだ。平日のログイン時間が減るけど、高校を卒業した後の事もあるし、ある程度お金は稼いでおきたい。家からも近いから、そこだけはありがたい。
 ワンオンにログインして、いつもの世話を終わらせる。繁殖も進んで、世代交代が始まってきているので、若く元気な子が増えてきた。おかげで世話も大変になっていたけど、手伝ってくれる皆がいるので、何とか出来ている。
 色々と終わったところで、アークサンクチュアリに転移する。そして、天聖教の施設の中に入ると、前にもいたお爺さんが出迎えてくれた。

「ほっほっほ。また来なさったか」
「こんにちは。覚えていらっしゃったんですか?」
「あなたは、少々変わっておられましたからな。どこか晴れ晴れとしたご様子。何か良きことでもありましたかな」

 何か晴れ晴れとする事なんてあったかな。心当たりがアカリとのデートくらいしか思い付かなかったけど、すぐに邪聖教の事かなと気付く。

「邪聖教の亡霊を倒したくらいですかね」
「それはそれは。私からも感謝申し上げます。我ら天聖教にとっても迷惑な組織でしたからな」
「分かります。それじゃあ、今日も見学させて貰いますね」
「ええ、どうぞ、ごゆっくり」

 お爺さんへの挨拶を終えたところで、まっすぐ天聖竜の試練に挑める場所へと向かう。その道中で、相変わらずよく分からない場所だなという印象を受けた。天使も悪魔も飾ってあるからね。邪聖教から没収したものだとしても燃やしておけば良いのにと思ってしまう。これで、新たな邪聖教が生まれる可能性もあるのだから。
 そんな事を思いつつ、真っ白な空間に来て、天聖竜のいる場所へと転移する。こちらも相変わらず、仄かに黄色っぽい世界だった。天界って感じがする場所だ。

「【召喚・マシロ】」

 ここでマシロが喚び出せれば、かなり楽だったのだけど、マシロは出てこなかった。闇霧の始祖が言っていた通り、精神世界となっているこの場所には喚び出せないらしい。私一人で戦うしかないというのは、本当に意地悪だと思う。
 最悪の手段を残しておくために、血を流しておく。血溜まりが出来たところで、【大天使翼】を使って空を飛ぶ。すると、【索敵】に天聖竜が反応した。
 空から、まっすぐこちらに突っ込んでくる。なので、こちらからも突っ込む。【電光石火】で天聖竜の背後まで移動すると、天聖竜が生み出した光球がレーザーのようになって飛んでくる。【光明武装】でその軌道を曲げる。どの程度操れるのかで、こっちが勝てるかどうかが変わってくる。手応え的には、私から逸らすくらいは出来るけど、自由自在とはいかないといった感覚だ。これなら、この前のようにはならない。
 再び【電光石火】をして、天聖竜に突っ込む。天聖竜は、こっちに拡散した光線を放っていた。そんな天聖竜の口が金色に輝く。天聖竜版の【蒼天】だ。こっちも一歩遅くなるけど、【蒼天】のチャージを始めつつ、【光明武装】で光線を逸らす。
 光線の隙間を縫った【電光石火】で天聖竜に接近する。竜狩刀を取り出し、天聖竜に斬り掛かる。天聖竜は、爪に金色の光を纏って、空を切り裂く。すると、光の刃が私に向かって飛んで来た。こっちの攻撃は、軌道を変える事が出来ないけど、角度は変えられるので、当たらないように角度調整して隙間を縫い、血液で強化した竜狩刀に影と闇を纏わせて、天聖竜の胸を斬る。
 初めて天聖竜に攻撃を与える事が出来た。一気に二割のダメージを与えられる。竜狩刀の効果が大きいのだと思う。そのまま血液を天聖竜に絡ませて、天聖竜を中心に回り込み背中に組み付く。これで、相手の熱線は届かない。
 すぐに背中に竜狩刀を突き刺して、自分の身体を血液と影で身体を縛り付けて、尚且つ水を出して、天聖竜の身体を凍り付かせていく。
 そして、そのまま天聖竜に噛み付いた。ここからは、いかに吸血出来るかの勝負になる。天聖竜は、背中に手が届かないので、自らの身体と一緒に光線で貫こうとしてきた。第六感で、認識出来ているので、【光明武装】で逸らして天聖竜自身に当てる。でも、それだけだと大したダメージにはなっていない。やっぱり、光とか神聖属性に対しては、かなりの耐性があるみたい。
 それでも吸血に対する耐性はないみたいで、どんどんとHPを減らしていく。すると、今度は光線ではなく、尻尾が私の方に向かって突き出された。それに対して、血液を噴射して、血液の壁を作り出す。尻尾は、血液に阻まれて私の場所に来る前に勢いを完全に殺された。
 そのまま尻尾を血液で完全に縛る。同時に試しに突き刺している竜狩刀から自分の血を注入する。【血液伝播】で【竜狩】の力を伴った血液が、天聖竜を内側から蝕む。さらに、【継続累積】の効果でどんどんとHPが減る。
 HPが残り四割になったところで、天聖竜の身体が光り出す。天聖竜の身体が無数の光線が撃ち出された。当然、吸血をしている私にも命中していく。【夜霧の執行者】を使わされるも、こっちは吸血した状態なので、常にHPを回復しているので、ほぼほぼ死ぬ事はない。組み付く前に、この攻撃をされたら、近づく事すら出来なかったと思う。まぁ、前までは、その前から近づく事も出来なかった訳だけど。
 こっちの回復速度の方が速いので、そのまま吸血を続けつつ竜狩刀から血を注入し続ける。そうして、一気に天聖竜のHPを削っていく。最後の一割を切ったところで、天聖竜にまた変化しそうになったけど、こっちのHPを減らす速度が早く、変化を見ることなく削り切った。【継続累積】様々の結果だった。

「ふぅ……この【蒼天】どうしよう……」

 相手の熱線に対抗するべく、【蒼天】のチャージをしていたけど、ここで倒してしまったから、行き場のない【蒼天】が出来てしまった。仕方ないので、このまま吐き出しつつ、手に入れたものの確認をする。手に入れたのは、【天聖】というスキルと【天聖を乗り越えし者】という称号だった。

────────────────────

【天聖】:内なる光を様々な攻撃に変化させられる。

【天聖を乗り越えし者】:【天聖】の効果範囲が広がる。

────────────────────

 正直よく分からないけど、これがあの熱線攻撃に繋がるのかな。

『クエスト『天使の試練』をクリアしました。報酬として、天使の権限を獲得』

 クエストもクリアしたところで、意識が真っ白な空間に引き戻された。さっきまで【蒼天】を吐いていたのだけど、それも消えている。取り敢えず、これで天聖竜を倒す事が出来た。ちょっと心配だったけど、自分の土俵に持ち込めたのが大きかったかな。
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